【ニュース・ヘッドライン】
- ALS用薬の承認返上を決定
- 鬱病治療用アプリが承認
- イミフィンジ、限局型小細胞癌の維持療法試験が成功
- アセクレジン点眼液を老視用薬として承認申請へ
- Jazz、抗her2xher2抗体を承認申請
- レケンビの維持用法を承認申請
- アベクマの3次治療が米国でも適応に
- エンハーツ、各種her2陽性固形癌に適応拡大
- Basileaの新規セファロスポリンが米国でも承認
- アストラゼネカのPNH用新薬が米国でも承認
- 向精神薬が発売の15年後に適応拡大
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【今週の話題】
ALS用薬の承認返上を決定
(2024年4月4日発表)
米国の新興製薬会社Amylyx(Nasdaq:AMLX)は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)治療薬Relyvrio(sodium phenylbutyrateとtaurursodiolの合剤)の米加における販売承認を自主的に廃止する手続きを開始した。市販後に第3相PHOENIX試験で主評価項目も副次的評価項目もフェールしたため。新規患者向けの販売は即日中止、現在治療を受けている患者は、本人が医師と相談の上で継続を望むなら、無料プログラムに移行することができる。同薬の23年売上高は2.1億ドル、このうち1億ドルは第4四半期と急伸していたが、今年3月に第3相フェールが発表されて以来、多くの医師が処方を止め、医療保険も還元対象から外した模様だ。
Relyvrioは22年6月にカナダでAlbrioza名で条件付き承認され、米国でも同年9月に条件なしで承認されたが、共同CEOのJustin Kleesが、直前のFDA諮問委員会で、もし第3相がフェールしたら承認返上も含め患者にとって最善な対応を行うとコミットしていたため、承認返上は順当な成り行きだ。ALSのような難病に関しては米欧日など多くの国が新薬承認の要件を緩和する制度を設けている。今回は加速承認ではないが実質的に似たような格好になっており、加速承認案件も含めて、今後のモデルケースになりうるのではないか。Relyvrioの発売時の価格は年15.8万ドルと高価だったが、製薬会社が市販後薬効試験に真摯に取り組むように、加速承認段階では予定価格の半値で販売するなどの規制を導入するともっと良いだろう。
第3相試験の成績は今月のANN(米国神経学会)で発表される予定。なぜ第2相の成績が再現されなかったのか、注目される。第2相と第3相のデザイン上の違いは、組入れ数(約140人と約660人)、主評価項目(第3相はALSFRSの改定後のものを採用)など。FDAの審査担当者が22年3月の諮問委員会で指摘したのは第2相は追跡不能例が両群17~18%と高い比率で発生していること、試験開始後にALS用薬二剤のどちらかを開始した患者の比率が試験薬群は15%、偽薬群は4%と大きく偏っていること。そもそも、第2相試験のp値は0.034と、決して胸を張れるものではなかった。EUが承認しなかったのも、FDAが当初は第3相をやってから申請するようアドバイスしたのも、無理はなかった。おそらく、医師も患者も、薬効が不確かであることを認識していただろう。
リンク: 同社のプレスリリース
鬱病治療用アプリが承認
(2024年4月2日発表)
FDAはClick Therapeuticsが大塚製薬と共同開発した鬱病治療用アプリ、Rejoynを、22歳以上の鬱病(MDD)の補助療法として510(k)認可を行った。iOS用とAndroid用がある。鬱病用アプリの認可は初めて。
抗鬱剤による外来治療を受けている患者が、認知行動療法の一助として、6週間の治療セッションを受ける。400人弱を組入れた臨床試験で、主評価項目であるmITTベース(1回以上のセッションを受け、その後とベースライン時点のMADRS評価値がある354人)のMADRSが9.03低下した。シャム群は7.25低下で、差は1.78、p=0.0568だった。しかし、副次的評価項目であるITTベースの群間差は2.12、p=0.02、PHQ-9やCGI-Sのp値はどちらのベースでも0.01を下回った。
リンク: FDA Roundup
【新薬開発】
イミフィンジ、限局型小細胞癌の維持療法試験が成功
(2024年4月5日発表)
アストラゼネカは、抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)が第3相ADRIATIC試験で共同主評価項目であるPFS(無進行生存期間)と全生存期間の延長を達成したと発表した。限局型小細胞癌の同時化学放射線療法を受けて進行しなくなった患者に1500mgを4週毎投与した試験で、偽薬比統計的に有意且つ臨床的に意味のある差があった。
この試験はImfinziに加えて同社の抗CTLA4抗体Imjudo(tremelimumab)も4回だけ投与する群も設定されているが、継続追跡中。
Imfinziは進展型小細胞癌の一次治療に化学療法と併用することが米日欧で承認されている。エビデンスとなったCASPIAN試験ではImjudoも併用する群も設けられたが、フェールした。
リンク: 同社のプレスリリース
アセクレジン点眼液を老視用薬として承認申請へ
(2024年4月3日発表)
米国カリフォルニア州のLENZ Therapeutics(Nasdaq:LENZ)はLNZ100(aceclidine 1.75%)の第3相老視治療試験が二本とも成功したと発表した。年央に米国で承認申請する考え。
アセチルコリン受容体作動剤で欧州では緑内障の治療薬として半世紀の市販歴がある。第3相試験ではLNZ100またはbrimonidine配合剤LNZ101を一日一回点眼する効果を対照群(CLARITY Iはbrimonidine単剤、IIは偽薬)と比較した。主評価項目は点眼3時間後における奏効率で、奏効の定義は近見視力が3行以上改善し遠見視力は1行超悪化しないこと。CLARITY I試験では各群64%、49%、12%、IIでは71%、57%、8%となり、二試験薬群の何れも対照群比で統計的に有意な差があった。
LNZ100の奏効率は10時間後には27~40%に低下する。brimonidine配合剤は持続性が高いと予想されたが、37~39%と大差なかったため、LNG100だけを承認申請する考え。
老視治療薬は21年にアッヴィのVUITY(pilocarpine hydrochloride 1.25%)が、23年にはOrasis PharmaceuticalsのQlosi(同 0.4%)も、米国で承認された。視力検査方法や主評価項目の詳細が若干異なるが、治療効果(奏効率の偽薬群との差)はLNZ100のほうが高そうに見える。但し、こちらの数値は治療初日のもの、Qlosiは第8日、Vuityは第30日と評価時期が異なっている。反復投与するうちに効果が低下するようなこともあるだろうから、同時期のデータを見たいものだ。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認申請】
Jazz、抗her2xher2抗体を承認申請
(2024年4月2日発表)
Jazz Pharmaceuticals(Nasdaq:JAZZ)は、米国でzanidatamabのローリング承認申請を完了したと発表した。適応は、治療歴のある切除不能、局所進行性、または転移性のher2陽性胆道癌。後期第2相のHERIZON-BTC-01試験でcORR(確認客観的反応率、独立中央評価)が41.3%、メジアン反応持続期間は12.9ヶ月だった。同社によると、標準療法の反応率は5~15%とのこと。有害事象による治験離脱率は2.3%、G4の有害事象や、G5治療関連有害事象はゼロだった。
胆道癌は5~19%がher2陽性。zanidatamabはher2の二つの異なったエピトープに結合する抗体医薬で、Zymeworks(NYSE:ZYME)から米欧日などにおける開発商業化権を取得し、中国などの権利を持つBeiGene(Nasdaq:BGNE)と共同開発している。
リンク: Jazzのプレスリリース
レケンビの維持用法を承認申請
(2024年4月1日発表)
エーザイと開発販売パートナーのバイオジェンは、早期アルツハイマー病用薬Leqembi(lecanemab-irmb)の維持用法と皮下注用新製剤を米国で3月までに追加申請する計画だったが、後者は遅延が発表された。
維持用法は追加申請された。現在は点滴静注用製剤を2週毎投与するが、維持期は月一回を予定。エビデンスは過去の臨床試験のデータに基づくモデリングとのことで、用量は公表されていない。また、維持用法にシフトするタイミング(アミロイド・ベータの除去が確認された後?)はFDAと協議中とのこと。
皮下注用は720mg週一回で開始、維持用量は360mg週一回という用法と推定されるが、FDAから維持用量の3ヶ月免疫原性データも提出するよう求められた。このため、一部のデータを先に提出するローリング承認申請を打診したが、皮下注用製剤で改めてファースト・トラック指定を得るよう求められた。3月に指定を申請、60日以内に回答の見込み。
Leqembiによる治療を受けるにはMRIなどの設備を持つ医療施設(多くの場合、遠くの病院)に通院する必要があり、健康に過ごせる残された期間の貴重さを考えると、月一回で済むならその方がよい。皮下注用新製剤も、何回か投与した後に自己注にシフトすることが認められるなら、利便性が向上する。
リンク: 両社のプレスリリース
【承認】
アベクマの3次治療が米国でも適応に
(2024年4月5日発表)
ブリストル マイヤーズ スクイブと2seventy bio(Nasdaq:TSVT)は、FDAがAbecma(idecabtagene vicleucel)を成人の難治再発多発骨髄腫の3次治療に用いることを承認したと発表した。主要な3種類の薬(免疫調停剤、プロテアソーム阻害剤、抗CD38抗体)を使い終わった患者が適応になる。KarMMa-3試験でPFS(無進行生存期間、独立評価委員会方式)のメジアン値が13.3ヶ月と標準的多剤併用レジメンの4.4ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオは0.49だった。全生存期間の解析は未成熟。
FDAはCD19を標的とするCAR-T療法に関してT細胞腫瘍のリスクが高まるという枠付き警告を導入しているが、今回、AbecmaのようなBCMA標的CAR-Tも追加した。
この適応拡大は日本では昨年12月、EUでも今年3月に承認されている。
FDAは死亡リスク抑制作用が明確でないことなどから3月の腫瘍学諮問委員会でジョンソン・エンド・ジョンソンのBCMA標的CAR-TであるCarvykti(ciltacabtagene autoleucel)と共に意見を聞いたが、諮問委員の過半が支持した。Carvyktiは二次治療なので承認されればAbecmaより早く使えることになる。PDUFAは4月5日だが、今のところ承認されたという発表はない。
リンク: BMSのプレスリリース
エンハーツ、各種her2陽性固形癌に適応拡大
(2024年4月5日発表)
FDAは、第一三共がアストラゼネカと共同開発販売している抗her2抗体薬物複合体、Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)を成人の切除不能/転移her2陽性固形癌に用いることを加速承認した。前治療歴のある、他に妥当な治療オプションがない患者が適応になる。抗癌剤の適応は原発部位毎に決定されることが多いが、her2陽性という切り口で様々な癌種に承認されたのは今回が初めて。第2相のDESTINY-PanTumor02試験などに基づく。IHC2+以上の患者を組入れ、成績も良好だったが、承認は3+に限定されている。症例数の多い癌種に絞ってcORR(確認客観的反応率)を示したが、レーベルには症例数が少なすぎたせいかcORRがゼロだった癌種も表記されている。
Enhertuは、IHC法で3+またはISH法で陽性という『her2陽性』の定義を乳癌に関しては変えたが、癌種によって異なるのが面倒くさい。今回、レーベルで適応毎に定義が明記された。
部位 | 症例数 | cORR |
---|---|---|
結腸直腸癌 | 64 | 46.9% |
膀胱癌 | 27 | 37.0% |
胆道癌 | 22 | 45.5% |
非小細胞性肺癌 | 17 | 52.9% |
内膜腫 | 16 | 56.3% |
卵巣癌 | 15 | 66.7% |
子宮頸癌 | 10 | 70.0% |
唾液腺癌 | 9 | 66.7% |
リンク: Enhertuのレーベル(FDAサイト、pdfファイル)
Basileaの新規セファロスポリンが米国でも承認
(2024年4月3日発表)
FDAはスイスのBasilea Pharmaceutica(SWX:BSLN)のZevtera(ceftobiprole medocari)を承認した。適応は成人の黄色ブドウ球菌菌血症、成人の急性細菌性皮膚皮膚構造感染症、生後3ヶ月以上の地域感染細菌性肺炎。何れも実薬対照試験で治癒率又は応答率が非劣性だった。尚、院内感染肺炎・人工呼吸器関連肺炎の試験で後者のサブグループにおける死亡率が実薬を上回ったため、前者を含め適応外とされた。
同社は承認までに販売提携先を見つける考えだったが、今回、年央までに決定と変更した。
07年にライセンシーだったジョンソン・エンド・ジョンソンが複雑皮膚皮膚構造感染症治療薬として承認申請し、08年にカナダとスイスで承認取得、EUでもCHMPが肯定的意見をまとめたが、FDAは治験実施施設の査察で49施設中10施設におけるデータの信頼性や検証可能性に関する瑕疵を発見したことから承認を見送り、カナダとスイスは承認を取消し、CHMPも否定的意見に転じた。
JNJがライセンスを返還した後、Basileaは13年に欧州の一部国で地域感染肺炎と院内感染肺炎(人工呼吸器関連肺炎は除く)で非中央手続きによる承認を取得、20年には中国とブラジルでも承認を取得したが、米国は初承認申請から17年近くを経て、やっと承認に漕ぎ着けた。抗菌剤の開発が、資金面など様々な理由で、なかなか進まない現実を表している。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Zevteraの最小発育阻害濃度データ(FDA)
アストラゼネカのPNH用新薬が米国でも承認
(2024年4月1日発表)
アストラゼネカは、FDAがVoydeya(danicopan)を発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の成人の血管外溶血の治療薬として承認したと発表した。同社の抗C5抗体、Soliris(eculizumab)またはUltomiris(ravulizumab-cwvz)で治療しても脾臓や肝臓などにおける血管外溶血が残存する、PNHの1~2割程度の患者に、追加投与する。経口剤。日本では1月に承認、EUでも2月に肯定的意見を得ている。
抗C5抗体が古典的補体経路に介入するのに対してVoydeyaは副経路に関わる補体D因子を阻害する。臨床試験ではヘモグロビン値がベースライン時点の7.7g/dLから2.94g/dL増加、偽薬追加群の0.50g/dL増を有意に上回った。59.5%の患者で2g/dL以上増加した(偽薬追加群はゼロ)。
競合品はノバルティスのFabhalta(iptacopan)が昨年12月に米国で承認された。D因子はC3と細胞膜の結合体に結合した補体B因子を開裂するが、FabhaltaはB因子を阻害するので、Voydeyaより川上に介入することになる。抗C5抗体に応答不十分な患者を組入れた臨床試験では、Fabhaltaにスイッチした患者の82%でヘモグロビン値(ベースラインは8.9g/dL)が2g/dL以上増加した。抗C5抗体による治療を継続した患者ではゼロだった。Fabhaltaは抗C5抗体歴のない患者にも承認されていて、抗C5抗体不十分応答にはスイッチなので追加のVoydeyaより安く済みそうだ。。
リンク: アストラゼネカのプレスリリース
向精神薬が発売の15年後に適応拡大
(2024年4月2日発表)
Vanda Pharmaceuticals(Nasdaq:VNDA)はFDAがFanapt(iloperidone)を成人の双極障害I型の躁/混合症状の急性期治療薬として承認したと発表した。臨床試験でYMRS症状評価尺度がベースラインの29点から14点低下、偽薬群は10点低下で、有意な差があった。
Fanaptは09年に米国で統合失調症治療薬として承認された。EUは否定的意見だった。効果が小さい、作用が発現するまで2~3週間かかり急性期の治療には適さない、QT延長リスク、肝機能低下や薬物相互作用リスクなどが理由。
リンク: 同社のプレスリリース(PR Newswire)
【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】
PDUFA | |
---|---|
24年3-4月 | ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症) |
24年4-6月 | ファイザーのPF-06838435(fidanacogene elaparvovec、B型血友病) |
24年4月推 | JNJのSkyrizi(risankizumab-rzaa、潰瘍性大腸炎) |
24年4月推 | JNJのBalversa(erdafitinib、FGFR陽性尿路上皮腫本承認切替) |
24/4/5 | JNJのCarvykti(ciltacabtagene autoleucel、多発骨髄腫2~4次治療) |
24/4/5 | Supernus PharmaceuticalsのSPN-830(apomorphine、パーキンソン病) |
24/4/23 | ImmunityBioのN-803(BCG不応筋層非浸潤性膀胱癌) |
24/4/30 | X4 PharmaceuticalsのX4P-001(mavorixafor、WHIM症候群) |
24/4/30 | Day One BiopharmaceuticalsのDAY101(tovorafenib、小児神経膠芽腫) |
24/4/30 | Neurocrine BiosciencesのIngrezza(valbenazine顆粒製剤、ジスキネジアなど |
24/5/9 | ファイザーのTivdak(tisotumab vedotin-tftv、難治/転移子宮頸癌に本承認切替) |
24/5/12 | モデルナのmRNA-1345(RSVワクチン) |
24/5/13 | Dynavax TechnologiesのHEPLISAV-B(血液透析中の成人のB型肝炎予防を追加) |
24/5/14 | アセンディス・ファーマのTransCon PTH(palopegteriparatide、副甲状腺ホルモン低下症) |
24/5/16 | Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫) |
24/5/22 | ロシュのAlecensa(alectinib、ALK+NSCLC術後アジュバント) |
24/5/23 | BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、再発/難治リンパ腫) |
24/5/25 | Abeona TherapeuticsのEB-101(prademagene zamikeracel、劣性栄養障害型表皮水疱症) |
24/5/31 | BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、再発/難治マントル細胞腫) |
今週は以上です。
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