2019年9月29日

2019年9月29日号

【ニュース・ヘッドライン】

  • ESMO:リムパーザは卵巣癌一次治療後の維持療法として有効 
  • ESMO:GSKのPARP阻害剤も卵巣癌一次治療後維持療法試験が成功 
  • ESMO:オプジーボとヤーボイのNSCLC一次治療試験がやっと成功 
  • ダルザレックスが新患ASCT可能多発骨髄腫に承認 
  • FDA、天然痘・サル痘ワクチンを承認 


【新薬開発】


ESMO:リムパーザは卵巣癌一次治療後の維持療法として有効
(2019年9月28日発表)

アストラゼネカがMSDと共同開発販売しているPARP阻害剤、Lynparza(olaparib)の第三相PAOLA-1試験の成績がESMO(欧州臨床腫瘍学会)で発表された。進行卵巣癌の標準的一次治療である化学療法とAvastin(bevacizumab)の併用レジメンに反応し癌が縮小または安定化した患者は、Avastin単剤による維持療法を施行することができるが、今回の試験は維持療法にLynparzaを併用するレジメンを検討したところ、PFS(無進行生存期間、担当医評価)が有意に増加した。

メジアン値は併用群が22.1ヶ月、Avastin単剤群は16.6ヶ月、ハザードレシオは0.59でp値は0.0001を下回った。BRCA変異を持つサブグループのハザードレシオは0.31、持たないサブグループは0.71で、少なくともこの用法に関してはBRCA1/2の悪性変異の有無は不問だった。

担当医評価ではなく盲検独立評価に基づく感受性分析もメジアン値が各26.1ヶ月、18.3ヶ月、ハザードレシオは0.63と同様な結果になった。

G3以上の有害事象の発生率は各57%と51%で若干増加した。

Lynparzaは卵巣癌ではBRCA変異陽性の一次治療後維持療法にモノセラピーで用いることなどが日米欧で承認されているが、Avastin併用も用法追加申請されることになるだろう。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

ESMO:GSKのPARP阻害剤も卵巣癌一次治療後維持療法試験が成功
(2019年9月28日発表)

グラクソ・スミスクラインのPARP阻害剤、Zejula(niraparib)の第三相進行卵巣癌一次治療後維持療法試験の結果もESMOで発表された。こちらはAvastinを使わない治療方針に即してモノセラピーと偽薬を比較したところ、PFSのハザードレシオが0.62、p値は0.001を下回った。BRCA変異を持つサブグループでは0.40、野生サブグループでは0.50と、どちらにも便益があった。また、全生存期間の中間解析でハザードレシオが0.70と好ましい方向を示した。

競合薬のLynparzaはBRCA陽性に維持治療後維持療法として単剤投与することが承認されている。PFSのHRは0.30なので、Zejulaの0.40より好成績だが、異なった試験のデータを比較する時は誤差範囲を大きく取る必要があるので、概ね同じと言えるだろう。

GSKは適応拡大申請する考えだが、Lynparzaが一歩先進んでいる状態に変化はない。

リンク: GSKのプレスリリース

ESMO:オプジーボとヤーボイのNSCLC一次治療試験がやっと成功
(2019年9月28日発表)

BMSは抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab)と抗CTLA-4抗体のYervoy(nivolumab)の併用を様々な癌にテストしているが、非小細胞性肺癌では第三相が中々成功せず、適応拡大や売上高でMSDのKeytruda(pembrolizumab)の後塵を浴びることになってしまった。

ついにCheckMate-227試験が成功したが、最初に結果が出たTumor Mutation Burden(TMB)値が高い患者のPFS解析は欧米で適応拡大申請後に数値が低い患者にも便益がある、つまり、TMBでスクリーニングする必然性がないことが判明し、申請撤回となった。

今回は、もう一つの主評価項目であるPD-L1陽性(1%以上)のサブグループの全生存期間の解析結果がESMOで発表された。化学療法群に対するハザードレシオが0.79、97.72%信頼期間は0.65-0.96となった。PD-L1陰性サブグループを対象とする探索的解析でもハザードレシオ0.62、95%信頼区間0.48-0.78となり、この併用レジメンがPD-L1ステータスを問わずに有効である可能性を示唆した。

BMSは今回のデータに基づき適応拡大申請する計画。

Keytrudaと化学療法の併用と比べると治療効果が小さいように感じられる。また、今回の試験のOpdivo・化学療法併用レジメンは効果が化学療法と大差ないという意外な結果になった。Opdivo・Yervoy併用レジメンはPD-L1陰性で化学療法不適、かつ、予算が豊富な患者には適していそうだ。

リンク: BMSのプレスリリース


【承認】


ダルザレックスが新患ASCT可能多発骨髄腫に承認
(2019年9月26日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、Darzalex(daratumumab、和名ダラザレックス)をASCT(自家幹細胞移植)可能な新患多発骨髄腫に用いることがFDAに承認されたと発表した。Velcade(bortezomib)、thalidomide、低量dexamethasoneと四剤併用で、ASCTの前の導入療法と後の地固め療法に用いる。CASSIOPEIA試験では、完全反応率(通常より厳格に定義)が29%と、上記三剤だけのVTd群の20%を有意に上回った。PFSのハザードレシオは0.47でこれも有意だった。

欧州でも承認審査中。

Darzlexはジェンマブ社からライセンスした抗CD38完全ヒト化抗体で、様々な段階の多発骨髄腫に承認されている。

リンク: JNJのプレスリリース

FDA、天然痘・サル痘ワクチンを承認
(2019年9月24日発表)

FDAは、デンマークのBavarian Nordic(OMX:BAVA)のJynneos天然痘・サル痘ワクチンを承認した。サル痘ワクチンの承認は初。戦略的国家備蓄の対象になる予定。同社は優先審査バウチャを取得する。

天然痘はワクチンが普及して感染例がほとんどなくなり、米国では1972年にワクチン接種を終了した。万が一、テロなど人為的な拡散が行われた場合、大きな影響が出る懸念がある。サル痘は動物からの感染で2003年に米国で、アフリカ以外では初めて、流行した。

今回のワクチンはワクシニア・ウイルスに基づく増殖しない生ワクチンで、4週置きに2回接種する。サルの薬効確認試験とヒトの抗体価試験及び安全性確認試験に基づいて承認された。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Bavarian Nordicのプレスリリース





今週は以上です。

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