2018年12月9日

2018年12月9日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 光速承認の背景 
  • SABCS:カドサイラ、術後アジュバント試験成功 
  • ASH:luspaterceptの第三相成功 
  • ASH:ダラザレックス、Rd併用試験も成功 
  • ASH:イムブルビカの様々なCLL一次治療試験が成功 
  • イムフィンジ、頭頚部癌試験がフェール 
  • ASH:イグザレルト、高リスク癌患者の静脈血栓予防試験がフェール 
  • テセントリク、小細胞性肺癌の一次治療に適応拡大申請 
  • テセントリク、非扁平上皮非小細胞性肺癌の四剤併用一次治療が承認 


【今週の話題】


光速承認の背景
(2018年12月3日発表)

シアトル・ジェネティクス(Nasdaq:SGEN)のAdcetris(brentuximab vedotin、和名アドセトリス)を全身性未分化大細胞リンパ腫などのCD30陽性末梢T細胞リンパ腫の一次治療に用いる適応拡大をFDAが承認した時、光速承認と書いた(2018年11月18日号)。承認申請書類がFDAに届いてから11日後の承認だったからだ。これを可能にしたのがFDAが腫瘍学薬の承認審査に導入した、Real-Time Oncology Review(RTOR) Pilot Programだ。

報道によると、同社のCEOであるClay Siegall氏もこの制度について初めて聞いた時、光速と感じたそうだ。適応拡大試験が大成功で条件を満たしうるものだったため、FDAに適用を求め、結果、トップラインデータ発表の46日後に承認取得した。承認審査を前倒しする仕組みなので実際の審査期間は11日間より長いはずだか、申請書類作成期間も含めて1ヶ月半というのは大変な驚きだ。

RTORに即して承認されたのは3例目とのことなので、この機会に、当プログラムと過去3例を紹介しよう。

フローはこうだ。承認申請者は適応拡大試験のトップラインが判明した段階でFDAに相談し、このプログラムの適用を認められたら、トップライン・データを提出する。FDAは予備的な審査を行い論点を明確化、申請者に追加データ・分析を都度求める。Adcetrisの場合もデータのやり取りが繰り返されたが、FDAが設定した提出期限は常に24時間後だった由なので、FDAだけでなく申請側にも光速が求められることになる。全書類を提出し終わり正式に承認申請することには審査がかなり進行しているので、その後の審査期間を短縮できる。

RTORの適用条件は、既承認薬の適応拡大で、既存の薬と比べて大きな改善をもたらすものであり、臨床試験のデザインが単純で、評価項目の解釈が容易であること、等。評価項目の明快さは例えば無作為化割付試験の全生存解析。米国外だけで実施された試験や予防試験、また、製法変更、薬理学的・毒性試験データ、コンパニオン診断薬を伴うものなどは対象外。

パイロットプログラムの実施期間や本格採用あるいは腫瘍学薬以外での導入については未定。将来は適応拡大だけでなく新薬も対象になる可能性があるようだ。

RTORに加えて、Assesment Aid Pilot Programも導入された。FDAが用意するテンプレートに即して情報を提出、ページの片側に記された申請者の評価の横にFDA側の評価が併記されるため論点が明確になる。これも対象は腫瘍学。適応拡大だけでなく新薬も可。申請者が任意で利用する。

RTOR承認第一号であったノバルティスのKisqali(ribociclib)はこの両方を採用した。今年4月にFDAとRTOR協議を行い、同月、トップラインデータ(『申請前パッケージ』)を提出、6月に正式な承認申請を行い、PDUFA日は12月だったが申請の20日後、申請前パッケージ提出からだと85日後に承認された。内容は、ホルモン受容体陽性、her2陰性の末期・転移乳癌の一次治療(アロマターゼ阻害剤またはfulvestrant併用)と二次治療(fulvestrant併用)なので、複数の臨床試験のデータが対象となった。

第二号はMSDのKeytruda(pembrolizumab)。KeyNote-189試験に基づいて非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療化学療法併用を申請した。試験成功が発表されたのは18年1月16日、RTOR協議を経て申請前パッケージを提出したのは2月27日、正式な承認申請は3月23日で審査期限は9月23日に設定され、8月20日に承認された。通常の優先審査より1ヶ月早いがAdcetris、Kisqaliほどではない。

最後に、Adcetrisは適応拡大試験成功が発表されたのが10月1日、申請前パッケージの提出時期は不明、適応拡大申請は11月4日、承認は11月16日だった。前二回も通常よりは早かったが、光速と呼べるのはAdcetrisだけだろう。

リンク: FDAの制度紹介ページ
リンク: FiercePharmaの報道


【新薬開発】


SABCS:カドサイラ、術後アジュバント試験成功
(2018年12月5日発表)

ロシュの抗体薬物複合体、Kadcyla(ado-trastuzumab emtansine、和名カドサイラ)の術後アジュバント試験、KATHERINEの結果がサン・アントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)とNew England Journal of Medicine誌で発表された。再発死亡リスクがHerceptin(trastuzumab)群を有意に下回る、良好な結果だった。

この試験は、her2陽性早期乳癌で切除前にタクサン系抗癌剤とHerceptinによるネオアジュバント治療を行ったが病理学的完全反応に到達しなかった患者をKadcyla群とHerceptin群に無作為化割付して14サイクル投与し、侵襲性疾患の再発や死亡のリスクを比較したもの。結果は、ハザードレシオ0.50、p<0.0001だった。

3年無侵襲性疾患生存率は88.3%対77.0%で上回った。全生存のハザードレシオは0.70だったがデータが未成熟でpは0.08と未だ有意水準に到達していない。深刻有害事象の発生率は12.7%対8.1%で増加した。

ロシュは適応拡大申請に向かう予定。

リンク: ロシュのプレスリリース
リンク: Minckwitzらによる治験論文(NEJM)

ASH:luspaterceptの第三相成功
(2018年12月2日発表)

セルジーン(Nasdaq:CELG)とAcceleron Pharma(Nasdaq:XLRN)は、ASH(米国血液学会)で、ACE-536(luspatercept)の第三相試験二本の結果を発表した。良好な内容で、19年上期に欧米で承認申請する予定。

luspaterceptはアクティビン受容体IIB型の細胞外領域とヒト免疫グロブリンG1型の固定領域を融合した蛋白。TGFベータ・スーパーファミリーが受容体に結合して赤血球の成熟を妨げないよう羽交い絞めにする。セルジーンは11年にAcceleronから共同開発販売権を取得した。

第三相の一本は環状鉄芽球陽性のMDS(骨髄異形成症候群)でリスク分類は超低、低、または中度、そして疾病装飾薬による治療は受けておらず、エポエチン不応不耐で輸血に依存している貧血症を組入れ、1.0mg/kgを3週毎に皮注したところ、奏効率(8週間以上赤血球輸血なし)が37.9%と偽薬群の13.2%を有意に上回った。

治療時発現有害事象は153人中5人で発生、偽薬群は76人中1人。急性骨髄性白血病(AML)が3人で発生したが、偽薬群も1人となっており、今回の試験だけでは二次性AMLのリスクを評価するにはデータ不足。

もう一本は、輸血依存ベータサラセミアを治療したところ、奏効率(第13-24週の輸血量がランイン期間中と比べて33%以上減少)が21.4%と偽薬群の4.5%を有意に上回った。深刻有害事象は15.2%と偽薬群の5.5%より多かった。メカニズム的に不可避なのだろうが、血栓性イベントの発生率も偽薬群を上回り、G3以上だけでも0.9%対0%となっている。

リンク: 両社のプレスリリース(MDS試験、12/2付)
リンク: 両社のプレスリリース(ベータサラセミア試験、12/1付)

ASH:ダラザレックス、Rd併用試験も成功
(2018年12月4日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのヤンセンは、Darzalex(daratumumab、和名ダラザレックス)の第三相新患多発骨髄腫試験、MAIA試験の成功をASHで発表した。自家幹細胞移植不適にRevlimid(lenalidomide)と低量dexamethasoneを併用するRd療法に更にDarzalexを追加したところ、PFS(無進行生存期間)のハザードレシオがRd療法群比0.56、ログランクp値<0.0001と効果が増強された。メジアンは未達、Rd療法は31.9ヶ月だった。

完全反応率は48%対25%で上回り、治療時発現有害事象による死亡は6%対7%で大差なかった。適応拡大申請に向かう予定。

Darzalexはジェンマブ社からライセンスした抗CD38トランスジェニックマウス抗体。多発骨髄腫のサルベージ療法として15年に米国で、16年に欧州で、17年には日本でも承認された。

リンク: ヤンセンのプレスリリース(pdfファイル)

ASH:イムブルビカの様々なCLL一次治療試験が成功
(2018年12月3日発表)

Bruton's tyrosine kinase阻害剤Imbruvica(ibrutinib)のCLL(慢性リンパ性白血病)/SLL(小リンパ球性リンパ腫)一次治療試験三本の結果がASHで発表された。様々なタイプの患者に様々な薬と併用しており、エビデンスの充実がうかがわれる。

まず、iLLUMINATE試験。ロシュの糖鎖改変型タイプII抗CD20抗体Gazyva(obinutuzumab、和名ガザイバ)と併用する効果をGazyva・chlorambucil併用と比較したところ、PFSハザードレシオは0.23、p<0.0001だった。メジアンは未達、対照群は19.0ヶ月。有害事象による治験離脱は16%対9%だった。

Imbruvicaは一次治療として単剤投与することが承認されているが、副作用忍容力のある患者に対する併用は未だ。アッヴィは10月にこの試験のデータで適応拡大申請した。

リンク: アッヴィのプレスリリース(12/3付)

次に、Alliance for Clinical Trials in OncoogyとNCI(米国立癌研究所)が主導した第三相試験。高齢CLLの初治療としてImbruvicaを単剤あるいはrituximab併用で施行する効果をrituxanとbendamustineの併用と比較したところ、PFSハザードレシオがモノセラピーは0.39、併用も0.38となった。2年無進行生存率はモノが87%、併用88%、対照群は74%だった。

一方、2年生存率は各90%、94%、95%だった。95%信頼区間はオーバーラップしているので大差ないと受け止めるべきなのだろうが、奇妙な感じである。

グレード5有害事象の発生率は各群13%、12%、9%。要因は明確ではないが、New England Journal of Medicine電子版の治験論文によれば二次性腫瘍による死亡や説明不能・証言者不在の死亡がやや多い。グレード5症例はなかったがグレード3と4の心房細動も増加した。Imbruvicaが諸刃の剣であることを思い起こされる。

リンク: Woyachらの治験論文(NEJM、12/1付電子版)

最後に、これも研究者主導のE1912試験。70歳以下の新患CLL/SLLを組入れて、Imbruvicaとrituximabの併用をFCR(fludarabine、cyclophosphamide、rituximab)レジメンと比較したところ、PFSハザードレシオが0.35、全生存のそれは0.17と、有意な差があった。

リンク: アッヴィのプレスリリース(12/4付)

ASH:ニンラーロ、新患維持療法試験のデータを発表
(2018年12月3日発表)

武田薬品は、経口プロテアソーム阻害剤Ninlaro(ixazomib cirate、和名ニンラーロ)のTOURMALINE-MM3試験のデータをASHで発表した。大量化学療法と自家造血幹細胞移植に反応した多発骨髄腫656人を組入れてNinlaroを週一回、3回投与して1回休むペースで最長24ヶ月投与したところ、独立審査委員会評価に基づくPFS(無進行生存期間)がメジアン26.5ヶ月と偽薬群の21.3ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.72、p=0.002と有意な差があった。深刻有害事象の発生率は27%対20%、有害事象による治験離脱は7%対5%で若干増加した。

武田薬品は適応拡大に向けて各国の承認審査機関と相談する考え。

リンク: 武田のプレスリリース(和文)

イムフィンジ、頭頚部癌試験がフェール
(2018年12月7日発表)

アストラゼネカは、抗PD-L1ヒト化抗体Imfinzi(durvalumab)の第三相頭頚部扁平上皮種試験がフェールしたと発表した。欧米や日本など24ヶ国の白金薬歴を持つ難治性転移性患者をPD-L1の発現を問わずに組入れて、モノセラピーやtremelimumab(ファイザーからライセンスした抗CTLA-4ヒト化抗体)併用の延命効果を標準療法と比較したが、有意な差はなかった。同社は両剤併用で一次治療試験も実施しており19年上期に開票の見込み。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

ASH:イグザレルト、高リスク癌患者の静脈血栓予防試験がフェール
(2018年12月4日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのヤンセンは、Xa阻害剤Xarelto(rivaroxaban、和名イグザレルト)の第三相CASSINI試験の結果を発表した。静脈血栓塞栓症のリスクが高い癌患者1080人を組入れて10mgを一日一回、180日間経口投与する効果を検討したところ、複合主評価項目である深静脈血栓、肺塞栓または静脈血栓塞栓による死亡の発生率が5.95%と偽薬群の8.79%を大きく下回りハザードレシオ0.66と良さそうな数字が出た。しかし、p値は0.101と有意水準に到達しなかった。

治験離脱が50.2%、偽薬群も43.7%、と高かったことが原因で、治療期間中(on-treatment)の解析は2.62%対6.41%で有意な差があった。但し、主評価項目ではないだろうから厳密には有意とは言えないだろう。ISTH基準に基づく大出血は1.98%対0.99%で、これは有意ではないとのことだが、検出力不足が原因だろうから、厳密には有意でないとは言えないだろう。

ヤンセンはon-treatmentの解析に基づいて当局と適応拡大に向けた相談を行う考えのようだが、現実の医療ではintent-to-treatが重要であることを考えれば、血栓事故が発生する前に死亡したり患者が服用を止めてしまうような治療は割り引いて受け止めたほうが良いのではないか。

リンク: ヤンセンのプレスリリース(pdf)


【承認申請】


テセントリク、小細胞性肺癌の一次治療に適応拡大申請
(2018年12月5日発表)

ロシュは抗PD-L1ヒト化抗体Tecentriq(atezolizumab)を進展型小細胞性肺癌の一次治療としてcarboplatin及びetoposideと併用する適応拡大をFDAに申請し受理されたと発表した。優先審査で審査期限は3月18日。

IMpower133試験に基づくもので、メジアン生存期間が12.3ヶ月と上記二剤だけの群の10.3ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.70、p=0.0069。PFSは差が小さく、メジアンは5.2ヶ月対4.3ヶ月、ハザードレシオは0.77、p=0.017だった。

リンク: ロシュのプレスリリース


【承認】


テセントリク、非扁平上皮非小細胞性肺癌の四剤併用一次治療が承認
(2018年12月6日発表)

ロシュの米国子会社であるジェネンテックは、Tecentriq(atezolizumab)を転移性非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。EGFRやALKに悪性遺伝子変異を持たない患者に、carboplatin、paclitaxel、Avastin(bevacizumab)と四剤併用する。PD-L1発現は問わない。

第三相IMpower150試験ではメジアン生存期間が19.2ヶ月と他の三剤を投与した群の14.7ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.78、p=0.016だった。

非扁平上皮非小細胞性肺癌の場合、paclitaxelではなくAlimta(pemetrexed)を好む医師や患者もいるだろうし、抗体医薬二剤併用は高価に付きそうだ。それでも、同じ抗PD-1/PD-L1でも肺癌試験の成否は区々なので、再発治療だけでなく一次治療も承認されたことは競争面で価値が大きい。

リンク: ジェネンテックのプレスリリース







今週は以上です。

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