【ニュース・ヘッドライン】
- COVID-19関連:
- コミナティは三回接種すればオミクロン株にも有効?
- アストラゼネカの抗体カクテルが予防にEUA
- 植物培養ワクチンの第3相が成功
- アクテムラ、EUでも中等症COVID-19に承認
- ゼビュディの第3相の最終解析値
- その他の領域:
- UCB、重症筋無力症の第3相が成功
- B型血友病の遺伝子療法を欧米で承認申請へ
- ニューロクラインのVMAT2阻害剤もハンチントン病試験成功
- SERD新薬の乳癌試験が成功
- レット症候群試験が成功
- Biohaven、点鼻用CGRP受容体アンタゴニストの二本目が成功
- リンヴォックのクローン病試験が成功
- 韓国発の汎her阻害剤が承認申請
- NASH用薬の欧州申請を撤回
- FDA諮問委員会、アルポート症候群用薬の承認に反対
- Secura Bio社、米国で抗癌剤の加速承認を相次いで返上
- ファイザー、アトピー性皮膚炎治療薬サイバインコがEUでも承認
- JAK阻害剤二剤にもクラス枠付警告が導入
【COVID-19関連】
コミナティは三回接種すればオミクロン株にも有効?
(2021年12月8日発表)
BioNTech/ファイザーのCOVID-19ワクチン、Comirnaty(tozinameran)はOmicron株に対する感染予防効果が低い可能性を示す、in vitro試験の結果が相次いで発表された。
一つは南アフリカのAfrica Health Research Instituteによるもの。ホームページに概要と査読前論文のリンクが掲載されている。
ワクチンを二回接種した12人の14血漿検体を生ウイルス中和アッセイでテストしたところ、野生株(D614G型)におけるGMT(幾何平均抗体価)が1321であったのに対して、Omicron株では32と、41分の1だった。但し、感染歴のある6人の血漿では、感染歴のない血漿の野生株に対するGMTと同程度だった。因みに、未感染6人の検体は接種完了のメジアン12日後に採取、感染歴6人はメジアン27日後で、感染したのは1年以上前だった。
もう一つはBioNTech/ファイザーがプレスリリースで発表した。二回接種完了の3週間後に採取した血清を用いて、Omicronと同様な変異を導入したシュードウイルスの中和抗体価テストしたところ、野生株に対する値の25分の1だった。一方、ブースター接種の1ヶ月後に採取した血清ではGMTが154と、二回接種後の血清の野生株(155)やDelta株(398)に対するGMTに匹敵していた。液性免疫の点では二回より三回接種のほうが良いことになる。
一方、CD8陽性T細胞が認識するエピトープの8割はOmicron株のゲノム変異に影響されていないため、二回接種でも重症化リスクは十分抑制できるのではないか、と両社は推測している。まあ、それを言えば、Delta株に対しても重症化だけなら二回接種でも十分に抑制できるのではないかと思われるが。
プレスリリースだけなので、検体数や老若の差異、二回目と三回目の間隔は不明。また、三回目接種から6ヶ月、8ヶ月、12ヶ月経っても有効なのか、明らかではない。
リアル・ワールドではどうか?MMWR(12月10日付)によると、米国では12月1~8日にOmicron株感染者が43人報告されたが、うち34人は発症/検査陽性の14日以上前にワクチン二回接種を完了しており、さらにそのうち14人は追加接種も済ませていた(但しこのうち5人は発症前14日以内)。今後、感染例が積み重なるにつれて、実態が浮き彫りになるだろう。
いずれにせよ、両社はOmicron株を標的とするmRNAリピッド・ナノパーティクル・ワクチンの開発を進める考え。現時点では未だ主流になっていないが、今後、感染シェアが上昇するようなら、3回目はOmicron対応ワクチンだけ接種するような方法も考えられるだろう。
リンク: ファイザーのプレスリリース
リンク: AHRIのプレスリリース
リンク: medRxivに提出された試験論文草稿(AHRIのサイト、pdfファイル)
リンク: Omicron株感染者の特徴に関する論文(MMWR、12/10/2021)
アストラゼネカの抗体カクテルが予防にEUA
(2021年12月8日発表)
FDAはアストラゼネカのEvusheld(tixagevimabとcilgavimabの同梱)をCOVID-19の暴露前予防に承認した。ワクチン同様に感染や重症化を防ぐために用いるが、適応になるのは12歳かつ体重40kg以上の中重度免疫不全またはワクチンに不耐不適な人だけ。他社の抗SARS-CoV-2抗体は感染後の治療や感染者の濃厚接触・同居者の曝露後予防用途で承認されているが、当製品は曝露後予防試験がフェールしているため、感染者の濃厚接触や同居者は適応外。
具体的にどのような人が対象なのか?医療従事者向けファクト・シート(処方情報類似文書)では、固形癌や血液癌の治療、臓器/幹細胞移植後の免疫抑制療法、コルチコステロイド(プレドニゾン換算で20mg/日以上を2週間以上)やTNFブロッカーによる治療などを受けている人や、中重度原発性免疫不全やHIV感染により免疫低下した人などが例示されている。MTXは列挙されていないが、これらは例示に過ぎないので、学会や医師の判断に委ねられる。
ワクチン未接種で感染歴もない人を組入れた第3相試験では、各活性成分を150mg、一回ずつ筋注した群の症候性感染が3441人中8人、0.2%だったのに対して偽薬群は1731人中17人、1.0%となり、相対リスク削減率は77%だった。この主解析はメジアン83日間しか追跡していないが、6.5ヶ月追跡した解析では3441人中11人(0.3%)、偽薬群は1731人中31人(1.8%)となり、相対リスク削減率は83%だった。
主な有害事象は注射箇所反応や筋注に伴う出血、そして、心臓有害事象など。上記試験では心臓に関する深刻有害事象の発生率が0.6%(22人)と偽薬群の0.2%(3人)を上回った。うち、冠動脈疾患/心筋梗塞が10人、心不全が6人、不整脈が4人で発生した。全ての症例が心血管疾患歴または心臓疾患リスク因子を持っていた。発生時期は投与の数時間後から追跡期間完了時点まで様々で一定のパターンは見られない。第3相曝露後予防試験ではこのような偏りは見られなかったが、被験者数が5分の1、メジアン年齢が48歳と9歳若く心血管疾患歴/リスク保有者の比率が低いので、判然としない。結局、薬との因果関係は不明なままである。
Evusheldは、Vanderbilt Universityの研究者が感染者の回復期血漿から抽出した二種類の抗SARS-CoV-2抗体を装飾し、半減期を長期化するとともに、抗体依存的疾病強化リスクを緩和したもの。in vitroではオミクロン株にも中和活性を示したとのことだが、どのような試験を行ったのかは明らかではない。米国連邦政府と70万回分を7.26億ドルで供給する合意を結んでいる。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ファクト・シート(添付文書相当)
リンク: アストラゼネカのプレスリリース
植物培養ワクチンの第3相が成功
(2021年12月7日発表)
田辺三菱製薬が13年に買収したカナダの植物培養ワクチン開発会社、Medicagoとグラクソ・スミスクラインは、共同開発しているSARS-CoV-2ワクチン、MT-2766の第3相試験の中間解析が成功したと発表した。カナダ、米国、英国、メキシコ、アルゼンチンで18歳以上の24000人超を組入れて、3.75mcgを21日おいて二回筋注する効果を偽薬と比較したところ、ワクチン効率(VE;感染リスク削減率)は71%だった(95%信頼区間58.7-80.0)。デルタ株に対するVEは75.3%、ガンマ株では88.6%だった。このデータはper protocolだがintent-to-treatでも大差ない由。COVID-19ワクチンの臨床試験ではベースライン時点で抗SARS-CoV-2抗体を持つ、関連歴が疑われる被験者は除外してVEを算出することが多いが、このベースでもVEは75.6%(同64.2-83.7)と大差なかった。ワクチン関連深刻有害事象は発生しなかった。
先行企業が第3相試験を実施した1年前とは流行株が異なっているため比較は難しいが、決定的に劣るようには感じられない。カナダで承認申請する計画。カナダ政府から開発補助金を受領しており、承認後に7600万回分の供給で合意している。
Medicagoはワクチン抗原の遺伝子をベンサミアナ・タバコに導入して培養・量産する技術を持っている。MT-2766はスパイク蛋白の安定化融合前三量体を抗原とし、グラクソのパンデミック・アジュバントで免疫原性を増強した。冷蔵保存可能。
リンク: 両社のプレスリリース
アクテムラ、EUでも中等症COVID-19に承認
(2021年12月7日発表)
ロシュは、欧州委員会がRoActemra(tocilizumab、和名アクテムラ)をCOVID-19の治療に用いる適応拡大を承認したと発表した。EMAのCHMPが肯定的意見をまとめてから数時間後の特急承認だ。
適応となるのは酸素投与または人工呼吸器装着の全身性コルチコステロイドによる治療を受けている成人患者。CHMPによると、全身性コルチコステロイド治療を受けていない患者に投与する場合、死亡リスクが高まってしまう可能性を否定できない。
承認の主エビデンスはオックスフォード大学が主導したRECOVERY試験のようだ。29日死亡率が31%と標準療法群の35%より低かった。29日退院率は57%対50%で上回った。
100人に一回(改善しなかったら8時間以上後にもう一回)投与すれば4人を救命できるので重要な薬だが、リスク削減率の面では決して高くない。また、臨床試験のエビデンスは区々で、人工呼吸器装着までは進行していない患者を組入れたEMPACTA試験では人工呼吸器装着リスクを抑制したが死亡率は数値上、上回った。COVACTA試験とREMDACTA試験はフェールした。被験者数はRECOVERY試験が圧倒的に多いため信頼性が高いが、オープンレーベルであることや、異なった薬の臨床試験と2x2方式で実施されたことなど、頑強性で劣る面もある。
リンク: ロシュのプレスリリース
リンク: EMAのプレスリリース(12/6付)
ゼビュディの第3相の最終解析値
(2021年12月2日発表)
Vir Biotechnology(Nasdaq:VIR)とグラクソ・スミスクラインは、共同開発販売している抗SARS-CoV-2抗体、Xevudy(sotrovimab)が英国で条件付き承認されたと発表した。同時に、第3相COMET-ICE試験の最終解析論文原稿をmedRxivで公開したことを明らかにした。
COMET-ICE試験は今年3月に独立データ監視委員会が中間解析結果に基づき成功認定、5月に米国でEUA(非常時使用認可)、8月にオーストラリアで条件付き承認、9月に日本で特例承認された。この時の全入院・全死亡リスク削減率(n=583)は85%、p=0.002だったが、最終解析(n=921)では79%、p<0.001と若干低下した。試験薬群は528人中6人が入院したが、うちCOVID-19関連は3人だけだった。試験薬群は529人中29人が入院した(COVID関連の内訳は不明)。死亡者は各群ゼロと2人で、イベント数が少ないため正式な統計検定は見送られた。
中間解析と最終解析で治療効果の数値が変化する事例は、最近ではmolnupiravirで話題になった。中間解析はもし結果が悪ければ打ち切られるし、そこそこならデータ非公表のまま続行するので、途中で公表されるのは成功認定された良いデータだけだけである。一方、その後のデータは、中間解析の上にも下にも変動する可能性があるはずだが、「平均への回帰」がしばしば観察される。今回の変化くらいなら驚くほどではない。
sotrovimabはシュードウイルスの試験でOmicron株に対する活性が見られた由。変異箇所が多いので過去にワクチンや試験薬で行われたような一ヶ所だけ変異させたシュードウイルスの試験では足りない可能性があるが、今回は抗体医薬の標的であるスパイク蛋白の変異37箇所を全て反映したシュードウイルスを用いた由なので、この種の試験の中では信頼性が高そうだ。
リンク: 両社のプレスリリース
【新薬開発】
UCB、重症筋無力症の第3相が成功
(2021年12月10日発表)
UCBはUCB7665(rozanolixizumab)の第3相全身型重症筋無力症試験の成功を発表した。22年第3四半期に日米欧で承認申請する予定。データは未発表。
重症筋無力症は自己免疫疾患で、筋細胞のコントロールが不調になり、重症化すると呼吸不全のリスクも生じる。UCB7665は皮注用の抗ヒトneonatal Fc受容体抗体で、免疫グロブリンGをブロックする。第3相は二種類の用量の第43日MG-ADL総スコア改善効果を検討した。
同社は皮注用C5インヒビターであるzilucoplanの第3相も実施中で、数週内に結果が判明する見込み。両方成功なら、使い分けや併用の余地を探索することになりそうだ。
リンク: 同社のプレスリリース
B型血友病の遺伝子療法を欧米で承認申請へ
(2021年12月9日発表)
米国のCSL BehringとオランダのuniQure(Nasdaq:QURE)は、AMT-061(etranacogene dezaparvovec)の第3相重度B型血友病試験で、第IV因子の増加だけでなく出血予防効果も確認できたと発表した。22年上期に欧米で承認申請する予定。
uniQureはアムステルダム大学発の遺伝子療法開発会社。AMT-061はPadua大学の研究者が発見した第IX因子の高活性多型、FIX-Paduaをアデノ随伴ウイルス5型(AAV5)ベクターで導入する。CSL Behringは昨年6月に開発販売権を取得した。
第3相では重度のB型血友病54人に2x10^13 gc/kgを一回投与して第IX因子活性が正常水準対比でどの程度上昇するか観察した。この試験は正常水準比2%未満の患者を組入れたが、26週時点で平均37.2%まで上昇した。AAV5は中和抗体保有者が多いのが難点で本試験でも23人が該当したが、効果や忍容性は持たない人と大差なかった。
今回の解析はFDAが要請したもので、第IX因子の定常化が見込まれる第7月から第18月までの出血頻度年率を6ヶ月のリード・イン期間中と比較した。結果は1.51対4.19となり、非劣性検定だけでなく優越性検定も成功した(p=0.0002)。また。第18月時点の第IX因子活性は正常水準の36.9%と、高水準を維持していた。
腹部超音波定期検査で被験者の一人から肝細胞腫が見つかり、治療関連疑い例とされたため、FDAが治験停止を命じたことがある。生検の結果、ごく一部の細胞にしかベクターが組込まれていないことや、組み込まれた部位は区々で肝癌の発症への関与が知られていない部位であることが判明、今年4月にホールド解除となった。他に肝細胞腫は報告されていない。77歳の被験者が尿敗血症と心原性ショックで死亡したが、試験薬との関連性は認められなかった。死亡はこの一人のみ。
リンク: 両社のプレスリリース
ニューロクラインのVMAT2阻害剤もハンチントン病試験成功
(2021年12月7日発表)
Neurocrine Biosciences (Nasdaq: NBIX)は、valbenazineの第3相ハンチントン病試験が成功したと発表した。22年に承認申請予定。
valbenazineは小胞モノアミン・トランスポーター(VMAT)2阻害剤。ドパミンなど神経伝達物質がシナプス前小胞に取り込まれるのを抑制し、不随意運動に係る神経系機能を正常化する。遅発性ジスキネジア治療薬Ingrezzaとして17年に米国で承認、日本でもライセンシーの田辺三菱製薬が承認申請中。
今回のKINECT-HD試験は、18~75歳の舞踏症状を持つ患者128人を組入れて、UHDRS-TMC(Unified Huntington's Disease Rating Scale Total Maximal Chorea)スコアの変化を検討したところ、偽薬比3.2単位の改善が見られた(p<0.0001)。副次的評価項目のCGI(臨床的全般的評価)も医師評価と患者評価ともに有意に改善した。有害事象は既知のものと同じで、自殺行動や自殺思慮悪化は見られなかった。
VMAT2阻害剤はルンドベックのXenazine(tetrabenazine)やテバのAustedo(deutetrabenazine)がハンチントン病の舞踏症治療薬として米国で承認されている。
リンク: ニューロクラインのプレスリリース
SERD新薬の乳癌試験が成功
(2021年12月8日発表)
イタリアのメナリニとRadius Health(Nasdaq:RDUS)は、非ステロイド系選択的エストロゲン受容体零落剤elacestrantの第3相進行転移乳癌試験の結果をSABCS(サン・アントニオ乳癌シンポジウム)で発表した。ハザードレシオや12ヶ月時点のデータは良好だが、メジアン値の群間差は案外小さかった。また、効果は特定のサブグループに限定的のようだ。成功したこと自体は10月に公表済み。来年、欧米で承認申請する考え。
この第3相はエストロゲン受容体陽性、her2陰性の進行/転移乳癌で1~2次の内分泌療法歴且つCKD4/6阻害剤歴を持つ男女477人を組入れて、400mgを一日一回経口投与する群のPFS(無進行生存期間、独立放射線学的評価委員会方式)を標準療法(fulvestrant、anastrozole、letrozoleまたはexemestane)とオープンレーベルで比較した。PFSのハザードレシオは0.70、メジアン値は各群2.79ヶ月と1.91ヶ月、推定12ヶ月無進行生存率は22.3%と9.4%だった。共同主評価項目である、エストロゲン受容体1(ESR1)のライガンド結合ドメインに変異のあるサブグループ228人のPFSは夫々0.55、3.78ヶ月と1.87ヶ月、26.8%と8.2%だった。
内分泌療法応答性が低いと言われているESR1変異型における上乗せ効果が大きいのはポジティブな発見だ。一方、この変異のない腫瘍における便益は曖昧だ。
全生存期間は未成熟だが良いトレンドとのこと。最終解析は22年から23年とのことなので、承認と前後するのではないか。有害事象は悪心、背痛、肝機能検査値異常、頭痛など。
Radiusは06年にエーザイからelacestrantをライセンス、当初は更年期障害や骨粗鬆症向けに開発を進めたが、腫瘍学における研究開発を中止するに当たって、昨年7月にメラニリに世界開発商業化権を供与した。
尚、Radiusは皮注用骨粗鬆症治療薬Tymlos(abaloparatide)の経皮投与用貼付薬の第3相、wearABLe試験がフェールしたことも発表した。腰椎BMD改善効果がTymlos比非劣性ではなかった。
Tymlosは日本では帝人がライセンス、3月にオスタバロ名で販売承認を取得した。
リンク: 両社のプレスリリース
レット症候群試験が成功
(2021年12月6日発表)
ACADIA Pharmaceuticals(Nasdaq:ACAD)はtrofinetideの第3相RETT症候群試験、Lavenderが成功したと発表した。介護者や医師の症状評価が改善した。22年央に承認申請する予定。
Rett症候群は神経系の発達不全を呈する希少疾患。MECP2などの変異遺伝子の関与が指摘されている。米国の患者数は6000~9000人。trofinetideはニューロンやグリア細胞から分泌されるIGF-1のアミノ端末トリペプチドの類縁体。18年にNeuren Pharmaceuticals(ASX:NEU)から北米における開発商業化権を取得した。
Lavender試験は5~20歳のRett症候群の女性187人を組入れて、体重に応じて30~60mLを一日二回、12週に亘って経口/経管投与した。RSBQ(Rett Syndrome Behaviour Questionnaire)はベースライン比5.1低下、偽薬群は1.7低下で、p=0.0175、プレスリリースによるとイフェクト・サイズは0.37だった。CGI-I(Clinical Global Impression–Improvement)スコアは各3.5と3.8、p=0.003、イフェクトサイズは0.47だった。深刻有害事象の発生率は両群とも3.2%だったが、治療時発現有害事象による治験離脱率は17.2%対2.1%と偏りがあった。薬効解析にどのような影響があるか、知りたいところだ。
リンク: 同社のプレスリリース
Biohaven、点鼻用CGRP受容体アンタゴニストの二本目が成功
(2021年12月6日発表)
Biohaven Pharmaceutical(NYSE:BHVN)はBHV-3500(zavegepant)の第3相中重度片頭痛急性期治療試験が成功したと発表した。第2/3相試験のデータと合わせて22年第1四半期に米国で承認申請する予定。輩出しているCGRP受容体を標的とする薬の一つで、同社は昨年、Nurtec(rimegepant)口腔内急崩壊錠を急性期治療と予防的治療向けに米国で発売しているが、zavegepantは点鼻用であることが特徴。悪心嘔吐や胃麻痺などの胃腸系症状を持つ患者に適している。
第3相は1405人を組入れて10mgを一回投与する効果を検討した。薬効解析対象は約1200人。共同主評価項目のうち2時間疼痛解消率は24%対15%、最も煩わしい症状の解消率は40%対31%と、どちらも偽薬比有意に上回った。疼痛緩和奏効率は15分後には16%対8%、2時間後でも59%対50%と有意な差が持続した。有害事象は味覚異常など。
上記二剤はブリストル マイヤーズ・スクイブから16年にライセンスしたもの。
リンク: 同社のプレスリリース
リンヴォックのクローン病試験が成功
(2021年12月6日発表)
アッヴィはJAK1阻害剤Rinvoq(upadacitinib)の第3相U-EXCEED試験が成功したと発表した。バイオ薬に応答不十分/不耐の中重度クローン病患者約500人を組入れて45mg群と偽薬群に2対1割付して12週間投与したインダクション試験で、共同主評価項目は臨床的寛解率と内視鏡的奏効率。
前者はFDA基準(CDAIが150未満に低下)では39%対21%、EMEA基準(軟便・液便頻度と腹痛を評価)では40%対14%、後者は35%対4%で、何れも有意な差があった。深刻有害事象発現率は9.9%対9.3%で大差なく、深刻感染症は2.8%対1.8%で少し上回った。
クローン病試験の要注意事項である胃腸穿孔は発生しなかったが、おそらく維持療法試験の被験者数を増やすためだろう、偽薬群や追加組入れ患者に投与した追加症例207人では2人で発生した。
Rinvoqは潰瘍性大腸炎の試験が成功、日米欧で承認審査中。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認申請】
韓国発の汎her阻害剤が承認申請
(2021年12月6日発表)
米国ネバダ州の新興製薬会社、Spectrum Pharmaceuticals(NasdaqGS:SPPI)は、poziotinibをher2エクソン20挿入変異陽性で治療歴のある非小細胞性肺癌に用いる承認申請をFDAに行ったと発表した。15年に韓国のハンミ・ファーマから中韓以外の権利を取得した汎her阻害剤で、エクソン20挿入変異は非小細胞性肺癌の2~3%で見られる。
第2相試験のher2エクソン20挿入変異再発治療コフォートでは、90人に16mgを一日一回経口投与したところ、cORR(確認客観的反応率)が27.8%となり、95%下限が閾値の17%を上回った。メジアン反応持続期間は5.1ヶ月、治療関連有害事象と有害事象治験離脱の発生率は各14%と12%だった。尚、一次治療コフォートはフェールした。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認審査・委員会】
NASH用薬の欧州申請を撤回
(2021年12月9日発表)
Intercept Pharmaceuticals(Nasdaq:ICPT)はobeticholic acidをNASH(非アルコール性脂肪肝炎)による肝線維症の治療薬として欧米で承認申請したが、昨年6月にFDAから審査完了通知を受領したのに続いて、EUの承認申請を撤回したと発表した。NASH治療薬の開発は一時期盛り上がったが、戦線離脱が相次ぎすっかり鎮静化してしまった。
FDAは、審査完了通知の中で、病理学的サロゲートマーカーである程度の差が見られただけでは便益が不確かであり危険を上回るとは言えないため、加速承認はできない、長期追跡によって臨床的便益を確認するよう求めた。EUも同じ判断だろう。
obeticholic acidは胆汁酸誘導体で閣内転写調節受容体、ファルネソイドX受容体を作動する。原発性胆汁性肝硬変用薬Ocalivaとして16年に欧米で加速/条件付き承認されている。
リンク: 同社のプレスリリース
FDA諮問委員会、アルポート症候群用薬の承認に反対
(2021年12月8日発表)
FDAは心臓血管薬諮問委員会を招集し、Reata Pharmaceuticals(Nasdaq:RETA)が承認申請したImbarkyd(bardoxolone methyl)について意見を聞いた。目標適応症のアルポート症候群は糸球体などの4型コラーゲンの遺伝子に遺伝性/突然変異を持ち腎不全を合併するリスクが高い希少疾患。腎疾患の進行抑制効果が認められるか、そして、便益は危険を上回るか、という諮問に対して、16人の委員全員が否と答えた。
同社は米欧日豪の施設で157人の患者を組入れて48週間治療し、eGFR(推算糸球体濾過量)を偽薬と比較した。結果は、試験薬群は4.5mL/分/1.73m2改善、偽薬群は4.7mL/分/1.73m2悪化し、有意な差があった。FDAは2年間追跡して効果や安全性を確認してから承認申請するようアドバイスしたが同社は待たずに断行した。
惨憺たる結果になった敗因は効果と安全性。eGFRは腎臓疾患のスクリーニングなどに用いられているが、腎機能改善効果を評価する指標としては確立していない。負荷がかかって一時的に濾過率が上昇しても、やがて疲弊し、却って悪化してしまうかもしれない。先に実施された糖尿病性腎症治療試験では進行を抑制する効果が見られなかっただけでなく、全死亡や体液貯留による心不全が偽薬比増加したことから、データ監視委員会の勧告に基づき中止となった。アルポート症候群試験でも血圧上昇やアルブミン尿の増加などが見られたようだ。
日本は協和キリンがライセンス。上記の糖尿病性腎症試験中止を受けて一時的に開発中止したが、再開し、糖尿病性腎症や常染色体優性多発性嚢胞腎の第3相を実施するとともに、今年7月にアルポート症候群で承認申請した。
リンク: Reataのプレスリリース
Secura Bio社、米国で抗癌剤の加速承認を相次いで返上
(2021年12月3日発表)
米国ラスベガスの新興製薬会社、Secura Bioは、Copiktra(duvelisib)の米国における二つの適応症のうち濾胞性リンパ腫3次治療の加速承認を返上すると発表した。11月にはFarydak(panobinostat、和名ファリーダック)の加速承認返上も発表しており、1~2年前に開発販売権を取得したばかりの二本柱が相次いで縮小/手仕舞いとなってしまった。どちらも加速承認時に課された市販後薬効確認試験が実施されず、FDAが12月2日の腫瘍学薬諮問委員会に上程する計画を立てていた。
CopiktraはInfinity Pharmaceutical(Nasdaq:INFI)からライセンスしたPI3Kデルタ阻害剤。Verastem(Nasdaq:VSTM)が18年に米国で難治再発慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫の3次治療として本承認、難治再発濾胞性リンパ腫の3次治療として加速承認、を取得した。EUでも今年、この二適応症に承認。日本は18年にヤクルトが開発商業化権を取得、第2相段階。
加速承認の場合、市販後薬効確認試験を実施して期限までに結果を提出する義務を負うが、Verastemは米国承認の2年後にSecuraに権利譲渡し、Securaは商業的な理由で市販後コミットメント試験を断念、加速承認返上を申請した。
Farydakはノバルティスからライセンスしたヒストン脱アセチル化酵素阻害剤。臨床試験で癌の進行以外による死亡が対照群より多かったことから7人の委員のうち5人が反対したが、15年に多発骨髄腫の3次治療薬として加速承認された。同年、日欧でも承認されている。
市販後コミットメント試験の実施が求められたがノバルティスは承認の4年後の19年ににSecura社に権利譲渡。Securaは、承認されている用途用法と同じ内容の臨床試験を行うのは困難であることから断念し、加速承認返上をFDAに申請した。
加速承認時点で市販後薬効試験のデザインについては合意しているはずだから、何年も後になって、やっぱり無理でしたとシラを切るのでは製薬会社の良識が疑われる。しかし、Secura Bioなら、自分がコミットした訳ではなく、黒字のようには思えないので承認返上するのはやむをえないと受け入れてもらえる。口さがない機関投資家アナリストに、初めから出来レースではなかったのかと嫌味を言われかねないが、株式上場していないので聞くことはない。、
リンク: Secura Bioのプレスリリース(PRNewswire)
リンク: 同、Farydakの撤回について(11/30付、PRNewswire)
【承認】
ファイザー、アトピー性皮膚炎治療薬サイバインコがEUでも承認
(2021年12月10日発表)
ファイザーは、Cibinqo(abrocitinib、和名サイバインコ)がEUで成人の中重度アトピー性皮膚炎の治療薬として承認されたと発表した。100mgと200mgに加えて、中程度以上の腎機能低下や2C19を阻害する薬と同時使用する患者向けに50mgも承認された。
経口JAK阻害剤で、モノセラピー試験と局所性治療薬アドオン試験で症状改善効果が確認された。一部の指標ではリジェネロン・ファーマシューティカルズ/サノフィの皮注用薬Dupixent(dupilumab)を上回った。
日本で世界初承認、英国や韓国でも承認されたが、米国はFDAがJAK阻害剤の安全性に警戒感を持っているため審査が遅れている。
リンク: 同社のプレスリリース
【医薬品の安全性】
JAK阻害剤二剤にもクラス枠付警告が導入
(2021年12月2日付け)
FDAは9月にJAK阻害剤によるリウマチ性関節炎などの治療に関して警告強化を発表したが、12月2日付で対象4製品のレーベル変更が実施されたことが判明した。
ファースト・イン・クラスであるファイザーのXeljanz(tofacitinib)のリウマチ性関節炎長期安全性確認試験で、多くの副作用懸念が確認されたことが背景。JAK阻害剤各剤は選択性プロファイルが異なるが副作用の出方は概ね似通っているため、FDAはリウマチ性関節炎に承認されている4製品共通のクラス枠付警告の記載を求めた。
通常は速やかに実施されるが、今回はメーカー側の反発が強かったのか、肝心のXeljanzとその徐放製剤も含めて、3ヶ月遅れとなった。この間に治療開始して当該副作用を発症した人たちがPL訴訟を起こさないか、老婆心ながら心配だ。
枠付警告の内容は、まず、Xeljanzのリウマチ性関節炎試験で全死亡(突然死を含む)やリンパ腫、肺癌、心血管死/心筋梗塞/脳卒中、肺塞栓/静脈動脈血栓が抗TNFアルファ抗体(TNFブロッカー)より多かった事実が記された(イーライリリーのOlumiant(baricitinib)やアッヴィのRinvoq(upadacitinib)のレーベルでは実名ではなく「他のJAK阻害剤」と記載)。
このほかに、各剤の臨床試験で観察された有害事象として、入院あるいは死亡につながるような深刻感染症や腫瘍、血栓症が、従来同様、記されている。
また、TNFブロッカー未使用患者にも承認されていた三剤(Rinvoq以外)についてはTNFブロッカー不応不耐に限定された。MTX不応ならTNFブロッカー、それでも不応ならJAK阻害剤というステップ・セラピーが従来以上に施行されることになる。
今週は以上です。
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