2022年2月5日

第1036回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • FDA、コミナティの6ヶ月~4歳児承認を検討へ 
  • FDAもモデルナのワクチンを承認 
  • Novavax、抗原ワクチンを米国でもEUA申請 
  • リリー、第3の抗体をEUA申請 
  • その他の領域: 
  • UCB、もう一つの筋無力症薬候補も第3相が成功 
  • レット症候群の第3相(?)が成功 
  • THRベータ作動剤のNAFLD試験が成功? 
  • バイエル、P2X3阻害剤の開発を断念 
  • ファイザー、ANGPTL3アンチセンス薬の開発を中止 
  • ロシュ、抗CD20/CD3二重特異性抗体などを承認申請 
  • リアタ、またまたアト・リスク承認申請に着手 
  • 武田、ブデソニド粘性製剤の承認取得を断念 
  • FDA、サノフィの寒冷凝集素症用薬を承認 
  • FDA、TG社のPI3K阻害剤に安全性通知 


【COVID-19関連】


FDA、コミナティの6ヶ月~4歳児承認を検討へ
(2022年2月1日発表)

BioNTech(Nasdaq:BNTX)とファイザーは、COVID-19ワクチンComirnaty(tozinameran)を未成年向けにも積極的に開発し、米国では16歳以上(30mcg)に承認、5~15歳にもEUA(非常時使用認可:12~15歳は30mcg、5~11歳は10mcg)されている。6ヶ月児以上4歳以下は3mcgを3週おいて二回接種する効果を試験したが、中間解析が今一つだったため、8週後にもう一回接種するプロトコル変更を行った。

ところが、両社は6ヶ月~4歳児のデータをFDAに提出しローリング申請に着手したと発表した。三回接種の結果はまだ出ていないようなので思い切った行動だが、FDAの要請を受けたとのことだ。2月15日のVRBPAC(ワクチン及び関連生物学的製剤諮問委員会)で議論される予定。オミクロン株の流行で幼小児の感染が増えているため、FDAは承認できるなら承認したいと考えているのだろう。

上記試験は50%中和力価の幾何平均値(GMT)を、感染予防効果が確立している16-25歳の臨床試験の価と比較して、非劣性なら免疫ブリッジング成功と判定するもの。中間解析で6~24ヶ月児のコフォートは非劣性だったが2~4歳のコフォートはフェールした。両社は6~24ヶ月児も含めて8週後に三回目を接種するプロトコル変更を行ったので、6~24ヶ月児のデータも満点ではなかったのかもしれない。尤も、閾値は閻魔様ではなく、GMT比の両側95%信頼区間下限が0.66ならフェール、0.68なら成功というような判定基準は取り決めに過ぎない。報道によると感染予防効果に関するある程度のデータもあるようなので、2~4歳も含めてEUAの可能性もあるだろう。

とはいえ、承認されればそれでいいとは限らないのはアルツハイマー病治療薬Aduhelm(aducanumab-avwa)の販売不振を見れば明らかだ。FDAは昨年10月にComirnatyを5-10歳にEUAしたが、12月19日時点の接種実績は870万人と、対象人口の1/3強に留まっている。5歳未満の人口1800万人に普及させようとしたら、十分な説得力が必要だろう。

リンク: 両社のプレスリリース


FDAもモデルナのワクチンを承認
(2022年1月31日発表)

FDAはモデルナ(Nasdaq:MRNA)のSPIKEVAXを承認した。COVID-19のリピッド・ナノパーティクルmRNAワクチンで、18歳以上が適応になる。市販後に心筋炎や心膜炎のリスク上昇が見られたことが警告・注意事項となっている。発症タイミングは二回目の接種後の7日間が多いようだ。年齢・性別では40歳以下(特に18-24歳)の男性の頻度が比較的高い。集中治療が必要になった人もいるが、殆どは、少なくとも短期的には、保存的療法で軽快したとのこと。

FDAはCOVID-19ワクチンや治療薬の開発・承認審査をスピードアップするためにEUA(非常時使用認可)という制度を活用している。SPIKEVAXは、ワクチンの第一号であるBioNTech/ファイザーのComirnatyに続いて、2020年12月にEUAされた。その時点では二回接種後2ヶ月程度の追跡期間における感染予防効果しか確立していなかったが、正式承認は、6ヶ月程度追跡したエビデンスに基づいている。

Comirnatyは昨年5月に承認申請され、3ヶ月後の8月に承認された。一方、Spikevaxは昨年8月に承認申請され、承認は5ヶ月後だった。6ヶ月間の薬効データはSpikevaxのほうが良さそうに見えるが、審査が長引いたのは、上記の心筋炎・心膜炎リスクが原因だろう。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: モデルナのプレスリリース


Novavax、抗原ワクチンを米国でもEUA申請
(2022年1月31日発表)

米国のNovavax(Nasdaq:NVAX)は、NVX-CoV2373を米国でEUA申請したと発表した。全長融合前スパイク蛋白を抗原とするリピッド・ナノパーティクルCOVID-19ワクチンで、遺伝子を組み込んだバキュロウイルスを昆虫細胞に感染させて生産する。サポニン・ベースのMatrix-Mアジュバントを用いている。昨年12月に、EUで条件付き承認を取得、日本で武田薬品が承認申請した。

米国申請が遅れた一因は、臨床試験用バッチの生産が遅れ、米州試験の完了が英国試験より数か月遅れたこと。加えて、FDAは力価の評価方法について懸念を持っている模様で、今回の申請は米国工場ではなくインドのライセンシーであるSerum Institute of IndiaのCMC(化学製造管理)データを提出した模様。

薬効面はどちらの試験でもワクチン効率90%前後と、少なくとも当時流行していたウイルス株に関しては、良好な成績だった。

リンク: 同社のプレスリリース


リリー、第3の抗体をEUA申請
(2022年2月3日発表)

イーライリリーは、21年決算発表会で、LY3853113(bebtelovimab)のEUAをFDAに申請したことを明らかにした。bamlanivimab、etesevimabに次ぐ第3の遺伝子組換え型抗SARS-CoV-2スパイク蛋白抗体で、bamlanivimabと同様にカナダのAbCellera Biologicsからライセンスしたもの。先行二剤は21年の売上高が22億ドルに膨らんだが、オミクロン株に対する中和活性が低いため、少なくとも米国では使われなくなった。bebtelovimabは既知の変異株すべてに中和力を維持している模様。

データは見たことが無い。第2相は先行二剤のBLAZE-4試験に群を追加して単剤と三剤併用をテストした。軽中等症COVID-19感染症に対するウイルス抑制効果や副次的評価項目として入院・死亡リスクも検討した。

リンク: 21年決算プレゼン・スライド(pdfファイル)

【新薬開発】


UCB、もう一つの筋無力症薬候補も第3相が成功
(2022年2月4日発表)

UCBはzilucoplanの第3相全身型重症筋無力症(gMG)試験、RAISEが成功したと発表した。欧米日で承認申請する予定。データは未公表。

19年にRA Pharmaceuticalsを25億ドルで買収して入手した、補体系C5を選択的に阻害する環状ペプチド。RAISE試験は米加欧日の施設で抗AChR自己抗体陽性の患者を組入れて、0.3mg/kgを一日一回、自己皮注する効果を盲検で偽薬と比較した。主評価項目は第12週のMyasthenia Gravis-Activities of Daily Living(MG-ADL)。深刻な有害事象の発現率は大差なかった。

同社は皮注用抗ヒト新生児Fc受容体抗体UCB7665(rozanolixizumab)の第3相gMG試験も昨年12月に成功発表している。こちらは免疫グロブリンGに介入する作用機序なので、もしかしたら、併用できるかもしれない。

gMGは米国で6~8万人が罹患する自己免疫疾患。新薬が続々と登場しており、C5標的薬はアストラゼネカ(アレクシオン・ファーマシューティカルズ)の抗C5抗体Soliris(eculizumab)とUltomiris(ravulizumab-cwvz)、新生児Fc受容体標的薬はオランダのArgenx(Euronext:ARGX)のVyvgrt(efgartigimod)と、先行品が多い。Vyvgrtは週一回点滴静注だが皮注用の開発も進められているため、zilucoplanは効果や安全性で上回ることが望ましい。

リンク: 同社のプレスリリース


レット症候群の第3相(?)が成功
(2022年2月1日発表)

米国ニューヨーク州の中枢神経系薬開発会社、Anavex Life Sciences(Nasdaq:AVXL)は、ANAVEX2-73(blarcamesine)のAVATAR試験が成功したと発表した。FDAと承認取得に向けた相談に進む考え。症例数が少なく、主目的が最近になって変更された可能性があり、薬効評価方法が良く分からないため、追加的な開示を期待したい。

ANVEX2-73はsigma-1受容体アゴニスト。第2/3相アルツハイマー病試験は経口カプセルを、今回の第3相レット症候群試験は経口液を、用いている。プレスリリースによると、AVATAR試験はMECP2変異を持つレット症候群の成人女性33人を組入れて一日一回、7週間投与して、Rett Syndrome Behavioural Questionnaire(RSBQ)などの変化を偽薬と比較した無作為化割付二重盲検偽薬対照試験。主評価項目のRSBQ AUC奏効率は72.7%と偽薬群の38.5%を上回り(p=0.037)、副次的評価項目のAnxiety、Depression and Mood Scale(ADAMS)奏効率は各52.9%と8.3%(p=0.010)、CGI-I奏効率は72.2%対38.5%(p=0.037)だった。治療時発現有害事象発生率は75.0%対61.5%、それによる離脱率は10.0%対7.7%だった。

プレスリリースによると、AUC(曲線下面積)を用いたのは、特定の時期の数値ではなく一定期間のデータを総合的に評価することにより期中のブレの影響を抑制する意図のようだ。また、プレゼンテーション用資料によると、RSBQだけではなくCGI-Iでも1ポイント以上改善した症例だけを奏効と判定した模様(実際、両評価項目の数値は似通っている)。更に、ClinicalTrials.govによると、薬剤曝露も考慮して判定した模様だ(この試験は30mgを目標に滴定した模様)。

もっと分からないのは、今年1月18日付でClinicalTrials.govの届出内容が変更されていることだ。つい3日前の届出までは第2相試験で主評価項目は薬剤曝露と安全性、即ち、只の薬物動態試験だった。盲検解除前なら変更が容認されることもあるが、時間軸的には微妙なところだ。そもそも、第2相の副次的評価項目と第3相の主評価項目では判定の厳格性が異なっていても不思議はない。

同社のホームページは、STATニュースのAdam Feuersteinの発言は過ちで真実ではないと枠付警告している。不慣れな社員が誤って登録したのを訂正しただけ、とのことだが、俄かには信じ難い。上記のように、主評価項目に関する記述は資料により若干異なっており、分かり辛い。p値は0.05を下回っているが十分に低いとは言えず、希少疾患用薬でなかったら一本の試験だけで承認されるとは思えない。詳細発表が待望される。

レット症候群は神経系を中心とする発達障害。9割前後の患者でMECP2遺伝子の特発的変異が見られる。専ら女性で、罹患率は1~1.5万出生に一人と推測されている。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: 21年1月18日付と1月15日付の届出内容の比較(ClincalTrials.gov)


THRベータ作動剤のNAFLD試験が成功?
(2022年1月31日発表)

Madrigal Pharmaceuticals(Nasdaq:MDGL)はMGL-3196(resmetirom)の第3相NAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)試験が成功したと発表した。NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)試験も実施中で、成功なら承認申請に向かうと予想される。発表を受けて株価が上昇したが、NASH試験の結果が出るまで真価は分からないだろう。

高度選択的な、肝臓を標的とする、甲状腺ホルモン受容体(THR)ベータ作動剤で、ロシュからライセンスした。NASHでは肝臓におけるTHRベータの活性が低下していることに注目した。POC試験では肝臓脂肪(MRIでプロトン密度脂肪分画により計測)が12週後にメジアン36%減と偽薬(10%減)を上回る効果を示した。

今回の第3相は972人を組入れて、偽薬、80mg、または100mgを一日一回、52週間に亘り経口投与する便益と危険を検討した。主評価項目は安全性で、大きな問題はなかったようだ。有害事象は下痢や悪心など。治療時発現深刻有害事象の発生率は各群6.3%、6.1%、7.4%だった。副次的評価項目の肝臓脂肪(POC試験と同様にMRI-PDFF評価)は16週時点で各群6%減、41%減、48%減と大きな差が見られ、52週時点でも8%増、43%減、48%減と維持された。また、HDL-Cを除くコレステロール値が24週時点で各群2%減、13%減、14%減と若干低下した。

脂肪量減少作用は好ましいが、十分条件ではないだろう。NASH試験は2000人を3群に無作為化割付して組織学的評価や臨床的転帰を比較している。ClinicalTrials.govによると主評価項目の解析時期は21年12月となっているので、COVID-19流行の影響で遅延しても不思議はないが、早晩、真価が判明するだろう。

リンク: 同社のプレスリリース


バイエル、P2X3阻害剤の開発を断念
(2022年2月4日発表)

バイエルはBAY1817080(eliapixant)の開発打ち切りを発表した。Evotec社との創薬提携の成果で、難治性神経性慢性咳嗽や内膜症、過活動膀胱、神経性疼痛の第2相試験を実施していた。昨年9月には難治性神経性慢性咳嗽の後期第2相試験の結果を学会発表。75mg一日二回投与群の咳の回数が偽薬比27%少なく、クラス・イフェクトである味覚関連有害事象も穏やかという有望そうなものだったが、急転した。

MSDはファースト・イン・クラスであるMK-7264(gefapixant)を難治性慢性咳嗽治療薬として日米で承認申請し、日本ではリフヌア名で承認されたが、米国は審査完了通知を受領した。薬効評価に関する追加情報を求められた模様だ。バイエルの変心に何か関係があるかもしれない。

バイエルはEvotecと多くの領域で創薬提携を進めているが、P2X3関連の資産はEvotecが再取得する。

リンク: バイエルのプレスリリース


ファイザー、ANGPTL3アンチセンス薬の開発を中止
(2022年1月31日発表)

ファイザーとIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)は、PF-07285557/AKCEA-ANGPTL3-LRx(vupanorsen)の臨床開発プログラムを中止すると発表した。後者が創製した、トリグリセリドやコレステロール、グルコールなどエネルギー代謝の制御に関与するアンジオポイエチン様3の生産を抑制するアンチセンス薬で、後期第2相のTRANSLATE-TIMI 70試験で除HDL-Cコレステロールやトリグリセリドを抑制する効果を示したが、十分ではなかった由。安全性面では肝臓脂肪の増加が見られ、高用量では肝機能検査値異常も見られた。

ファイザーは19年にインライセンス、一時は年商30億ドル超を期待するほどだったが、提携解消するだろう。

リンク: 両社のプレスリリース

【承認申請】


ロシュ、抗CD20/CD3二重特異性抗体などを承認申請
(2022年2月3日発表)

ロシュは21年決算発表に際してパイプライン・アップデートを行い、第4四半期の承認申請/適応拡大申請実績を公表した。

RG7828(mosunetuzumab)は抗CD20/CD3二重特異性抗体。EUで承認申請したことは12月に公表済みだが、米国でも、第1/2相試験に基づき、濾胞性リンパ腫の3次治療に新薬承認申請した。同社の抗CD20抗体Rituxan(rituximab)はIDEC Pharmaceuticalsからライセンスしたものだが、その関係か、IDECと合併したバイオジェンが、今月、RG7828の共同開発商業化オプションを行使した。

Blueprint Medicines(Nasdaq:BPMC)と共同開発販売しているRET阻害剤Gavreto(pralsetinib)は米国で20年12月に加速承認されたが、EUでもRET陽性の甲状腺髄様腫や甲状腺癌に新薬承認申請した。

抗CD79b抗体薬物複合体Polivy(polatuzumab vedotin)は未治療のCD20陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫のR-CHP(四剤併用レジメン)試験が成功、グループの中外製薬が12月に日本で適応拡大申請したが、EUでも申請した。米国で申請したとは記されていない。

中外製薬が創製したHemlibra(emicizumab)は昨年12月のASH(米国血液学会)で中軽度A型血友病のHAVEN 6試験の成功が発表されたが、第4四半期にEUで適応拡大申請した。米国で申請したとは記されていない。現在は重度A型血友病の出血傾向の抑制に承認されている。

脊髄筋委縮症用薬Evrysdi(risdiplam)を2ヶ月児未満の未症候性患者に用いる対象年齢拡大申請を欧米で行ったことも明らかにされた。

フェーズIIIプロジェクトの開発中止も一件、発表された。ヒト・インテグリンのベータ7サブユニットに結合するヒト化抗体、PRO145223/RG7413(etrolizumab)は、中重度活性期潰瘍性大腸炎や中重度活性期クローン病の第3相試験が実施されたが、打ち切られた。潰瘍性大腸炎は寛解導入試験が一勝一敗、寛解維持試験がフェールした。クローン病試験の結果は不明だが、今一つだったのだろう。武田薬品のEntyvio(vedolizumab)と異なりアルファ4サブユニットに結合しないため効果増強が期待されたが、実現しなかった。

リンク: ロシュの21年決算プレゼン・スライド(pdfファイル)


リアタ、またまたアト・リスク承認申請に着手
(2022年1月31日発表)

Reata Pharmaceuticals(Nasdaq:RETA)は米国でRTA 408(omaveloxolone)をフリードライヒ運動失調症用薬としてローリング承認申請に着手したと発表した。FDAは薬効確認試験をもう一本実施するようアドバイスしているはずなので、2月25日に審査期限を迎えるRTA 402(bardoxolone methyl)と同様に、承認されないリスクがありそうだ。

RTA 408は第2世代のNrf2アクティベイターとされる(RTA 402が第1世代)。103人を組入れて150mgを一日一回、48週間に亘って経口投与する効果を偽薬と比較した第2相試験で、mFARSが1.55ポイント改善、偽薬群は0.85ポイント悪化した(p=0.014)。p値が十分に低いとは言えないこと、開発プログラム全体で投与実績が決して多くないことから、もう一本のエビデンスが欲しいところだが、米国の患者数が5000人の希少疾患なので悩ましい。

RTA 402はアルポート症候群用薬として米国で承認申請されたが、昨年12月の心臓腎臓薬諮問委員会では13人全員が反対した。eGFR(推定腎濾過率)というサロゲート・マーカーの妥当性や追跡不能例の多さ、糖尿病性腎症試験で心不全懸念が浮上したことなどがボトルネックとなった。日本では協和キリンが昨年7月に承認申請したが、どうだろうか。

リンク: Reataのプレスリリース

【承認審査・委員会】


武田、ブデソニド粘性製剤の承認取得を断念
(2022年2月3日発表)

武田薬品は21年度第3四半期決算発表に合わせてTAK-721(budesonide)の開発を打ち切ると発表した。19年に買収したシャイアの開発品で、20年に米国で好酸球性食道炎の治療薬として承認申請したが、追加試験実施を求められた。

リンク: 同社のプレスリリース(和文)


【承認】


FDA、サノフィの寒冷凝集素症用薬を承認
(2022年2月4日発表)

FDAはサノフィのEnjaymo (sutimlimab-jome)を承認した。寒冷凝集素症(CAD)の成人の溶血による赤血球輸血を抑制する。

CADは古典的補体経路の異常活性化による慢性自己免疫性貧血で、米国の患者数は5000人と推定されている。EnjaymoはC1複合体のセリン・プロテアーゼに結合する抗体。18年に116億ドル(株式価値ベース)で買収したバイオベラティブが前年にTrue North Therapeuticsを4億ドル及び開発承認販売目標達成時の報奨金4.25億ドルで買収して入手した。

過去6ヶ月間に輸血を受けた経験を持つ24人を組入れて6.5g(体重75kg超は7.5g)を二週毎(但し二回目は一週後)に点滴静注した第3相単群試験でヘモグロビン矯正奏効率が54%だった。深刻有害事象発現率は13%。FDAは被包性細菌感染予防用ワクチンを接種するよう求めている。

20年5月に承認申請が受理され優先審査指定されたが、生産委託先で工場問題が生じ、一巡目は審査完了に終わった。その後、過去6ヶ月間に輸血を受けていない患者を組入れた偽薬対照試験も成功、ヘモグロビン矯正奏効率(奏効の閾値はやや異なる)が76%と偽薬群の15%を上回っており、欧州などでも承認申請されるのではないか。日米欧で希少疾患用薬指定されている。

リンク: FDAのプレスリリース

【医薬品の安全性】


FDA、TG社のPI3K阻害剤に安全性通知
(2022年2月3日発表)

FDAはTG Therapeutics(Nasdaq:TGTX)のUkoniq(umbralisib)の安全性を検討していることを明らかにした。

PI3Kデルタとcasein kinase 1エプシロンを阻害する経口剤で21年に辺縁帯リンパ腫の2次治療と濾胞性リンパ腫の4次治療に加速承認された。

既報のように、同社が開発中の抗CD20糖鎖改変抗体TG-1101(ublituximab)と併用で慢性リンパ性白血病試験UNITY-CLLを行ったところ、主評価項目のPFS(無病生存期間)はGazyva(obinutuzumab)・chlorambucil併用群を有意に上回ったものの、死亡リスクが高まる可能性が浮上した。COVID-19関連の死亡を除くとハザードレシオ1.04と大きな差はないが、FDAは進行中の臨床試験の新規組入れを禁ずる部分的治験停止命令を発出した。

今回のFDA発表で注目されるのは、「同じPI3キナーゼ阻害剤クラスの他剤の臨床試験でも同様な安全性懸念が示された」と、クラス・イフェクトの可能性を示唆していることだ。

第1035回で取り上げたように、PI3K阻害剤ではSecura BioがPI3Kデルタ/ガンマ阻害剤Copiktra(duvelisib)の適応のうち難治再発性濾胞性リンパ腫の加速承認を返上、ギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)がPI3Kデルタ阻害剤Zydelig(idelalisib)の米国における三つの適応症のうち再発性濾胞性B細胞非ホジキンリンパ腫と再発性小リンパ球性白血病の加速承認を返上、インサイト(Nasdaq:INCY)がPI3Kデルタ阻害剤INCB050465(parsaclisib)の難治再発性の濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、そしてマントル細胞腫における加速承認申請を撤回と、失望的なニュースが続いている。

リンク: FDAの薬品安全性通知





今週は以上です。

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