2021年12月18日

第1030回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • コミナティ、4歳以下は3回接種を検討へ 
  • ファイザーの3CL阻害剤は最終解析も良好 
  • ACIP、JNJ品よりmRNA型ワクチンを優先するよう勧告 
  • アストラゼネカ、EvusheldはOmicronにも有効なはず 
  • その他の領域: 
  • 新規echinocandinのカンジダ試験が成功 
  • RT誘導性口内炎予防薬の第3相が一転して成功宣言 
  • ASH:ポライビーの一次治療試験が成功 
  • ASH:ヘムライブラの中軽度A型血友病試験が成功 
  • ASH:移植後EBV性リンパ増殖性疾患の細胞療法が成功 
  • ASH:ブレヤンジの二次治療試験が成功 
  • キイトルーダ・レンビマ併用は肺癌には無効 
  • ベーリンガー、汎発性膿疱性乾癬用薬を米国でも承認申請 
  • インサイト、局所性JAK1/2阻害剤を白斑に適応拡大申請 
  • イエスカルタをLBCL二次治療に承認申請 
  • ロシュ、抗CD20/CD3二重特性抗体を承認申請 
  • CHMP、COVID-19治療薬などの承認を支持 
  • 全身性重症筋無力症治療薬が承認 
  • 抗TSLP抗体が重症喘息症に承認 
  • オレンシアが急性移植片宿主病に適応拡大 
  • コルチコステロイドの新製剤をIgA腎症に承認 
  • 米国でJAK阻害剤の適応拡大が流れ出した 


【COVID-19関連】


コミナティ、4歳以下は3回接種を検討へ
(2021年12月17日発表)

BioNTech(Nasdaq:BNTX)とファイザーはCOVID-19ワクチンComirnaty(tozinameran)の対象年齢拡大を進めており、米国では5歳以上なら接種可能になった。5歳未満も免疫原性試験を実施しているが、2~4歳児を組入れたコフォートの中間解析が思わしい結果でなかかったことから、三回目を接種することを決定した。

Comirnatyは12歳以上の青少年と成人は30mcgを、5~11歳は10mcgを、3週おいて二回、筋注する。5歳未満は更に減量して3mcg二回接種を行ってきた。6~24ヶ月児のコフォートは中間解析で免疫原性が16~25歳(臨床試験で免疫原性と感染予防効果が共に立証されている)のデータと非劣性だったが、2~4歳のコフォートはフェールした。二回接種では足りなかった可能性があるため、6~24ヶ月児も合わせて、二回目から2ヶ月後に3mcgを追加接種することを決めた。

試験成功なら年内の対象年齢拡大申請が見込まれたが、早くても22年上期にずれ込む見込み。

オミクロン株感染が密かに拡大している現状などを鑑み、両社は、小児についてもブースター接種試験の実施を決めた。5~11歳は10mcgを、12~17歳は30mcgに加えて10mcgも、検討する考えだ。

リンク: 両社のプレスリリース



ファイザーの3CL阻害剤は最終解析も良好
(2021年12月14日発表)

ファイザーは11月にPAXLOVID(nirmatrelvir錠とritonavir錠)を非入院高リスクCOVID-19患者の治療薬としてEUA(非常時使用認可)申請した。第3相の中間解析結果に基づくものだが、最終解析も同様な結果になったことを公表した。また、高リスクではないワクチン未接種患者と接種した高リスク患者を組入れた第2/3相試験の中間解析が、主評価項目の寛解率はフェールしたものの、副次的評価項目の全死亡・入院リスクは望ましい方向で推移していることも明らかにした。

PAXLOVIDはSARS-CoV-2の3CLシステイン・プロテアーゼの阻害剤とその代謝酵素であるCYP3A4を阻害して効果を長持ちさせるritonavirの同梱製品。前者は二錠、後者は一錠を12時間おきに最大5日間、服用する。

第3相は発症後5日以内の軽中等症患者を組入れて入院死亡リスクを偽薬群と比較した。主評価項目は3日以内に投与を開始した患者だけの解析だが、より現実的でMSDのLagevrio(molnupiravir)や各社の抗SARS-CoV-2抗体の臨床試験と同じ、5日以内の患者全体のデータに注目すると、中間解析では偽薬群は612人中41人(6.7%)が入院、うち10人が死亡したのに対して試験薬群は607人中6人(1.0%)、死亡はゼロだった。

最終解析では、偽薬群が1046人中66人(6.3%)、死亡12人に対して、試験薬群は1039人中8人(0.8%)、死亡ゼロだった。molnupiravirの試験のような大きな差異は生じなかった。

非高リスク患者試験は、中間解析で寛解率(4日連続で症状が解消と報告した患者の比率)が偽薬と大差なかった。一方、副次的評価項目の全入院・死亡は偽薬群は329人中8人(2.4%)、試験薬群は333人中2人(0.6%)だった。その後の解析でも426人中10人(2.4%)対428人中3人(0.7%)だった。両群、両分析とも死亡者はゼロ。

高リスクではないだけに偽薬群の入院率は上記試験の半分以下だが、相対リスク削減率で見るとそれほど変わらない。

ワクチンを接種したのに感染した患者にもファイザーやMSDの抗ウイルス薬は有効なのか?適応外にならない可能性もあるので、この試験のワクチン接種コフォートのデータが公表されるのを待望したい。

リンク: 同社のプレスリリース



ACIP、JNJ品よりmRNA型ワクチンを優先するよう勧告
(2021年12月16日発表)

CDC(米国疾病予防管理センター)のACIP(ワクチン接種諮問委員会)は、12月16日の会合で、COVID-19ワクチンはジョンソン・エンド・ジョンソンのアデノウイルス・ベクター・ワクチンよりもBioNTech/ファイザーやモデルナのmRNAリピッド・ナノパーティクル・ワクチンを優先して接種することを全員一致で推奨した。MMWRに収載された時点で正式勧告となる。

背景となったのが血小板減少を伴う血栓症(TTS)。血液循環する血小板が少なくなるほど著しく血栓形成が活発化する疾患で、米国では1700万回接種されたうち、54人が発症し、9人が死亡、関連が疑われる死亡も2例あった。性別も年齢も区々だが、30代と40代の女性のTTSによる死亡率は100万回当り2人と特に高かった。薬物に対する抗体が引き起こす副作用はしばしば遅発性だが、この副作用も発症が接種のメジアン9日後と間がある。過半の患者でCVST(脳静脈洞血栓症)を合併していた。

このため、FDAはEUAを一部改訂し、やや異なったアデノウイルス・ベクターを用いているオックスフォード大学/アストラゼネカのワクチン(米国は未承認だが臨床試験が実施された)も含めて、TTSを発症した人は禁忌とした。

常識的に考えれば明らかに劣るワクチンをは種したくないが、二回ではなく一回だけ接種することが承認されているのは同社のワクチンのみ。mRNAワクチンは通常の冷蔵庫では保管できないため、特にインフラが整っていない国では、都合が良い。米国が接種中止に踏み切ったら途上国に激震を誘発しかねない。ACIPができるのは劣後させることだけだったのだろう。

米国の接種実績のうち、同社のワクチンは接種回数ベースで3%、人数ベースでも7-8%程度を占めるに過ぎない。今後も、ごく一部の人たちが止むを得ず接種する製品として位置付けられるのだろう。

リンク: ACIPのスライドなど(CDCのサイト)
リンク: JNJのプレスリリース(劣後に置かれたことには言及していない)



アストラゼネカ、EvusheldはOmicronにも有効なはず
(2021年12月16日発表)

アストラゼネカは長期作用性抗SARS-CoV-2抗体カクテル、Evusheld(tixagevimabとcilgavimabの同梱製品)について、FDAが行ったin vitro試験でOmicron株にも中和活性を維持していたことを発表した。念のため、リンクされているNIH(米国立衛生研究所)のポータルサイトを見てみたが、他の多くの抗SARS-CoV-2抗体と同様に、武漢株と比べて力価が大きく低下している。結局、同社は、低下するが水準自体は悪くないと主張したいのだろう。

Evusheldは、特定の条件を満たす人がワクチンの代わりに用いる感染予防薬として米国でEUAされた。上記試験はOmicron株が持つ全ての変異を導入した偽ウイルス試験二本で、未だ論文も査読前論文草稿も公表されていないようだ。EvusheldのOmicron株に対するIC50 GMTは各171.1ng/mLと276ng/mL、武漢株では1.3ng/mLと1.51ng/mLで、各132倍と183倍に低下した。

但し、アストラゼネカによると、Omicron株の数値はCOVID-19感染者が取得する抗体と同様なレンジとのことだ。

Omicron感染者はワクチンを二度接種した人が少なくない。ワクチンで誘導される抗SARS-CoV-2抗体は感染者の抗体と大差ないようなので、感染者が取得する抗体と同水準であることが自慢になるのか、私にはわからない。

尚、上記ポータルサイトは様々な研究者が様々なワクチンや医薬品、開発品で様々な変異株に対して実施し論文発表/原稿公開した生ウイルス/シュードウイルス試験の結果を一覧化したもの。手法は区々なので製品間の優劣を論じるには不十分だが、流石に、武漢株比100倍と1倍では差があるだろう。欧米で承認されている抗SARS-CoV-2抗体でOmicron株にも武漢株並みの中和力価を維持しているのはVir Biotechnology/GSKのsotrovimabだけのようだ。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース
リンク: NIHの変異株活性一覧
リンク: AZD7442のOmicron株活性(NIHポータル・サイト)


【新薬開発】


新規echinocandinのカンジダ試験が成功
(2021年12月14日発表)

Cidara Therapeuticsと欧州などの販売権を持つMundipharmaは、CD101(rezafungin)の第3相ReSTORE試験の成功を発表した。カンジダ血症や侵襲性カンジダ症の患者187人を18ヶ国の132施設(!)で組入れて、負荷用量は400mg、その後は週次で200mgを3回投与する群と、caspofunginを一日一回投与する群の転帰を比較した試験で、30日全死亡率(FDA基準)は各23.7%と21.3%で差は2.4(95%下限は-9.7)、14日全般治癒率(EMA基準)は59.1%対60.6%で差は-1.1(95%下限は-14.9!)となり、何れも非劣性と判定された。22年央に承認申請する予定。

132施設の全てが組入れたとすると施設当たり平均1人強のみということになるが、無作為化割付がキチンとできたのだろうか?14日全般治癒率の非劣性マージンが大きいような印象もあるが、どうなのだろうか?

リンク: 両社のプレスリリース



RT誘導性口内炎予防薬の第3相が一転して成功宣言
(2021年12月14日発表)

Galera Therapeutics(Nasdaq:GRTX)は10月にフェールしたGC4419(avasopasem manganese)の第3相ROMAN試験が、実際は成功だったと訂正した。治験受託組織の解析に誤りがあった由。22年にFDAと承認申請の当否を相談する計画。

GC4419はスーパーオキシドを酸素と過酸化水素に分解する酵素、SOD(スーパーオキシド・ジスムターゼ)の類縁体。放射線療法の前に投与して、スーパーオキシドを分解することによって口腔内粘膜炎が起きるのを抑制するアイディアだ。

この試験は局所進行性頭頚部癌の化学放射線治療を受ける患者455人を組入れて、90mg群(60分点滴静注)の重度口腔内粘膜炎発生率を偽薬と比較した。結果は54%対64%で10月発表と同じだが、p値が0.113から0.0451に訂正された。副次的評価項目の罹患日数やG4口腔粘膜炎(飲食不能)発生率もp値が低下した。

0.0451は胸を張れる水準ではないが、後期第2相試験でも60%対43%、p=0.009という結果が出ているので、頑強性などに問題がなければ承認申請に進めるのではないか。それにしても、どのような誤りがあったのだろう?

リンク: 同社のプレスリリース



ASH:ポライビーの一次治療試験が成功
(2021年12月14日発表)

ロシュはPolivy(polatuzumab vedotin-piiq)の第3相POLARIX試験が成功したと8月に発表したが、詳細をASH(米国血液学会)などで発表した。CD20陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の一次治療を受ける879人を組入れて、代表的なレジメンであるR-CHOP(rituximab、cyclophosphamide、doxorubicin、vincristine、prednisoneの5剤併用)と、Polivyを追加してvincristineを除外したレジメンのPFS(無進行生存期間、担当医評価)を比較したところ、ハザードレシオが0.73となった。G3/4有害事象の発生率は各群57.5%と57.7%、G5(致死的)は2.3%と3.0%でそれほど増えなかった。

抗CD79b抗体とチューブリン重合阻害剤を結合した抗体薬物複合剤で、19~21年に再発治療薬として米欧日で承認された。日本で中外が適応拡大申請したが、ロシュも欧米で申請したと推測される。

リンク: ロシュのプレスリリース



ASH:ヘムライブラの中軽度A型血友病試験が成功
(2021年12月13日発表)

ロシュはHemlibra(emicizumab-kxwh)の中等症・軽症A型血友病の出血予防試験の結果をASH(米国血液学会)で発表した。血液凝固因子活性の面では重症と判定されなくても出血しやすく何とかしたい患者には、予防的投与が有効であることを示した。

このHAVEN-6試験は中等症患者51人と軽症患者20人に24週間予防的投与を行った。全員、インヒビターを持っていなかった。37人はベースライン時点で第8因子の予防的投与を受けていた。24週間追跡した50人の中間解析で、治療が必要な出血がなかった人が80%、治療の必要な関節出血がなかった人は90%に達し、成功認定された。

有害事象は頭痛や注射箇所反応。この試験では血栓性微小血管症や深刻血栓性イベントは発生しなかった。

Hemlibraは子会社の中外製薬が創製した第IX因子/第X因子二重特異性抗体。17~18年にかけてA型血友病の出血傾向を抑制する用途で日米欧で承認された。日米と異なり、EUでは、インヒビターを持たず、重症でもない患者は適応外だ。

しかし、血液凝固因子活性に基づく重症度分類と出血リスクは必ずしも相関しない。日米が適応限定しなったのは、医師が実態に即して判断すべきという意味だろう。

ロシュは、HAVEN-6をエビデンスとしてEUで限定解除の一変申請を行うのではないか。

リンク: ロシュのプレスリリース



ASH:IDH1変異AMLの一次治療試験成功
(2021年12月13日発表)

セルビエはAgios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)から取得したイソクエン酸脱水素酵素1(IDH1)阻害剤、Tibsovo(ivosidenib)の第3相AGILE試験が中間解析で成功したと7月に発表したが、AHA(米国血液学会)で詳細を明らかにした。未治療の強化療法が適応にならないIDH1変異陽性の急性骨髄性白血病146人を組入れて、azacitidineに500mg(一日一回経口)または偽薬を追加する効果を検討したところ、EFS(イベント・フリー・サバイバル)のハザードレシオが0.33と優れた成績を上げ、、独立データ監視委員会が新規組入れを中止するよう勧告した。副次的評価項目でも全生存期間のハザードレシオが0.44、メジアン24.0ヶ月対7.9ヶ月、完全反応率は47.2%対14.9%、何れも統計的に有意だった。

Tibsovoは18年に米国で難治/再発IDH1変異陽性急性骨髄性白血病に、今年8月には治療歴のあるIDH1変異陽性局所進行性/転移胆管細胞腫にも、単剤投与することが承認された。命に係わることもある分化症候群が枠付警告されている。一方、欧州はCHMPが薬効の挙証不十分と判定、承認申請を取り下げた。無作為化割付対照試験で延命効果が確認されたので、今回の用途で承認申請されるのではないか。

リンク: MontesinosらのASH抄録



ASH:移植後EBV性リンパ増殖性疾患の細胞療法が成功
(2021年12月13日発表)

Atara Biotherapeutics(Nasdaq:ATRA)はtabelecleucelの第3相ALLELE試験の中間解析結果をASHで発表した。臓器や造血幹細胞の移植後にエプスタイン・バー・ウイルスによるリンパ増殖性疾患を合併し、rituximabによる治療がフェールした38人の単群試験で、ORR(客観的反応率、独立評価)は50%、反応持続期間は19人中11人で6ヶ月を越えた。

EUでは昨年11月に承認申請が受理された。Pierre Fabreが販売権を持っている。米国はアカデミアが実施した臨床試験の薬剤との同等性評価がボトルネックになっている模様で、来年第2四半期に申請完了する計画。

リンク: Atara社のプレスリリース



ASH:ブレヤンジの二次治療試験が成功
(2021年12月11日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブはBreyanzi(lisocabtagene maraleucel)の第3相TRANSFORM試験の成功を6月に公表したが、詳細をASHで発表した。自己幹細胞移植が適応になる大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の二次治療における便益を医師が選んだ化学療法と比較した試験で、EFS(イベント・フリー・サバイバル、独立評価委員会方式)のハザードレシオが0.39、p<0.0001、メジアン値は10.1ヶ月対2.3ヶ月と、大きな差があった。副次的評価項目の完全反応率は各群66%と39%、メジアンPFS(無進行生存期間)は14.8ヶ月と5.7ヶ月だった。尚、メジアンEFSのほうが短いのは、無作為化割付から9週以内に部分反応以上でないとダメ、と条件が厳しいためだろう。

BreyanziはCD19標的型CAR-T療法。19年に買収したセルジーン社が前年に買収したJune Therapeuticsの開発品。難治再発LBCLの三次治療薬として日米で承認されている。ライバルの一つであるギリアドもYescartaのLBCL二次治療試験のデータをASHで発表するとともに、欧米で適応拡大申請したことも公表している(後述)。

リンク: BMSのプレスリリース



キイトルーダ・レンビマ併用は肺癌には無効
(2021年12月10日発表)

ESMO-IO(欧州臨床腫瘍学会免疫腫瘍学会議)でMSDのKeytruda(pembrolizumab)とMSD・エーザイが共同開発販売しているVEGFR阻害剤、Lenvima(lenvatinib)を併用した第3相LEAP-007試験の結果が発表された。PD-L1陽性(TPS≧1%)の非小細胞性肺癌の一次治療として、KeytrudaにLenvima(20mg/日)を追加する効用を偽薬追加と比較したが、独立データ監視委員会が定期的な中間評価で無益認定した。

全生存期間のハザードレシオは1.10、メジアン値は14.1ヶ月対16.4ヶ月で併用群が見劣りした。PFS(無進行生存期間)のハザードレシオは0.78、メジアン6.6ヶ月対4.2ヶ月と良好だったが、延命効果に繋がらなかった。G3-5の治療時発現有害事象発生率は57.9%対24.4%とかなり悪化した。

リンク: Csosziらの抄録(ESMO I-O 2021、抄録番号1200)


【承認申請】


ベーリンガー、汎発性膿疱性乾癬用薬を米国でも承認申請
(2021年12月15日発表)

ベーリンガー・インゲルハイムはBI 655130(spesolimab)をGPP(汎発性膿疱性乾癬)の急性期治療薬として米国で承認申請し、受理されたと発表した。10月にはEUでも申請受理されている。

GPPは希少難病で増悪すると全身に痛みを伴う紅潮や膿疱が現れる。一部の患者ではIL-36受容体アンタゴニストの欠損が見られる。BI 655130は抗IL-36受容体ヒト化抗体。

リンク: 同社のプレスリリース



インサイト、局所性JAK1/2阻害剤を白斑に適応拡大申請
(2021年12月14日発表)

インサイト(Nasdaq:INCY)は米国でOpzelura(ruxolitinib phosphate)を12歳以上の白斑の治療薬として承認申請し、受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は来年4月18日。欧州でも10月に申請受理されている。

非分節型全身型白斑に1.5%クリームを一日二回投与した第3相二本で、24週時点のF-VASI75(顔面白斑重症度指標75%改善)達成率が29.9%だった。

Opzeluraは9月に米国で軽中度アトピー性皮膚炎用薬として承認された。局所治療薬に十分応答しないまたは不耐の患者に一日二回塗布する。治療期間・頻度に制限が設けられている。

リンク: 同社のプレスリリース



ASH:イエスカルタをLBCL二次治療に承認申請
(2021年12月11日発表)

ギリアド・サイエンシズはYescarta(axicabtagene ciloleucel)の第3相ZUMA-7試験の成功を6月に公表したが、詳細をASHで発表した。難治再発大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の二次治療としての効果を免疫化学療法と比較したところ、EFS(イベント・フリー・サバイバル)のハザードレシオが0.398、p<0.0001、メジアン値は各群8.3ヶ月と2.3ヶ月だった。副次的評価項目の完全反応率は各66%と39%だった。

Yescartaは17年に米国で、18年にEUで、今年は日本でも、LBCLなどの三次治療薬として承認された。標記試験の成功を受け米国で適応拡大を申請し受理された。審査期限は来年4月1日。欧州でも申請済み。

リンク: ギリアドのプレスリリース



ロシュ、抗CD20/CD3二重特性抗体を承認申請
(2021年12月11日発表)

ロシュはRG7828(mosunetuzumab)のP1/2難治再発濾胞性リンパ腫3次治療試験の結果をASHで発表するとともに、欧州で非ホジキンリンパ腫に承認申請したこと、そして、米国でも申請する考えであることを明らかにした。

B細胞腫瘍のCD20と細胞傷害型T細胞のCD3を架橋する二重特異性抗体で、臨床試験で完全反応率が60%だった。

リンク: ロシュのプレスリリース


【承認審査・委員会】


CHMP、COVID-19治療薬などの承認を支持
(2021年12月17日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、抗SARS-CoV-2抗体などの承認に肯定的意見を纏めた。

リンク: EMAのプレスリリース

グラクソ・スミスクラインがVir Biotechnology(Nasdaq:VIR)からライセンスした抗SARS-CoV-2抗体、Xevudy(sotrovimab、和名ゼビュディ)は12歳且つ体重40kg以上で酸素投与は不要だが重症化リスクを持つCOVID-19感染者に用いる。臨床試験では29日の追跡期間中に24時間以上入院した患者が528人中6人(1%)と偽薬群の529人中30人(6%)を有意に下回った。死亡者は各群ゼロと2人だった。in vitro試験ではOmicron株にも有効。有害事象は過敏反応など。

5月に米国でEUA、8月にオーストラリアで条件付き承認、9月には日本でも特例承認された。

CHMPで肯定的意見を得た薬は通常、2~3ヶ月内に承認されるが、Xevudyは同日に承認された。EUでは韓国のセルトリオンのRegkirona(regdanvimab)とリジェネロン・ファーマシューティカルズのREGEN-COV(casirivimabとimdevimab、和名ロナプリーブ)が既に承認されている。

リンク: EMAのプレスリリース(12/16付)

Global Blood Therapeutics(Nasdaq:GBT)のOxbryta(voxelotor)は12歳以上の鎌状赤血球症患者の溶血性貧血治療薬。単剤、またはhydroxycarbamideと併用する。ヘモグロビンに可逆的に結合し酸素親和性を増強、赤血球の鎌状化を妨げ血中ヘモグロビン量を増やす。有害事象は頭痛、下痢、腹痛など。

米国では19年に加速承認された。2~15歳の脳梗塞抑制試験を実施して本承認に切り替える予定。EUは本承認するようだ。

リンク: EMAのプレスリリース

ファイザーがOPKO Health(Nasdaq:OPK)からライセンスして開発したNgenla(somatrogon)は長時間作用型遺伝子組換えヒト成長ホルモン製剤。毎日ではなく週一回の皮注で足りる。米国でも承認申請中。日本は11月に第一部会を通過した。

リンク: EMAのプレスリリース

同じくファイザーのApexxnarは18歳以上を対象とする20価肺炎球菌結合型ワクチン。米国では6月にPrevnar 20として承認された。COVID-19ワクチンが発売される前までのベストセラー・ワクチンであるPrevnarシリーズの第3弾。

リンク: EMAのプレスリリース

バイエルのKerendia(finerenone)は非ステロイド系ミネラルコルチコイド受容体拮抗剤。成人二型糖尿病患者のアルブミン血症を伴うステージ3/4慢性腎疾患に用いる。腎アウトカム試験で腎機能低下を抑制した。米国で7月に承認。

リンク: EMAのプレスリリース

アステラス製薬がSeagen(Nasdaq:SGEN)と共同開発したPadcev(enfortumab vedotin)は抗Nectin-4抗体とMMAE細胞毒のADC。白金薬レジメン歴と抗PD-1/PD-L1抗体歴を持つ成人の局所進行/転移尿路上皮腫に用いる。第3相試験でメジアン生存期間が12.9ヶ月と化学療法群の9.0ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.70だった。主な有害事象は重度皮膚反応、血糖値上昇、末梢神経症など。

米国では19年に加速承認、日本では9月にパドセブとして承認された。

リンク: EMAのプレスリリース

アストラゼネカのSaphnelo(anifrolumab)はタイプ1インターフェロンのサブユニット1に結合する抗体。活性自己抗体陽性で標準療法に十分な応答が得られない中重度全身性エリテマトーデスに用いる。SLEレスポンダー・インデックス4を主評価項目とした最初の第3相はフェールしたが、BICLAに切り替えた第3相が成功、奏効率が47.8%と偽薬群の31.5%を有意に上回った。

04年にMedarex(09年にBMSが買収)からライセンスした。7月に米国で、9月には日本でもサフネローとして、承認された。

リンク: EMAのプレスリリース

ファイザーのTepmetko(tepotinib)はc-MET阻害剤。MET遺伝子にエクソン14スキッピングが生じるような変異のある進行非小細胞性肺癌に用いる。非小細胞性肺癌の3%程度が該当する。高齢者が比較的多く、第2相の被験者のメジアン年齢は74歳だった。20年3月に日本でテプミトコとして初承認、今年2月には米国でも加速承認された。

リンク: EMAのプレスリリース

スイスのオブシーバ(Nasdaq:OBSV)がキッセイ薬品からライセンスして開発したYselty(linzagolix choline)は非ペプチド系GnRH受容体アンタゴニスト。再生産年齢期の成人女性の子宮筋腫に伴う中重度症状を治療する。経口剤で、紅潮などの副作用が起きにくいため、エストロゲンとプロゲスチンを併用して副作用を緩和するアドバック・セラピーが不適な患者にも使うことができる。米国でも承認審査中。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大では、アムジェンが創製し現在はSwedish Orphan Biovitrum ABが開発販売している遺伝子組換え型ヒト・インターロイキン-1受容体アンタゴニスト、Kineret(anakinra)を酸素投与が必要なCOVID-19肺炎の成人に用いることが支持された。suPAR(可溶性ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ受容体)値が6ng/mL以上の、重度呼吸不全を合併するリスクのある患者が適応になる。ギリシャとイタリアで実施されたSAVE-MORE試験で症状を改善し重度呼吸不全/死亡リスクを抑制する効果が見られた。

リンク: EMAのプレスリリース(12/16付)

COVID-19治療薬の先鞭であるギリアド・サイエンシズのVeklury(remdesivir、和名ベクルリー)の適応範囲をまたまた見直すことも支持された。昨年7月に12歳以上で40kg以上の酸素補給を必要とする肺炎に条件付き承認、12月には治療開始時にロー/ハイフロー酸素または非侵襲的換気を受けている患者が適応であることを明確化したが、今回、成人に関しては酸素投与不要であるものの重症化リスクを持つCOVID-19感染者に適応拡大する。日米では拡大済。

それにしても、WHO主導のSOLIDARITYがフェールした件の、敗因分析はどうなったのだろうか?

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大の常連であるMSDのKeytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)は、成人の腎細胞腫の切除後アジュバント療法として支持された。再発リスクが中重度または高度の患者に用いる。KEYNOTE-564試験で再発死亡ハザードレシオが偽薬比0.68だった。G3-5の治療時発現有害事象の発生率は18.9%と偽薬群の1.2%を上回った。

リンク: EMAのプレスリリース

武田薬品の抗アルファ4ベータ7インテグリン抗体、Entyvio(vedolizumab、和名エンタイビオ)は難治性のクローン病や潰瘍性大腸炎に承認されているが、今回は、潰瘍性大腸炎を治療するために大腸切除・腸肛門パウチ術を受けた後に中重度活性期慢性嚢炎を合併し、抗生物質治療に十分反応しない成人に用いることが支持された。米国や日本では申請されていないようだ。

リンク: EMAのプレスリリース

ファイザーのALK/ROS1チロシンキナーゼ阻害剤、Lorviqua(lorlatinib、和名ローブレナ)は成人のALK陽性非小細胞性肺癌の初めてのALK阻害剤として用いることが支持された。これまでは他のALK阻害剤による治療歴を持つ患者に限定されていた。米日は限定解除済み。

リンク: EMAのプレスリリース

オランダのノルディックグループが大鵬薬品からライセンスして開発販売しているTeysuno(tegafur、gimeracil、oteracil potassiumの合剤、和名ティーエスワン)は欧州では進行性胃癌の一次治療にcisplatinと併用することが承認されているが、今回、fluoropyrimidine不耐の転移結腸直腸癌に用いることが支持された。アジュバントまたは転移後の治療で手足症候群や心血管毒性が発生し継続投与が適切でない患者に、単剤、またはoxaliplatinあるいはirinotecanと併用(bevacizumab追加も可)で投与する。

リンク: EMAのプレスリリース

COVID-19用薬は各国がEUAや条件付き承認、特例承認など様々な手段を用いて実用化をスピードアップしているが、EUはあまり融通が効かないようで、加盟国が独自に承認する事例が目立っている。CHMPは、正式な承認審査とは別に、加盟国向けの推奨を行ってニーズに応えている。

今回は、ファイザーのPAXLOVID(nirmatrelvir、ritonavir)について、加盟国向け推奨を行った。COVID-19に感染し酸素投与は不要だが重症化リスクを持つ成人に、発症後5日以内に投与開始する。同梱二剤を一日二回、5日間服用する。有害事象は味覚異常、下痢、嘔吐など。薬物相互作用に注意する。妊婦や避妊していない妊娠可能年齢の女性には推奨しない。授乳は一定期間、中断する。

ローリング審査も開始した。米国では11月にEUA申請されている。

リンク: EMAのプレスリリース(12/16付)

一方、バイオジェンとエーザイが共同開発販売しているAduhelm(aducanumab)は否定的意見となった。軽度認知障害や軽度アルツハイマー病の治療薬として承認申請され、米国ではなぜか承認されたがほとんど売れていない。CHMPも、臨床成績が区々であること、アミロイド・ベータの減少と病状悪化の抑制がリンクするかどうかは未確立であること、脳血管浮腫や脳出血などのリスクがあり適切な発見・対処法もないことを指摘している。

両社は、このような場合にしばしば用いられる、再審請求を行う考え。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: バイオジェンとエーザイのプレスリリース

承認申請が撤回されたのがIntercept Pharmaceuticals(Nasdaq:ICPT)のobeticholic acid。NASH治療薬として承認申請されたが、臨床試験で治療効果が限定的であったことや、心血管や腎臓の毒性が懸念されることなどから、CHMPは承認に前向きではなかった。FDAも同様な理由で6月に審査完了通知を発出している。

リンク: EMAのプレスリリース


【承認】


全身性重症筋無力症治療薬が承認
(2021年12月17日発表)

FDAは、オランダのArgenx(Euronext:ARGX)が申請したVyvgart(efgartigimod)をアセチルコリン受容体(AChR)に対する自己抗体を持つ成人の全身性重症筋無力症の治療薬として承認した。

重症筋無力症は免疫グロブリンGが神経・筋肉間の情報伝達を妨げ、筋力低下を引き起こす希少疾患。Vyvgartは免疫グロブリンGの分解を妨げるFcRn(胎児性Fc受容体)を標的とする抗体フラグメントで、臨床試験では68%の患者で日常生活機能の改善が見られた(MG-ADLで評価)。偽薬群は30%だった。主な有害事象は感染症や過敏反応。

日本でも11月に第一部会を通過した(ウィフガード点滴静注)。欧州でも承認申請中。

リンク: FDAのプレスリリース



抗TSLP抗体が重症喘息症に承認
(2021年12月17日発表)

アストラゼネカは、アムジェンと共同開発している抗TSLP(胸腺間質リンパ球増殖因子)抗体、Tezspire(tezepelumab-ekko)がFDAに承認されたと発表した。12歳以上の重度喘息症患者の維持療法に追加する。第3相試験では増悪頻度が偽薬比56%低かった。

喘息症のステップセラピーにおいて抗体医薬は最終ステップで用いられるが、これまでの製品は、事前に好酸球数や通年性アレルゲン検査でスクリーニングする必要があった。限定がない薬はTezspireが初。

リンク: 同社のプレスリリース



オレンシアが急性移植片宿主病に適応拡大
(2021年12月15日発表)

FDAはブリストル マイヤーズ・スクイブのOrencia(abatacept)を他家造血幹細胞移植を受ける2歳以上の患者の急性移植片宿主病(aGvHD)を抑制する用途で承認した。HLA型が適合または7アレル適合である場合に、カルシニューリン阻害剤及びMTXと併用する。この用途の薬の承認は初。

OrenciaはCTLA-4と免疫グロブリンG1の融合蛋白。05~10年に米欧日でDMARD不応不耐リウマチ性関節炎の治療薬として承認されている。

HLA適合患者を組入れた臨床試験では、180日重度aGvHD発症・死亡のハザードレシオが対照群比0.55と数値上は悪くなかったが有意ではなかった。一方、180日生存率は97%対84%で上回り、死亡ハザードレシオは0.33(95%信頼区間0.12-0.93)だった。有害事象は貧血、高血圧、サイトメガロウイルス感染症など。

7/8適合移植のエビデンスは患者登録のデータ。180日生存率が98%と対照群の75%を上回った。FDAはレジストリーのようなリアル・ワールド・データに基づく承認申請もケース・バイ・ケースで受け入れるようになった。

リンク: FDAのプレスリリース



コルチコステロイドの新製剤をIgA腎症に承認
(2021年12月15日発表)

FDAはスエーデンのCalliditas Therapeutics(Nasdaq:CALT、Nasdaq Stockholm:CALTX)のTarpeyo(budesonide)を原発性IgA腎症の蛋白尿を改善する用途で加速承認した。ステロイドの腸溶性コーティング徐放性カプセルで、16mgを一日一回、経口投与する。RAS阻害剤の最大耐容量を服用している成人患者約200人を組入れた第3相試験では、UPCR(尿蛋白クレアチニン比)が9ヶ月後に平均34%低下した。偽薬群は5%低下に留まった。

メーカー側は腎機能低下を遅らせる効能を市販後に確認すべくコミットメントしている。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Calliditas社のプレスリリース



米国でJAK阻害剤の適応拡大が流れ出した
(2021年12月14日発表)

FDAはJAK阻害剤の安全性に関してEUや日本より強い懸念を示しており、適応拡大申請の審査がPDUFA(処方薬ユーザー課金法)で定められた期限を軒並み超過していたが、メーカー側が枠付警告強化や適応限定などのレーベル改訂を終えたのと軌を一にして、流れ始めた。

ファイザーはXeljanz(tofacitinib、和名ゼルヤンツ)を活性期強直性脊髄炎に用いることが承認されたと発表した。順調なら半年前に承認されるはずだった。11月に承認されたEUとは異なり、DMARD不応不耐だけでは適応にならず、リウマチ性関節炎と同様にTNFブロッカー不応不耐に限定されている。

リンク: ファイザーのプレスリリース

アッヴィのRinvoq(upadacitinib、和名リンヴォック)を活性期乾癬性関節炎に用いることも承認された。順調なら第1四半期中に承認されるはずだった。EUや日本と異なり、TNFブロッカー不応不耐に限定されている。

こうしてみると、Xeljanzの長期安全性確認試験の対象であったリウマチ性関節炎以外の適応症に関しても、TNFブロッカーが承認されている場合はTNFブロッカーが優先とFDAは判断しているようだ。

リンク: アッヴィのプレスリリース






今週は以上です。

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