2024年12月28日

第1187回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • MSD、米国でジーンプラバの販売を中止へ 
  • BMS、ソーティクツの乾癬性関節炎試験が成功 
  • Nuvation、ROS1阻害剤を承認申請 
  • Dato-DXdはEUでも肺癌のみ承認申請撤回 
  • sotagliflozinは糖尿病には承認されず 
  • オプジーボ皮下注が承認 
  • BeiGene、一番に向けて適応拡大 
  • 住友ファーマ、専ら女性の薬を男性にもアピールできるのでは 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


MSD、米国でジーンプラバの販売を中止へ
(2024年12月23日届出)

MSDはZinplava(bezlotoxumab)の販売を25年1月31日をもって打ち切るとFDAに届け出た。理由は不明。

Clostridium difficile感染症の抗生剤治療を受けた後に再燃抑制目的で投与する抗体医薬。米国で16年に、EUや日本でも17年に、承認された。抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab)などの開発で知られるMedarexがマサチューセッツ医科大学と共同で研究開発し09年にMSDにライセンスしたもの。心不全歴のある患者では命に係わる心不全のリスクが上昇するので注意する必要がある。

リンク: FDAの掲示

【新薬開発】


BMS、ソーティクツの乾癬性関節炎試験が成功
(2024年12月23日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブはSotyktu(deucravacitinib)の第3相乾癬性関節炎試験二本で主目的を達成したと発表した。成人の活性期乾癬性関節炎のうちPOETYK PsA-1試験はバイオ薬未経験者を、同2試験は更にTNF阻害剤歴を持つ患者も、組入れて16週間治療後のACR20を偽薬群と比較した。後者は安全性被殻目的でapremilast参考群も設定されている。データは未発表。適応拡大申請に向かうだろう。

22~23年に米日欧で中重度プラク乾癬治療薬として承認された経口TYK2アロステリック阻害剤。apremilastは同社が買収したセルジーンがアムジェンと共同開発したPDE4阻害剤だが、BMS買収時に提携契約に則り、アムジェンが完全取得した。

リンク: BMSのプレスリリース

【承認申請】


Nuvation、ROS1阻害剤を承認申請
(2024年12月23日発表)

米国のNuvation Bio(NYSE:NUVB)はROS1阻害剤taletrectinibをROS1陽性進行非小細胞性肺癌に承認申請しFDAに受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は25年6月23日。

エビデンスはTRUST-I(中国で実施)とTRUST-II(日韓中米などで実施)の第2相試験二本。中国試験ではチロシン・キナーゼ阻害剤歴のない(ナイーブ)106人におけるcORR(確認客観的反応率、独立評価委員会方式)が91%、crizotinib歴のある(経験者)67人では52%だった。グローバル試験では、ナイーブ54人では85%、経験者47人では62%だった。いずれの試験でも、頭蓋内転移部位においてある程度の効果が見られた。主な有害事象は肝機能検査値異常、下痢、眩暈、味覚異常など。

同社は、アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤Xtandi(enzalutamide)をアステラス製薬と共に開発し16年にファイザーに買収されたMedivationの共同創立者かつ買収時のCEOであるDavid Hungが設立。第一三共からtaletrectinibをライセンスしたAnHeart Therapeuticsを3月に買収した。中国では導出先のInnovent Biologicsが今月、まず経験者向けに、承認を取得した。日本は日本化薬が23年に権利取得した。

リンク: Nuvationのプレスリリース

【承認審査・委員会】


Dato-DXdはEUでも肺癌のみ承認申請撤回
(2024年12月24日発表)

第一三共はDS-1062(datopotamab deruxtecan、通称Dato-DXd)を米欧日で承認申請しているが、米欧の予定適応症のうち非扁平上皮非小細胞性肺癌(NSNSCLC)は、米国に続きEUでも取下げとなった。CHMP(医薬品科学的評価委員会)のフィードバックに基づくもの。乳癌は引き続き承認申請中。

TROP2に結合する抗体薬物複合体。日本では化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌の適応で第二部会を通過したところだ。米欧では局所進行/転移NSNSCLCの再発治療にも申請されていたが、エビデンスとなるべきTROPION-Lung01試験でPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)の解析に成功したものの、共同主評価項目である全生存期間が全体の解析も、非扁平上皮腫サブグループの探索的解析もフェールした。docetaxel対照試験なので数値が上回っていれば大目に見ても良いのではないかとも思われたが、精査の結果があまりよくなかったのかもしれない。

米国では代わりにEGFR阻害剤歴を持つEGFR変異陽性非小細胞性肺癌に承認申請したが、EUは承認審査中に別の申請を行うことを認めないと言う話を聞いたことがある。

リンク: 同社のプレスリリース(pdfファイル)


sotagliflozinは糖尿病には承認されず
(2024年12月21日発表)

Lexicon Pharmaceuticals(Nasdaq:LXRX)はZynquista(sotagliflozin)を慢性腎疾患を合併した一型糖尿病の併用薬としてFDAに承認申請していたが、審査完了通知を受領した。11月にリストラ発表した時の見込み通り。活性成分は23年に心不全用薬として承認されているが、将来性を見限り、プロモーション活動を中止して希望する患者に販売するだけに留める。

SGLT阻害剤は不要な糖を尿と一緒に排出させるが、糖尿病性ケトアシドーシスを誘導するリスクがある、製薬会社はSGLT-1選択性を持たせることで対処したが、一型糖尿病に用いるとリスクが高まる。sotagliflozinはSGLT-2も阻害するので、競合他社の未開拓分野であるとはいえ、ハードルが高かった。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認】


オプジーボ皮下注が承認
(2024年12月27日発表)

FDAはブリストル マイヤーズ スクイブの点滴静注用抗PD-1抗体、Opdivo(nivolumab)の皮下注バージョンを承認した。製品名と一般名は、Opdivo Qvantig(nivolumab and hyaluronidase-nvhy)。静注用の適応のうち、Yervoy(ipilumab)併用による導入療法以外で用いることができる。nivolumabは600mg、遺伝子組換え型ヒアルロン酸分解酵素は10000単位を2週毎、または両方とも1.5倍の量を3週毎、乃至は2倍の量を4週毎に投与する。進行/転移淡細胞型腎細胞腫に4週毎3~5分皮下注した治験で28日平均血清濃度や最低血清濃度定常値が点滴静注用と非劣性だった。ORR(客観的反応率)も各24%と18%で非劣性。FDAのプレスリリースによると安全性プロファイルは同程度だった。

リンク: FDAのプレスリリース


BeiGeneの抗PD-1抗体が適応拡大
(2024年12月27日発表)

中国のBeiGene(百済神州、Nasdaq:BGNE、HKEX:06160)はFDAが抗PD-1抗体Tevimbra(tislelizumab-jsgr)の適応拡大を承認したと発表した。3月に成人の全身性化学療法歴があり抗PD-(L)1抗体歴はない切除不能/転移食道扁平上皮腫に承認されたばかりだが、新たに成人のPD-L1陽性(1以上)の切除不能/転移her2陰性胃/胃食道接合部腺腫に用いることが可能になった。

エビデンスとなるRATIONAL 305試験ではPD-L1陰性の癌も組み入れたが、EU同様に、陽性限定の承認となった。Ventana PD-L1(SP263アッセイ)で腫瘍と腫瘍関連免疫細胞を検査して1以上と判定された885人の解析によると、化学療法と併用した群のメジアン生存期間が15.0ヶ月と化学療法だけの群の12.8ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.78だった。CPS(複合傾向スコア)で1以上と判定された854人の事後的解析でも概ね同様だった。カプラン・マイヤー・カーブを見ると二本の曲線がある程度以上乖離するのは1年経った辺りからだ。

尚、同社は米国などにおける社名をBeOne Medicines、Nasdaqチェッカー・シンボルをNasdaq:ONCに変更する予定。

リンク: 同社のプレスリリース


住友ファーマ、専ら女性の薬を男性にもアピールできるのでは
(2024年12月23日発表)

住友ファーマの米国法人は、Gemtesa(vibegron)の適応拡大がFDAに承認されたと発表した。選択的ベータ3アドレナリン受容体作動剤で20年に成人の過活動膀胱(OAB)治療薬として承認されているが、新たに、良性前立腺肥大の薬物治療を受けている男性のOABに用いることが認められた。用量用法は75mg一日一回経口投与で従来と同じ。排尿回数などの改善という効能も同じ。

GLP-1作用剤における肥満・閉塞性睡眠時無呼吸と似たような話で、新用途と言えるのか悩ましいが、この薬に関しては現実的な意義がある。OABは女性に多い病気でGemtesaの第3相では8割以上を占めた。良性前立腺肥大は男性の疾患なのでOAB薬は関係ない、と思われるかもしれないが、同社によると、米国の患者数推定1400万人のうち、最大で75%がOAB症状を経験しているという。OABは我慢しがちな病気なので患者が医師に訴求しなければ治療が始まらない。男性向けにTVCMなどを行うことで潜在需要を顕在化できるかもしれない。Gemtesaは薬物相互作用リスクが小さいのでアルファ1a受容体拮抗剤などの良性前立腺肥大治療薬と同時使用しやすい。

19年に子会社化したUrovant Sciencesが17年にMSDからライセンスした選択的ベータ3アドレナリン受容体作動剤。日本は杏林製薬が14年にMSDからライセンスし、18年にベオーバ名で承認取得した。欧州ではPierre FabreがUrovantからライセンス。

リンク: Sumitomo Pharma Americaのプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
24/12/27Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリ症候群)
25Q1推第一三共のEnhertu(trastuzumab deruxtecan、her2低/極低転移性乳癌追加)
25Q1推アストラゼネカのCalquence(acalabrutinib、未治療マントル細胞腫追加)
25年1月ノボ ノルディスクのOzempic(semaglutide、FLOW糖尿病性腎症アウトカム試験追加)
25/1/15Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(リンパ増殖性疾患)
25/1/17アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS G12C変異再発転移結腸直腸癌追加)
25/1/25エーザイのLeqembi(lecanemab、維持用量用量追加)
25/1/29第一三共のDS-1062(datopotamab deruxtecan、HR陽性her2陰性切除不能/転移乳癌)
25/1/29Stealth BioTherapeuticsのelamipretide(バース症候群)
25/1/30VertexのVX-548(suzetrigine 、急性疼痛)
25/1/31Axsome TherapeuticsのAXS-07(急性片頭痛)
25/2/8大塚製薬のRexulti(brexpiprazole、PTSD追加)
25/2/14GSKの髄膜炎菌A/B/C/W-135/Yワクチン
25/2/14Bavarian NordicのCHIKV VLP(チクングニア熱ワクチン)
25/2/17小野薬品のvimseltinib(腱滑膜巨細胞腫)
25/2/28SpringWorks Therapeuticsのmirdametinib(神経線維腫症1型)
諮問委員会
25/1/10AADPAC:生化学工業のSI-6603(腰椎椎間板ヘルニアに伴う根性痛)
25/2/5DSRMAC/ADPAC:オピオイド過剰摂取に関する疫学研究成果について



今週は以上です。

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