【ニュース・ヘッドライン】
- COVID-19関連:
- MSDのmolnupiravir、諮問委員会で支持が少し上回る
- イーライリリーの抗体カクテル、乳幼児にもEUA
- その他の領域:
- ニュベクオのmHSPCトリプル・セラピー試験が成功
- ImmunoGen、抗FRアルファ抗体薬物複合体を承認申請へ
- 局所遺伝子療法の栄養障害型表皮水疱症試験が成功
- MSD、肺炎球菌ワクチンの幼小児適応を承認申請
- アストラゼネカ、リムパーザをBRCA変異陽性早期乳癌に適応拡大申請
- JNJ、イムブルビカとベネクレクスタの併用を用法追加申請
- BMS、TYK2阻害剤を日米欧で承認申請
- 化学療法誘導性好中球減少症の予防薬は審査完了に
- 化学療法誘導性難聴の予防薬は審査完了に
- キイトルーダの黒色腫術後アジュバントが承認
- 新規B型肝炎ワクチンが承認
- ダラキューロもKd併用が承認
- アッヴィ、リンヴォックのレーベルに適応範囲縮小とクラス枠付警告を導入
【COVID-19関連】
MSDのmolnupiravir、諮問委員会で支持が少し上回る
(2021年11月30日発表)
FDAは抗微生物薬諮問委員会を招集し、MSDがEUA(非常時使用認可)を申請したMK-4482/EIDD-2801(molnupiravir)について意見を聞いた。重症化・入院リスク因子を持つ軽中等症の成人の外来治療薬としてEUAすべきと答えた委員は13人、反対は10人で、予想以上に慎重な意見が多かった。全被験者における入院・死亡抑制効果が中間解析よりかなり低下したことや、フランケンシュタインのようなウイルスを作ってしまうリスクが否定できないことなどが響いたようだ。
ファイザーが今月申請したPAXLOVID(PF-07321332、ritonavir)がEUAされるまでは唯一の経口剤になり、また、薬剤抵抗性懸念があるオミクロン株が登場し治療の選択肢を一つでも増やしたい局面でもあるので、EUAはされるだろうが、将来性は不透明だ。諮問委員の中にはもっと良い薬が承認されたらEUAを見直すべきとの声もあったほどだ(法的に可能なのだろうか?)。
【適応範囲】
適応範囲はまだ不透明だが、第3相の除外条件であったワクチン接種歴を持つ患者(ブレークスルー感染者)は適応にならない可能性がある。ベースライン時点で抗体陽性だった患者における便益は見られなかったが、サンプル数が小さいことや、検査結果が出るまで時間がかかり発症5日以内という治療ウインドウを逸してしまう可能性があることなどから、不問とする方向だ。
18歳未満は適応外とすることでFDAとメーカー側が合意している。前臨床試験で骨・軟骨形成を抑制する懸念が生じたため。治療中は授乳しないよう推奨されるだろう。妊婦は否定的な意見が多かったようだ。動物試験でシグナルが見られたことを考えると。胎児のリスクがゼロとは断定できない。
第2相試験で入院患者に対する効果は見られなかったが、服用中に入院に至った場合は、医師の判断で5日コースを完了させることが可能になりそうだ。
第3相は発症から無作為化割付まで5日以内の患者に限定したが、先例を見ると、適応条件にはならないのではないか。
【ウイルスを変異させる作用機序】
さて、諮問委員会が慎重になった一因は、ウイルス・ゲノムを改変する薬だからだ。molnupiravirはRNA依存性RNAポリメラーゼを欺いてウイルスの複製過程で作成される陰方向鎖ゲノムRNAに紛れ込み、RNAの一部が置換されたウイルスが作られるようにする。複製を繰り返すうちに置換が積み重なって限界を越え(エラー・カタストロフィー)、それ以上ウイルスが増えなくなる。類似した作用機序を持つfavipiravirより活性化が高い。
この作用機序を裏返すと、新型変異ウイルスができてしまう可能性がゼロとは言えない。オミクロン株の第一号はHIV患者とも報道されている。差別やいじめを招かないようにい慎重な言動が必要だが、一般論としては、免疫力が低下している人ではウイルスが変異して生き延びるリスクがあるので、不思議ではないかもしれない。molnupiravirが適応になるであろう高齢者や肥満症、糖尿病などの患者はHIVほどではないにしても免疫低下状態にあるので、新型の温床になるリスクは軽視できない。
尚、ヒトのゲノムを改変するリスクは小さいと考えられているが、数百万人、数千万人に投与してもゼロと言えるほどではない。
【治験後半にデータが悪化】
もう一つの理由は、全被験者における薬効が中間解析より低下した理由が分からないことだ。薬効確認試験一本だけで承認を取るためには、p値やサブグループ分析などの面でデータが頑強でなければならず、ハードルが低いEUAならともかく、正式な承認を取るのは無理だっただろう。
FDAのブリーフィング資料にサブグループ分析が掲載されていたので、中間解析データと、全被験者の数値から中間解析の数値を差し引いた『後半データ』を比較してみたが、以下に記すように、容疑者は浮上しなかった。
入院・死亡発生率の倍率(記載されていないので当方が階層化せずに算出)は中間解析の0.5(リスク半減)から後半データは1.3(リスク増加)に悪化したが、目立つのは、偽薬群の入院・死亡発生率が14.1%から4.7%と大きく低下していることだ。試験薬群は7.3%から6.2%と若干の低下に留まっているので、不自然な印象だ。サブグループではラテンアメリカと非肥満症患者における偽薬群の発生率低下が特に大きかった。アジア太平洋地域等の数値も偽薬群が50%から10%に激減、試験薬群は20%から28%に上昇しており奇妙だが、組入れ数が総計で35人、構成比2%と僅少なので評価に値しないだろう。
患者背景の変化で目立つのは、欧州の比率が23%から44%に上昇し、ラテンアメリカが66%から35%に低下したこと。そのせいか、変異株のうちブラジルなどで流行したガンマ株やコロンビアで発見されたミュー株の感染者が激減し、デルタ株が殆どになった。但し、デルタ株感染者におけるイベント発生率の倍率は中間0.5、後半1.4と、全体の数値と大差なく、ミックスの変化が犯人とは思えない。また、感染株に基づくサブグループ分析の対象外となった症例(おそらく判定や検査の不能例だろう)の構成比が32%から59%に上昇しており、株に基づく分析はnaが多すぎて困難だ。
むしろ、判定/検査不能例が増えた背景を知りたいところだ。例えば、新たに治験に参加した国で検査ができなかった(あるいは割愛した)というような場合だ。主評価項目である29日入院・死亡のうち、死亡は主観の入り込む余地が小さいが、入院は国や地域、施設により基準が異なるようなことも考えられるからだ。日本を例に取れば、今なら速やかに入院できるが今夏は入院したくてもできない人がいた(そもそも、全員入院が原則なので、組入れ条件や評価尺度を変えざるを得ない)。
米国や日本などが大量調達する薬の効果があやふやでは情けない。真犯人を見つけてほしいものだ。、
リンク: MSDのプレスリリース
リンク: 上記諮問委員会に関するFDA情報(ブリーフィング資料などのリンクあり)
リンク: EMAの加盟国向け評価文書(全被験者データは検討していないが、CMCを含めて詳細に記載)
イーライリリーの抗体カクテル、乳幼児にもEUA
(2021年12月3日発表)
FDAはイーライリリーの抗SARS-CoV-2抗体カクテル(bamlanivimabとetesevimabの併用)について、EUAの対象年齢を新生児を含む12歳未満の幼小児に拡大した。重症化リスク因子を持つ軽中度COVID-19感染症の外来治療と、曝露後予防の両方の適応が対象。
治療の投与実績は体重8.6kgの10ヶ月児まである。暴露後予防試験には小児は組入れなかったが、他の年齢層における実績を踏まえて、EUAした。
ところで、この抗体カクテルはオミクロン株にも有効なのだろうか?in vitroで感受性が低下したベータ株やガンマ株と同様にK417N変異を持っているようなので、流行の主流がデルタ株からシフトするケースに備えて、十分に検討すべきだろう。
Pango | WHO | H69/V70欠損 | K417N | L452R | E484K | E484A | N501Y | D614G | A701V |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
B.1.1.7 | アルファ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
B.1.351 | ベータ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
B.1.1.248 | ガンマ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
B.1.617.2 | デルタ | 〇 | 〇 | ||||||
B.1.617.2.1 | 『デルタ+』 | 〇 | 〇 | 〇 | |||||
B.1.1.529 | オミクロン | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
出所:CDC、WHO、NGS-SAなどの資料から作成。
リンク: FDAのプレスリリース
【新薬開発】
ニュベクオのmHSPCトリプル・セラピー試験が成功
(2021年12月3日発表)
バイエルはNubeqa(darolutamide、和名ニュベクオ)の第3相ARASENS試験が成功したと発表した。転移したホルモン感受前立腺癌(mHSPC)1306人を組入れて、代表的な治療法の一つであるアンドロゲン枯渇療法とdocetaxelの併用に、Nubeqa(600mgを一日二回経口投与)を追加する効果を検討した無作為化割付偽薬対照二重盲検試験で、主評価項目は全生存期間。データは学会で発表する予定。バイエルは適応拡大申請する考え。
ファースト・イン・クラスのXtandi(enzalutamide、アステラス/ファイザー)は転移ホルモン感受前立腺癌にGnRHアナログと二剤併用することが承認されているが、今回、よりアグレッシブな治療法に道を開いたことになる。
Nubeqaはオライオン社から共同開発販売権を取得した非ステロイド系のアンドロゲン受容体アンタゴニスト。19~20年に米日欧で非転移性去勢抵抗性前立腺癌に単剤投与することが承認された。
リンク: 同社のプレスリリース
ImmunoGen、抗FRアルファ抗体薬物複合体を承認申請へ
(2021年11月30日発表)
設立が1980年とアムジェンと同じ、ジェネンテック(1976年)とも大差ない老舗バイオテック企業であるImmunoGen(Nasdaq:IMGN)は、40年の時を経て、新薬開発企業から販売企業に転じる第一歩を踏み出す。IMGN853(mirvetuximab soravtansine)の第2相卵巣癌試験が成功、22年第1四半期に生物学的製剤販売許可申請する予定であることを発表した。
葉酸受容体(FR)アルファを標的とする抗体とDM4細胞毒を結合した複合体で、これまでの道のりは順調ではなかったが、今回、単にFRアルファ陽性だけでなく、高度発現する患者に絞り込んだSORAYA試験が成功した。Avastin歴を含む3次までの治療歴を持つFRアルファ高度陽性白金抵抗性卵巣癌106人を組入れて、調整理想体重1kg当り6mgを3週毎投与したところ、主評価項目のcORR(確認客観的反応率、治験医評価)が32.4%(95%信頼区間23.6-42.2)、メジアン反応持続期間は5.9ヶ月だった。完全反応も5例あった。ORRは第三者盲検評価でも31.6%と同程度。G3以上の治療関連有害事象は霞目(6%)、角膜症(9%)など。治療関連有害事象による治験離脱率は7%だった。
FRアルファ高度陽性に絞り込んだのは前回の第2相でこのサブグループの数値が良かったため。抗癌剤の臨床試験のサブグループ分析には悪魔が潜むが、偶にはこういうこともあるので、試してみる価値はある。
単群試験に基づく承認申請なので、承認されても加速承認だろう。同社は同様な内容の第3相実薬対照試験を開始しており、22年第3四半期に結果が出る見込みなので、承認審査期限と前後することになる。
リンク: 同社のプレスリリース
局所遺伝子療法の栄養障害型表皮水疱症試験が成功
(2021年11月29日発表)
米国ペンシルバニア州の局所性遺伝子療法開発会社、Krystal Biotech(Nasdaq:KRYS)は、Vyjuvek(beremagene geperpavec)のピボタル試験が成功したと発表した。米国の3施設で1~44歳の栄養障害型表皮水疱症(DEB)患者を組入れて、病変の面積や年齢に応じた量を週一回、投与して、完全治癒率を同じ患者の偽薬を投与した病変と比較したところ、主評価項目である第22週と24週、または第24週と26週における完全治癒率は67%と偽薬病変の22%を有意に上回った。3ヶ月時点の完全治癒率も71%対20%で有意な差があった。薬物関連の深刻有害事象や治験離脱は発生しなかった。同社は22年上期に米国で、その後早い時期に欧州でも、承認申請する考え。日本などでの承認申請も検討中。
DEBは米国の患者数が約3000人の希少疾患。真皮と表皮をつなぐ係留線維の構成成分である7型コラーゲンの遺伝子(COL7A1)に優性/劣性遺伝による変異を持ち、ちょっとの接触で水疱やびらんが生じ、感染症や扁平上皮腫のリスクがある。Vyjuvekは遺伝子療法で、表皮細胞親和性を持つHSV-1を改変して増殖能などを除去したものをベクターとしてCOL7A1遺伝子をケラチノサイトや線維芽細胞の核に導入、発現させる。全身投与ではなくゲル製剤を塗布する。米国でRMAT(先端的再生医療)、EUでPRIME(優先医療)の指定を受けている。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認申請】
MSD、肺炎球菌ワクチンの幼小児適応を承認申請
(2021年12月1日発表)
MSDは15価肺炎球菌結合型ワクチンVaxneuvanceを幼小児(6週から17歳)に用いる対象年齢拡大をFDAに申請し、受理された。優先審査を受け、期限は来年4月1日。このワクチンは今年7月、18歳以上に承認され、11月には欧州でもCHMPの肯定的評価を獲得、日本でも承認申請中。
肺炎球菌ワクチンは同社の23価莢膜ポリサッカライドワクチンPneumovaxとファイザーのPrevnarシリーズが双璧だが、今年はファイザーのPrevnar 20も米国で承認され、カバレッジ拡大競争が起きている。対象株が20と多いPrevnar 20のほうが有力だろう。
リンク: MSDのプレスリリース
アストラゼネカ、リムパーザをBRCA変異陽性早期乳癌に適応拡大申請
(2021年11月30日発表)
アストラゼネカはMSDと提携してPARP阻害剤Lynparza(olaparib)を様々なBRCA変異陽性癌に開発しているが、米国で早期乳癌に適応拡大申請し、受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は22年第1四半期とのこと。
第3相OlympiA試験に基づくもの。BRCAに生殖細胞系変異を持つher2陰性早期乳癌で、切除術を受けたが再発リスク因子を持ち、術前/術後にアジュバント療法を受けた患者を組入れて、150mg二錠を一日二回、最長12ヶ月経口投与したところ、無侵襲性疾患生存期間の偽薬比ハザードレシオが0.58、3年間無侵襲性疾患生存率85.9%、偽薬群は77.1%だった。有害事象による治験離脱率は10%だった。
リンク: 同社のプレスリリース
JNJ、イムブルビカとベネクレクスタの併用を用法追加申請
(2021年11月30日発表)
ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのヤンセンは、慢性リンパ性白血病の一次治療にBTK阻害剤Imbruvica(ibrutinib)をアッヴィのbcl-2阻害剤Venclexta(venetoclax)と併用する一部変更申請をEUで行った。第3相GLOW試験に基づくもので、28日サイクルで最初の3サイクルはImbruvica(420mg/日)だけ、第4~16サイクルはVenclextaと共に、経口投与する群のPFS(無進行生存期間、独立評価委員会方式)をchlorambucil・obinutuzumab併用群と比較したところ、ハザードレシオが0.216、メジアン値は未達対21ヶ月と高い効果を示した。G3以上の治療時発現有害事象は好中球減少症、下痢、高血圧症など。死に至った有害事象は各群106人中7人と105人中2人だった。全生存期間の解析は未成熟だが、ハザードレシオ1.048と現時点では好ましくない方向を指し示している。
Imbruvicaは欧州では慢性リンパ性白血病の一次治療(モノセラピー、rituximab併用、またはobinutuzumab併用)、再発治療(モノまたはbendamustine及びrituximab併用)、難治再発マントル細胞腫(モノ)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(モノ、rituximab併用)が承認されている。今回のレジメンが承認されれば初の経口剤同士の併用になるが、どうだろうか。
リンク: JNJのプレスリリース
BMS、TYK2阻害剤を日米欧で承認申請
(2021年11月29日発表)
ブリストル・マイヤーズ スクイブは、BMS-986165(deucravacitinib)を成人の中重度プラク乾癬(尋常性乾癬)の治療薬として欧米で承認申請し、受理されたと発表した。米国の審査期限は22年9月10日。同時に、日本でも一足先に受理されていたことを明らかにした(適応は尋常性乾癬、膿疱性乾癬、感染性紅皮症)。
IL-23やIL-12、I型インターフェロンによる細胞内シグナル伝達を調停する酵素、TYK2を阻害する経口剤で、作用機序的にはJAK阻害剤に似ているが、臨床用量ではJAKは阻害しない。6mgを一日一回投与した第3相試験二本で、共同主評価項目であるPASI75と静的PGA評価に基づく奏効率が偽薬を有意に上回った。更に、副次的評価項目である経口PDE-4阻害剤Otezla(apremilast)を投与した群と比べても、有意に上回った。
同社は19年にセルジーンを買収するに当たって、反トラスト規制をクリアするためにセルジーンのOtezlaをアムジェンに譲渡したが、本剤が無事承認されれば、逃したものより大きな魚を釣ることができる。
リンク: BMSのプレスリリース
【承認審査・委員会】
化学療法誘導性好中球減少症の予防薬は審査完了に
(2021年12月1日発表)
BeyondSpring(Nasdaq:BYSI)はBPI-2358(plinabulin)を化学療法の副作用である好中球減少症を抑制する用途でFDAに承認申請していたが、審査完了となった。G-CSFと併用した第3相試験では第1サイクルにおけるG4好中球減少症発生率が13.6%とG-CSF・偽薬併用群の31.5%を有意に上回り、副次的評価項目も全て達成したが、FDAは、データが頑強でないためもう一本実施することを推奨した。
この海藻由来の活性成分は造血幹細胞/前駆細胞を増やしたり抗原提示細胞を誘導する作用を持つ模様。後者に着目した非小細胞性肺癌二次三次治療docetaxel併用試験が成功したことが8月に発表されている。
リンク: 同社のプレスリリース
化学療法誘導性難聴の予防薬は審査完了に
(2021年11月30日発表)
Fennec Pharmaceuticals(Nasdaq:FENC)はチオ硫酸ナトリウムの静注用新製剤をcisplatinによる小児がん治療に伴う聴力低下を抑制する補助薬として欧米で承認申請しているが、米国は昨年8月に続いて、審査完了通知を受領した。前回同様、生産委託先における承認前検査がネックとなったようだ。FDAと詳細や今後の方向性を相談する考え。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認】
キイトルーダの黒色腫術後アジュバントが承認
(2021年12月3日発表)
FDAはMSDのKeytruda(pembrolizumab)をステージIIB/IIC黒色腫の完全切除後のアジュバント療法に使うことを承認した。12歳以上が対象で、小児は2mg/kg(成人と同じ200mgが上限)を、成人同様に、3週毎に最大1年間、点滴静注する。
KEYNOTE-716試験の中間解析でRFS(無再発生存期間、治験医評価)の偽薬比ハザードレシオが0.65だった(p=0.006)。G3/4治療関連有害事象の発生率は16.1%だった(偽薬群は4.3%)。
リンク: FDAのプレスリリース
新規B型肝炎ワクチンが承認
(2021年12月1日発表)
米国マサチューセッツ州に本社、イスラエルに工場を持つVBI Vaccines(Nasdaq:VBIV)は、FDAが慢性B型肝炎ワクチンPreHevbrioを18歳以上に承認したと発表した。GSKのEngerix-Bと同様に、半年かけて三回、筋注する。第3相試験では抗体保有率が91.4%とEngerix-B群の76.5%比で非劣性だった。45歳以上では89.4%対73.1%だった。一方、18-44歳のサブグループでは99.2%対91.1%と差が縮まり、18~45歳だけを組入れた試験では99.3%対94.8%と更に縮小した。
主な有害事象は注射箇所反応など。
ウイルスのS抗原だけでなくプリS1抗原、プリS2抗原も含有しているHBVワクチンは初。1mLに合計10mcgとアルミ・アジュバント500mcgなどを含有している。Engerix-Bは各20mcgと500mcgなので、抗体保有率や抗体価の差はプリSの寄与なのだろう。尚、PreHevbrioはCHO細胞法で、Engerix-Bはイースト菌法で培養される。
リンク: 同社のプレスリリース
ダラキューロもKd併用が承認
(2021年12月1日発表)
FDAは、ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのヤンセン・バイオテックのDarzalex Faspro(daratumumab、hyluronidase-fihj)とアムジェンのKyprolis(carfilzomib)、そしてdexamethasoneを併用で難治再発多発骨髄腫の2~4次治療に用いることを承認した。単群試験でORR(客観的反応率)が84.8%だった。
Fasproは点滴静注用薬Darzalexの皮注用製剤で、欧州ではDarzalex SC、日本ではダラキューロ配合と命名されている。Darzalexも上記二剤のKdレジメンと併用することが承認されており、ORRは単群試験で81%だったので、大きな差があるようには見えないが、3~6時間点滴静注ではなく3~5分皮注なので実務面ではかなり違う。
リンク: FDAのプレスリリース
【医薬品の安全性】
アッヴィ、リンヴォックのレーベルに適応範囲縮小とクラス枠付警告を導入
(2021年12月3日発表)
アッヴィは米国で中重度活性期リウマチ性関節炎用薬として承認されているJAK1阻害剤、Rinvoq(upadacitinib)のレーベルを改訂したと発表した。MTX不応不耐を適応範囲から除外しTNF阻害剤不応不耐に限定するとともに、ファイザーのJAK阻害剤Xeljanz(tofacitinib)の長期安全性確認試験で浮上したリスクを枠付警告として追加した。
FDAがRinvoqとイーライリリーのJAK1/2阻害剤Olumiant(baricitinib、和名オルミエント)に関して9月1日に発表した、レーベル改訂要請に応えたもの。3ヶ月抵抗した、と書いた方が適切かもしれない。Olumiantは元々MTX不応不耐には承認されていないので対象患者数は変わらないはずだが、クラス枠付警告は未だ導入されていない。それほど驚くべき内容ではないように感じるが、両社にとっては許容しがたいのだろう。
Rinvoqの従来の枠付警告は、臨床試験で深刻な微生物感染症やリンパ腫などの悪性腫瘍が見られたことなど。今回、他のJAK阻害剤の臨床試験での知見として追加されたのは、突然死を含む全死亡や、肺癌やリンパ腫、主要有害心臓イベント、肺塞栓や静脈血栓塞栓、動脈血栓がTNF阻害剤群より多かったこと。
FDAはJAK阻害剤の深刻な副作用に強い関心を持っており、日欧で承認された各種JAK阻害剤の適応拡大などが軒並み、遅延している。アッヴィがRinvoqのレーベル改訂を容認するのと引き換えで乾癬性関節炎、アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎の適応拡大を獲得できるかどうか、注目される。
リンク: 同社のプレスリリース
今週は以上です。
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