2022年1月30日

第1035回

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • リリーとリジェネロンの抗体医薬、事実上のEUA停止に 
  • オミクロン感染による入院はデルタ株の1.8倍 
  • その他の領域: 
  • Sierra社、JAK阻害剤のサルベージに成功 
  • CHMP、Paxlovidなどに肯定的意見 
  • インサイト、PI3K阻害剤の加速承認申請を撤回 
  • リジェネロンら、子宮頸がんの適応拡大申請を撤回 
  • リフヌアは米国では承認されず 
  • オルミエントはアトピーには承認されない? 
  • 眼科の二重特異性抗体が承認 
  • 初のブドウ膜黒色腫用薬が承認 
  • 骨化性線維異形成症用薬がカナダで承認 


【COVID-19関連】


リリーとリジェネロンの抗体医薬、事実上のEUA停止に
(2022年1月24日発表)

FDAは、イーライリリーのbamlanivimabとetesevimabの併用カクテルと、リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)のcasirivimabとimdevimabの併用カクテルのEUA(非常時使用認可)に関して、医療従事者向けファクト・シートを改訂し、感受しないウイルスが流行している地域には認可されていないという文言を追加した。現在、米国で検出されるSARS-CoV-2の99%以上を占めるオミクロン株に対する効果が野生株比で各1000分の1と3000分の1程度とほぼ無効であるため、事実上、EUAを一時停止した。将来、感受ウイルスが流行したら、州毎に適否を検討することになる。

既知の事実なのでサプライズはない。抗生剤の適応が感受株に限定されていることを考えれば抗SARS-CoV-2抗体も初めから同様な文言にしておけば改訂する必要がなかったのだろうが、こんなにすごい変異株が出てくるとは思わなかったのだろう。

尚、Vir Biotechnology(Nasdaq:VIR)がグラクソ・スミスクラインと共同開発したXevudy(sotrovimab、和名ゼビュディ)はオミクロンにも活性を維持している。需要が急増しており、22年上期は200万回分の生産を計画している。承認用途が異なるがアストラゼネカのEvusheld(tixagevimab、cilgavimab)も低下はするが高水準を維持している模様だ。

リンク: FDAのプレスリリース


オミクロン感染による入院はデルタ株の1.8倍
(2022年1月28日発表)

オミクロン株はデルタ株より重症化率が低そうだが、感染力は高い。感染者の治療を担う人たちに重要なのは前者だが、一般人の関心は掛け算の答え、即ち、感染して重症患者になるリスクだ。

CDC(米国疾病管理予防センター)の疫学週報、MMWRに収載された論文によると、少なくともピーク時点では、オミクロン株に感染して入院した患者数はデルタ株のピーク時の1.8倍だった。アメリカ人にとっては、デルタよりオミクロンのほうが脅威ということになる。

この分析は、オミクロン株の大流行期(21年12月19日から22年1月15日)におけるアメリカの疫学データをデルタ株の大流行期(21年7月15日から21年10月31日)や昨冬の大流行期(20年12月1日から21年2月28日)と比較したもの。オミクロン株感染数のピーク(7日移動平均)は79.9万人で、デルタ株の16.4万人の5倍だった。一方、入院数のピーク(同)は各2.2万人と1.2万人で1.8倍だった。

感染者1000人当たりのデータを見ると、ER入室数はオミクロン株が87、デルタ株が167、昨冬は92だった。一方、入院数は各27、78、68、死亡数(3週間ラグ)は9、13、16だった。オミクロン株感染時の死亡リスクはデルタ株より3割低いが、それでも、致死例が少ない訳ではないことに驚かされる。

オミクロン株は潜在感染者がデルタ株より多いだろうから、感染者が入院したり死亡したりする確率はもっと低いだろう。しかし、入院や死亡の実数を見る限り、決して油断できない。

リンク: Iulianoらの論文(MMWR 2022;71:146–152)

【新薬開発】


Sierra社、JAK阻害剤のサルベージに成功
(2022年1月25日発表)

米国カリフォルニア州のSierra Oncology(Nasdaq:SRRA)は、momelotinibの第3相骨髄線維症試験、MOMENTUMが成功したと発表した。JAK阻害剤治療歴を持ち貧血症を示す症候性患者に200mgを一日一回、24週に亘って経口投与する効果を検討したところ、主評価項目である症状改善奏効率(MSAF-Total Symptom Scoreが50%以上低下)が25%と、対照群(danzolを一日二回、経口投与)の9%を有意に上回った。副次的評価項目の脾臓応答率(脾臓量が35%以上減少)も23%対3%で有意に上回った。

danazolはテストステロン誘導体で子宮内膜症の治療などに承認されているが、骨髄線維症でしばしば見られる貧血症の治療薬として、NCCNやESMOのガイドラインに採用されている(但しEPO低下が見られる場合は遺伝子組換えEPOを使う)。対照薬として選んだのは、既存のJAK阻害剤と異なり貧血症が悪化せず、むしろ、danzolに匹敵する改善効果があることをアピールする狙いのようだ。副次的評価項目である輸血しないで済んだ患者の比率は各群31%と20%となり、期待された通り、非劣性解析が成功した。

G3以上の有害事象の発生率は各54%と65%、治療時発現深刻有害事象は35%と40%だった。

momelotinibはギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)がYM BioSciencesを5.1億ドルで買収して第3相を実施したが、成績が満点でなかったためか、開発を中止し、Sierraに一時金300万ドル、達成報奨金1.95億ドルで導出したもの。インサイト/ノバルティスのJakafi(ruxolitinib)やBMSのInrebic(fedratinib)で十分に管理できない患者の第二選択薬という位置付けでも新興企業にとっては満足のいく成果が得られるという考えなのだろう。

リンク: Sierraのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMP、Paxlovidなどに肯定的意見
(2022年1月28日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、COVID-19治療薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら1~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

ファイザーのPAXLOVID(nirmatrelvir、ritonavir)はCOVID-19治療薬。ウイルスが持つ、自身の複製に必要な蛋白分解酵素を阻害する3CLプロテアーゼ阻害剤と、その代謝酵素を阻害して効果を長持ちさせる3A4阻害剤の同梱製品。発症後5日以内で、軽中等症だが重症化リスク因子を持つ患者に、12時間おきに5日間、経口投与する。

ワクチン未接種の患者2000人超を組入れて28日間追跡した第3相試験では、偽薬群のCOVID-19関連入院・全死亡率が6.3%(死亡者は12人)であったのに対して、PAXLOVID群は0.8%(死亡ゼロ)だった。SPC(添付文書)によると、ベースライン時点で血清陰性だった992人では各群11.5%と1.4%、陽性の1068人では1.5%と0.2%だった。陰性者の場合、1000人中987人は飲んでも飲まなくても結果は同じという計算になる。この薬が予防薬であることを考えれば無駄打ちは避けたいが、事前スクリーニングは非現実的なので、悩ましい。但し、もしワクチン接種者の便益も小さいならば、適応外とするのは容易だ。

リンク: EMAのプレスリリース(1/27付)

ブリストル マイヤーズ スクイブのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、和名ブレヤンジ)はCD19標的CAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)。難治性再発性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫や、原発性縦隔B細胞リンパ腫、そして二次以上の治療歴のあるグレード3B濾胞性リンパ腫に用いることが支持された。昨年2月に米国で、3月には日本でも、承認されている。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大では、Blueprint Medicines(Nasdaq:BPMC)のKIT/PDGFRアルファ阻害剤、Ayvakyt(avapritinib、米国名米Ayvakit)を全身性肥満細胞症に用いることが支持された。一回以上の全身性治療歴のある成人のアグレッシブな全身性肥満細胞症、血液学的新生物を伴う全身性肥満細胞症、肥満細胞白血病が適応になる見込み。臨床試験で総合反応率が57%(完全寛解率28%)、メジアン反応持続期間は38ヶ月だった。米国では昨年6月に適応拡大済み。

リンク: EMAのプレスリリース

欧米は慢性心不全の適応に関して駆出率低下型と保持型を分別する傾向があったが、SGLT2阻害剤のアウトカム試験ではどちらにも悪化抑制効果が見られた。駆出率が高いほど悪化リスクが低く治療する便益が縮小することには変わりが無いので、閾値ではなく臨床的なリスク評価に基づいて適否を判断すべきということのようだ。今回、CHMPは、ベーリンガー・インゲルハイム/イーライリリーのJardiance(empagliflozin)について、症候性慢性心不全における駆出率低下型限定を解除することに肯定的意見をまとめた。米国でも申請中。

リンク: EMAのプレスリリース

今回は新薬や適応拡大の申請取り下げが多かった。何れもメーカー側が12月に取り下げを通知したもの。

意外だったのはバイエルのPI3Kアルファ/デルタ阻害剤、Aliqopa(copanlisib)だ。米国では17年に濾胞性リンパ腫の3次治療薬として加速承認されている。再発性緩徐進行性B細胞非ホジキン型リンパ腫の第3相rituximab併用試験でPFS(無進行生存期間)がrituximab単剤を上回り、米国で適応拡大申請するとともに、EUでは治験対象のうち再発性辺縁帯リンパ腫だけに絞って新薬承認申請したが、撤回となった。CHMPは投与実績が少ないモノセラピーについては懐疑的だったが、rituximab併用についてはコメントしておらず、バイエル側で何らかの支障が生じたものと推測される。別項のように、PI3K阻害剤はセットバックが相次いでいる。

リンク: EMAのプレスリリース

DBV Technologies(Euronext:DBV)のAbylqisはピーナツアレルギーの経皮的減感作療法。CHMPは便益が限定的で深刻なショックのリスクを上回るとは言えないのではないかと考えていた。第3相がフェールしたので意外ではない。米国でも承認されず、同社は改良品(パッチを円形にして50%大きくした)の第3相を開始する考え。

リンク: EMAのプレスリリース

アストラゼネカはP2Y12阻害剤Brilique(ticagrelor、和名ブリリンタ)の脳卒中適応拡大申請を撤回した。急性虚血性卒中/一過性虚血発作の約11000人を24時間以内に割付けしたアスピリン併用試験、THALESに基づく申請で、米国では20年11月に軽中度脳卒中に承認されたが、CHMPは1ヶ月間だけの短期的治療による便益が致死的/非致死的な出血リスクを明確に上回るとは言えない、と考えていた。機能障害を改善する効果が見られなかったことも指摘している。同試験ではアスピリン・偽薬併用群と比べて卒中が2割弱少なかったが、死亡は1.3倍、重度出血は4倍、致死的出血は5.5倍だった(おそらく検出力不足のせいで死亡関連のデータは有意ではない)。

リンク: EMAのプレスリリース


インサイト、PI3K阻害剤の加速承認申請を撤回
(2022年1月25日発表)

インサイト(Nasdaq:INCY)はPI3Kデルタ阻害剤INCB050465(parsaclisib)の加速承認をFDAに申請していたが、撤回することを明らかにした。第2相試験の反応率データに基づいて難治再発性の濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、そしてマントル細胞腫における適応を求めたが、市販後薬効確認試験に必要な期間や費用など実務的な理由で、断念した。

今月はギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)も、PI3Kデルタ阻害剤Zydelig(idelalisib)の米国における三つの適応症のうち、再発性濾胞性B細胞非ホジキンリンパ腫と再発性小リンパ球性白血病を返上する旨、FDAに申請した。第2相試験の反応率データに基づいて加速承認されたが、市販後薬効確認試験の進捗が順調でなかったことや、他の選択肢が複数存在することなどから、撤回に踏み切った。今後は、本承認されている再発性慢性リンパ球性白血病だけに用いられることになる。

昨年12月には、Secura BioがPI3Kデルタ/ガンマ阻害剤Copiktra(duvelisib)の適応のうち難治再発性濾胞性リンパ腫(加速承認)を返上している。

加速承認は、臨床的な便益が危険を上回ることが合理的に推測できる薬であることを示している。推測なので、期待が裏切られ、迅速承認ではなく拙速承認というオチになることも想定の範囲内だ。昨年来、FDAが棚卸に取り組みはじめ、抗PD-1/PD-L1抗体やPI3Kガンマ/デルタ阻害剤で適応返上が散発している。

PI3K阻害剤では、濾胞性リンパ腫の三次治療薬として17年に加速承認されたバイエルのAliqopa(copanlisib)の第3相rituximab併用試験が成功、昨年6月に米国で適応拡大申請された。早晩、承認されるとともに、モノセラピーによる三次治療も本承認に切り替わるのではないか。Aliqopaの実薬対照試験は開始から主評価項目(PFSにおける優越性)達成まで5年かかった。同じ疾病における似たような薬の似たような臨床試験に患者を組入れるのは容易ではないので、他社はもっと時間がかかるだろう。

Aliqopaは上記試験などに基づいて欧州で再発辺縁帯リンパ腫だけに承認申請されたが、CHMPに支持されず、取り下げとなった。緩徐進行型非ホジキン腫で承認を取ることの難しさが窺われる。

リンク: インサイトのプレスリリース
リンク: ギリアド・サイエンシズの声明(1/14付)


リジェネロンら、子宮頸がんの適応拡大申請を撤回
(2022年1月28日発表)

リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)とサノフィは、抗PD-1抗体Libtayo(cemiplimab-rwlc)を難治/転移子宮頸癌の治療に用いる適応拡大を米国で申請していたが、処方薬ユーザー・フィー法に基づく審査期限の1月30日を前に、撤回を発表した。市販後コミットメント試験に関してFDAの要求を受け入れられなかった模様だが、詳細は不明。

日本の施設も参加した第3相化学療法併用試験で全生存ハザードレシオが0.7だったので、加速承認後の薬効確認試験が争点になった訳ではないだろうが、上記インサイトの事例と似ていることが気になる。

リンク: 両社のプレスリリース


リフヌアは米国では承認されず
(2022年1月24日発表)

MSDはMK-7264(gefapixant)を難治性/原因不明の慢性咳嗽の治療薬として開発、1月に日本でリフヌア名で承認されたところだが、米国は審査完了通知を受領した。薬効測定に関する追加情報を求められた模様だ。詳細は不明だが、塩野義製薬など類薬を開発している企業にもインプリケーションがありそうだ。

09年にロシュからスピンアウトしたAfferent Pharmaceuticalsを16年に買収して入手したもの。気道粘膜の炎症等により放出されたアデノシン三リン酸が気道の迷走神経のC線維状のP2X3受容体に結合して過剰感作するのを抑制する。副作用は味覚異常・喪失が用量依存的に発生する。COVID-19と被るのが嫌な感じだ。

第3相試験二本では、15mgまたは45mgを一日二回、経口投与して、一本は第12週の、もう一本は第24週の、咳嗽頻度を胸部センサー付きデジタル録音装置を用いて24時間計測した。15mg群はフェールしたが、45mg群はボーダーライン上とはいえ統計的に有意だった。具体的には、一本ではベースラインの時間当り18回から7回に減少した(偽薬群は22回から10回に減少)。もう一本は24回から8回に減少した(偽薬群は25回が10回)。解析対象が異なるが、相対リスク削減率は前者が18.4%(p=0.041)、もう一本は14.6%(0.031)だった。

p値があまり低くないことに加えて、有害事象による治験離脱率が12週の試験では15%(偽薬群は3%)、24週の試験は20%(同5%)と比較的高いので、投与打切例や追跡不能例のデータをどう処理するかによって結論が変わってしまうかもしれない。

そもそも、録音方式は自己記録より正確・客観的な手法ではあるのだろうが、もしカウントもデジタル処理(自動判定)ならば、アルゴリズムの妥当性を検討しなければならないだろうし、人の耳なら、判定の揺らぎや個人差をどう回避したのかも知りたいところだ。

FDAの懸念とは無関係かもしれないが、日本のインタビューフォームに収載されている期中推移のグラフを見ると、第12週辺りから二本のカーブが接近し始め、第24週には更に接近している。長期服用時に作用が減衰しないか、気に掛かるところだ。

リンク: MSDのプレスリリース

オルミエントはアトピーには承認されない?
(2022年1月28日発表)

イーライリリーとインサイト(Nasdaq:INCY)は、中重度リウマチ性関節炎などに承認されているJAK1/2阻害剤、Olumiant(baricitinib、和名オルミエント)の適応拡大プロジェクトについて、ニ点、アップデートした。一つは活性期全身性エリテマトーデスの第3相中止。二本実施したが、主評価項目(SRI-1)の解析は一勝一敗、副次的評価項目は二敗だった。

もう一つは、成人の中重度アトピー性皮膚炎の適応拡大申請に関して、FDAから審査完了通知を受領する可能性が高まった由。適応範囲について見解の相違が生じたようだ。

JAK阻害剤は心血管疾患や血栓症、感染症、癌のリスクが高まる懸念があり、FDAが承認審査を厳格化している。バイオ薬が承認されている用途ではバイオ薬不応不耐に限定することで決着したように感じられ、止まっていた適応拡大申請が動き出している。アトピーではアッヴィのRinvoq(upadacitinib、和名リンヴォック)が12歳以上の中重度アトピー性皮膚炎でバイオ薬を含む他の薬に管理不良または不適な患者に承認されたばかり。それだけに、サプライズだ。

Olumiantは何が違うのか、よくわからないが、RinvoqはDupixent(dupilumab)直接比較試験で効果が同等以上だったエビデンスを持っている点が評価されたのかもしれない。あるいは、イーライリリーが、日欧の適応と同様に、バイオ薬不応不耐に限定しないことを求めたのかもしれない。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

【承認】


眼科の二重特異性抗体が承認
(2022年1月28日発表)

ロシュ・グループのジェネンテックは、FDAがVabysmo(faricimab-svoa)を新生血管加齢性黄斑変性と糖尿病性黄斑浮腫の治療薬として承認したと発表した。最初の4回は月一回、その後は患部の状態に合わせて1~4ヶ月毎に、硝子体注射する。

VEGF-Aとアンジオポイエチン-2に結合する二重特異性抗体で、効果はVEGFだけに結合する既存薬と非劣性なだけだが、臨床試験で5割近い患者が16週毎投与に移行したエビデンスを持つ。主な有害事象は結膜出血。日欧でも承認審査中。

リンク: 同社のプレスリリース


初のブドウ膜黒色腫用薬が承認
(2022年1月26日発表)

Immunocore(Nasdaq:IMCR)はFDAがKimmtrak(tebentafusp-tebn、通称IMCgp100)をHLA-A*02:01陽性の成人の切除不能/転移ブドウ膜黒色腫に承認したと発表した。EUや英国、カナダ、オーストラリアでも承認申請中。

ブドウ膜黒色腫は眼内腫瘍。米国の罹患数は年1600~2000人。手術や放射線療法が施行されるが、5割程度は転移し、承認されている治療薬は今までなかった。KimmtrakはHLA-A*02:01型の黒色腫細胞が抗原提示するgp100ペプチドを認識する可溶性T細胞受容体と、CD3に結合する抗体の短鎖可変領域フラグメントを細胞融合した二重特異性T細胞エンゲージャー。週一回点滴静注。用量は三段階漸増する。

第3相実薬対照試験(対照群の82%はKeytrudaを選択)では全生存のハザードレシオが0.51、メジアン生存期間は21.7ヶ月対16.0ヶ月だった。G3以上の有害事象はラッシュ、発熱、掻痒など。サイトカイン放出症候群が枠付警告されており、最初の3回とその後も必要に応じて、投与後16時間以上観察する必要があるが、臨床試験におけるG3以上の発生率は1%未満で、致死例はなかった。

同社の技術は患者の細胞を採取して加工するCAR-T(キメラ抗原受容体-T細胞)療法とは異なり、テイラーメイドの必要はないが、対応するヒト白血球抗原型を持つ患者にしか使えない。A*02:01型はカフカス人種の5割を占めるとされるが、日本人は1割と多くない。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Immunocoreのプレスリリース


骨化性線維異形成症用薬がカナダで承認
(2022年1月24日発表)

イプセンは、Sohonos(palovarotene)がカナダで進行性骨化性線維異形成症用薬として承認されたと発表した。女性は8歳以上、男性は10歳以上の患者が適応になる。臨床試験では新規の異所性骨化が自然歴より少なかった。

レチノイン酸受容体ガンマのアゴニスト。13年にロシュからインライセンスしたカナダ企業を19年に一時金10億ドル及び達成報奨金2.6億ドルで買収して入手した。

臨床試験で成長板の早期閉鎖が見られ、19年に14歳未満の患者に関する部分治験停止をFDAから命じられた。米国では21年5月に承認申請したが、臨床試験の追加分析・評価が求められ、一旦、撤回した。今年上期に再申請する予定。

リンク: イプセンのプレスリリース





今週は以上です。

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