2021年12月25日

第1031回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • ファイザーの経口治療薬がEUA 
  • MSDのモルヌラビルは、男性は要注意 
  • 回復期血漿の試験が今度は成功 
  • モデルナのワクチンも三回接種すればオミクロンに有効 
  • EU、ノババックスのワクチンを承認 
  • その他の領域: 
  • ファイザー、DMDの遺伝子療法で死亡者 
  • CD感染症の第3相がフェール 
  • ノバルティス、新薬がゾレアに勝てず 
  • Aldeyra社、一本目の第3相ドライアイ試験がフェール 
  • 遺伝子シグネチャーでスクリーニングするVEGFR阻害剤を承認申請 
  • ユルトミリスを筋無力症に適応拡大申請 
  • 武田、好酸球性食道炎用薬は度重なる遅延の挙句、承認されず 
  • 高脂血症治療用RNA介入薬が承認 
  • 長期作用性HIV感染予防薬が承認 
  • 統合失調症治療薬が双極性障害鬱症状に適応拡大 
  • オテズラ、尋常性乾癬の中重度限定が解除 


【COVID-19関連】


ファイザーの経口治療薬がEUA
(2021年12月22日発表)

ファイザーは、FDAがPAXLOVID(nirmatrelvir錠とritonavir錠の同梱製品)を軽中等症COVID-19感染症の治療薬としてEUA(非常時使用認可)したと発表した。SARS-CoV-2感染が確認された、12歳以上、体重40kg以上の青少年と成人のうち、重症化リスク因子を持つ患者に、各剤を一日二回、5日間経口投与する。発症から5日以内に投与を開始する。活性成分等に過敏反応歴を持つ患者や重大なCYP3A相互作用のある薬との同時使用は禁忌。妊婦や授乳は大きな問題はなさそうだが、個々に判断する。警告事項は肝毒性と、ritonavir抵抗性HIV-1を誘導するリスク。

nirmatrelvvir(PF-07321332)はSARS-CoV-2の3CLプロテアーゼを選択的に阻害してウイルスの複製を妨げる。ritonavirはHIV-1の複製を阻害するプロテアーゼ阻害剤だが、CYP3A4阻害作用を持っているため、この代謝酵素で分解される薬の持続性を高め投与頻度を抑制する目的で低量を併用する。ritonavir-boostと呼ばれる手法で、これまでは主として抗HIV/AIDS薬に用いられてきた。

発症5日以内の患者を組入れた臨床試験では、偽薬群のCOVID-19関連入院・全死亡が1046人中66人、6.3%だったのに対して、試験薬群は1039人中8人、0.8%に留まった。死亡者は各群12人とゼロだった。深刻有害事象の発生率は4.1%対2.1%、有害事象による治験離脱は4.2%対2.1%で何れも偽薬群を下回った(以上、最終解析値)。この試験は発症3日以内に開始した患者における解析を主評価項目としたが、概ね同様な結果になっている。

リンク: ファイザーのプレスリリース



MSDのモルヌラビルは、男性は要注意
(2021年12月23日発表)

MSDは、FDAがmolnupiravirを成人の軽中等症COVID-19治療薬としてEUAしたと発表した。重症化リスク因子を持ち、FDAに承認された治療法が不能または臨床的に不適な患者に用いる。18歳未満やCOVID-19で入院した患者に投与を開始すること、5日コースを越えて投与することなどは認められていない。妊婦に投与することは推奨されない。妊娠可能年齢の女性は妊娠していないことを確認するとともに、投与開始から完了の4日後まで避妊手段を取る。授乳も同じ期間、避ける。男性も妊娠させる可能性がある場合は服用中と終了後3ヶ月間(!)、避妊手段を取る。

エモリー大学の研究者が発見し、最初のライセンシーであるRidgeback BiotherapeuticsとMSDが共同開発したRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤。陽方向鎖ゲノムRNA(+gRNA)から-gRNAを生成する過程でRNAポリメラーゼを欺き、グアニンの代わりにシトシンなど、雛型とは異なる塩基を結合させる。複製を繰り返すうちにミスが積み重なり、『エラー・カタストロフィー』が起きる。

MSDのプレスリリースに明記されているように、molnupiravirは、PAXLOVIDと同様に、FDAに承認されていない。上記の、承認されている薬がある場合はそちらを優先という記述は全てのEUA品目に当てはまるものだろうが、おそらく、PAXLOVIDが使えるならmolnupiravirは使わない方が良いという含意もあるだろう。

違いは、第一に、臨床成績。PAXLOVIDは入院・死亡リスクを9割抑制したが、molnupiravirは3割だ。臨床試験のデザインや評価項目の定義などが一部異なるので単純には比較できないが、これだけ違うと、推定誤差など吹っ飛んでしまう。第二に、ウイルスの変異リスク。作用機序的に、オミクロン株のような好ましくない変異を持つウイルスが生まれてしまう可能性を排除できない。第三に、胎児に対するリスク。妊娠しても直ぐに分かるわけではないし、男の妊娠回避期間3ヶ月などというのは初めて聞いた。因みに、類薬のアビガン(ファビピラビル)の日本における規制は投与終了後7日間だけだ。

molnupiravirは11月に英国で条件付き承認された。根拠は入院・死亡リスク半減という中間解析で、3割という最終解析結果が判明したのはそのあとである。EUのCHMPは加盟国に対して肯定的な推奨を行ったが、報道によると、フランスは承認せず調達合意もキャンセルした。

日本でも特例承認されたが、早くPAXLOVIDが使えるようになってほしいものだ。発症5日以内というのは検査を受けるタイミングなどを考えるとかなりタイトなので、配送をもっとスピードアップできないものか。

リンク: MSDのプレスリリース



回復期血漿の試験が今度は成功
(2021年12月21日公開)

感染症から立ち直ったばかりの患者から採取した回復期血漿(CCP)は、エボラウイルス疾患などの難病が流行した地域で、治療薬が開発されるまでの繋ぎとして用いられてきた。COVID-19でも試されたが、キチンとしたデザインの臨床試験が続々とフェールしたため、FDAはEUA(非常時使用認可)を取消し、WHOも便益を示すエビデンスは不十分と断じている。

ところが、Johns Hopkinsなどの研究者が実施した高力価CCPの無作為化割付偽薬対照二重盲検試験が成功し、査読前の治験論文がmedRx査読前論文サーバーで公開された。遺伝子組換え型抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体と同様に、入院するほど悪化していない患者に投与すれば入院リスクを抑制できる可能性が示された。

この試験は発症8日以内の非入院患者1181人を組入れて、COVID-19関連入院リスクを28日間追跡した。結果は、偽薬群では569人中37人、6.3%が入院したのに対して、CCP群は592人中17人、2.9%に留まり、相対リスクは0.46、95%上限0.733、p=0.004だった。共変数を調整した解析でも結果は同様だった。

遺伝子組換え型モノクローナル抗体(rMab)の試験と幾つか違いがあるので以下、検討しよう。まず、rMabの試験は発症からスクリーニング/割付までの期間が3~5日と短かく設定された。本試験はデザインだけでなく投与実績もメジアン6日(四分位範囲4-7日)と治療ウィンドウが少し広い。

主評価項目は死亡をカウントしていない。但し、入院後の死亡は偽薬群が3人、試験薬群はゼロなので、死亡を防ぐ効果が示されていないとは言えない。

今回の試験はワクチン接種した患者も組入れている。但し、被験者に占める割合は1割強に過ぎない。感染者54人中53人は接種歴がなく、残りの一人は一回目の接種しか終えていなかった。このため、接種歴のある人にも効果があるかどうかは分からない。また、重症化リスク因子を持つ患者だけのサブグループ分析は記されていない。rMabの試験も重症化リスク因子の有無を問わずに組入れたが、承認されたのは有りの人だけ。無しの人は重症化リスクが低く、従って治療の便益も小さいとFDAが判断しているのならば、このサブグループ・データの有無、内容は、EUA審査において重要なポイントになり得る。

さて、CCPは様々な国で今回のような大規模な試験が実施され、当方が知る限り、すべてフェールした。米国のITAC試験、英国のRECOVERY試験、インド試験、アルゼンチン重症肺炎試験などだ。殆どは入院患者が対象で、米国で実施されたC3PO試験は発症7日以内の軽症患者を外来治療する今回と似たデザインだが、ER入室患者が対象であるせいか、偽薬群の15日間追加治療/入院/死亡率が31%とはるかに高く、同一視できない。

ウイルスの増加を防ぐことで合併症を抑制すると考えれば、肺炎などを合併して免疫血栓活動が異常亢進している患者の治療に役立たなくても不思議はなく、今回、異なった結果が出たことに違和感はない。

リンク: Sullivanらの治験論文抄録原稿(medRxiv)



モデルナのワクチンも三回接種すればオミクロンに有効
(2021年12月20日発表)

Moderna(Nasdaq:MRNA)はSpikevax(COVID-19ワクチンモデルナ筋注)のオミクロン株シュードウイルス中和試験のトップラインを発表した。追加接種(3回目)の前の患者から採取した血清はオミクロン株の変異を導入した偽ウイルスに対する中和力価が低かったが、50mcgや100mcgを追加接種して29日経った血清ではGMT(幾何平均力価)が各850(追加接種と比べて37倍)と2,228(同83倍)に増加した。

COVID-19ワクチンの感染予防効果は半年程度で低下してしまうので、追加接種前との比較ではなく、二回接種後との比較が見たい。また、過去のシュードウイルス試験ではオミクロン株が持つ重要な変異を全部ではなく一つずつ導入・試験した事例もあるが、この試験はどうなのだろうか?

Modernaと研究者は論文原稿を査読前論文サーバーで公開する考え。

リンク: 同社のプレスリリース



EU、ノババックスのワクチンを承認
(2021年12月20日発表)

EMAはNovavax(Nasdaq:NVAX)のCOVID-19ワクチン、Nuvaxovidを承認した。CHMPが臨時会議で肯定的意見を纏めた当日のスピード承認だ。

融合前スパイク蛋白を抗原とするワクチンで、バキュロウイルスをベクターとして、昆虫細胞に遺伝子を導入・発現させる。3週おいて二回筋注する。米墨の第3相試験ではワクチン効率が90%、中重症感染症は100%抑制した。英国試験のワクチン効率も90%だった。一方、南アで実施した後期第2相試験はエスケープ変異株の影響で49%に留まった。

第3相はアルファ株やベータ株が流行していた頃に実施されたため、デルタ株やオミクロン株に対する効果は明確ではない。

このワクチンは11月にインドネシアで世界初承認。WHOのEUL(非常時使用リスト)にも収載された。米国は当局と相談中。日本はライセンシーの武田薬品が今月、製造販売申請した。厚労省は薬事承認等を前提に1.5億回分の購入を決めている。

リンク: Nuvaxovidの概要(EMA)


【今週の話題】


ファイザー、DMDの遺伝子療法で死亡者
(2021年12月20日発表)

ファイザーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者支援団体などに向けた書簡の中で、PF-06939926(fordadistrogene movaparvovec)の後期第1相試験に参加した若い男性患者が一名、死亡したことを明らかにした。原因を検索中で、因果関係はまだ不明。患者の特性については、歩行不能コフォートに組入れられたことしか明らかでない。FDAは治験許可を停止した。

業界全体に開発が活発化している遺伝子組換え型アデノ随伴ウイルス9型をベクターとする遺伝子療法で、本来のものよりは短いが、ある程度は機能する、ミニジストロフィンの遺伝子を患者の筋細胞に導入する。過去の投与例では、補体系の深刻な異常活性化や、心筋炎を伴うこともある深刻な筋力低下などが見られた。

対策として特定の遺伝子型を持つ患者は除外して第3相試験を実施中で、22年に結果が判明する見込みだった。

遺伝子療法は22年前、被験者の死亡をきっかけに警戒感が高まり開発が長期間、停滞した。近年、今回のような高量投与例で深刻な有害事象が散見されており、亡くなった人の検索結果が注目される。

リンク: Parent Project Muscular Dystrophyのリリース


【新薬開発】


CD感染症の第3相がフェール
(2021年12月20日発表)

Summit Therapeutics(Naasdaq:SMMT)はSMT19969(ridinilazole)の第3相クロストリジウム・ディフィシル(CD)感染症試験がフェールしたと発表した。副次的評価項目やサブグループでは効果の兆しも見られたようだが、もう一本実施して確認する必要があるだろう。

200mgを一日二回、10日間に亘って経口投与する効果をvancomycin(125mg一日4回)と比較した試験で、主評価項目は持続的臨床的応答率(治療完了後、30日間再燃しなかった患者の比率)。データは未公表。

この試験は二本実施する予定だったが、COVID-19の影響か、2年以上経っても目標の半分の753人に留まり、昨年8月、一本に統合した経緯がある。

リンク: 同社のプレスリリース(pdfファイル)



ノバルティス、新薬がゾレアに勝てず
(2021年12月20日発表)

ノバルティスはQGE031(ligelizumab)の第3相慢性特発性蕁麻疹(CSU)試験を二本実施し、偽薬には勝ったがXolair(omalizumab)とは有意な差がなかったと発表した。異なった評価項目を採用した後期第2相では上回っていただけにネガティブ・サプライズだ。

同社はジェネンテックとXolairを共同開発、03年に米国で管理不良の中重度喘息症治療薬として承認を取得した。QGE031は新開発の抗IgE抗体で親和性を88倍に高めた。抗ヒスタミンに十分応答しないCSUがリード・インディケーション。第3相は2000人以上の患者を組入れて、偽薬、72mg、120mg、またはXolairを4週毎皮注して、第12週のUAS7(蕁麻疹の数の多さと痒みを各0~3で毎日評価し7日平均を算出)を比較した。数値は来年下期に完了してから公表する予定。

22年に承認申請する予定だが、商業的な展望は明るくなさそうだ。

リンク: 同社のプレスリリース



Aldeyra社、一本目の第3相ドライアイ試験がフェール
(2021年12月20日発表)

Aldeyra TherapeuticsはADX 102(reproxalap)の第3相ドライアイ試験がフェールしたと発表した。副次的評価項目は好ましい結果になったため、もう一本の主評価項目や目標組入れ数を改訂した。

アレルギー性結膜炎の原因となる有機アルデヒドの遊離体に結合する0.25%点眼用液。アレルギー性結膜炎の第3相アレルゲン・チャレンジ試験が二本、成功したが、承認申請はドライアイを優先する考え。

今回のTRANQUILITY-1試験は主評価項目の充血症状がフェールしたが、ドライアイ治療試験の一般的な主評価項目であるSchirmerテストはp=0.0001と良好な結果になった模様。このため、もう一本はこの両方を主評価項目とし、どちらかだけでも有意なら成功とみなすことにした。これに伴い、組入れも増やす。結果は22年央に出る見込み。

同社によると、第二相試験で充血改善効果を確認できているため、二本目の試験でどちらかの評価項目で有意差が出れば、承認取得に必要な二本のエビデンスを提出することが可能になる。

リンク: 同社のプレスリリース


【承認申請】


遺伝子シグネチャーでスクリーニングするVEGFR阻害剤を承認申請
(2021年12月21日発表)

Allarity Therapeutics(Nasdaq:ALLR)はdovitinibを腎細胞腫の3次治療薬としてFDAに承認申請したと発表した。4月にPMA(販売前申請)したDRP-Dovitinibというコンパニオン診断キットを用いて適した患者をスクリーニングする考えのようだ。

ノバルティスがTKI258名で開発した経口マルチ・キナーゼ阻害剤で、VEGFR1-3、PDGFR、FGFR1-3、c-KIT、FLT3などを阻害する。ノバルティスはVEGF標的薬とmTOR阻害剤の両方の治療歴を持つ患者の三次治療薬として第3相試験を実施したが、主評価項目のPFS(無進行生存期間、独立中央放射線学的評価)がメジアン3.7ヶ月とsorafenib群の3.6ヶ月と大差なく、ハザードレシオ0.86でフェールした。メジアン生存期間も11ヶ月強で大差なかった。G3/4有害事象は、高TG血症が多かったものの高血圧症や手掌足底発赤知覚不全は少なかった。

Allarityは遺伝子シグネチャーに基づいて最適な患者をスクリーニングする手法に着目、複数のコンパウンドを導入・開発していて、最も進んでいるのがdovitinibだ。今年のESMO(欧州臨床腫瘍学会)での発表によると、セルラインの試験で、腎細胞腫で発現している25000の遺伝子の中から、dovitinib感受性/抵抗性に係る58の遺伝子を特定。上記第三相試験のdovitinib群(約280人)の生検組織(135例)を調べたところ、DRP(薬品応答性予測値)が50%を超える49人では、メジアン生存期間が15ヶ月だった。一方、sorafenib群(286人)のメジアン生存期間は11.2ヶ月だった。DRPが67%を超える15人に絞り込んだ解析ではメジアン20.6ヶ月と更に増加した。

この分析が奇妙なのは、第一に、sorafenib群もDRP50%超だけのデータを使うべきではないのか。in vitroで増殖抑制効果が高かったとはいえ、DRPが応答性ではなく予後因子に過ぎない可能性も残っているだろう。第二に、被験者のうち遺伝子検査に同意しなかったのが4割、十分なデータが取得できなかったのが2割と逸失データが多く、サンプルサイズが小さいように感じられる。

同社は上記試験の非劣性解析に基づく承認も視野に入れている模様。確かにPFSハザードレシオの95%上限は1.04と悪い数値ではないが、優越性解析はintent-to-treat、非劣性解析はper protocolが原則であり、後者が前者と同様な結果になるとは限らない。そもそも、毒性が高く減量や休薬、中止が珍しくない抗癌剤の試験でper protocolの解析が上手くいくのかどうか、私にはわからない。

リンク: 同社のプレスリリース



ユルトミリスを筋無力症に適応拡大申請
(2021年12月21日発表)

アストラゼネカはUltomiris(ravulizumab-cwvz、和名ユルトミリス)を全身性筋無力症(gMG)治療薬として適応拡大申請し、受理されたと発表した。優先審査バウチャを使用して優先審査を獲得、審査期限は来年第2四半期の予定。日欧で申請したことも明らかにした。

長期作用性C5補体阻害剤で、18~19年に米日欧でPNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)治療薬として、19~20年にはaHUS(非典型溶血性尿毒症)の治療にも、承認された。gMGは欧米日亜などで実施された抗AChR抗体陽性患者を組入れた試験で日常生活機能に係るMG-ADL総合スコアが3.1減少と、偽薬群の1.4減少を上回った。

リンク: 同社のプレスリリース


【承認審査・委員会】


武田、好酸球性食道炎用薬は度重なる遅延の挙句、承認されず
(2021年12月22日発表)

武田薬品はEohilia(budesonide、開発コードTAK-721/SHP62)を好酸球性食道炎の治療薬として承認申請していたが、審査完了通知を受領した。FDAは優先審査指定したが今年4月の審査期限を3ヶ月延期、新期限が到来しても結論を出さず、結局、承認申請から一年以上も費やしたのに承認しなかった。理由は不明。

コルチコステロイドの粘性経口懸濁液。08年にVerus PharmaceuticalsからインライセンスしたMeritage Pharmaを買収するオプションを11年にViroPharmaが取得、ViroPharmaを買収したシャイアが15年に行使、そして19年に武田がシャイアを買収と、いつものことながら変遷している。

リンク: 武田のプレスリリース


【承認】


高脂血症治療用RNA介入薬が承認
(2021年12月22日発表)

ノバルティスはFDAがLeqvio(inclisiran)を承認したと発表した。スタチンの最大耐量を服用しているヘテロ結合型家族性高脂血症またはアテローム硬化性心血管疾患の成人に用いる。300mgを皮注するが、二回目は3ヶ月後、その後は半年毎なので頻度はそれほどでもない。臨床試験ではLDL-Cが50%超低下した。心血管アウトカム試験の結果はまだ出ていないが、臨床試験のメタアナリシスではハザードレシオが0.8未満だった。

アムジェンのRepatha(evolocumab、和名レパーサ)と同様に、LDL受容体の零落に係るPCSK9を標的とする薬だが、抗体医薬ではなく、合成を妨げるRNA介入薬。昨年、97億ドルで買収したMedicines Companyが13年にアルナイラム・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ALNY)から共同開発販売権を取得したもの。どちらも皮注だが、売上不振の轍を踏まないように、自己注ではなく医療従事者が注射するようにした(米国の高齢者医療制度では薬局で買う薬と医療施設で使う薬は異なった扱いを受ける)。

リンク: ノバルティスのプレスリリース



長期作用性HIV感染予防薬が承認
(2021年12月20日発表)

FDAはViiV Healthcare(GSKと塩野義、ファイザーのHIV薬合弁)のApretude(cabotegravir)をHIVの暴露前感染予防(PrEP)薬として承認した。体重35kg以上の青年成人でHIV感染者と性交する男女に、300mgを最初の二回は月一回、その後は2ヶ月毎に、筋注する。臨床試験では感染リスクが実薬(ギリアド・サイエンシズのTruvada、毎日経口投与)と非劣性だった。

米国でPrEPが推奨される120万人の普及率は25%程度で、5年前と比べれば大きく上昇したが、まだ低い。励行しない理由は様々だが、毎日飲まなくて良いならば、という人もいるだろう。

リンク: FDAのプレスリリース



統合失調症治療薬が双極性障害鬱症状に適応拡大
(2021年12月20日発表)

Intra-Cellular Therapies(Nasdaq:ITCI)はFDAがCaplyta(lumateperone)の適応拡大を承認したと発表した。ブリストル マイヤーズ・スクイブからライセンスした5-HT2A受容体とドパミンD2受容体のアンタゴニストで、統合失調症の第3相は一勝一敗だったが一部施設のデータの除外などを経て、19年に米国で承認された。双極障害I型とII型の鬱症状を治療する試験はモノセラピーが一勝一敗、リチウムまたはバルプロ酸に追加投与した試験は成功し、今回、承認に至った。

初承認時に、向精神薬のクラスレーベルである、認知症患者の精神症状の治療に用いると死亡するリスクが高まることが枠付警告された。今回更に、抗鬱剤のクラスレーベルである、小児やヤング・アダルトに用いると自殺行動や自殺思慮のリスクが高まることが枠付警告された。

リンク: 同社のプレスリリース



オテズラ、尋常性乾癬の中重度限定が解除
(2021年12月20日発表)

アムジェンのOtezla(apremilast)は尋常性乾癬や乾癬性関節炎の治療薬として米欧日で承認されているが、前者はFDAが中重度患者限定を解除した。成人の光学療法や全身的治療が適応になる患者すべてに広がり、局所性治療薬に十分応答/忍容しなかった段階で使うことができるようになった。

セルジーンが開発し承認を取得したが、ブリストル マイヤーズ・スクイブが買収に際して独禁規制をクリアするためにアムジェンに譲渡したもの。全身性治療を開始する患者におけるブランド・シェアがトップとのことだが、同じ経口剤のBMS-986165(deucravacitinib)が22年に中重度尋常性乾癬に承認されたら競合が激化する。

リンク: アムジェンのプレスリリース





今年は以上です。皆様、よいお年を!

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