2022年1月22日

第1034回

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • FDA、ベクルリーを軽中等症の外来患者に適応拡大 
  • その他の領域: 
  • デュピクセントを結節性痒疹に適応拡大申請へ 
  • ビンゼレックスを適応拡大申請へ 
  • ASCO GI:イミフィンジの胆道癌試験が成功 
  • ASCO GI:イミフィンジの肝臓癌一次治療試験も成功 
  • ASCO GI:キイトルーダ、アジアの肝細胞腫試験は成功 
  • リジェネロン、抗PD-1抗体を併用で肺癌に承認申請 
  • エンハーツのMBC二次治療を米国でも申請 
  • エヌジェンラは米国では審査完了に 
  • スキリージが米国でも乾癬性関節炎に適応拡大 


【COVID-19関連】


FDA、ベクルリーを軽中等症の外来患者に適応拡大
(2022年1月21日発表)

FDAはギリアド・サイエンシズのVeklury(remdesivir)を軽中等症だが重症化リスクを持つ体重3.5kg以上のCOVID-19感染者の外来治療に用いる適応拡大を認めた。12歳以上且つ体重40kg以上の患者に関しては正式な承認、体重3.5kg以上40kg未満の小児と12歳未満で体重3.5kg以上の承認についてはEUA(非常時使用認可)だ。年齢や体重に応じて用量を決定し、一日一回、3日連続で点滴静注する。

発症から7日以内の患者を組入れた第3相PINETREE試験では、28日間のCOVID-19関連入院/全死亡が偽薬群は283人中15人(5.3%)だったのに対して試験薬群は279人中2人(0.7%)に留まり、ハザードレシオは0.13、p=0.008だった。両群とも死亡は発生しなかった。

この試験は1264人を組入れる予定だったが、抗SARS-CoV-2抗体が承認されたため偽薬対照試験の続行が困難になり、昨年4月に新規組入れを終了、既存症例だけの盲検を続けた経緯がある。抗体医薬は発症10日以内と治療ウインドウが若干広く一回投与で足りるのでVekluryより使いやすいが、Vir/GSKのXevudy(sotrovimab)以外はオミクロン株に対して無効/エビデンス欠落なので、代替的な治療薬が必要だ。

経口剤のうち、MSDのLagevrio(molnupiravir)は効果が弱く、動物試験で催奇性が見られたため、妊婦には推奨されず、男性は治療終了後3ヶ月間、妊娠させないよう注意する必要がある(米国の場合。日本の添付文書や患者同意書には記されていない)。ファイザーのPAXLOVID(nirmatrelvir錠とritonavir錠)は便益の面でも危険の面でも大きな問題はないが、経口剤二剤は発症後5日以内と治療ウインドウが狭いことが制約になる。

リンク: FDAのプレスリリース

【新薬開発】


デュピクセントを結節性痒疹に適応拡大申請へ
(2022年1月19日発表)

リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)とサノフィは、Dupixent(dupilumab)の二本目の第3相結節性痒疹試験が成功したと発表した。適応拡大を申請する考え。

結節性痒疹は強い痒みを伴う皮膚疾患。DupixentはIL-4受容体のアルファ・サブユニットを標的とする抗体医薬で、アトピー性皮膚炎や好酸球性/難治性の喘息症、鼻ポリープによる慢性副鼻腔炎などの治療に承認されている。

この二本の試験は、第一選択薬である局所性ステロイドで十分に管理できない患者を組入れて、二週毎皮注する効果を偽薬と比較した。局所性低・中力価ステロイドの継続使用可。主評価項目の掻痒緩和奏効率は、一本目が37%(偽薬群は22%)、今回は60%(同18%)となり、二本とも偽薬比有意な差があった。副次的評価項目の病変治癒率も各45%(同16%)と48%(同18%)と、こちらは二本とも類似した結果になった。

リンク: 両社のプレスリリース


ビンゼレックスを適応拡大申請へ
(2022年1月18日発表)

UCBはBimzelx(bimekizumab)の二本目の第3相軸性脊椎関節炎試験と二本目の第3相乾癬性関節炎が成功したと発表した。

BimzelxはIL-17AとIL-17Fに結合する二重特異性抗体。中重度プラク乾癬用薬として昨年8月にEUで、1月20日には日本でも、承認された。一方、米国は連邦職員の渡航制限により欧州工場の査察が遅れ、審査期限超過となっている。

軸性脊椎関節炎は活性期強直性脊椎炎を組入れた試験が12月に成功したのに続いて、今回、活性期nr-axSpA(X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎)試験が成功した。

活性期乾癬性関節炎試験はバイオ薬歴を持たない患者を組入れた試験に続いて、今回、TNF阻害薬に不応不耐患者の試験が成功した。

データは未公表。第3四半期に両適応症で承認申請する予定。

リンク: 同社のプレスリリース(軸性脊椎関節炎)
リンク: 同(乾癬性関節炎、1月21日付)


ASCO GI:イミフィンジの胆道癌試験が成功
(2022年1月18日発表)

アストラゼネカは昨年10月、抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)の胆道癌一次治療試験が中間で成功認定されたことを明らかにしたが、ASCO GI(米国臨床腫瘍学会胃腸腫瘍シンポジウム)でデータを発表した。進行した胆管腺腫や胆嚢癌などの患者685人を組入れて、gemcitabineとcisplatinの標準療法にImfinziを追加する効果を検討したところ、全生存期間のハザードレシオが0.80、副次的評価項目のPFS(無進行生存期間)は0.75と、どちらも偽薬追加群を有意に上回った。

メジアン生存期間は12.8ヶ月対11.5ヶ月と、ごく僅差だが、2年生存率は25%対10%と比較的大きな差が出ている。追跡期間が延びるほどサンプル数が減少しデータの信頼性が低下するが、免疫療法の場合は一部の患者が比較的長く生きる傾向も見られるので、こんなことがあっても不思議ではない。

G3/4の治療時発現有害事象発生率は両群大差なかった。G5も0.6%対0.3%で大差なかった。

リンク: 同社のプレスリリース


ASCO GI:イミフィンジの肝臓癌一次治療試験も成功
(2022年1月18日発表)

アストラゼネカは昨年10月、Imfinzi(tremelimumab)のHIMALAYA試験が成功したと発表したが、データをASCO GIで公表した。一次治療を受ける、切除不能・局所治療不適な進行肝細胞腫の1324人を組入れて、抗CTLA-4抗体durvalumab(300mg)を一回だけ投与した後にImfinzi(1500mg)を4週毎投与するSTRIDEレジメンと、Imfinziだけを4週毎投与するモノセラピーの効果をNexavar(sorafenib)と比較したもので、STRIDEレジメンのハザードレシオは0.78で優越性解析が、モノセラピーは0.86で非劣性解析が、成功した。

各群のメジアン生存期間は16.4ヶ月、16.6ヶ月、13.8ヶ月、2年生存率は41%、40%、33%、3年生存率は31%、25%、20%。G3/4治療時発現有害事象発生率は25.8%、12.9%、36.9%。G5は2.3%、0%、0.8%。

このデータだけ見ると、モノセラピーで十分のようにも感じられる。

この用途ではロシュの抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)と抗VEGF抗体Avastin(bevacizumab)の併用が20年に日米欧で承認されている。第3相sorafenib対照試験で全生存のハザードレシオが0.58と、STRIDEレジメンより見栄えのする数値が出ている。メジアン生存期間は未達だが、sorafenib群は13.2ヶ月なので今回と大差なく、異なった試験の数値を比較するべきではないとディスクレマーを入れるのが躊躇される。

一方、BMSのOpdivo(nivolumab)のCheckMate-459試験はフェールした。メジアン生存期間は16.4ヶ月、sorfenib群は14.7ヶ月、ハザードレシオは0.85なので、Imfinziモノセラピー群と大差なく、STRIDE群とも大きくは変わらない。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース


ASCO GI:キイトルーダ、アジアの肝細胞腫試験は成功
(2022年1月18日発表)

MSDは昨年9月、抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)のKEYNOTE-394試験成功を発表したが、データをASCO GIで発表した。sorafenibによる治療歴を持つ進行肝細胞腫453人を中国などアジアの施設で組入れて、Keytruda群と偽薬群に2:1割付して全生存期間を比較したところ、ハザードレシオが0.79となった。p値は0.018と最終解析の閾値である0.019307を僅かに下回るだけ、メジアン値は14.6ヶ月対13.0ヶ月で差は1~2ヶ月と、統計学的にも臨床的にも大きな差とは呼び難い。

副次的評価項目のPFSはハザードレシオ0.74、p値は0.0032(閾値は0.013447)と良好な解析結果となったが、メジアン値は2.6ヶ月対2.3ヶ月で僅少だ。

G3-5の治療時発現有害事象発生率は14.4%対5.9%、治療薬関連の死亡は3人で、胃腸出血、自己免疫肝炎、軟組織感染症によるもの。

Keytrudaは18年に米国で進行肝細胞腫の二次治療に用いることが加速承認されたが、市販後コミットメント試験であるKEYNOTE-240試験がフェールした。今回の成功で加速承認が本承認に切り替わる可能性があるが、今回発表されたデータだけでは、説得力が弱いように感じられる。

承認されても普及するかどうか、不透明だ。一次治療で抗PD-L1抗体を含む併用レジメンが普及すれば、再発治療にKeytrudaを用いる有効性を改めて検討する必要があるだろう。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


リジェネロン、抗PD-1抗体を併用で肺癌に承認申請
(2022年1月19日発表)

リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)は抗PD-1抗体Libtayo(cemiplimab-rwlc)を局所進行性/転移性非小細胞性肺癌の一次治療に化学療法薬と併用する適応拡大を欧米で申請したと発表した。米国では受理され、審査期限は9月19日に設定された。臨床試験では全生存のハザードレシオが0.71、メジアン生存期間は22ヶ月と偽薬群の13ヶ月を上回った。

LibtayoはモノセラピーがPD-L1高発現の非小細胞性肺癌の一次治療、皮膚扁平上皮腫、基底細胞腫に承認されている。

リンク: 同社のプレスリリース


エンハーツのMBC二次治療を米国でも申請
(2022年1月17日発表)

第一三共と開発販売パートナーのアストラゼネカは、抗her2抗体薬物複合体Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)の適応拡大をFDAに申請し受理されたと発表した。her2陽性転移性乳癌における現在の適応は、二種類以上のher2標的薬歴を持つ患者の三次治療以降だが、二次治療以降に拡大する計画。

典型的なher2標的二次治療薬であるロシュの抗her2抗体薬物複合体Kadcyla(ado-trastuzumab emtansine)と比較した臨床試験では、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のハザードレシオが0.28(統計的に有意)、副次的評価項目の全生存期間のハザードレシオは0.56(未成熟で有意水準には未達)だった。

Enhertuはtrastuzumab系の薬による治療歴を持つher2陽性局所進行/転移性の胃癌/胃食道接合部腺腫に用いることも米国で承認されている。

リンク: 両社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


エヌジェンラは米国では審査完了に
(2022年1月21日発表)

OPKO Health(Nasdaq:OPK)とライセンシーのファイザーは、長期作用性遺伝子組換えヒト成長ホルモン製剤のsomatrogonをソマトロピン欠乏症の治療薬として承認申請し、日本では今月、承認され、EUでも昨年12月にCHMPの肯定的意見を獲得したが、米国は審査完了通知を受領した。何がボトルネックなのかは公表されていない。両社はFDAと協議して今後の方策を決定する考え。

リンク: 両社のプレスリリース

【承認】


スキリージが米国でも乾癬性関節炎に適応拡大
(2022年1月21日発表)

アッヴィはSkyrizi(risankizumab-rzaa)を活性期乾癬性関節炎の治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。バイオ薬やDMARDに不応不耐の患者を組入れた試験二本でACR20奏効率が偽薬を有意に上回った。最初の二回は4週おいて皮注するが、その後は3ヶ月毎と、回数が少なく済むことが特徴。

IL-23p19を標的とする抗体医薬で19年に日米欧で中重度乾癬治療薬として承認された。乾癬性関節炎はEUでは昨年11月に承認された。

リンク: 同社のプレスリリース






今週は以上です。

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