2018年12月30日

2018年12月30日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 米国連邦政府機関が予算不足で部分閉鎖 
  • 降圧剤をエーラス・ダンロス症候群治療薬として承認申請 
  • 吸入用レボドパが承認 


【今週の話題】


米国連邦政府機関が予算不足で部分閉鎖
(2018年12月22日発表)

12月22日、米国連邦政府機関の一部が予算不足により閉鎖・職員帰休となった。トランプ大統領の公約であるメキシコ国境に壁を建設するための予算を上院が認めなかったため、大統領が連邦議会の予算案に拒否権を発動したことが原因。クリントン政権やオバマ政権でも発生した、お馴染みの茶番だ。

警察など重要な機能は維持される。また、民間が費用負担する業務の一部も影響を受けない。FDAの場合、約7000人の職員のうち41%は帰休となるが、食品安全性監視や、ユーザー課金制度を原資とする新薬、GE薬、バイオシミラー、一部の医療機器の承認審査は資金が続く限り継続される。

新規の承認申請は受理されないリスクが残るが、26日に2社が承認申請受理を発表した。Acer TherapeuticsのEdsivo(後述)は希少疾患用薬なので上記例外に該当するのだろう。よくわからないのがKala Pharmaceuticalsのドライアイ治療薬で、過去のユーザー課金の使い残しを流用したのか、あるいはFDAの担当者が門が閉まる前に駆け込むことに成功したのかもしれない。

トランプ政権下では18年1月にも部分閉鎖があったが3日間で終了したため影響は小さかった。オバマ政権では13年10月に16日間の部分閉鎖が発生した。少なくとも承認審査に関しては大きな影響はなかった模様だが、同月下旬に予定されていた細胞組織遺伝子療法諮問委員会が翌年2月にリスケ、薬品科学臨床薬理諮問委員会はキャンセルされた。特定の薬の承認審査に係るものではなかったようなので、おそらく、ブリーフィング資料の作成などの準備ができなかったのだろう。

今回、19年1月に承認審査期限を迎えるものとしては、大日本住友製薬の子会社であるSunovion Pharmaceuticalsがパーキンソン病オフタイム治療薬として承認申請したAPL-20277が29日、Alkermes(Nasdaq:ALKS)の鬱病治療用合剤、ALKS 5461が31日の予定。

諮問委員会に関しては、1月11日に関節炎諮問委員会が、帝人が創製し米国では武田が開発販売している痛風治療薬、Uloric(febuxostat)の心血管リスクを議論する予定。アウトカム試験の結果がネガティブだったので警告・処方制限がどの程度強化されるかが注目点になりそうだ。

更に、1月16日には骨・再生産・泌尿器薬諮問委員会がアムジェンが骨粗鬆症治療薬として新薬承認申請したEvenity(romosozumab、和名イベニティ)を、その翌日には内分泌代謝学薬諮問委員会がレキシコン(Nasdaq:LXRX)がサノフィと一型糖尿病薬として新薬承認申請したSGLT阻害剤、Zynquista(sotagliflozin)を、検討する予定。

18年の中間選挙の結果、下院は1月3日をもって民主党が多数を占めるようになるため、壁建設予算の成立を期待するのは極めて難しくなる。トランプ大統領が諦めれば、予算が成立し政府機能が回復するのだが...

リンク: FDAのプレスリリース


【承認申請】


降圧剤をエーラス・ダンロス症候群治療薬として承認申請
(2018年12月26日発表)

Acer Therapeutics(Nasdaq:ACER)は血管エーラス・ダンロス症候群治療薬Edsivo(celiprolol)の承認申請がFDAに受理され、優先審査指定されたと発表した。審査期限は19年6月25日。クリスマス休暇が終了し、連邦予算遅延の影響が懸念される中、平穏なスタートとなった。

血管エーラス・ダンロス症候群はコラーゲンの形成異常による疾患。celiprololはベータ1受容体アンタゴニストで、高血圧の治療に用いられている薬の転用。Greater Paris University Hopitalsから16年にライセンスしたもの。

リンク: Acer社のプレスリリース


【承認】


吸入用レボドパが承認
(2018年12月21日発表)

アコーダ・セラプティクス(Nasdaq:ACOR)は、Inbrija(levodopa)がFDAに承認されたと発表した。パーキンソン病の標準治療薬であるレボドパの効果が薄れる『オフタイム』の治療に用いる吸入用レボドパで、臨床試験では第12週時点でも吸入30分でUPDRSパートIIIが9.83ポイント改善し偽薬群の5.91ポイント改善を有意に上回った。有害事象は痰の変色などレボドパによるものと咳などで、吸入薬の要注意点である肺の副作用は大きな問題はなかった。

14年に5.25億ドルで買収したCivitas Therapeuticsの開発品。CMC(化学、生産、品質管理)がボトルネックとなり遅れたが、承認申請から足掛け1年半、承認にこぎつけた。

リンク: アコーダ社のプレスリリース








今週は以上です。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

0 件のコメント:

コメントを投稿