【ニュース・ヘッドライン】
- 逆転写酵素トランスロケーション阻害剤の低量第3相試験が成功
- プロテオライシス誘導SERDの第3相は月並みな結果に
- アルドステロン合成酵素阻害剤の難治高血圧試験が成功
- ノボのCagriSemaの体重減量効果はそれほどでもなさそう
- ruxolitinibクリームの結節性痒疹試験は一勝一敗
- 抗OX40ポテリジェント抗体の第3相が再び成功
- 経口IL-23受容体拮抗剤が第3相プラク乾癬試験で経口TYK2阻害剤に勝つ
- ソーティクツ側は乾癬性関節炎のデータを発表
- Wiskott-Aldrich症候群用薬を米国でも承認申請
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【新薬開発】
逆転写酵素トランスロケーション阻害剤の低量第3相試験が成功
(2025年3月12日発表)
MSDは昨年12月にMK-8591A(doravirine、islatravir)の第3相HIV/AIDS治療試験二本で主目的達成と発表したが、詳細をCROI(レトロウイルス日和見感染症学会)で公表した。どちらも実薬対照試験で、優越性は確認できなかったが非劣性解析が成功した。年央から承認申請を開始する予定。
同社のPifeltroの活性成分である非ヌクレオシド逆転写阻害剤を100mg、新開発のヌクレオシド逆転写酵素トランスロケーション阻害剤islatravirを0.25mg、それぞれ配合した固定用量合剤で、典型的なアグレッシブ抗レトロウイルス治療が3種類の異なった作用機序を持つ薬剤を併用するのに対して、2剤併用で足りる見込み。21年に第3相が二本成功したが、他の非ヌクレオシド逆転写阻害剤と併用でislatrevir 20mgを週一回投与した第2相で総リンパ球数とCD4陽性T細胞数が減少する有害事象が見られたため、今回は一日一回投与量を1/3に減らして再び第3相を実施した経緯がある。
今回成功したのは、既存薬を服用してウイルスを抑制できている患者を組入れたスイッチ試験。051試験は様々な治療レジメンを用いている患者を対象とするオープン・レーベル試験。フェール率(48週のウイルスRNA量が50コピー/mL以上)が1.4%、従来レジメンを継続した対照群は4.9%で非劣性解析が成功した。群間差の95%上限は0を下回ったが、優越性解析はフェールした。副次的評価項目である抑制成功率(同、50コピー/mL未満)は95.6%対91.9%で同程度だった。尚、足しても100%にならないのは副作用などによりドロップアウトする患者がいるからだ。
052試験はギリアド・サイエンシズのBiktarvy(bictegravir/emtricitabine/tenofovir alafenamide)服用患者の二重盲検試験だ。フェール率は1.5%、継続投与対照群は0.6%、差は0.9%で非劣性確認、優越性解析はフェールした。抑制成功率は91.5%対94.2%で大差なし。
islatravir 0.75mgを用いた前回の第3相と似たような成績であり、0.25mgで足りることが明らかになった。懸案の免疫抑制は、総リンパ球数もCD4カウントも両群同程度だった。
第3相はもう一本、初めて抗レトロウイルス治療を受ける患者の第3相も進行中。前回はCD4カウントや全リンパ球数の低下による治験離脱率が5.4%とBiktarvy群の2%を上回ったが、どの程度改善するか注目される。
リンク: 同社のプレスリリース
プロテオライシス誘導SERDの第3相は月並みな結果に
(2025年3月11日発表)
米国コネチカット州のArvinas(Nasdaq:ARVN)と共同開発販売パートナーのファイザーは、ARV-471/PF-07850327(vepdegestrant)のエストロゲン受容体陽性her2陰性進行/転移乳癌(ER+her2-a/mBC)の第3相二次治療試験で共同主評価項目のうちESR1変異サブグループのPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を達成したと発表した。全被験者の解析はフェールし、既存の選択的エストロゲン受容体零落剤(SERD)とは一味違うのではという期待を裏切る格好になったため、Arvinasの株価が急落した。
vepdegestrantは標的蛋白のプロテアソームにおけるスクラップを誘導するPROTAC(PROteolysis TArgeting Chimera)技術を応用した選択的エストロゲン受容体零落剤(SERD)。第2相でER+her2-a/mBCにおける疾病安定化作用を示し、特に、エストロゲン受容体アルファの遺伝子であるESR1に変異を持つ癌において、用量依存的な効果を示した。今回の第3相VERITAC-2試験は、日本を含む世界の施設で、ER+her2-BCで進行/転移後に一種類のCDK4/6阻害剤歴と一次以上の内分泌療法歴を持つ患者を組入れて、一日一回経口投与する効果をfulvestrant筋注とオープンレーベルで比較した。ESR1変異サブグループではハザードレシオが目標の0.6を下回る成果を上げたが、intent-to-treatベースの解析は有意水準に届かなかった。副次的評価項目の全生存期間はデータが未成熟。
既存薬ではメナリニの非ステロイド系SERD、Orserdu(elacestrant)も類似した第3相でESR1変異サブグループにしか意味のある効果が見られず、欧米でこのタイプ限定で承認された。進行/転移後二次治療を受ける患者の4割程度に該当するようだが、服用期間が短くなることを含めて、市場性はそれほど大きくない。それだけに、他のタイプにおける有効性が示されなかったのは残念だ。
リンク: 両社のプレスリリース
アルドステロン合成酵素阻害剤の難治高血圧試験が成功
(2025年3月10日発表)
米国フィラデルフィア州の新興医薬品会社、Mineralys Therapeutics(Nasdaq:MLYS)は、MLS-101(lorundrostat)の第3相難治高血症圧試験で主目的を達成したと発表した。類似した患者を組入れた第2相も成功しており成績を3月29日にACC(米国心臓学会)科学部会で詳細発表する予定。承認申請の予定には言及していない。
アルドステロン合成に関わるCYP11B2経路の選択的阻害剤。田辺三菱製薬のMT-4129をライセンスした。第3相Launch-HTN試験は、2剤服用しても血圧管理不良な、または、3-5剤服用する抵抗の、高血圧患者1083人を組入れて、50mgを追加投与する便益を偽薬追加と比較した。主目的である第6週における収縮時血圧(オフィス自動血圧計で測定)がベースライン比16.9mmHg低下し、偽薬調整後で9.1mmHg低下、統計的に有意だった。2剤併用サブグループでも、3-5剤併用サブグループでも、有効性が見られた。第12週では各19.0mmHgと11.7mmHg低下した。尚、この試験は第6週に100mgに増量する群も設定されたが、割愛する。
第2相Advance-HTN試験では類似した患者を組入れて2~3剤による至適バックグラウンド治療に追加する効果を検討した。50mg群は第12週収縮時血圧(24時間血圧計で評価)が偽薬調整後で7.9mmHg低下した。
アルドステロン阻害剤は高カリウム血症のリスクを持つ。lorandrostatは第3相における50mg群の発生率が1.1%と第2相の5.3%より低下した。理由は明らかではない。
リンク: 同社のプレスリリース
ノボのCagriSemaの体重減量効果はそれほどでもなさそう
(2025年3月10日発表)
ノボ ノルディスクはCagriSema(semaglutide、cagrilintide)の第3相REDEFINE 2試験の結果を発表した。68週における体重減がベースライン比13.7%(偽薬群は3.4%)と、一本目の20.4%(同3.0%)より小さかった。GLP-1作用剤Wegovy/Ozempicの活性成分と新開発のアミリン類縁体cagrilintideの合剤だが、上乗せ効果がどれほどのものか、今後の試験で明確になっていくだろう。
今回の第3相は肥満またはリスク因子を持つオーバーウェイトの二型糖尿病患者を日本も含む世界の施設で組入れ、週一回投与する効果を偽薬と比較した。用量調整が認められており、68週時点の最大用量投与率は61.9%だった。上記の体重減は、米国のレーベルに記載されるであろうtreatment policy estimandベースで、投与を止めた患者の数値も反映している。per-protocolでは15.7%(同3.1%)だった。ベースライン時点の平均体重は102kg。
一本目のREDEFINE 1は二型糖尿病を併発していない患者を組入れて合剤、偽薬、cagrilintideだけ、semaglutideだけの4群に無作為化割付けし68週間投与した。treatment policy estimandベースで体重(ベースライン値106.9kg)が各群20.4%、3.0%、11.5%、14.9%低下した。
リンク: 同社のプレスリリース
ruxolitinibクリームの結節性痒疹試験は一勝一敗
(2025年3月8日発表)
インサイト(Nasdaq:INCY)はOpzelura(ruxolitinib phosphate)の第3相結節性痒疹試験、TReE-PN1試験で主評価項目と主要副次的評価項目を達成したと発表した。1.5%クリーム製剤を一日二回、投与したところ、WI-NRS4(Worst-Itch Numeric Rating Scaleが4点以上改善)達成率が44.6%と偽薬群の20.6%を有意に上回った。尚、もう一本の第3相であるTReE-PN2試験はどちらもトレンドに留まったとのこと。前者はAAD(米国皮膚学会)のレイト・ブレイカーとして口頭発表された。
Opzeluraは12歳以上の管理不良軽中度アトピー性皮膚炎用薬として21年に米国で、23年にはEUでも、承認された。米国では非分節型白斑でも承認されている。
リンク: 同社のプレスリリース
抗OX40ポテリジェント抗体の第3相が再び成功
(2025年3月8日発表)
協和キリンとライセンシーのアムジェンは、KHK4083/AMG 451(rocatinlimab)がアトピー性皮膚炎における第3相ROCKET-Ignite試験とROCKET-Shuttle試験で主目的を達成したと発表した。既にROCKET-Horizon試験が成功しており、承認申請に向かうのではないか。
Ignite試験は日本も含むグローバル施設で中重度アトピー性皮膚炎の患者769人を組入れて二種類の用量を単剤投与する効果を偽薬と比較した。偽薬群の数値は公表されていないが、2用量とも共同主評価項目における偽薬修正後治療効果が有意水準に達した。尚、IGA(医師の全般的評価)はEUなどが重視するvalidated IGA-ADと、FDAが重視する修正IGA(こちらのほうがハードルが高い)に基づく評価が採用された。
Shuttle試験は局所性ステロイドや局所性カルシニューリン阻害剤を用いている管理不良患者に追加投与した試験で、こちらも2用量とも偽薬を有意に上回った。
治療時発現有害事象は発熱、悪寒、頭痛など。治療を受けている患者における破傷風・髄膜炎菌ワクチン接種応答性を検討したVoyager試験も良好な結果になったようだ。
EASI-75 | rIGA-AD 0/1 | vIGA-AD 0/1 | |
---|---|---|---|
Horizon試験: | |||
偽薬 | 13.7% | 4.9% | 6.6% |
試験薬 | 32.8% | 16.4% | 19.3% |
Ignite試験: | |||
偽薬 | na | na | na |
低量 | 36.3%(23.4%) | 16.3%(8.0%) | 19.1%(10.3%) |
高量 | 42.3%(29.5%) | 22.7%(14.4%) | 23.6%(14.9%) |
Shuttle試験: | |||
偽薬 | na | na | na |
低量 | 54.1%(30.4%) | 22.7%(10.9%) | 25.8%(13.5%) |
高量 | 52.3%(28.7%) | 23.3%(11.5%) | 26.1%(13.8%) |
リンク: 両社のプレスリリース
経口IL-23受容体拮抗剤が第3相プラク乾癬試験で経口TYK2阻害剤に勝つ
(2025年3月8日発表)
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、JNJ-77242113(icotrokinra)の第3相中重度プラク乾癬試験二本で、偽薬対照の主評価項目だけでなく、ブリストル マイヤーズ スクイブのTYK2阻害剤Sotyktu(deucravacitinib)と盲検下で比較した副次的評価項目も達成したと発表した。データは未発表。日本の施設も参加した。12歳以上の小児も組み入れた第3相二本は既に成功しており、承認申請が近いのではないか。
既存薬に十分応答しない中重度プラク乾癬の治療はIL-23を標的とする抗体医薬が高い効果を持つ。icotrokinraはIL-23の受容体を阻害するペプチド薬で一日一回、経口投与する。Sotyktuも経口剤なので比較対照に選ばれたものと推測される。
米国カリフォルニア州のProtagonist Therapeutics(Nasdaq:PTGX)からライセンスしたもの。バイオアベイラビリティは低く、胃腸で99%が分解される由。
リンク: 同社のプレスリリース
ソーティクツは乾癬性関節炎のデータを発表
(2025年3月8日発表)
ブリストル マイヤーズ スクイブは昨年12月にSotyktu(deucravacitinib)の第3相活性期乾癬性関節炎適応拡大試験が二本とも成功したと発表したが、バイオ薬歴のない患者やTNF阻害剤歴のある患者を組入れたPOETYK PsA-2試験の成績がAAD(米国皮膚科学会)で発表された。第16週のACR20が54.2%と偽薬群の39.4%を有意に上回った。この試験はアムジェンのPDE4阻害剤Otezla(apremilast)を投与する群も設定されたが薬効比較は行われなかった。上記icotrokinraの試験と異なり、apremilastの偽薬は用いられておらず二重盲検になっていない。
深刻有害事象の発生率は偽薬群1.0%、Sotyktu群1.9%、apremilast群3.8%、有害事象による治験離脱率は各群1.3%、2.2%、10.5%だった。
本試験は日本の施設も参加した。
リンク: BMSのプレスリリース
【承認申請】
Wiskott-Aldrich症候群用薬を米国でも承認申請
(2025年3月11日発表)
医薬品の製造や供給を手掛けるイタリアの非営利法人、Fondazione Telethonは、米国でTelethon 003(etuvetidigene autotemcel)をWiskott-Aldrich症候群用薬として承認申請したと発表した。EUでも2月に申請済み。
この疾患は男児新生児25万人に一人の希少遺伝子疾患で、血球が欠乏し感染症や出血を被り易く、自己免疫疾患やリンパ腫のリスクもある。HLA適合ドナーがいれば治癒的造血幹細胞移植が可能だが、適応にならない症例には対症療法しかない。Telethon 003は、欠乏しているヒトWAS遺伝子のcDNAをレンチ・ウイルス・ベクターを用いて自家CD34陽性幹細胞/前駆細胞に導入した上で投与するもの。23年にイタリアで、30人程度の投与実績に基づき、6ヶ月児以上のHLA適合近親ドナーがいない重症Wiskott-Aldrich症候群に用いることが認可された(拡大アクセス・プログラムに基づくもので正式承認ではない)。
リンク: 同法人のプレスリリース
【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】
PDUFA | |
---|---|
25年3月推 | アッヴィのABBV-399(telisotuzumab vedotin、cMET陽性非扁平上皮非小細胞性肺癌) |
25/3/20 | Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫1L併用) |
25/3/23 | Alnylam社のAmvuttra(vutrisiran、ATTR-CM追加) |
25/3/26 | GSKのGSK2140944(gepotidacin、女性の非複雑尿路感染症) |
25/3/27 | Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍) |
25/3/27 | Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリ症候群) |
25/4推 | JNJのnipocalimab(全身性筋無力症) |
25/4推 | ノバルティスのatrasentan(IgA腎症) |
25Q2 | アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、筋層浸潤膀胱癌) |
25/4/2 | Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ) |
25/4/3 | ExelixisのCabometyx(cabozantinib、神経分泌細胞腫追加) |
25/4/18 | RegeneronのDupixent(dupilumab、特発性慢性蕁麻疹追加) |
25/4/21 | BMSのOpdivoとYervoy(nivolumabとipilimumab、肝細胞腫一次治療追加) |
25/4/26 | TelixのPixclara(18F-floretyrosine、神経膠腫PET造影剤) |
25/4/29 | Abeona TherapeuticsのEB-101(prademagene zamikeracel、劣性栄養障害型表皮水疱症) |
25/4/29 | Stealth BioTherapeuticsのelamipretide(バース症候群) |
今週は以上です。
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