2022年1月8日

第1032回

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • コミナティ、FDAが3回目接種の間隔短縮、対象年齢引き下げ 
  • GM-CSF標的薬の第2/3相がフェール 
  • その他の領域: 
  • オブシーバ社、リンザゴリクスの子宮内膜症試験も成功 
  • 第3相ATTR-CM試験、最初の解析はフェール 
  • アッヴィ、リンヴォックをnr-axSpaに適応拡大申請 
  • JNJ、BCMA・CD3二重特異性抗体を承認申請 
  • クッシング症候群治療薬が承認 
  • LEO、抗IL-13抗体がアトピーに米国でも承認 
  • PRAC、オルメサルタンの有害事象に自己免疫性肝炎を追加 


【COVID-19関連】


コミナティ、FDAが3回目接種の間隔短縮、対象年齢引き下げ
(2022年1月3日発表)

ファイザーとBioNTech(Nasdaq:BNTX)は、共同開発販売しているCOVID-19ワクチン(tozinameran、欧州名Comirnaty、和名コミナティ)の3回目接種に関して、FDAがEUA(非常時使用認可)の一部変更を認めたと発表した。これまでは16歳以上を対象に2回目の接種から6ヶ月以上経った段階でブースター接種するとされていたが、12歳以上に5ヶ月以上経ってから、に変わった。対象年齢拡大の根拠は12歳以上16歳未満を組入れた免疫原性試験。間隔の短縮はイスラエルにおける410万人を超える接種実績というリアル・ワールド・データである模様だ。

このワクチンは臓器移植などにより免疫不全状態にある場合はプライマリー接種を3回とすることがEUAされているが、今回、対象年齢が12歳以上から5歳以上に拡大された。5~11歳は最初の二回と同様に10mcgを接種する。間隔は12歳以上と同じで、2回目接種の28日以上後。エビデンスは臓器移植を受けた成人に関する研究データのようだ。

FDAは後日、モデルナのCOVID-19ワクチンについても、ブースター接種の間隔を5ヶ月以上に変更した。

リンク: 両社のプレスリリース



GM-CSF標的薬の第2/3相がフェール
(2021年12月28日発表)

バミューダ籍の Kiniksa Pharmaceuticals(Nasdaq:KNSA)は、KPL-301(mavrilimumab)の第2/3相COVID-19肺炎試験がフェールしたと発表した。研究者主導試験や第2相ポーションでは好ましい成績を挙げたが、再現されなかった。

Cambridge Antibody Technology(CAT)がAMRAD(後にCSLが買収)と共同開発したGM-CSF受容体アルファ・サブユニットに結合するIgG4型ファージディスプレイ抗体で、CATを買収したアストラゼネカからKiniksaが17年に権利取得、巨細胞性動脈炎の第2相試験が成功したが、研究者主導試験で14日酸素投与不要生存率が57.1%と偽薬群の47.4%を上回るトレンドが見られたことから、COVID-19を優先して第2/3相にステージアップした。第2相ポーションでは人工呼吸医管理を受けていない患者116人を組入れたコフォート1で29日無人工呼吸器装着生存率が86.7%と偽薬群の74.4%を上回るトレンドを示した。

第3相では、肺炎を合併または炎症が亢進した成人の重症COVID-19入院患者582人を組入れて二用量をテストしたが、29日無人工呼吸器装着生存率が有意に改善しなかった。

リンク: 同社のプレスリリース


【新薬開発】


オブシーバ社、リンザゴリクスの子宮内膜症試験も成功
(2022年1月6日発表)

スイスのObsEva(Nasdaq:OBSV)は、linzagolixの第3相子宮内膜症試験、EDELWEISSの結果を発表した。中重度子宮内膜炎関連疼痛の女性484人を組入れて、75mg一日一回投与と、ホルモン・アドバック・セラピー併用で200mg一日一回投与する用量用法の効果を偽薬と比較した試験で、主評価項目の一つは月経困難症(DYS)改善奏効率、もう一つは非月経骨盤痛(NMPP)改善奏効率。何れも被験者が0から3の4段階で評価し、3ヶ月時点の数値がベースライン比でDYSは1.1以上、NMPPは0.8以上改善したら奏功と判定した。

偽薬、75mg、200mgのDYS奏効率は各群24%、43%、73%となり、二群とも偽薬比p<0.001だった。一方、NMPP奏効率は各群31%、39%、47%となり、200mgのみp=0.007で有意だった。

忍容性は概ね良好。紅潮の発現率は各群2.5%、7.5%、6.8%だった。骨密度影響は、両用法とも腰椎BMDが6ヶ月時点で0.8%前後の低下に留まった。

linzagolixはキッセイ薬品から導入した非ペプチド系GnRH受容体アンタゴニスト。子宮筋腫の月経過多治療薬として欧米で承認申請中。この種の薬は欧米ではエストロゲン及びプロゲスチンを併用して副作用を緩和するホルモン・アドバック・セラピーが広く用いられているが、linzagolixは子宮筋腫に関しては単剤でも有効であることが特徴(子宮筋腫試験では75mgではなく100mgを採用)。

リンク: オブシーバのプレスリリース



第3相ATTR-CM試験、最初の解析はフェール
(2021年12月27日発表)

BridgeBio Pharma(Nasdaq:BBIO)は、acoramidisの第3相ATTR-CM(トランスサイレチン型心アミロイドーシス)試験でパートAにおける主目的を達成できなかった。NYHAクラスI-IIの患者632人を試験薬群(800mg一日二回経口投与)と偽薬群に2対1無作為化割付して、12ヶ月後の6分歩行テスト値の低下を比較したところ、各群平均9メートルと7メートルとなり、p=0.76だった。パートBでは通算30ヶ月間追跡して心血管関連入院や死亡のリスクを比較する予定。

acoramidisはファイザーのVyndaqel(tafamidas)と同様にトランスサイレチンを安定化させ、アミロイドーシスの進行を抑制する。スタンフォード大学からライセンス。日本ではアレクシオンがライセンス、昨年、ブリッジング試験を開始した。

パートAの敗因は不明だが、偽薬群の低下が小さいことが印象的。Vyndaqelの試験では12ヶ月時点で60メートル程度低下していた。BridgeBioによると、年7メートルというのは通常の高齢者の低下と大差ない。Vyndaqelの試験と比べてトランスサイレチン遺伝子変異を持つ患者や米国患者の比率が低いことが何らかの影響を及ぼしたのかもしれない。

リンク: 同社のプレスリリース


【承認申請】


アッヴィ、リンヴォックをnr-axSpaに適応拡大申請
(2022年1月7日発表)

アッヴィはJAK1阻害剤Rinvoq(upadacitinib)をnr-axSpA(X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎)に用いる適応拡大を欧米で承認申請したと発表した。NSAIDsに十分に反応しない患者に15mgを一日一回経口投与を想定している。

nr-axSpAは強直性脊椎炎(AS)に類似した疾患で同様な治療が行われている。Rinvoqは日欧米で中重度のリウマチ性関節炎/乾癬性関節炎に承認されていて、日欧ではアトピー性皮膚炎、欧州ではASにも承認されている。

FDAはJAK阻害剤の副作用に強い警戒感を持っており、適応拡大が遅れている。バイオ薬が承認されている疾患に関してはバイオ薬優先と考えており、アッヴィは、ASに関して、バイオ薬不応不耐患者の試験結果を提出した。

リンク: 同社のプレスリリース



JNJ、BCMA・CD3二重特異性抗体を承認申請
(2021年12月29日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、ヤンセンがJNJ-7957(teclistamab)をFDAに承認申請したと発表した。ジェンマブ社のDUOBODY技術を用いて開発した、BCMA(B細胞成熟抗原)とCD3に結合する二重特異性抗体で、難治再発性多発骨髄腫に用いる。第2相と第1相試験では、免疫調停薬とプロテアーゼ阻害剤及び抗CD38抗体による治療歴を持つ患者に1.5mg/kgを投与したところ、ORR(客観的反応率)が62%だった。

リンク: JNJのプレスリリース


【承認】


クッシング症候群治療薬が承認
(2021年12月30日発表)

米国シカゴのXeris Biopharma(Nasdaq:XERS)はFDAがRecorlev(levoketoconazole)を承認したと発表した。アゾール系経口抗真菌薬の先駆けであるketoconazokeの2S, 4R異性体で、コルチゾール合成阻害作用を利用して、クッシング症候群の成人患者の手術不応不適な内因性高コルチゾール血症の治療に用いる。150mg一日二回経口投与で開始して最大で600mg一日二回まで、150mg/日ずつ、毎回2~3週間以上離して、漸増する。

ラセミ体と本剤に関する重度肝毒性と、用量依存的なQT延長リスクが枠付警告された。

21年10月にStrongbridge Biopharmaを買収して入手したパイプライン。

リンク: 同社のプレスリリース



LEO、抗IL-13抗体がアトピーに米国でも承認
(2021年12月28日発表)

皮膚病薬を展開するデンマークのLEO Pharmaは、Adbry(tralokinumab-ldrm)が米国でアトピー性皮膚炎治療薬として承認されたと発表した。IL-13を標的とするIgG4抗体で、局所治療薬に十分反応しない、または不適な、成人の中重度アトピー性皮膚炎に用いる。150mgの針付きプリフィル用シリンジを初回は4本、その後は2週毎に2本を皮注する。体重100kg未満で16週の治療後にIGA0/1(病変部位がクリアまたはほぼクリアに)達成なら間隔を4週毎に広げることも可。モノセラピーの第3相試験二本ではIGA0/1達成率が2割前後(偽薬は1割前後)、局所製剤に追加した試験では39%(同26%)だった。警告注意事項は結膜炎と角膜炎、寄生虫感染症、生ワクチン回避など。

EUでは6月にAdtralza名で承認されている。

リンク: 同社のプレスリリース


【医薬品の安全性】


PRAC、オルメサルタンの有害事象に自己免疫性肝炎を追加
(2022年1月6日発表)

EMAの市販後薬物監視委員会であるPRACは、olmesartan配合剤のSPC(製品特徴要旨;レーベル)の一部変更をメーカーに要求した。薬物関係の可能性がある有害事象として自己免疫性肝炎を追加するもの。頻度は不明、発症は数ヶ月から数年後と遅く、服用を止めれば可逆的とのことだ。

olmesartanは第一三共が創製したARBで高血圧症の治療などに用いられる。02~04年に米独英日などで発売された。稀な遅発性免疫反応関連有害事象としてはスプルー様腸疾患が知られているが、自己免疫性肝炎は最初の症例報告が17年ごろと、比較的新しい知見だ。PRACは文献情報に加えて欧州の有害事象報告システムであるEudraVigilanceのデータも考慮した上で今回の結論を出した。米国のレーベルには記されていない。

リンク: PRACの推奨(21年11~12月会議決定分、pdfファイル)





今週は以上です。

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