【ニュース・ヘッドライン】
- MSD、NRTTI配合剤がナイーブ試験も成功
- ロシュ、ER零落剤の2本目の第3相が成功
- MSD、エアウィンが第2群肺高血圧症にも良績
- Nuvalent社、新規ALK阻害剤を承認申請へ
- Jazz、her2二重特異性抗体の胃・食道腺腫試験が成功
- Agios社、mitapivatの適応拡大申請を強行する意向
- PI3K/mTOR阻害剤を承認申請
- 切除可能膀胱癌のパドセブ・キートルーダ併用がスピード承認
- コセルゴが米国でも成人に承認
- バイエルもher2陽性肺癌用薬が承認
- アイリーアの適応拡大などがやっと承認
- ダラキューロ配合が本承認に切替
- イムデトラが本承認に切替
- 第2の家族性カイロミクロン症候群用薬が承認
- エプキンリが濾胞性リンパ腫に適応拡大
- アジンマで死亡例
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【新薬開発】
MSD、NRTTI配合剤がナイーブ試験も成功
(2025年11月19日発表)
MSDは新開発のヌクレオシド逆転写酵素トランスロケーション阻害剤、MK-8591(islatravir)と非核酸系逆転写阻害剤Pifeltroの活性成分であるdoravirineの固定用量合剤が、抗レトロウイルス治療を受けていないナイーブHIV/AIDS患者を組入れた第3相で主目的を達成したと発表した。他剤服用者がスイッチする用法で日米で承認申請中だが、ナイーブ向けも申請する考え。
日本の研究者が創製した画期的作用機序の抗レトロウイルス薬。HIVのDNA鎖に組み込まれて伸長の妨げになる。21年に上記合剤の第3相スイッチ試験2本が成功したが、islatravirを別の非核酸系逆転写阻害剤、MK-8507(ulonivirine)と併用した試験でCD4を含むリンパ球減少リスクが見られたため、MK-8507は開発ストップ。islatravirは上記合剤の用量を0.25mgと1/3に減らすことで安全性を向上、再第3相試験が奏功し、今年7月に米国で、抗レトロウイルス療法によりウイルスを抑制できている成人のHIV-1感染症患者がスイッチする用途で、承認申請が受理されたところ。
今回のナイーブ試験もギリアド・サイエンシズの Bictarvy(bictegravir、emtricitabine、tenofovir alafenamide)を対照薬とする非劣性試験。スイッチ試験の主評価項目はフェール率だったが今回は、元々奏功していない患者が対象なので、奏効率。閾値はRNAが50コピー/mL。数値は未発表。
リンク: MSDのプレスリリース
ロシュ、ER零落剤の2本目の第3相が成功
(2025年11月18日発表)
ロシュはRG6171(giredestrant)が第3相lidERA Breast Cancer試験で主目的を達成したと発表した。日本も参加してエストロゲン受容体陽性、her2陰性の中・高リスク、ステージI-III乳癌の的手術を受けた患者4100人以上を組入れて、30mg一日一回経口投与5年コースの便益を医師が選んだ内分泌療法薬と比較したところ、中間解析でiDFS(無侵襲性疾患生存期間)が統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善を果たした。数値は未発表。副次的評価項目の全生存期間は未成熟だがポジティブなトレンドを示している由。
RG6171はエストロゲン受容体の零落剤/アンタゴニスト。複数の第3相のうち、日本も参加したevERA試験が既に成功済み。内分泌療法薬及びCDK4/6阻害剤歴を持つエストロゲン受容体陽性、her2陰性の局所進行/転移乳癌における便益を内分泌療法薬と比較したもので(両群ともeverolimusを併用)、PFS(無進行生存期間、治験医評価)のハザード・レシオが0.56、メジアン値の群間差3ヶ月程度、全生存期間は未成熟だがハザード・レシオは0.69と、良好な成果を上げている。発表当時、いち早く実用化すべく当局と相談する考えを示したので、年内に承認申請されるかもしれない。
リンク: ロシュのプレスリリース
MSD、エアウィンが第2群肺高血圧症にも良績
(2025年11月18日発表)
MSDはactivin受容体IIa融合蛋白Winrevair(sotatercept-csrk)が第2相CADENCE試験で主目的を達成したと発表した。成人の心不全治療薬を服用しているHFpEF(駆出率保持心不全)におけるCpcPH(肺血管抵抗も肺動脈楔入圧も高い、前後毛細血管複合型肺高血圧症)の治療効果を図ったもので、主評価項目は24週PVR(肺血管抵抗)。データは未発表。治験登録によると承認用途と同様に0.3mg/kgから0.7mg/kgに漸増する群のほかに0.3mg/kgのままの群も設定されているようだが、用量毎の成否は明らかではない。
Winrevairは24~25年に米欧日で成人の肺動脈高血圧症用薬として承認された。様々な重篤度のサブグループを対象とした試験が成功している。肺動脈高血圧症は肺高血圧症のWHO分類で第1群に当たるが、今回のHFpEFによるものは第2群に属する。
リンク: 同社のプレスリリース
Nuvalent社、新規ALK阻害剤を承認申請へ
(2025年11月17日発表)
米国マサチューセッツ州ケンブリッジの新興医薬品開発会社、Nuvalent(Nasdaq:NUVL)は、NVL-655(neladalkib)がチロシン・キナーゼ阻害剤(TKI)歴のあるALK陽性進行非小細胞性肺癌に効果を示したと発表した。FDAと承認申請前会議を行う考え。
中枢神経浸透性を持ち、crizotinibやalectinibに抵抗性を示すG1202R変異にも活性のある示すALK-TKI。最初の臨床試験であるALKOVE-1試験のpivotalポーションの解析は、TKI歴のあるALK陽性進行非小細胞性肺癌で、24年9月までに第2相推奨用量である150mgを一日一回経口投与した253人が対象。患者背景は、メジアン3治療歴、78%が2剤以上のALK-TKI歴を持ち、その91%がファイザーのLorbrena(lorlatinib)歴あり。51%が化学療法歴あり。40%で活性期中枢神経疾患。
このユニバースにおけるORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)は31%、その64%は反応が12ヶ月以上持続した。G1202R変異のある47例では各68%と80%、中枢神経疾患のある92例では32%と71%だった。想定適応範囲はlorlatinib歴を持つ患者と推測されるが、このサブグループ190人におけるORRは26%、メジアン反応持続期間は17.6ヶ月だった。
7月に第3相試験を開始、初めてTKI治療を受けるALK陽性非小細胞性肺癌450人を組入れて、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)をロシュのAlecensa(alectinib)と比較する。治験登録によると結果が判明するのは29年12月の見込み。
リンク: 同社のプレスリリース
Jazz、her2二重特異性抗体の胃・食道腺腫試験が成功
(2025年11月17日発表)
Jazz Pharmaceuticals(Nasdaq:JAZZ)はZiihera(zanidatamab-hrii)が第3相HERIZON-GEA-01試験で主目的を達成したと発表した。26年上期に適応拡大申請する考え。全部乗せ試験なのでサブグループ分析の結果も気になるところだ。
Ziiheraはher2の二つのエピトープに結合する二重特性抗体。一つはロシュのHerceptin(trastuzumab)、もう一つは同じくPerjeta(pertuzumab)の標的と同じだ。Zymeworks(NYSE:ZYME)からライセンス、ビーワン・メディシンズ(Nasdaq:ONC)と共同開発している。24~25年に米中EUで治療歴のあるher2陽性胆道癌に承認された。
今回の、日本も参加した試験は、切除不能局所再発、難治、または転移性のher2陽性GEA(胃、食道、または胃食道接合部(GEJ)の腺腫)の一次治療を受ける914人を組入れて、化学療法(APOXまたは5-FU・cisplatin)をベースにZiihera単剤、またはZiiheraとビーワン社の抗PD-1抗体Tevimbra(tislelizumab-jsgr)と2剤を、追加する便益をtrastuzumab追加群と比較した。主評価項目は全生存期間とPFS。2剤追加群はどちらも統計的に有意且つ臨床的に意味のある差があった。Ziiheraだけ追加した群はPFSを達成、全生存期間は強いトレンドが示されているが中間解析であり有意水準には達していないようだ。データは未発表。
ここ数年の第3相は、胃及びGEJの試験と、食道及びGEJの試験を別々に行うことが多いように感じられる。対照群のHerceptin・化学療法併用は胃・GEJ腺腫にしか承認されていない。また、PD-L1陽性胃・GEJ腺腫ではTevimbraも化学療法併用が承認されている。従って、PD-L1陽性の胃・GEJ腺腫サブグループに関しては、Ziihera・Tevimbra・化学療法の併用がTevimbra・化学療法併用よりも良いのかどうかが重要なポイントだ。一方、食道・GEJ腺腫サブグループに関しては、対照群の選択が妥当なのか、それとも、承認されている薬がないから保守的に偽薬群を上回ったと考えるべきなのか、ただそれにしても、偽薬を上回るだけなら何剤も併用する必要があるのか、様々な疑問がわく。
リンク: Jazzのプレスリリース
Agios社、mitapivatの適応拡大申請を強行する意向
(2025年11月19日発表)
Agios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)はmitapivatが鎌状赤血球症の第3相試験で共同主評価項目の一つを達成したと発表した。臨床作用を検討したもう一つの主評価項目はフェールしたが、トレンドは見られたことなどから、26年第1四半期にFDAと適応拡大申請に向けて相談する考え。合わせて経費節減も発表した。株価は半減した。
このPKR(ピルビン酸キナーゼR)アロステリック・アクティベータは22年に米欧でPK欠乏症における溶血性貧血症の治療薬として承認された。サラセミアに適応拡大申請中で、EUでは10月にCHMPが肯定的意見をまとめ、米国は審査期限が延長され12月7日となった。輸血依存に至っていない患者ではヘモグロビン応答率(1g/dL以上増加)が偽薬を上回り、輸血依存患者では輸血量抑制奏効率が偽薬を上回った。
今回のRISE UP試験は16歳以上の鎌状赤血球症207人を、100mg一日2回経口投与群と偽薬群に2対1割付けして52週間治療したところ、ヘモグロビン応答率(1g/dL以上増加)が40.6%と偽薬群の2.9%を大きく上回った。ところが、重大な増悪である鎌状赤血球症疼痛クリーゼの発生率は年率2.62で偽薬群の3.05よりは低かったもののp=0.1213だった。副次的評価項目も臨床検査値関連の二つは達成したが、シーケンスが3番目の疲労スコア(患者評価)はフェールした。治療時発現有害事象による治験離脱率は4.3%と偽薬群の2.9%を少し上回った程度だった。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認申請】
PI3K/mTOR阻害剤を承認申請
(2025年11月17日発表)
米国ミネソタ州ミネアポリスの医薬品開発会社、Celcuityは、gedatolisibをホルモン受容体陽性、her2陰性の進行乳癌の治療薬としてFDAに承認申請したと発表した。第3相VIKTORIA-1試験でアロマターゼ阻害剤及びCDK4/6阻害剤歴を持つ患者を組入れてfulvestrantに追加する便益を検討したところ、2剤併用群も、ファイザーのCDK4/6阻害剤Ibrance(palbociclib)と3剤併用した群も、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)が有意に改善した。
21年にファイザーから世界開発販売権を取得した点滴静注用薬。PAM(PI3K~Akt~mTOR)パスウェイにおけるPI3Kクラス1の4種類のアイソフォームすべてとmTOR C1、mTOR C2を阻害するため、エスケープ変異を招き難いことが期待されている。一次治療試験も進行中。
リンク: Celcuityのプレスリリース(Globe Newswire)
【承認】
切除可能膀胱癌のパドセブ・キートルーダ併用がスピード承認
(2025年11月21日発表)
FDAは、筋層浸潤膀胱癌の骨盤リンパ節郭清(PLND)を含む全摘手術を受ける患者の周術期療法として、アステラス製薬の抗Nectin-4抗体Padcev(enfortumab vedotin-ejfv)とMSDのKeytruda(pembrolizumab)の併用を承認した。白金薬レジメンに適さない、または、拒否する患者が適応になる。cisplatinとgemcitabineによる術前療法が適応になる患者は、別途、第3相試験中。
エビデンスとなったのは日本も参加した第3相KeyNote-905/EV-303試験。上記2剤を術前に3サイクル(1サイクルは3週間)、術後に6サイクル、更にKeytrudaのみ8サイクル、施行する便益を検討したところ、施行しなかった患者と比べたEFS(無イベント生存期間)のハザードレシオが0.40、全生存期間のそれは0.50と、大きな治療効果を示した。尚、Keytrudaだけ術前術後に投与する群も設定されているが、まだ成熟していないようだ。
審査期限は来年4月なので、申請から3ヶ月のスピード承認となった。良く分からないのは、Keytrudaだけでは足りないのだろうか?併用群のほうが先に成否が判明したのだから、効果がより大きいのだろうが、データのばらつきが大きいとかそれ以外の可能性も考えられなくはない。また、他の腫瘍の臨床試験でも指摘されていることだが、術前だけ、術後だけでは足りないのだろうか?化学療法と比べれば忍容性が高いので長期投与のハードルは低くなるが、免疫療法や分子標的薬が全盛となり忍容性自体のハードルも低くなっているはずだ。
リンク: FDAのプレスリリース
コセルゴが米国でも成人に承認
(2025年11月20日発表)
アストラゼネカはFDAがKoselugo(selumetinib)を成人の神経線維腫に適応拡大したと発表した。03年にArray BioPharma(Nasdaq:ARRY)からライセンスしたMEK1/2阻害剤。20年に2歳以上の小児NF1(神経線維腫1型)における症候性、切除不能な叢状神経線維腫の治療薬として承認されたが、成人にも使えるようになった。NF1は小児が発症するが悪性ではなく、患者の7割が成人。小児承認は米国が早かったが成人は日本が8月、EUも10月と先んじた。
リンク: 同社のプレスリリース
バイエルもher2陽性肺癌用薬が承認
(2025年11月19日発表)
FDAはバイエルのHyrnuo(sevabertinib)を成人のher2チロシン・キナーゼ・ドメインに活性化変異のある局所進行/転移非扁平上皮非小細胞性肺癌の二次治療薬として承認した。20mgを一日2回、食事と共に服用する。第1/2相SOHO-01試験試験でher2標的薬未経験の70人におけるORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)が71%、メジアン反応持続期間9.2ヶ月、抗her2抗体薬物複合体歴のある52人では同38%と7.0ヶ月だった。警告注意事項は下痢、肝毒性、間質性肺疾患/肺臓炎、眼毒性、膵臓酵素上昇、胚胎毒性。Life TechnologiesのOncomine Dx Target Testをコンパニオン診断薬として承認した。
her2チロシン・キナーゼ阻害剤。類薬ではベーリンガー・インゲルハイムのHernexeos(zongertinib)が8月に米国で加速承認、9月には日本でも承認された。適応はHyrnuoと同じ、臨床成績も大きな差はない。一日1回、食事不問で服用できる点は異なる。警告注意事項は左室機能不全があり、下痢や眼毒性、膵臓酵素上昇はない。
第一三共の抗her2抗体薬物複合体、Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)も22年に類似した適応で承認されている。違いは、her2の活性化変異箇所がチロシン・キナーゼ・ドメインに限定されておらず、扁平上皮腫が適応外になっていないこと。ベーリンガーとバイエルの承認申請は、扁平上皮腫を除外していなかったはずだが、FDAは承認しなかった。FDAの方針が変わったのかもしれない。いずれにせよ、her2活性化変異は専ら腺腫で発生する模様であり、実際に、EnhertuのDestiny-Lung02試験の被験者の96%が該当した。活性化変異の多くはチロシン・キナーゼ・ドメインに発生するようなので、限定があろうがなかろうが需要に大きな影響はないことになる。
余談:製品名が難解で、最初にFDAのサイトで読んだときはHymuoと誤解した。一部専門紙もHyrunoと誤記している。まあ、製品パッケージにはArialのような紛らわしいフォントは使われていないだろうから、取違え事故にはつながらないだろうが。
リンク: FDAのプレスリリース
アイリーアの適応拡大などがやっと承認
(2025年11月19日発表)
Regeneron Pharmaceuticalsは、硝子体注射用VEGFR融合蛋白、Eylea HD(aflibercept 8mg)の適応拡大と用法追加がFDAに承認されたと発表した。一部工程を委託しているCatalent IndianaがFDAの査察で指摘事項を受け、承認が遅延していた。適応拡大は網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫の治療。2mgの従来規格と比較した試験でBCVA視力改善が非劣性だった。用法追加は、湿潤性加齢性黄斑変性や糖尿病性網膜浮腫、糖尿病性網膜症を含むすべての適応で、2~4ヶ月毎投与に移行した後に、状態に応じて、治療開始当初と同じ4週毎に戻すことが認められた。
リンク: 同社のプレスリリース
ダラキューロ配合が本承認に切替
(2025年11月19日発表)
FDAはJanssen Biotech(ジョンソン エンド ジョンソンの子会社)のDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)の新患ALアミロイドーシスにおける承認を本承認に切替えた。Velcade(bortezomib)、dexamethasone、及びcyclophosphamideの3剤併用レジメンに追加する便益を検討したANDROMEDA試験の血液学的完全反応率や主要臓器の増悪抑制作用に基づき21年に加速承認したが、継続追跡で全生存期間のハザード・レシオが0.62、p=0.0121となり延命効果が示されたため。日本のインタビュー・フォームに掲載されているカプラン・マイヤー曲線は殆どオーバーラップしているが、その後に分離したのだろう。
リンク: FDAのプレスリリース
イムデトラが本承認に切替
(2025年11月19日発表)
FDAはアムジェンのImdelltra(tarlatamab-dlle)の承認を本承認に切替えた。小細胞肺癌に特異的に発現するDLL3とCD3に結合する二重特性抗体で、第2相DeLLphi-301試験のORR(客観的反応率)に基づき24年に白金ベース化学療法中/後に進行した進展型小細胞肺癌用薬として加速承認したが、第3相DeLLphi-304試験で全生存期間が各地域の標準療法薬(日本はamrubicin、他の地域はtopotecanなど)を投与した群を有意に上回った(ハザード・レシオ0.60、メジアン13.6ヶ月対8.3ヶ月)。
リンク: FDAのプレスリリース
第2の家族性カイロミクロン症候群用薬が承認
(2025年11月18日発表)
FDAはArrowhead Pharmaceuticals(Nasdaq:ARWR)のRedemplo(plozasiran)を成人の家族性カイロミクロン血症候群(FCS)におけるTG(トリグリセライド)値の抑制剤として承認した。食事療法と併用で、3ヶ月毎に、自己注する場合は大腿や腹部に25mgを皮下注する。脂肪摂取を一日30g以下に抑えている患者に投与したところ、第10月空腹時TG値が偽薬比59%低下した。重度高TG血症試験も進行中。
競合薬はIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)のTryngolza(olezarsen)が24~25年に米欧でFCSに承認、重度高TG症の第3相も既に成功した。両薬のプロファイルを比較すると、Redemploの作用機序はアポリポ蛋白C-IIIのRNA介入(Tryngolzaは同アンチセンス)、分子量は約16,50Da(9,100Da)、用量用法は25mg3ヶ月毎皮下注(80mg月一回皮下注)、剤形はプリフィルド・シリンジ(オート・インジェクター)、どちらもN-アセチルガラクトサミンを結合し肝臓選択性を向上。各剤の臨床試験におけるTG低下を見比べるとRedemploのほうがやや効果が高そう。Redemploのレーベルには警告・注意事項や禁忌は無く、Tryngolzaも過敏反応だけ。
リンク: FDAのプレスリリース
エプキンリが濾胞性リンパ腫に適応拡大
(2025年11月18日発表)
FDAはジェンマブがアッヴィと共同開発販売している米Epkinly(epcoritamab-bysp)の適応拡大を承認したと発表した。CD3とCD20に結合する二重特性抗体で、23年に成人の再発・難治びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の3次治療薬として、24年には成人の再発・難治濾胞性リンパ腫の3次治療薬として、どちらも単剤投与が承認されているが、今回、再発・難治濾胞性リンパ腫にlenalidomide(BMSのRevlimid)及びrituzimabと併用することが認められた。メジアンで1治療歴を持つ患者を組入れた第3相EPCORE FL-1試験でこの2剤に追加したところ、ORR(客観的反応率)とPFS(無進行生存期間)が有意に向上した。枠付き警告はサイトカイン放出症候群(深刻例発生率12%)とICAN(免疫イフェクター細胞関連神経毒性症候群、発生率0.8%)。
リンク: FDAのプレスリリース
【医薬品の安全性】
アジンマで死亡例
(2025年11月21日発表)
FDAは、武田薬品のAdzynma(ADAMTS13, recombinant-krhn)の投与を受けた小児患者が一名、死亡したことを明らかにした。中和抗体(インヒビター)が原因の可能性もあるので検討する。
米国の患者数300~400名という超希少疾患であるcTTP(先天的血栓性血小板減少性紫斑症)の治療薬。患者が欠乏するADAMTS13(apadamtase alfa)とアミノ酸を一つ置換したrADAMTS13.R97(cinaxadamtase alfa)を補充して、フォン・ウィルブランド因子重合体を切断して機能させると共に、血栓や溶血性貧血、血小板減少症などを抑制する。血漿由来の製品と比べてADAMTS13活性が4~5倍高いとされる。23~24年に米日で承認、EUでも例外的条項に基づき24年に承認された。
今回の患者はFFP(新鮮凍結血漿)に重度アレルギー反応を示し、Adzynmaによる治療を開始したところ、進行性の神経学的症状が発現。予防的投与を開始した10ヶ月後にADAMTS13に対する中和抗体が検出された。天然のADAMTS13に対する中和抗体と識別することはできないため、薬との因果関係は明らかではない。cTTPの臨床試験は中和抗体例は報告されていない由。
リンク: FDAのプレスリリース
【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】
| PDUFA | |
|---|---|
| 25/11推 | Fondazione TelethonのTelethon 003(etuvetidigene autotemcel、Wiskott-Aldrich症候群) |
| 25/11推 | ノバルティスのLOU-064(remibrutinib、慢性特発性蕁麻疹) |
| 25/11推 | ノボ ノルディスクの経口semaglutide(肥満症、25mg追加) |
| 25/11推 | ノボ ノルディスクのOzempic(semaglutide、二型糖尿病の末梢動脈疾患追加) |
| 25/11推 | アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、胃・胃食道接合部腫瘍における周術期療法を追加) |
| 25/11/28 | ビステラ(大塚製薬子会社)のsibeprenlimab(IgA腎症) |
| 25/11/30 | Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症) |
| 25/12推 | ノボ ノルディスクのSogroya(somapacitan、低出生体重児等に適応拡大) |
| 25/12推 | ノバルティスのOAV101 IT(onasemnogene abeparvovec髄腔内投与、脊髄性筋萎縮症) |
| 25/12/5 | BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、辺縁帯リンパ腫追加) |
| 25/12/7 | Agios PharmaceuticalsのPyrukynd(mitapivat、サラセミア) |
| 25/12/11 | GSKのGSK2140944(gepotidacin、淋病) |
| 25/12/12 | LIB TherapeuticsのLIB003(lerodalcibep、高脂血症) |
| 25/12/13 | Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)・ |
| 25/12/14 | アムジェンのUplizna(inebilizumab-cdon、重症筋無力症追加) |
| 25/12/15 | Innovivaのzoliflodacin(淋病) |
| 25/12/16 | GSKのGSK3511294(depemokimab、好酸球性喘息症と慢性副鼻腔炎) |
| 26/12/16 | Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ) |
| 25/12/22 | ロシュのLunsumio(mosunetuzumab皮下注用、濾胞性リンパ腫3次治療) |
| 25/12/26 | OmerosのOMS721(narsoplimab、HSCT関連血栓性微小血管症) |
| 25/12/26 | CytokineticsのCK-3773274(aficamten、閉塞性肥大性心筋症) |
| 25/12/28 | サノフィのSAR442168(tolebrutinib、非再発性二次性多発硬化症) |
| 25/12/30 | Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、クッシング症候群) |
| 25/12/30 | Vanda Pharmaceuticalsのtradipitant(乗り物酔い) |
| 25/12/31 | Outlook TherapeuticsのLytenava(bevacizumab-vikg、加齢性黄斑変性) |
| 26/1/5 | Denali TherapeuticsのDNL310(tividenofusp alfa、ハンター症候群) |
| 26/1/10 | Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(移植後リンパ増殖性疾患) |
| 26/1/13 | Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加) |
| 26/1/17 | JNJのTAR-200(gemcitabine 膀胱内留置用、非筋層浸潤膀胱癌) |
| 26/1/23 | 第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、her2乳癌一次治療を追加) |
| 26/1/28 | Tenpoint TherapeuticsのBrimochol PF(carbacholとbrimochol tartrate、老視) |
| 26/1/31 | Aquestive TherapeuticsのAnaphylm(dibutepinephrine、アナフィラキシー等) |
| 26/1/31 | Pharmingのleniolisib(4-11歳の活性期phosphoinositide 3-kinase deltaに適応拡大) |
今週は以上です。
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