2020年9月26日

第965回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • オプジーボの膀胱癌アジュバント試験が成功 
  • ESMO:オプジーボの食道癌試験が二本成功 
  • ESMO:キートルーダの食道癌試験も成功 
  • ESMO:オプジーボとカボメティクスの腎細胞腫併用試験 
  • ESMO:イーライリリー、イブランスのアジュバント試験が成功 
  • 抗CD19ADCを承認申請 
  • FDA、GSKのヌーカラを好酸球増多症候群にも承認 


【新薬開発】


オプジーボの膀胱癌アジュバント試験が成功
(2020年9月24日発表)

BMSは、Opdivo (nivolumab)を高リスク筋層浸潤尿路上皮癌の術後アジュバント療法に用いる第3相CheckMate-274試験が中間解析で主目的を達成したと発表した。データは学会発表の予定。適応拡大申請を計画。

709人の患者をOpdivo群(最大1年間投与)と偽薬群に無作為化割付した二重盲検試験で、intent-to-treatベースとPD-L1陽性(≧1%)サブグループの両方のDFS(無病生存期間)解析が成功した。副次的評価項目である全生存期間や尿路上皮癌による死亡の解析を行うため治験は続行している。

この用途で抗PD-1/PD-L1抗体の第3相が成功したのは初めて。ロシュのTecentriq(atezolizumab)も類似したIMvigor010試験が行われたが、メジアンDFSは19.4ヶ月と対照群(偽薬の無い観察群)の16.6ヶ月を僅かに上回っただけでハザードレシオは0.89、有意ではなかった。

Tecentriqの試験はメジアン21ヶ月の追跡で3割前後が死亡しており、文字通り高リスクであることが分かる。それだけにOpdivoの試験が成功したのは朗報。但し、どの程度の効果があったのかデータを確認する必要がある。

リンク: BMSのプレスリリース

ESMO:オプジーボの食道癌試験が二本成功
(2020年9月21日発表)

BMSは、抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)の第3相食道癌試験二本の成功を8月に発表したが、ESMO(欧州臨床腫瘍学会)でデータを明らかにした。適応拡大申請に向かう見込み。

CheckMate-577試験は、食道・胃食道接合部の癌で術前化学放射線療法を受け病理学的完全反応(pCR)を達成できなかったものの完全切除できた患者を対象に、アジュバント療法(240mgを2週毎に8回投与した後、40mgを4週毎投与)を施行した。結果は、DFS(無病生存期間)がメジアン22.4ヶ月と偽薬群の11.0ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.69、p=0.0003だった。グレード3/4治療関連有害事象の発現率は各群13%と6%だった。

CheckMate-649試験は転移/切除不能進行の胃癌、食道癌、胃食道接合部癌の一次治療としての効用を化学療法(CAPEOXまたはFOLFOXレジメン)と比較した。結果は、主評価項目であるCPS≧5サブグループにおける全生存期間とPFS(無進行生存期間、盲検独立中央委員会評価)が有意に上回った。メジアン生存期間は14.4ヶ月対11.1ヶ月、ハザードレシオ0.71、p<0.0001、PFSは各7.7ヶ月、6.0ヶ月、0.68、p<0.0001。全生存期間はintent-to-treatベースでも達成した(各13.8ヶ月、11.6ヶ月、0.80、0.0002)。有害事象による治験離脱率は24%対36%で下回った。

リンク: BMSのプレスリリース

ESMO:キートルーダの食道癌試験も成功
(2020年9月21日発表)

MSDは8月に成功発表したKeytruda(pembrolizumab、和名キートルーダ)の第3相KeyNote-590試験のデータをESMOで発表した。局所進行/転移食道・胃食道接合部癌の一次治療を受ける患者749人を化学療法(cisplatinと5-FUの併用)とKeytrudaを併用する群とKeytrudaの偽薬を併用する群に無作為化割付して転帰を比較したところ、intent-to-treatベースの全生存期間とPFSなど複数の主評価項目が中間解析で成功認定された。前者はメジアンが12.4ヶ月と偽薬群の9.8ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.73、後者はメジアン値は6.3ヶ月対5.8ヶ月で大差ないがハザードレシオは0.65となり、どちらもp<0.0001。CPS≧10サブグループのメジアン生存期間は13.5ヶ月対9.4ヶ月とintent-to-treatより差が広がった。有害事象による治験離脱率は19.5%対11.6%、治療関連死亡は9人対5人でどちらも上回った。

この試験は上記CheckMate-649試験と対象疾患がやや異なり対照群も異なるが、649試験がモノセラピーで化学療法比ハザードレシオが0.71であったのに対して、こちらは三剤併用で0.73なので、印象が薄いのはやむを得ないだろう。

リンク: MSDのプレスリリース

ESMO:オプジーボとカボメティクスの腎細胞腫併用試験
(2020年9月19日発表)

Exelixis(Nasdaq:EXEL)は、高リスク進行/転移腎細胞腫の一次治療としてCabometyx(cabozantinib、和名カボメティクス)とBMSのOpdivo(nivolumab)を併用する効能をファイザーのSutent(sunitinib)と比較した第3相CheckMate-9ER試験のデータをESMOで発表した。主評価項目であるPFSはメジアン16.6ヶ月対8.3ヶ月、ハザードレシオ0.51、p<0.0001、副次的評価項目の全生存期間は両群ともメジアン未達だがハザードレシオは0.60、p=0.001だった。有害事象による投薬中止発現率はCanometyxだけが7%、Opdivoだけ6%、両方3%、Sutentは9%だった。

両社は欧米で用法追加申請中。腎細胞腫一次治療ではCabometyxの単剤投与やOpdivoとYervoy(ipilimumab)の併用が既に承認されている。

抗PD-1抗体とCabometyxのようなVEGF受容体拮抗剤を併用する腎細胞腫一次治療試験は様々な組み合わせで第2相、第3相試験が行われ、概ね、同様な成績を上げている。Opdivo・Yervoy併用も効果は同程度のように見える。

リンク: Exelixisのプレスリリース

ESMO:イーライリリー、イブランスのアジュバント試験が成功
(2020年9月20日発表)

イーライリリーは6月にCDK4/6阻害剤Verzenio(abemaciclib、和名ベージニオ)の早期乳癌切除後アジュバント療法試験の成功を発表したが、ESMOでデータを公表した。ホルモン受容体陽性、her2陰性閉経後転移乳癌の一次治療薬として日米欧で承認されているが、適応拡大申請する予定。

このmonarchE試験は、ホルモン受容体陽性、her2陰性の高リスク早期乳癌で内分泌療法を受ける患者5637人をVerzenio併用群(150mgを一日二回、経口投与、最大2年間)と併用しない群に無作為化割付してIDFS(無浸潤疾患生存期間)を比較した。中間解析でハザードレシオ0.747、p=0.0096となり、成功認定された。

2年無浸潤疾患生存率はVerzenio併用群が92.2%、非併用群は88.7%だった。メジアン追跡期間は15ヶ月強に過ぎないので、今後も長期追跡データがアップデートされるだろう。

リンク: イーライリリーのプレスリリース


【承認申請】


抗CD19ADCを承認申請
(2020年9月21日発表)

スイスのADC Therapeutics(NYSE:ADCT)は、米国でADCT-402(loncastuximab tesirine)を難治/再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に承認申請したと発表した。二次以上の治療歴を持つ患者145人を組入れた第二相試験で、ORR(客観的反応率)が48.3%、完全反応は24.1%だった。メジアン反応持続期間は10.2ヶ月。

ADCT-402はCD19を標的とする抗体と、DNA複製阻害剤のADC(抗体薬物複合体)。

リンク: 同社のプレスリリース


【承認】


FDA、GSKのヌーカラを好酸球増多症候群にも承認
(2020年9月25日発表)

FDAはグラクソ・スミスクラインのNucala(mepolizumab、和名ヌーカラ)を好酸球増多症候群(HES)に用いる適応拡大を承認した。12歳以上で病状が6ヶ月以上持続し、ほかに原因が特定されない患者に用いる。

HESは好酸球数が通常の3倍に増加することもあり、様々な器官に浸潤して様々な症状を引き起こす。米国の推定患者数が5000人程度の希少疾患ということもあり、診断されるまで長期間かかることが少なくない。治療薬の承認は14年ぶり。

NucalaはIL-5に結合する抗体医薬。好酸球性喘息症などに承認されている。第3相試験では300mgを4週毎に皮注したところ、32週間のフレア(症状悪化または好酸球数が増加し治療の強化が必要に)の発生率が28%と偽薬群の56%の半分だった。主な有害事象は上部気道感染症や四肢痛。帯状疱疹が見られるため、適応ならワクチン接種を考慮する。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: GSKのプレスリリース





今週は以上です。

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