【ニュース・ヘッドライン】
- COVID-19:remdesivir、WHOの試験はフェール!
- COVID-19:remdesivir、WHOの試験はフェール
- COVID-19:JNJもワクチンの投与を一時停止
- バイエル、PI3K阻害剤の第3相が成功
- BMS、S1PR1/5調節剤の潰瘍性大腸炎試験が成功
- 大塚製薬、8億ドルで買収した会社の開発品がフェール
- 経口抗真菌薬を承認申請
- Agios社、IDH1阻害剤の欧州承認申請を撤回
- CHMP、KiteのCAR-Tなどの承認を支持
- FDA、キイトルーダをホジキンリンパ腫の二次治療薬として承認
- FDA、リジェネロンのエボラ治療用抗体カクテルを承認
- アレクシオン、高濃度ユルトミリスが承認
- FDA、妊娠20週以降はNSAIDsを服用しないよう勧告
【今週の話題】
COVID-19:remdesivir、WHOの試験はフェール!
(2020年10月15日公開)
WHOが主導したCOVID-19入院患者の大規模治療試験、SOLIDARITYの治験論文の原稿が査読前論文サーバーであるmedRxivのウェブサイトで公開された。ギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)のVeklury(remdesivir)はNIH(米国立衛生研究所)が主導したACTT-1試験で入院期間短縮効果を示し、死亡リスク抑制作用は有意ではなかったが点推定値自体は良かった。主としてこの試験のデータに基づき米国でEUA(非常時使用認可)、EUで条件付き承認、日本でも特例承認されたが、今回の試験では死亡リスクも入院期間も対照群(各地域の標準的医療のみ)と大差なかった。
用量や投与期間(10日間)はACTT-1試験と同じ。死亡リスクの検出力はSOLIDARITY試験のほうがはるかに高いので信頼性も高い。入院期間に関しても症例数が多いSOLIDARITY試験のほうが信頼できるはずだが情報量が少ないので、良く分からない。
査読の過程で判断材料に使われた指標や記述が変わることもあるので、論文と第三者による論評が刊行された段階で、改めて、ACTT-1試験などとの整合性が論じられることになりそうだ。
SOLIDARITYの特徴:無作為化割付対照試験。オープン・レーベル。アダプティブ・デザインで、当初は四剤をテストしたが、remdesivir以外の群は成績不振により途中で組入れ中止。
患者:30ヶ国405病院に入院しているCOVID-19感染患者。3/22-10/4に11,330人を組入れ。四剤の何れかに禁忌は除外。
患者背景:過半はエントリー時点で酸素投与、人工呼吸器装着は1割足らず。過半が入院2日以内。過半はアジア・アフリカの施設で組入れ。
介入方法:remdesivir10日コース(2750人)、hydroxychloroquine(954人)、lopinavir(1411人)、interferon-beta 1aとlopinavirの併用(651人)、interferon-beta 1aのみ(1412人)
対照群:各施設の標準医療(総計4088人)
主評価項目:入院中死亡率。レート比は年齢とエントリー時点の人工呼吸器装着の有無で階層化。
結果(死亡率は当方が計算):remdesivir群は2743人中301人が死亡(死亡率11.0%)、対照群は2708人中303人(同11.2%)、レート比は0.95(95%信頼区間0.81-1.11、p=0.50)。hydroxychloroquine群は死亡率11.0%、対照群は9.3%。lopinavir群は10.6%、対照群10.6%。interferon-beta 1a群は11.8%、対照群10.5%。
リンク: WHO SOLIDARITYコンソーシアムの治験論文原稿(medRxivのウェブサイト、pdf)
COVID-19:イーライリリーの抗体医薬の治験が一時停止
(2020年10月13日発表)
抗SARS-CoV-2抗体はトランプ大統領が入院した時に最初に使った薬で、このおかげで治癒したと当人は考えているようだ。リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)のほかにイーライリリーやグラクソ・スミスクライン、アストラゼネカも感染者の血漿などからスクリーニングした抗体を単剤あるいはカクテルで臨床開発を進めているが、このうち、LY-CoV555(bamlanivimab、別名LY3819253)の第3相試験の一つが一時停止されたことが判明した。
LY-CoV555はイーライリリーがカナダのAbCellera Biologicsと共同開発したモノクローナル抗体で、リジェネロンのREGN-COV2とは異なり、カクテルではなく単剤の開発が先行している。イーライリリー主導試験に加えて、NIH(米国衛生研究所)も第2/3相のACTIV-2外来治療試験とACTIV-3入院治療試験で効果を検証しているところだが、brief19.comというCOVID-19ニュースサイトが参加医師に対するEメール付きで報じたところによると、潜在的な安全性懸念が現れたたため、ACTIVE-3試験のDSMB(データ安全性監視委員会)が新規組入れの停止を勧告した。
イーライリリーのプレスリリースによると、DSMBはACTIVE-2試験(軽中度患者の外来治療試験)についても検討したが、治験デザインの変更や組入れの停止などは勧告しなかった。同社が主導する第2相も外来治療試験、第3相は介護施設入居者・介護者の予防試験で、重症患者を対象にしているのはACTIVE-3だけである。ACTIVE-3はギリアド・サイエンシズのVeklury(remdesivir)と併用する効果を検証する試験だが、他の試験は病状が悪化しない限りVekluryやdexamethasoneは併用しないだろう。もし重症患者には適さない、あるいは、これらの薬との併用が良くないならば、類似した併用を行ったトランプ大統領は例外的な症例ということになる。
さて、治験の一時停止は珍しいことではなく、鳴動してネズミ一匹も出ないことがあるので通常は一々公表しない模様だが、関係者には通知されるので、今回のように世間の関心が高い臨床試験は自然と外部に漏れる。治験医や被験者にバイアスを与えるといけないので詳細は開示されないが、風評被害が広がると被験者募集や承認取得・発売後の普及に差し障るし、上場企業は株価やインサイダー取引規制にも係るので、ハンドリングが難しい。
リンク: brief19.comの報道
リンク: ACTIV-3試験の治験登録(ClinicalTrials.gov)
リンク: イーライリリーのプレスリリース(10/14付)
COVID-19:JNJもワクチンの投与を一時停止
(2020年10月12日発表)
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、開発中のCOVID-19ワクチンの全臨床試験(第3相のENSEMBLE試験も含む)で投与を一時停止したことを明らかにした。想定外の有害事象が観察されたため、独立データ安全性監視委員会の検討・評価を待つ。詳細は不明。同社は、プロトコルに基づく自発的な停止で通常は第三者には公表しないこと、承認審査機関が治験認可を一時的に停止するクリニカルホールドとは違うことを強調している。
開発コードは記されていないが、ENSEMBLE試験でテストされているのはJNJ-78436735。アデノウイルス26型をベクターとしてSARS-CoV-2抗原の遺伝子を人体に導入し発現させる。今年7月に臨床試験を開始、9月に米国、南米、南アフリカで第3相入りした。開発が先行する他社のワクチンと異なり、一回接種で足りる可能性があるのが注目点。効果がフルに発揮されるまで数週間待つ必要がなく、接種の手間暇や、抗原の生産能力が同じでも2倍多い患者に供給できるなどのメリットが期待される。
また、同社とアストラゼネカは、パンデミックが続いている間はCOVID-19ワクチンを利益ゼロで供給するとコミットしている。米英などの政府に供給することで合意している。
7月と9月に臨床試験が一時停止になったアストラゼネカのAZD1222もチンパンジーのアデノウイルスをベクターとするワクチン。他ではロシアが8月に接種開始したSputnik Vは、最初にアデノウイルス26型ベースのワクチン、21日後にアデノウイルス5型ベースのワクチンを投与するプライム・ブースト方式を採用している。また、中国のCanSino Biologicsの開発品はアデノウイルス5型ベース。5型は自然感染による抗体を持っている人が少なくなく、第1相試験では抗体誘導性が低下した。
リンク: JNJのプレスリリース
【新薬開発】
バイエル、PI3K阻害剤の第3相が成功
(2020年10月14日発表)
バイエルは、Aliqopa(copanlisib)の第3相CHRONOS-3試験が成功したと発表した。データは未発表。フェーズIVコミットメント試験と推測されるので、適応追加申請を兼ねてFDAに提出するとともに、海外で承認申請に向かうのではないか。
Aliqopaは PI3Kアルファ/デルタ阻害剤。濾胞性リンパ腫の三次治療薬として米国で17年に加速承認された。第2相試験でORR(客観的反応率)が58.7%、完全反応率は12%だった。
今回の試験は抗CD20抗体による治療歴を持つ低悪性度リンパ腫にrituximabと併用してPFS(無進行生存期間)を延長する効果を検討したところ、偽薬・rituximab併用群を有意に上回った。
リンク: バイエルのプレスリリース
BMS、S1PR1/5調節剤の潰瘍性大腸炎試験が成功
(2020年10月10日発表)
ブリストル マイヤーズ スクイブはZeposia(ozanimod)の第3相潰瘍性大腸炎試験のデータをUEG Week(欧州消化器病週間)で発表した。臨床的寛解率と寛解維持率が偽薬群を有意に上回った。承認申請に向けて当局と相談することになりそうだ。
Zeposiaは19年に買収したセルジーンが15年にReceptosを72億ドルで買収して入手したコンパウンド。今年、再発型多発硬化症の治療薬として欧米で承認された。
今回のTrueNorth試験は中重度潰瘍性大腸炎で前治療に十分応答しなかった患者を組入れて、コフォート1は645人を試験薬群(1mgを一日一回経口投与)と偽薬群に2:1割付し、第10週寛解率を比較したところ、各群18.4%と6.0%となり、p値は0.0001を下回った。サブグループ分析ではTNF阻害剤経験者では数値上上回ったものの有意差はなかった。副次的評価項目の臨床的応答率は各群47.8%と25.9%でこれもp<0.0001だった。
寛解維持効果を検討したフェーズでは、全員に試験薬を10週間投与したコフォート2の被験者も含めて、臨床的応答した457人を試験薬継続群と偽薬群(導入フェーズで偽薬に割付けられた患者は引き続き偽薬群)に再無作為化割付して第52週の寛解維持率を比較したところ、各群37.0%と18.5%、p値は0.0001を下回った。
安全性は過去の試験と同様だった。
リンク: BMSのプレスリリース
大塚製薬、8億ドルで買収した会社の開発品がフェール
(2020年10月14日発表)
Astex Pharmaceuticalsは、SGI-110(guadecitabine)の第三相AML(急性骨髄性白血病)試験とMDS(骨髄異形成症候群)/CMML(慢性骨髄単球性白血病)試験がフェールしたと発表した。難治・再発患者の全生存期間を医師が選んだ薬と比較したが、有意に上回らなかった。2年前に第三相AML一次治療実薬対照試験もフェールしており、開発中止になっても不思議はない。
guadecitabineはDNAメチルトランスフェラーゼ1阻害剤。Dacogen(decitabine)と異なり、DNAに組み込まれなくても直接阻害することができる。
Astexは11年にSupergenを買収して両剤を入手した。Dacogenは04年にMGI(後にエーザイが買収)がSupergenからライセンス、06年に米国でMDS用薬として承認を取得した。当時はSGI-110はDacogenの特許切れスケジュールに合わせて開発すればよいという方針だったように記憶しているが、13年に大塚製薬がAstexを8億ドル超で買収した時には、Astexの主要開発品の一つに祭り上げられていた。
リンク: Astexのプレスリリース
【承認申請】
経口抗真菌薬を承認申請
(2020年10月14日発表)
Scynexis(Nasdaq:SCYX)は、SCY-078(ibrexafungerp)を外陰膣カンジダ症治療薬としてFDAに承認申請した。グルカン合成酵素阻害剤で、作用機序が新しく経口投与が可能なのでアゾール系の代替手段になり得る。第三相偽薬対照試験では、初日に300mgを12時間おいて二回経口投与しただけだった。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認審査・委員会】
Agios社、IDH1阻害剤の欧州承認申請を撤回
(2020年10月16日発表)
米国のAgios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)はIDH1(イソクエン酸脱水素酵素1)阻害剤Tibsovo(ivosidenib)をIDH1変異陽性のAML(急性骨髄性白血病)用薬として開発し、第1相試験の反応率データに基づいて米国で再発難治患者と強化化学療法不適な新患に承認を取得したが、EUは申請撤回となった。
客観的反応率のような代理マーカーに基づいて、延命効果が確立していない薬を承認するかどうかは難しい判断で、特に血液癌では欧米の承認審査機関で判定が分かれることが珍しくない。Agiosは第三相の新患化学療法併用試験が二本進行中で、再チャレンジを狙う。
リンク: 同社のプレスリリース
CHMP、KiteのCAR-Tなどの承認を支持
(2020年月日発表)
EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、10月の会合で、KiteのCAR-T(キメラ抗原受容体-T細胞)療法などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。
リンク: EMAのプレスリリース
Kite PharmaのTecartus(brexucabtagene autoleucel)はBTK阻害剤を含む二次以上の全身的治療歴を持つ難治・再発マントル細胞腫に用いる。17~18年に欧米で難治・再発大細胞型B細胞リンパ腫用薬として承認された同社のYescarta(axicabtagene ciloleucel)と同様に、患者から採取したT細胞に抗CD19抗体・CD3ゼータ・CD28などの融合遺伝子を導入し、増殖させたうえで患者に戻す。Yescartaとの違いは生産工程でリンパ球の増強を行ったり、採取時に混ざる循環腫瘍細胞を除去したりしていることのようだ。
74人を組入れた第2相試験では生産成功率が96%、ORR(総合反応率、独立放射線学的評価委員会方式、EMAが今回発表したデータに基づく)は84%、完全反応は59%だった。CAR-T療法に付き物のG3以上サイトカイン放出症候群の発現率は15%、G3以上神経学的イベントは31%で、どちらもG5(致死)はなかった。
米国では今年7月に承認。Kite PharmaはBMSが17年に119億ドルで買収した。
リンク: EMAのプレスリリース
Orchard Therapeutics(Nasdaq:ORTX)のLibmeldyはMLD(異染性白質ジストロフィー)の遺伝子療法。無症状の遅発乳児型と無症状または症状が出始めたが独立歩行可能で認知低下が始まっていない早期若年型が適応になる。MLDはアリルスルファターゼAの欠損により脳や末梢神経、腎臓などにスルファチドが蓄積、障害を与える深刻な常染色体劣性遺伝病。Libmeldyは患者から採取したCD34陽性造血幹細胞と前駆細胞にスルファチドを分解するヒト・アリールスルフォターゼAの遺伝子をレンチウイルス・ベクターを用いて導入し、患者に戻す。
主な有害事象は、コンディショニングに用いる化学療法の副作用と、造血幹細胞移植に起こりがちな白血病やリンパ腫。
イタリアのSan Raffaele-Telethon Institute for Gene Therapyと共同開発した。18年にGSKからアデノシンデアミナーゼ欠損症による重症複合免疫不全症(ADA-SCID)の遺伝子療法であるStrimvelisなどの希少疾患用薬事業を譲受けて入手したパイプライン。
リンク: EMAのプレスリリース
アルナイラム・ファーマシューティカルズ(Nasdaq: ALNY)のOxlumo(lumasiran)は原発性高シュウ酸尿症I型(PH1)用薬。肝臓のアラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼが欠乏する、超希少な常染色体劣性遺伝性疾患で、シュウ酸の過剰によりカルシウムが蓄積、腎臓疾患や尿路結石を合併する。lumasiranはグリコール酸酸化酵素の遺伝子 hydroxyacid oxidase 1(HAO1)を標的とするsiRNA薬で、臨床試験では尿や血漿のシュウ酸塩が大きく減少した。主な有害事象は注射箇所反応と腹痛。米国でも承認審査中。
リンク: EMAのプレスリリース
ノバルティスのLeqvio(inclisiran)はヘテロ接合型家族性/非家族性原発性高コレステロール血症と混合異脂血症の治療薬。LDL受容体の零落・分解に係るPCSK9を標的としている点ではアムジェンの抗PCSK9抗体、Repatha(evolocumab、和名レパーサ)に似ているが、RISC(RNA-induced silencing complex)に結合してPCSK9のmRNAを切断するRNA介入薬である点が画期的。LDL-C低下作用はRepathaと概ね同程度に見える。投与頻度は第2回は3ヶ月後、その後は6ヶ月毎に皮注する。米国でもそろそろ承認審査結果が出るのではないか。
アルナイラム・ファーマシューティカルズが創製、開発販売権を取得したメディスンズ・カンパニーをノバルティスが今年1月に97億ドルで買収して入手した。
リンク: EMAのプレスリリース
10月14日にネスレ・グループ入りした米国のAimmune TherapeuticsのPalforziaはピーナツアレルギーの脱感作療法用粉末剤。4-17歳の患者に食物と混ぜて摂取させる。特に治療初期はアナフィラキシーを起こしても対応できるよう注意する必要があるが、1g程度なら軽いアレルギー症状程度で済みようになるようだ。米国では今年1月に承認された。
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: Aimmuneのプレスリリース(10/16付)
アストラゼネカのTrixeo Aerosphereは長期作用性ベータ2作用剤のformoterol fumarate dihydrateと長期作用性ムスカリン受容体拮抗剤のglycopyrronium bromide、及び吸入コルチコイドのbudesonideの固定用量合剤で、COPDの維持療法に用いる。日本で19年にビレーズトリエアロスフィアとして、米国でも今年7月にBreztri Aerosphereとして、承認された。
GSKと塩野義製薬、ファイザーのHIV合弁であるヴィーブ・ヘルスケアのインテグラーゼ阻害剤、Vocabria (cabotegravir)、とジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのヤンセンの非核酸系逆転写阻害剤、Rekambys (rilpivirine)は併用でHIV-1治療が奏功している患者の維持療法に用いる。長期作用性製剤で月一回の注射で足りる。
リンク: EMAのプレスリリース
Zogenix(Nasdaq:ZGNX)のFintepla(fenfluramine)はドラベ症候群の治療に用いる経口液。既存薬に十分応答しない患者に追加投与する。fenfluramineは体重管理薬として流行したことがあるが心弁異常や肺動脈高血圧が報告され、バブルが弾けた。Finteplaはその時より低量だが、CHMPは、心電図検査を義務付ける。米国では今年6月に承認。
リンク: EMAのプレスリリース
適応拡大では、アムジェンのBlincyto(blinatumomab、和名ビーリンサイト)をフィラデルフィア染色体陰性だけでなく陽性のCD19陽性再発難治前駆B細胞急性リンパ性白血病に用いることも支持された。但し、2種類以上のチロシン・キナーゼ阻害剤による治療歴を持ち、代替的治療オプションが存在しない場合に限定される。
アストラゼネカのSGLTs阻害剤、Forxiga(dapagliflozin、和名フォシーガ)は駆出率低下を伴う症候性慢性心不全の治療に用いることが支持された。DAPA-HF試験で心血管死や心不全入院・緊急受診のリスクが偽薬比26%低かった。米国では今年5月に適応拡大承認。日本でも10月29日に第一部会に上程される予定。
BMSのOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)は切除不能進行、難治、または転移性の食道扁平上皮腫でfluoropyrimidineおよび白金薬ベースの化学療法レジメンによる治療歴を持つ患者に単剤投与することが支持された。米国では今年6月に承認。
MSDのRecarbrio(imipenem、cilastatin、relebactam)を院内感染肺炎に用いることも支持された。人工呼吸器関連肺炎や、これらに伴う菌血症も適応になる。米国では6月に承認。
ジョンソン・エンド・ジョンソンのTremfya(guselkumab、和名トレムフィア)を活性期乾癬性関節炎でDMARDに不耐または応答不十分だった患者に用いることも支持された。米国は7月に承認。
最後に、UCBの抗てんかん薬Vimpat(lacosamide)は4歳以上の特発性全身性癲癇患者の原発性全身性強直性間代性発作の抑制に用いることが支持された。
【承認】
FDA、キイトルーダをホジキンリンパ腫の二次治療薬として承認
(2020年10月15日発表)
FDAはMSDのKeytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)を難治・再発古典的ホジキンリンパ腫(cHD)の二次治療薬として承認した。小児のcHDで難治性または二次医療の治療歴を持つ再発性患者に用いることも承認された。第三相のKeyNote-204試験でPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)がメジアン13.2ヶ月とSeagen(Nasdaq: SGEN:先日、シアトル・ジェネティクスから社名変更)のAdcetris(brentuximab vedotin、和名アドセトリス)の8.3ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.65、p=0.0027だった。
Keytruda群の深刻有害事象発生率は30%、有害事象により全身性ステロイド治療を受けた患者の比率は38%でうち肺臓炎によるものが11%だった。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: MSDのプレスリリース
FDA、リジェネロンのエボラ治療用抗体カクテルを承認
(2020年10月14日発表)
FDAはリジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)のINMAZEBをザイール種エボラウイルス疾患の治療薬として承認した。サハラアフリカで数年毎に流行する致死率が高い難病の治療薬が遂に承認された。米国では流行していないが、現地で治療や取材に当たった人たちが感染した事例があり、将来的に伝播したりバイオテロに用いられる可能性にも備えなければならないため、6年かけて国家備蓄する予定。
INMAZEBはザイール種エボラウイルスの糖タンパクに結合する遺伝子組換えモノクローナル抗体のカクテル。ウイルスが細胞に侵入するのを妨げる中和抗体であるmaftivimabと、FcガンマRIIIaを通じてエフェクター機能を誘導するatoltivimabおよびodesivimabを配合している。用量は体重に応じて決定、用量に応じて2~4時間かけて、一回だけ、点滴静注する。
18年に流行が始まったコンゴ民主共和国で実施された開発品同士の臨床試験では、INMAZEB群の28日死亡率が34%と対照群(Mapp Biopharmaceuticalの三種類のモノクローナル抗体のカクテルであるZMappを投与)の51%を大きく下回った。尚、Ridgeback Biotherapeuticsのモノクローナル抗体医薬、mAb114(ansuvimab)は35%、ギリアド・サイエンシズのremdesivirは50%だった。
有害事象は発熱や嘔吐、頻脈頻呼吸などだが、エボラウイルス疾患の症状と類似していることや偽薬群が設定されなかったことから、薬との因果関係は曖昧。過敏反応発現率は1%足らず。クレアチニンやALT/ASTの上昇が見られた。生ワクチンの効果を低下させる可能性があるため、FDAは同時接種を避けるよう勧告した。
INMAZEBが注目されるもう一つの理由は、トランプ米大統領がCOVID-19に感染した時に最初に使った、同社のREGN-COV2と同じプラットフォームで創製されたことだ。深刻な難病であるエボラの死亡率をある程度引き下げることができるなら、死亡率がもっと低いCOVID-19に効く抗体を同定できても不思議はない。今回、INMAZEBには中和抗体ではない抗体も含まれていることを初めて知って、スクリーニングの周到さを思い知らされた。
トランプ大統領はremdesivirを併用したが、もしINMAZEB同様にREGN-COV2も肝機能検査値異常リスクがあるのだとしたら、重複することになるので、併用注意となるかもしれない。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: リジェネロンのプレスリリース
アレクシオン、高濃度ユルトミリスが承認
(2020年10月12日発表)
アレクシオン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ALXN)は、FDAが長期作用性抗C5抗体Ultomiris(ravulizumab-cwvz、和名ユルトミリス)の高濃度製剤を非典型溶血性尿毒症症候群と発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬として承認したと発表した。100mg/mLと従来の10倍で点滴時間が2時間から45分以下に短縮化する。従来の製剤は来年央に販売を中止する予定。日欧でも承認審査中。来年には皮注用製剤も欧米で承認申請する予定。
リンク: 同社のプレスリリース
【医薬品の安全性】
FDA、妊娠20週以降はNSAIDsを服用しないよう勧告
(2020年10月15日発表)
FDAは、妊娠20週以降はNSAIDs(非ステロイド抗炎症薬)を服用しないよう改めて勧告した。リスクがあることは既知だが、広く医療従事者や妊婦に周知徹底すべく、安全性通達を発した。
NSAIDsはaspirin、ibuprofen、naproxen、diclofenac、celecoxi等が含まれ、一方、アセトアミノフェンは含まれないので今回の勧告の対象外。NSAIDsは経口剤のほかに貼付薬や処方箋なしで買えるOTC薬もあり、関節炎などの疼痛や、風邪、不眠症等の治療に用いられている。
現行の添付文書では妊娠30週以降は胎児の心臓障害などの懸念があるため服用しないよう警告しているが、今回、20~30週も制限することを決めた。20週以降は胎児が羊水を作るが、NSAIDsが腎臓に悪影響を与えて羊水過少症を起こすことがあるため。2017年までにFDAに35例の羊水過少症あるいは胎児/新生児腎疾患の有害事象報告があり、その全てが深刻だった。腎疾患を合併し新生児が死亡した症例はFDAの有害事象報告システムに5例、医学誌の症例報告でも8例、あった。
医療従事者が必要と判断した場合は、できるだけ低量をできるだけ短期間、投与する。48時間以上投与する場合は羊水の超音波診断を検討する。
但し、医療従事者が妊娠関連症状を治療する目的でアスピリンを低量(85mg)処方するのは可。
リンク: FDAの安全性通達
今週は以上です。
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