【ニュース・ヘッドライン】
- 公衆衛生局長官が飲酒の発癌リスクを強調
- NMDA受容体拮抗剤のアルツハイマー性激昂試験が成功
- ゾルゲンスマの髄腔内投与試験が成功
- オピオイド拮抗剤の鬱病試験がフェール
- 他家幹細胞療法を筋ジストロフィーに承認申請
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【今週の話題】
公衆衛生局長官が飲酒の発癌リスクを強調
(2025年1月3日発表)
米国連邦公衆衛生局のマーシー長官は、アルコール飲料が癌の原因になりうることの啓蒙が足りないとして、製品ラベルに明記することなどを勧告した。AMA(米国医師会)のプレジデントも支持的声明を発表した。
アルコール摂取は、癌の回避可能な原因としてタバコと肥満に次ぐ第3位で、米国では年10万人がアルコール関連の癌を発症し、2万人が死亡と推定されている。これは、アルコール関連交通事故死13500人を上回る。あらゆるタイプのアルコール飲料がリスク要因になり、一日一杯未満でもリスクが高まるが、摂取量が増えると更に高まる。乳癌、結腸直腸癌、食道癌、肝臓癌、口腔内腫瘍、咽頭癌、喉頭癌の少なくとも7種類の癌で関連性が見られ、乳癌では16.4%がアルコール関連と推定されている。
代謝物のアセトアルデヒドがDNAに損傷を与えるなど、生理学的な影響に加えて、環境因、社会因、経済因が複雑に絡み合って作用すると考えられているようだ。
タバコの癌原性は過去半世紀間に周知が進んだが、アルコールに関しては米国人の過半が認知していないという。長官は摂取上限の設定や警告啓蒙を強化する考え。
リンク: 公衆衛生局のプレスリリース
リンク: 勧告資料のダウンロード頁
リンク: AMAプレジデントの声明
【新薬開発】
NMDA受容体拮抗剤の3本目のアルツハイマー性激昂試験が成功
(2024年12月30日発表)
Axsome Therapeutics(Nasdaq:AXSM)はAXS-05(dextromethorphanとbupropionの合剤)の第3相アルツハイマー性激昂試験二本の結果を発表した。5週間の治療効果を偽薬と比較したADVANCE-2試験(n=408)はCMAI(Cohen Mansfield Agitation Inventory)が13.8点低下したものの偽薬群も12.6点低下したため有意水準には達しなかったが、全員に試験薬を投与した後に167人を継続投与群と偽薬スイッチ群に無作為化割付けして盲検下で再燃リスクを比較したACCORD-2試験はハザードレシオが0.276(p=0.001)と主目的を達成した。有害事象は眩暈など。二試験とも試験薬群で2名の転倒が発生したが薬物関連と見做されたのは合わせて1件だけだった。
治療試験は既に第2/3相のADVANCE-1試験が成功、CMAIが15.4点改善し、偽薬群の11.5点を有意に上回った。離脱試験もACCORD試験で主目的を達成しており、ハザードレシオ0.275(p=0.014)と今回と似たような成績を上げている。同社は25年下期に米国で承認申請する考え。
AXS-05は鎮咳去痰薬dextromethorphanと抗鬱剤bupropionの合剤で、NMDA受容体拮抗作用を持つ前者の作用時間を後者の2D6阻害作用で長期化し、一日二回の経口投与で足りるようにした。22年に米国で鬱病治療薬として承認された。
リンク: 同社のプレスリリース
ゾルゲンスマの髄腔内投与試験が成功
(2024年12月30日発表)
ノバルティスはOAV101 IT(onasemnogene abeparvovec)の脊髄性筋萎縮症(SMA)2型試験で主目的を達成したと発表した。データは今後発表される。承認申請に向かうのではないか。
19~20年に米日欧で承認された遺伝子療法薬Zolgensmaの新投与法。ZolgensmaはSMA1遺伝子に両アレル変異を持つ2歳未満のSMA1型に静注内投与するが、OAV101 ITは2歳以上18歳未満の静座可能だが自立歩行不能な未治療SMA2型(1型より発症が遅い)を対象に第3相STEER試験を実施した。主評価項目はHFMSE(Hammersmith Functional Motor Scale Expanded)総スコア。
SMA2型の遺伝子療法試験が成功したのは初。承認されている薬ではバイオジェンのSpinraza(nusinersen)が2-12歳の患者を組入れた第3相でHFMSEが15ヶ月後に3.9点改善、シャム(投与の振りだけ)群の1点悪化を有意に上回った。ロシュのEvrysdi(risdiplam)は2型と3型を組入れた1年間の試験で副次的評価項目のHFMSEにおける治療効果(偽薬比差分)が0.58だった。開発品ではScholar Rock(Nasdaq:SRRK)の抗体医薬SRK-015(apitegromab)が第3相で1年間の治療効果が1.8点だった。
OAV101 ITは2-5歳のSMA2型を組入れた第1/2相試験でHFMSEスコアが9ヶ月後に5.9点改善という良績を挙げたが、前臨床試験で後根神経節単核細胞の炎症が見られたため、19~21年にかけて部分的治験停止になったことがある。
Zolgensmaは18年に買収したAveXi社の開発品だが、AveXi社が実施した前臨床試験データに不正が発覚したり、論文撤回されたりして日本を含めて批判を受けたことがある。
リンク: ノバルティスのプレスリリース
オピオイド拮抗剤の鬱病試験がフェール
(2025年1月2日発表)
Neumora Therapeutics(Nasdaq:NMRA)はNMRA-140(navacaprant)の3本の第3相鬱病試験のうち最初に開票したKOASTAL-1試験がフェールしたと発表した。米国の施設で383人を組入れて6週間投与したところ、試験薬群も偽薬群もMADRS(Montgomery-Åsberg Depression Rating Scale)が12.5点低下した。副次的評価項目のSHAPS(Snaith-Hamilton Pleasure Scale)の低下も各群5.8点と5.5点で有意差がなかった。女性211人のサブグループ解析ではMADRSの群間差が2.7点、p=0.07、SHAPSの差は2.3点、p=0.015と良好だったが男性では偽薬より見劣りした。
NMRA-140はカッパ・オピオイド受容体アンタゴニスト。抗鬱剤の第3相は一本位フェールしても大丈夫なように3本実施するのが常道で、残りの2本は米国以外の施設も参加している。
同社は買収などによりパイプラインを構築しており、本剤はBlackThorn Therapeutics買収で入手したもの。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認申請】
他家幹細胞療法を筋ジストロフィーに承認申請
(2025年1月2日発表)
米国カリフォルニア州のCapricor Therapeutics(Nasdaq:CAPR)はCAP-1002(deramiocel)をデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療薬としてFDAに承認申請したと発表した。第2相HOPE-2試験で10歳以上の歩行不能な患者20人を偽薬群と試験薬群に無作為化割付けして3ヶ月毎に4回、点滴静注したところ、上腕機能の評価尺度が偽薬比有意に改善した。LVEF(左室駆出率)も偽薬比4%改善した。但し、承認申請は偽薬群ではなく二つの医療施設から提供を受けた自然歴との比較がメインのようだ。第3相は102人を組入れて進行中
CAP-1002は第3者から採取したcardiosphere(心臓球)由来の細胞。本剤が分泌するエクソソームが炎症や線維化を抑制すると考えられている。核酸系DMD治療薬Viltepso(viltolarsen)を持つ日本新薬が米欧日などの販売権を持っている。
リンク: Capricorのプレスリリース
【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】
PDUFA | |
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25Q1推 | 第一三共のEnhertu(trastuzumab deruxtecan、her2低/極低転移性乳癌追加) |
25Q1推 | アストラゼネカのCalquence(acalabrutinib、未治療マントル細胞腫追加) |
25年1月 | ノボ ノルディスクのOzempic(semaglutide、FLOW糖尿病性腎症アウトカム試験追加) |
25/1/15 | Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(リンパ増殖性疾患) |
25/1/17 | アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS G12C変異再発転移結腸直腸癌追加) |
25/1/25 | エーザイのLeqembi(lecanemab、維持用量用量追加) |
25/1/29 | 第一三共のDS-1062(datopotamab deruxtecan、HR陽性her2陰性切除不能/転移乳癌) |
25/1/29 | Stealth BioTherapeuticsのelamipretide(バース症候群) |
25/1/30 | VertexのVX-548(suzetrigine 、急性疼痛) |
25/1/31 | Axsome TherapeuticsのAXS-07(急性片頭痛) |
25/2/8 | 大塚製薬のRexulti(brexpiprazole、PTSD追加) |
25/2/14 | GSKの髄膜炎菌A/B/C/W-135/Yワクチン |
25/2/14 | Bavarian NordicのCHIKV VLP(チクングニア熱ワクチン) |
25/2/17 | 小野薬品のvimseltinib(腱滑膜巨細胞腫) |
25/2/28 | SpringWorks Therapeuticsのmirdametinib(神経線維腫症1型) |
諮問委員会 | |
25/1/10 | AADPAC:生化学工業のSI-6603(腰椎椎間板ヘルニアに伴う根性痛) |
25/2/5 | DSRMAC/ADPAC:オピオイド過剰摂取に関する疫学研究成果について |
25/2/24 | CRDAC:ノバルティスのFabhalta(C3腎症適応拡大) |
今週は以上です。
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