【ニュース・ヘッドライン】
- COVID-19:オルミエントの二本目の第3相は区々な結果に
- COVID-19:アストラゼネカのワクチンの血栓症リスクが公認
- COVID-19:Modernaのワクチンも11回分取ってよい
- キイトルーダ、腎細胞腫術後アジュバント試験が成功
- オプジーボ、食道扁平上皮腫試験が成功
- 一型糖尿病予防薬の承認が遅れそう
- JAK阻害剤の審査期間延長が続発
- エベレンゾは心血管リスクがエポエチンより有意に小さくはなかった
- Acadia社、pimavanserinの適応拡大が承認されず
- 抗EGP-1抗体薬物複合体がトリプル・ネガティブ乳癌に本承認
- Supernus社、ADHD治療薬が承認
【今週の話題】
COVID-19:オルミエントの二本目の第3相は区々な結果に
(2021年4月8日発表)
イーライリリーとインサイト(Nasdaq:INCY)は、Olumiant(baricitinib、オルミエント)の第3相COVID-19試験の結果を発表した。主評価項目はフェールしたものの、死亡リスクを抑制する可能性が示唆された。NIAID(米国立アレルギー・感染症研究所)が主導したACTT-2試験は主目的を達成したが全死亡の解析は有意水準に達しておらず、区々な結果になった。サブグループ分析による感受性分析結果の公表が期待される。
Olumiantはインサイトが創製したJAK1/2阻害剤で、中重度活性期リウマチ性関節炎用薬として承認されている。上記ACTT-2試験に基づいて、酸素投与や人工呼吸器・ECMO装着を受けている患者にremdesivirと併用することが昨年11月にEUA(非常時使用認可)された。
今回のCOV-BARRIER試験は米州欧露日韓の施設で炎症性マーカーが亢進している入院患者1525人を組入れて、偽薬または4mgを一日一回投与する転帰を28日間追跡した無作為化割付二重盲検試験。ACTT-2試験との違いは、呼吸補助を受けている患者は除外したことと、remdesivir併用が必須ではなく被験者の19%に留まったこと。ステロイドは79%が併用した(ACTT-2は不明)。
主評価項目は死亡または侵襲的/非侵襲的呼吸補助のリスク。結果はオッズ比は0.85となったがp=0.18とフェールした。発生率の絶対差は2.7ポイント程度低かった由。
副次的評価項目の死亡リスクはハザードレシオ0.57(95%信頼区間0.41-0.78)、名目p=0.0018、発生率は各群13.1%と8.1%と、主評価項目がフェールしたので統計学的に有意とは言えないが、数値上は良い結果が出た。
ACTT-2試験では、主評価項目である回復までの期間がメジアン8日と偽薬群の7日より少し短く、インシデンス・レート比1.15、p値は0.047とぎりぎり有意だった。ベースライン時点で酸素投与あるいはハイフロー酸素/非侵襲的換気を受けていたサブグループではもっと大きな差があった。一方、死亡率は各群7.1%と4.7%、p=0.09で、相対リスク削減率もp値もCOV-BARRIER試験ほどではなかった。主評価項目もインプレッシブではなく、全体的に、手放しで喜べる成績ではなかった。
尚、両試験とも、有害事象発生率は偽薬群より低かった。
インターロイキンなどの炎症性サイトカインの影響を抑制する薬では、抗IL-6受容体抗体の試験結果も区々だ。本当は1万人規模の試験を行って、効く人と効かない人の見分け方(病状とか、CRPとか)を探索すべきなのだろう。非常事態なので時間をかけている暇はないが、しかし、既に1年経っており、時間を言い訳にできる時期はもうそろそろ終えないといけない。
リンク: 両社のプレスリリース
COVID-19:アストラゼネカのワクチンの血栓症リスクが公認
(2021年4月7日発表)
EUのEMA(欧州薬品庁)や英国のMHRA(医薬品・医療製品規制庁)は、アストラゼネカがオックスフォード大学からライセンスして製品化したCOVID-19ワクチンに関して、血小板減少を伴う血栓症を大変稀な副作用として認めた。アストラゼネカは医療従事者向け書簡を発出、接種後に息切れや胸痛、下肢浮腫、持続的な腹痛、重度或いは持続的な頭痛や霞目などの神経学的症状、注射箇所以外の皮膚点状出血などが発生したら医療従事者にコンタクトするよう接種者に指示することを求めた。JCVI(英国のワクチン接種に関する独立諮問委員会)は、リスクは年齢と逆相関する傾向が見られ、COVID-19感染の重症化リスクは順相関であることから、30歳未満で重症化リスク因子を持たない人にはアストラゼネカ以外のワクチンを提供するのが望ましいと結論した。
アストラゼネカのワクチンは、CVST(脳静脈洞血栓症)やSVT(内臓静脈血栓症)などが報告されている。血小板減少を伴う点やPF4(血小板因子4)に対する抗体も観察されている点でヘパリン誘導性血栓性血小板減少症と似ており、ワクチンに対する免疫反応が原因なのではないかと言われている。MHRAによると、D-ダイマーが静脈血栓塞栓で見られる水準より大きく増加し、フィブリノーゲンが異常に減少する傾向が見られる。
有害事象報告数はEMAによると3月22日時点ではCVSTが62例、SVTが24例で、両方合わせて18例が致死的だった。症例の殆どを占める欧州経済領域と英国でのこの段階での接種実績は2500万人。4月4日時点ではCVST169例、SVT53例、接種実績3400万人なので百万人当たりだと各5例と1.5例となる。一方、英国では3月31日時点でCVST44例、その他が35例で、致死的は19人。CVSTは100万人当たり2.2例の計算になる。尚、CVSTは人口全体でも100万人当たり5-16例発生すると推定されているが、今回の症例は期間が半年足らずであることや、血小板減少を伴う特殊なタイプであるため、数値を単純に比較するのは適当ではないようだ。
リスク因子は見つかっていないが、発生率はヤングアダルトで最も高い(データは公表されていない)。英国では全て一回目の接種で、性別では女性が多いが、元々の構成比が高く、特に女性に関しては、発生率で見ると特に高くはないようだ。多くは接種後2週間以内に発症している。
今のところ、このようなリスクが見られるのはアストラゼネカのワクチンだけで、他のワクチンでのCVST報告数は報道によると100万人年当り1例前後であるようだ。英国ではBioNTech/ファイザーのワクチンでも2例のCVSTが報告されているが、MHRAはワクチンが関連する可能性は著しく低いと判定した。
危険は便益と比較すべきである。英国では今年に入ってからだけでもCOVID-19感染者が52000人以上、死亡した。人口100万人当たりだと約780人となる(因みに、日本は100万人当たり約45人、うち東京は約119人)。英国の場合、CVST/SVTのリスクは感染して死亡するリスクの100分の1以下ということになる。
尤も、COVID-19で亡くなる人は、人口全体で亡くなる人と同様に、高齢者が殆どだ。JCVIによると、40代の感染者の死亡リスクは30代の3倍、20代の12倍とのことであり、危険と便益のバランスは居住地域や年齢に即して検討すべきである。その意味で、JCVIが20代(現時点で接種対象になるのは医療・介護従事者などのみ)には他ののワクチンを供給すべきと勧告したのは理に適っている。定量化をしないまま便益が危険を上回ると断ずる我が国の助さん格さんの末裔は見習うべきだろう。、
リンク: MHRAの医療従事者向け情報
リンク: JCVIの声明
リンク: Dear Healthcare Professional Letter(pdfファイル)
COVID-19:Modernaのワクチンも11回分取ってよい
(2021年4月1日発表)
FDAはModerna(Nasdaq:MRNA)のCOVID-19ワクチンに関してEUA(非常時使用認可)の内容を見直し、バイアル一瓶から最大11回分取れることを明確にした。従来は10回分としていた。また、新たに13~15回分取れるバイアルがラインアップされたことも発表した。大型バイアルは解凍時間が室温解凍で1.5時間、冷蔵庫なら3時間と従来バイアルより30分余計にかかる。
使用するシリンジや針によっては11回分あるいは15回分は取れないかもしれないが、何れにせよ、ワクチンの供給が需要を下回る現状で、少しでも多くの人に接種する手段が公認されたのはプラスだ。
BioNTech/ファイザーのワクチンがバイアル一瓶当り5回分から最大6回分に上方修正された時、なぜ他のワクチンでは同様な話が出ないのか、不思議に思ったが、結局、メーカー側の取り組みの速さの違いだったのだろう。
尚、Modernaのワクチンは一人当たり0.5mLを抽出して希釈せずに投与する。BioNTech/ファイザーのワクチンは0.3mLを抽出して生理食塩水1.8mLで希釈してから投与する。
リンク: FDAのプレスリリース
【新薬開発】
キイトルーダ、腎細胞腫術後アジュバント試験が成功
(2021年4月8日発表)
MSDは、Keytruda(pembrolizumab)のKEYNOTE-564試験が中間解析で主目的を達成したと発表した。データを学会発表するとともに、適応拡大申請に向かう考え。
この試験は、腎細胞腫の摘出術を受けた患者を組入れて、200mgを3週毎に最大17回投与し、DFS(無病生存期間)を偽薬と比較した二重盲検試験。全生存期間の解析に向けて治験を続行している。
Keytrudaは進行腎細胞腫にVEGF受容体阻害剤と併用することが日米欧で承認されている。
リンク: 同社のプレスリリース
オプジーボ、食道扁平上皮腫試験が成功
(2021年4月8日発表)
BMSは、Opdivo(nivolumab)の第3相CheckMate-648試験が中間解析で主目的を達成したと発表した。データは学会発表の予定。適応拡大申請に向かうのではないか。
この試験は、切除不能進行性/転移性食道扁平上皮腫を対象に、fluorouracilとcisplatinの併用レジメンと、更にOpdivoも併用するレジメン、そしてOpdivoとYervoy(ipilimumab)を併用するレジメンの効果を比較したオープンレーベル試験。どちらの併用も、共同主評価項目であるPD-L1陽性サブグループにおける全生存期間とPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)の解析が成功した。更に、被験者全体の全生存の解析も成功した。
尚、食道がんは9割が扁平上皮腫で、地域別ではアジアが8割を占めるとのこと。
リンク: BMSのプレスリリース
【承認審査・委員会】
一型糖尿病予防薬の承認が遅れそう
(2021年4月8日発表)
Provention Bio(Nasdaq:PRVB)はPRV-031(teplizumab)を一型糖尿病予防薬としてFDAに承認申請しており、審査期限は7月2日だが、遅れる可能性が出てきた。申請内容に欠陥があり、承認審査の最後の段階であるレーベルの内容や市販後コミットメントに関する協議に進めない旨の連絡をFDAから受けたからだ。薬物動態/薬理学的ブリッジング試験で、臨床試験で用いられたバッチと市販予定のバッチの薬物動態が一致しなかったことに懸念を持っている様子だ。諮問委員会は予定通り5月27日に開催される。
teplizumabはCD3のエプシロン鎖に結合するヒト化抗体。通称Ala-Ala。マクロジェニクス(Nasdaq:MGNX)から18年にライセンスした。承認申請の根拠であるNIH(米国立衛生研究所)主導の第2相TN-10試験は近親に一型糖尿病患者がいて、二種類以上の一型糖尿病自己抗体を持ち、血糖値異常の76人(7割が18歳以下)を組入れて、30分点滴静注を1日1回、14日間施行して、その後の1型糖尿病発症リスクを偽薬と比較した。結果は、ハザードレシオ0.41、p=0.006、メジアン期間は48ヶ月と偽薬群の24ヶ月を上回った。
TN-10試験では、07~10年にインライセンスしていたイーライリリーの製造品を使ったが、Provention社はAGC Biotechに製造委託したものを販売する計画なので、当然、同等であることを確認する必要がある。
尚、同社は19年に1型糖尿病の新患を組入れる第3相試験を開始したが、昨年3月、COVID-19など環境の変化を理由に組入れを停止している。もしFDAが加速承認する考えであった場合、市販後コミットメント試験になるべき当該試験の中断が好ましくない影響を与える可能性がある。
リンク: 同社のプレスリリース
JAK阻害剤の審査期限延期が続発
(2021年4月7日発表)
JAK阻害剤は様々な製品が関節リウマチ治療薬として承認されている。適応拡大も活発だが、FDAは、感染症や心血管疾患/血栓性疾患、癌などのリスクに強い関心を示している。第1号であるファイザーのXeljanz(tofacitinib、和名ゼルヤンツ)の心血管・腫瘍安全性試験が望ましくない結果になった後は拍車がかかったような状態で、承認見送りや審査期限延期が相次いでいる。
ライセンシーであるギリアド・サイエンシズが米国におけるリウマチ性関節炎の開発を断念したガラパゴス社のJyseleca(filgotinib、和名ジセレカ)や、アトピー性皮膚炎適応拡大のFDA審査期限が3ヶ月延期されたアッヴィのRinvoq(upadacitinib、和名リンヴォック)に続いて、今週は、3品目の審査期限延期が発表された。
まず、ファイザーの新規JAK1阻害剤、PF-04965842(abrocitinib)。12歳以上の中重度アトピー性皮膚炎に100mgまたは200mgを一日一回、経口投与する適応・用法で承認申請し、優先審査指定されたが、審査期限が第3四半期初め(7月頃)に延期された。痒みを改善する効果が抗IL-4受容体抗体より高い特徴を持つ。臨床試験では一時的とはいえ血小板数減少が見られた。尚、日欧でも承認申請中。
次に、Xeljanz。2種類以上のDMARDsに不応不耐の活性期強直性脊椎炎に適応拡大申請しているが、やはり、第3四半期初めに審査期限延期となった。
更に、イーライリリーのOlumiant(baricitinib)。成人の中重度アトピー性皮膚炎に適応拡大申請しているが、審査期限が第3四半期初めに延期された。
FDAはこれまでも日欧で承認された適応や用量を承認しない事例が相次いでいる。適応によっては高用量しか十分な効果がない場合があり、もしFDAが警告強化に踏み切った場合、日欧市場にも影を落とすかもしれない。
リンク: ファイザーのプレスリリース(4/7付)
リンク: イーライリリーのプレスリリース(4/6付)
エベレンゾは心血管リスクがエポエチンより有意に小さくはなかった
(2021年4月6日発表)
FibroGen(Nasdaq:FGEN)はHIF2-PH阻害剤FG-4592(roxadustat、和名エベレンゾ)を慢性腎疾患患者の貧血治療薬として19年12月に米国で承認申請したが、申請前と同様、申請後の歩みも波乱含みだ。まず、審査期限が今年3月20日に延期された。次に、3月初め頃にFDAが諮問委員会上程を決めたため、期限までに承認されないことが事実上、決定した。今回、心臓腎臓病薬諮問委員会の開催が7月15日に決まったことに加えて、ASN(米国腎臓学会)や医学誌でも発表された心血管メタアナリシスにプロトコル相反を見つけたことを明らかにした。最低限のハードルである、エポエチン・アルファと比べてリスクが高まらないという結論に変わりはないが、一部のサブグループや、一部の評価項目で有意に小さいという所見は撤回された。
ポスト・ホックでプロトコルと相反する処理が行われたのは階層化因子。透析を受けていない患者4270人のMACE(全死亡、卒中、心筋梗塞)ハザードレシオは、ASNなどでは1.08(95%上限1.24)と発表されたが、1.10(同1.27)に修正された。同様に、透析依存3800人のMACEは0.96(1.13)から1.02(1.20)に、MACEに心不全入院と不安定狭心症を加えたMACE+では1.04(0.98)から0.91(1.05)に、修正。新規透析導入の1526人のMACEは0.70(0.96)から0.82(1.11)に、MACE+は0.66(0.89)から0.78(1.02)に、修正された。
誰がどのような目的でこのような変更を行ったのかは明らかにされていない。少なくとも一つだけ言えるのは、このような操作があった以上、他にも不適切な処理が行われなかったか、十分に検証する必要があるだろう。審査期限が延期されたのは臨床試験のデータの検証に時間がかかるという理由だった。今回とは違う件だったとすると、二度あることは三度、四度あると疑うべきである。
学問が石の上に石を積み重ねていく作業だとすると、下の石が崩れると上に積み重ねた沢山の人たちの努力や熱意が瓦解してしまう。医学・薬学の場合、世界中の現在そして将来の患者に誤った治療が施行されたら被害は莫大であり、もし致死的な副作用がある薬であった場合、連続殺人犯より大きな罪を負わなければならない。今回の内容はそこまで深刻ではないが、何れにせよ、重要な研究ほど、厳正、厳格、誠意、謙虚、を忘れてはいけない。
リンク: 同社のプレスリリース
Acadia社、pimavanserinの適応拡大が承認されず
(2021年4月5日発表)
Acadia Pharmaceuticals(Nasdaq:ACAD)は、Nuplazid(pimavanserin)を認知症関連幻覚妄想の治療に用いる適応拡大をFDAに申請していたが、審査完了通知を受領した。FDAとの相談を踏まえて第3相のデザインを決定し、主評価項目も副次的評価項目も達成したのに、今になってサブグループ分析結果や支持的エビデンスである第2相アルツハイマー性精神症試験のデザインに異議を唱えられたため、会社側は不満を隠さない。
Nuplazidは5-HT2Aインバース・アゴニスト。パーキンソン病の精神症状を治療する第3相試験がフェールし二本目も組入れ中止となったが、偽薬効果をできるだけ抑制すべく工夫した三本目が成功、16年に米国で承認された。向精神薬のクラスレーベルだと思うが、高齢者の認知症性精神症状の治療に用いると死亡リスクが上昇することが枠付警告されている。認知症性精神症状の治療が面白いのは、FDAがどれだけ警告しても、向精神薬のオフレーベル使用が続いていることだ。Nuplazidは効果が穏やかなせいか、疫学研究によると死亡リスクが他の向精神薬より小さく、適応拡大の成否が注目されていた。
第3相試験は、まず被験者全員にpimavanserinを投与し、症状が改善した6割強の患者を偽薬スイッチ群と継続投与群に無作為化割付して、幻覚妄想再発リスクを二重盲検で比較した。結果はハザードレシオ0.353、片側p=0.0023だった。
認知症にはアルツハイマー型、パーキンソン型、レビー小体型など様々なタイプがあるが、ACADIAはFDAとの事前相談に基づいて、タイプ毎のサブグループ分析は行わない(検出力は持たせない)ことにした。ところが、今回の審査完了通知には、タイプによって結果に偏りがあることを承認できない理由に挙げていた。
第3相試験が一本だけである場合、FDAは、サブグループ分析などの感受性分析を行って外挿性を検証するのが常である。本件のように不問としたこと自体が例外的と考えるべきだろう。サブグループ分析の結果は承知していないが、パーキンソン病性認知症におけるデータが一番良かったと報じられているので、『認知症の精神症状』ではなく『パーキンソン性認知症の精神症状』という適応だったら問題なかったのかもしれない。
今年に入って、FDAの承認審査が厳しくなっていることを窺わせるエピソードが増えている。本件もその一つなのかもしれない。Janet Woodcock氏が長官代行としてFDAに帰任したことで流れがまた変わるのか、それとも帰任したから変わったのかもしれないが、いずれにせよ、今後が注目される。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認】
抗EGP-1抗体薬物複合体がトリプル・ネガティブ乳癌に本承認
(2021年4月7日発表)
ギリアド・サイエンシズは、FDAがTrodelvy(sacituzumab govitecan-hziy)をトリプル・ネガティブ乳癌(TNBC)用薬として本承認したと発表した。昨年4月の加速承認から切り替わった。
TNBCはエストロゲン受容体もプロゲスチン受容体もhersも過剰発現していないのでホルモン療法やher2阻害剤が適応にならない。TrodelvyはTNBCの8割以上で発現し正常細胞には少ない、EGP-1(別名TROP-2)に結合する抗体とirinotecanの活性代謝物を結合した、抗体薬物複合体。第1/2相試験の反応率データに基づいて、転移性TNBCで転移後に二次以上の治療歴を持つ患者に単剤投与することが加速承認された。
今回の承認は第3相化学療法対照試験に基づくもの。副次的評価項目だが全生存期間のハザードレシオは0.51、メジアン生存期間は11.8ヶ月で医師が4種類から選んで施行した化学療法群の6.9ヶ月を上回った。適応となるのは切除不能局所進行性または転移性のTNBCで、2~3次の全身性治療歴を持ち、うち1レジメン以上は転移後である患者が対応になる。
Trodelvyは昨年9月に210億ドルで買収したImmunomedicsの開発品。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ギリアドのプレスリリース
Supernus社、ADHD治療薬が承認
(2021年4月2日発表)
Supernus Pharmaceuticals(Nasdaq:SUPN)はFDAがQelbree(viloxazine)を6~17歳のADHDの治療薬として承認したと発表した。イーライリリーのStrattera(atomoxetine、和名ストラテラ)と同様にノルエピネフィリン再取込阻害作用を持っている。元々はインペリアル・ケミカル(アストラゼネカの前身企業の一つの母体)が欧州で抗鬱剤として開発し1976年に発売したが、2000年代に商業上の理由で販売を中止した。
Qelbreeは徐放性カプセル製剤で、100~400mgを一日一回、服用する。自殺思慮・自殺行動のリスクが枠付警告されている。クラス・ウォーニングでStratteraのレーベルでも枠付警告だが、Stratteraとは異なり、Qelbreeの臨床試験では100~400mgを投与した1019人のうち9人(0.9%)で自殺思慮・行動が見られた(自殺行動は3人、完成は無し)。偽薬群は463人中2人(0.4%)で自殺行動は無かった。最初の2~3ヶ月や用量変更時は特に注意が必要なようだ。関連性は確立していないが、不眠症や鬱症状、パニック、激高などの兆候に注意を促している。
リンク: 同社のプレスリリース
今週は以上です。
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