2023年2月3日

第1088回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • 米国版テムセルを再承認申請 
  • 米国でも経口貧血治療薬が承認 
  • インド企業の人工涙液で多剤耐性菌感染が発生 


【承認審査・委員会】


米国版テムセルを再承認申請
(2023年1月31日発表)

Mesoblast(ASX:MSB)はremestemcel-Lを小児の他家造血幹細胞移植後のステロイド抵抗性急性移植片宿主病の治療薬としてFDAに再承認申請した。日本でJCRファーマがテムセル名で承認取得しているヒト間葉系幹細胞医薬品で、米国ではMesoblastが20年に承認申請したが、対照試験が実施されていないことやロット毎の力価の同等性が十分に検証されていないことから、同年9月に審査完了通知を受領していた。FDAが推奨した小児または成人の無作為化割付対照試験は未実施なので承認されるかどうか不透明だ。

同社が再申請で提出したのは、力価と延命効果の関連性を示す力価アッセイのバリデーション資料と、第3相試験の4年追跡データ、文献データとの外部対照群比較など。同社がもたもたしているうちに他剤が承認されたこともあり、不確かなエビデンスに基づいて急いで承認する必要性は低下している。

尚、日本の承認は臓器障害解消作用に基づくもの、Mesoblastが提出したのは専ら延命効果に基づく便益なので、評価尺度が異なっている。

リンク: 同社のプレスリリース(GLOBE NEWSWIRE)

【承認】


米国でも経口貧血治療薬が承認
(2023年2月1日発表)

FDAはGSKのJesduvroq(daprodustat)を承認した。慢性腎疾患の透析治療を4ヶ月以上受けている成人の貧血症を治療する。低酸素環境下におけるエリスロポイエチンの発現を妨げるHIF-PHI(低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素)の阻害薬で、日本では類薬と前後して20年にダーブロック名で承認されたが、米国ではファースト・イン・クラスとなった。経口剤なので簡便だが、透析を受ける患者はついでに赤血球生成刺激因子の投与も可能なので、選択肢が増えた程度の位置づけになりそうだ。

Aranesp(darbepoetin alfa)などと同様に、命に係わることもあるMACE(主要有害心臓事象)のリスクがあること、アグレッシブなヘモグロビン値矯正を行うとそのリスクを高めること、用量は赤血球輸血を抑制するために必要最小限に留めるべきであることが枠付き警告されている。

日本と異なり慢性腎疾患保存期の貧血治療が承認されなかった理由は明確ではないが、類薬の臨床成績があまり良くなかったことや、Jesduvroqも、非透析患者を組み入れた試験のMACEは100人年当り10.9とdarbepoetin alfa群の10.6と大差なく、ハザードレシオは1.03(95%上限1.19)で非劣性マージョンの1.25をクリアしたが、米国患者だけの解析は各13.8、11.9、1.19とやや心許なかったことだろう。10月の諮問委員会でも透析患者向けは賛成13人、反対3人だったが、非透析患者向けは5人対11人で反対が上回った。

4ヶ月以上透析を受けている患者、という限定の根拠は不明。第3相試験は90日以上透析を受けていていて赤血球生成因子治療歴が6週間以上の患者を組み入れた。

リンク: FDAのプレスリリース

【医薬品の安全性】


インド企業の人工涙液で多剤耐性菌感染が発生
(2023年2月1日発表)

CDC(米国疾病予防管理センター)は多剤抵抗性が極めて高い細菌感染症が55例、発生したと発表した。多くがEzriCare Artificial TearsというOTC人工涙液を用いており、開封済み製品を検査したところ、米国で初めてのVIM-GES-CRPAが検出されたため、CDCは使用中止を勧告した。感染者は隔離する。製造企業であるインドのGlobal Pharma Healthcareは2月1日付で同製品とDelsam Pharmaが販売する別ブランド製品の自主的リコールを発表した。

VIM-GES-CRPAは殆どの抗生物質に感受しない緑膿菌。例外の可能性があるのが塩野義製薬の注射用シデロフォアセファロスポリン、Fetroja(cefiderocol)で、感受性テストが行われた標本は感受した。

入院や角膜感染症による永続的視力喪失に至った症例もあり、全身性感染症による死亡も1例発生した。

リンク: CDCのヘルス・アラート





今週は以上です。

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