【ニュース・ヘッドライン】
- WCLC:TMBに基づくスクリーニングは無効?
- ECTRIMS:サトラリズマブの第三相成績は競合に見劣り
- ECTRIMS:ノバルティス、抗CD20抗体の皮注用新製剤を多発性硬化症に承認申請へ
- ECTRIMS:JNJ、S1P1受容体調節剤を多発性硬化症薬として承認申請へ
- WCLC:イーライリリー、RET阻害剤のデータは引き続き良好
- ロシュ、テセントリクの非小細胞性肺癌一次治療モノセラピー試験が成功
- WCLC:イミフィンジも小細胞性肺癌試験が成功
- ACADIA社、Nuplazidの適応拡大試験が成功
- エーザイ/バイオジェン、BACE1阻害剤の第三相二本を中止
- FDA諮問委員会がピーナツアレルギーの減感作療法用薬の承認を支持
- 直ぐに使えるグルカゴン製品が米国で承認
- FDA、CDK4/6阻害剤の肺炎リスクを警告
- FDAとEMA:ラニチジンからNDMAが微量検出された
【今週の話題】
WCLC:TMBに基づくスクリーニングは無効?
(2019年9月8日発表)
抗PD-1/PD-L1抗体の応答予測因子としてはPD-L1発現やマイクロサテライト不安定性が実用化されているが、癌種や用法(単剤/併用)によって有効だったり無効だったりして良く分からない。もっと分からないのがTMB(Tumor Mutation Burden)で、複数の製品の第二相非小細胞性肺癌試験の事後的分析で良さそうな結果が出たが、BMSがOpdivo(nivolumab)で実施した第三相非小細胞性肺癌一次治療Yervoy(ipilimumab)併用試験、CheckMate-227では、高TMBサブグループだけでなく低TMBサブグループでも同程度の延命効果が見られた。BMSは高TMB癌だけに欧米で適応拡大申請していたが、撤回の憂き目を見ることになる。
OpdivoとMSDの抗PD-1抗体開発競争を見ていて痛感するのは臨床開発には巧拙があるということだ。第三相入りはOpdivoのほうが早かったが、欧米での承認申請はMSDのKeytruda(pembrolizumab)が先んじた。その後も、大市場である非小細胞性肺癌で臨床試験の成否が分かれ、今ではKeytrudaが売上トップになった。
MSDがやればTMBによるスクリーニングの有効性を立証することができるか?難しいようだ。WCLC(世界肺癌学会)で複数の臨床試験の事後的解析結果が発表された。
進行非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療として、Alimta(pemetrexed)とcarboplatinを併用する標準療法と更にKeytrudaを用いる三剤併用療法を比較した、第1/2相のKEYNOTE-021試験の症例のうちTMBデータのある70例についてTMBと効果(ORR、PFS、全生存期間)を調べたが、関連性は見られなかった。
同様な内容の第三相試験であるKEYNOTE-189試験の293例を対象とした分析でも関連性はなかった。但し、PFSのp値は標準療法群が0.055、三剤併用群も0.075と、強気な製薬会社なら有望なシグナルがあったと胸を張るような数値が出ている。何度も臨床試験を行えば一回くらいはp値が0.05を下回るかもしれない。
TMBは腫瘍細胞のゲノムを正常細胞と比較してどの程度の頻度で変異が発生しているかを調べるもの。検査方法や高低の閾値は区々である模様で、189試験ではエクソーム当り変異数が175を閾値として高TMBサブグループと低TMBサブグループの比較も行ったが、やはり、関連性が見られなかった。
BMSやロシュが行った第二相の事後的分析でも、上記のCheckMate-227試験でも、PFSでは有望そうな結果が出たが、全生存期間のデータは今一つだった。今回のKEYNOTE-189も、方向性としては全生存期間のほうがp値が大きい。結局、TMBは延命効果の予測因子にはならないのだろう。
リンク: WCLC 2019のプレス向けブリーフィングのアーカイブ(Sunday Summary Press Release以下に上記発表に関するプレスリリースと抄録のリンクがある)
【新薬開発】
ECTRIMS:サトラリズマブの第三相成績は競合に見劣り
(2019年9月12日発表)
ロシュはRG6168(satralizumab)の第三相SAkuraStar試験のデータをECTRIMS(欧州多発性硬化症治療研究学会)で発表した。一本目のSAkuaraSky試験のデータと合わせて、年内にNMOSD(視神経脊髄炎スペクトラム障害)治療薬として承認申請する予定。
satralizumabは中外製薬が創製した抗IL-6受容体リサイクリング抗体、SA237をライセンスしたもの。抗リウマチ薬Actemra(tocilizumab)の活性成分を、受容体結合・離散を繰り返すように改変することによって、長期間作用が続くようにしたもの。
NMOSDは視神経や脊髄の障害で、多くの場合、アクアポリン4抗体(AQP4-IgG)が星状細胞に損傷を与えている。患者は欧州で1万人超、米国は15000人、世界では数十万人と推定されている。30-40代の、コーカサス系ではない女性に多い由。類似した疾患であるNMO(視神経脊髄炎)は多発性硬化症と誤診されることがある。
SAkuraStar試験は、20歳以上のNMOまたはAQP4-IgG血清陽性のNMOSD95人を組入れて、偽薬または120mgを最初は2週毎、4回目からは4週毎に皮注して、再発までの期間を比較したところ、ハザードレシオ0.45、p=0.0184と有意な遅延効果が見られた。AQP4-IgG血清陽性のNMO/NMOSDのサブグループ分析では各0.26と0.0014で、より高い効果が見られた。
昨年のECTRIMSで結果発表されたSAkuraSky試験では、13歳以上のNMOまたはAQP4-IgG血清陽性NMOSDで免疫抑制剤による治療を受けている83人を偽薬群とsatralizumab群に無作為化割付して再発遅延効果を検討したところ、ハザードレシオ0.38、p=0.0184、AQP4-IgG血清陽性サブグループでは各0.21、p=0.0086だった。
限界効用逓減の法則から言えばアドオン試験よりモノセラピー試験のほうが効果が高く出そうなものだが、上記のデータはそうなってはいない。異なった試験のデータを比較するのはリスキーで、特に、特定の事象が発生したかしないかという刻みが一つしかないデータは誤差範囲が広くなりがちだ。今回はtime-to-event分析なので再発頻度よりマシなはずだが、私はNMOSDの治験データを見た経験が少ないので、良く分からない。
前置は以上で本題に入ると、ハザードレシオを見る限りでは、satralizumabの効果は競合と同程度か見劣りする。今年6月に米国でAQP4-IgG陽性NMOSDに適応拡大が認められ日欧でも承認審査中のアクテリオン社の抗C5抗体、Soliris(eculizumab、和名ソリリス)は、ハザードレシオ0.058。アストラゼネカ・グループのメディミューンから18年にスピンアウトしたViela Bioが今夏に米国で承認申請した抗CD19フコシル化抗体、MEDI-551(inebilizumab)は第2/3相試験でハザードレシオ0.27、AQP4-IgG陽性サブグループでは0.227だった。inebilizumabは効果が長期間持続するため、2週間置いて2回点滴した後は6ヶ月に一回の投与で足りる見込みだ。
Solirisは超希少疾患用薬で価格が著しく高い。ロシュやVielaは価格も重要な競争手段になりそうだ。
リンク: ロシュのプレスリリース
リンク: inebilizumabの第2/3相試験論文(Creeら、Lancet誌)
ECTRIMS:ノバルティス、抗CD20抗体の皮注用新製剤を多発性硬化症に承認申請へ
(2019年9月13日発表)
ノバルティスは、ofatumumabの皮注用新製剤を用いた第三相再発型多発性硬化症試験二本の結果をECTRIMSで発表した。19年末までに承認申請する計画。
ofatumumabは非ホジキン型リンパ腫などの治療に承認されている抗CD20抗体、Arzerra(和名アーゼラ)の活性成分。ノバルティスはグラクソ・スミスクラインとのアセット・スワップにより入手、自己免疫疾患に関しては点滴静注ではなく皮注用の製剤に方向転換した。
その最初の成果が今回の第三相試験だ。20mgを月一回皮注して、サノフィのAubagio(teriflunomide)を一日一回、14mgを経口投与する群とARR(年率再発率)を比較した。結果は、一本が0.11対0.22で50%小さく、もう一本は0.10対0.25で58%小さかった。どちらもp<0.001。事前に設定されていた障害進行のプール分析でも有意な差があった。
Aubagioは経口投与できることが長所だが、再発予防効果は近年の新薬ほどではなく、この試験や次項のponesimodのように直接比較試験で咬ませ犬の役を担う機会が増えた。
リンク: ノバルティスのプレスリリース
ECTRIMS:JNJ、S1P1受容体調節剤を多発性硬化症薬として承認申請へ
(2019年9月11日発表)
ジョンソン・エンド・ジョンソンはponesimodの第三相再発型多発性硬化症試験の結果をECTRIMSで発表した。1133人をponesimod群(20mgを一日一回経口投与)とteriflunomide群(14mgを一日一回経口投与)に無作為化割付して108週間追跡し、ARR(年率再発率)を比較したところ、各0.202と0.290となり、有意な差があった(p=0.0003)。同社は欧米で承認申請する考え。
ponesimodは17年に買収したアクテリオン社のパイプラインで、S1P1受容体の機能的アンタゴニスト。
リンク: JNJのプレスリリース
WCLC:イーライリリー、RET阻害剤のデータは引き続き良好
(2019年9月9日発表)
イーライリリーは、selpercatinibの第1/2相試験の承認審査用データセットをWCLCで発表した。6月のASCOで発表されたやや異なったユニバースのデータと似たような数値だ。順調なら来年には実用化されるだろう。非小細胞性肺癌はEGFR活性化変異やALK融合、ROS1融合など、狙い撃ちできる抗癌剤を使えば高い治療効果を上げることができるタイプが次々と見つかっているが、検査対象にRET融合変異が加わることになる。
selpercatinibはLoxo Oncologyを買収して入手した経口RET阻害剤。承認申請用データセットは、RET融合陽性の非小細胞性肺癌で白金薬レジメンによる治療歴を持つ105例が対象。55%が抗PD-1/PD-L1抗体歴、48%がマルチキナーゼ阻害剤歴を持っていたので、三次治療、四次治療の患者もいただろう。
結果は、ORR(客観的反応率)が68%、メジアン反応持続期間は20ヶ月だった。脳血管関門通過性を持っており、脳転移のある患者における中枢神経ORRは91%と高かった。
EGFR阻害剤やALK阻害剤は一次治療薬として使われている。RET阻害剤も可能性があり、未治療34例におけるORRは85%と高かった。マルチキナーゼ阻害剤より選択性が高いせいか、忍容性は概ね良好で、治療時発現有害事象による離脱率は1.7%と低い。G3/4の治療時発現有害事象は下痢(2%)、高血圧(15%)、肝機能検査値上昇(ASTが7%で、ALTが8%で上昇)、疲労(1%)など。
リンク: イーライリリーのプレスリリース
ロシュ、テセントリクの非小細胞性肺癌一次治療モノセラピー試験が成功
(2019年9月12日発表)
ロシュは、抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab、和名テセントリク)のIMpower110試験が中間解析で成功認定されたと発表した。FDAなどと用法追加について相談する考え。
この第三相試験は、PD-L1陽性の進行非小細胞性肺癌の一次治療におけるモノセラピーの効果をcisplatinまたはcarboplatinに加えて、扁平上皮種にはgemcitabine、非扁平上皮種はAlimta(pemetrexed)を維持療法も含めて、二剤併用する標準療法群と比較したもの。主評価項目はEGFRやALKが野生型の患者の全生存期間で、PD-L1発現度に基づき三種類のユニバースの解析が行われる(Tecentriqのコンパニオン診断薬であるSP142アッセイでTC3/IC3、TC2以上/IC2以上、TC1以上/IC1以上)。
今回、成功認定されたのはTC3/IC3サブグループの解析。他の二つがどうなったのかは明らかではない。MSDのKeytruda(pembrolizumab)のケースではPD-L1強陽性ユニバースのほうがPD-L1陽性ユニバースより効果が高かったので、Tecentriqも、中間解析時点では有意差が出るほどではなかったのかもしれない。
Tecentriqは非小細胞性肺癌の一次治療では化学療法併用が先に承認されているが、モノセラピーで足りる患者には、新しい選択肢が生まれることになる。Keytrudaとどちらを使うかは、今後発表されるデータ次第だろう。
抗PD-1/PD-L1抗体はインターフェロンやIL-2など免疫強化療法が穏やかな効果を示した癌種だけでなく、肺癌など幅広い用途に有効であることが分かった。数社が激しく競争することで新用途開発がスピードアップする好ましい展開だ。しかし、贅沢に慣れるとそれが当たり前になり、地球に飽き足らず月や火星に行きたくなってしまう。
私が不満に思うのは、複数の製品の適応が区々で、PD-L1検査も製品によって必要だったり不要だったり、各社の検査アッセイが異なっていたり、Keytrudaのように、同じ薬でも適応によって検査方法や閾値が異なったり、非常に煩雑であることだ。何とかならないものだろうか。
リンク: ロシュのプレスリリース
WCLC:イミフィンジも小細胞性肺癌試験が成功
(2019年9月9日発表)
アストラゼネカは抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab、和名イミフィンジ)の第三相小細胞性肺癌一次治療試験の結果をWLCLで発表した。先に承認されたロシュのTecentriq(atezolizumab)と概ね同じような成績なので、代替的な選択肢という印象だ。
このCASPIAN試験は進展型小細胞性肺癌の一次治療の標準療法であるcisplatinまたはcarboplatinとetoposideの併用(最大6サイクル)と、この二剤(最大4サイクル)とImfinziの三剤併用の全生存期間を比較した。中間解析で成功認定された。メジアン生存期間は標準療法群が10.3ヶ月、三剤併用群は13.0ヶ月、ハザードレシオは0.73(p=0.0047)。有害事象による治験離脱は両群とも9.4%だった。
この試験は、更にtremelimumabも併用する四剤併用群の全生存期間も主評価項目であるため、続行されている。BMSのYervoyと同じ抗CTLA4抗体だが、他の腫瘍における薬効確認試験はフェール続きなので期待できそうにない。
TecentriqはIMPower133試験でcarboplatin・etoposide群のメジアン生存期間10.3ヶ月に対してTecentriq併用群は12.3ヶ月、ハザードレシオ0.70(p=0.0069)だった。今年、日米欧で適応拡大が認められた。MSDのKeytrudaは二次治療に承認、BMSのOpdivoは治験がフェールした。
リンク: アストラゼネカのプレスリリース
ACADIA社、Nuplazidの適応拡大試験が成功
(2019年9月9日発表)
ACADIA Pharmaceuticals(Nasdaq:ACAD)は、Nuplazid(pimavanserin tartrate)の適応拡大試験が成功したと発表した。2020年に効能追加申請すべく、FDAと相談する考え。
Nuplazidは5-HT2Aインバース・アゴニストで、16年に米国でパーキンソン病の精神症状の治療薬として承認された。高齢者の認知症性精神症状の治療に用いると死亡リスクが上昇することが枠付警告されているが、報道によると、オフレーベル使用時の死亡は数百人に達する由。
今回の第三相試験は、アルツハイマーなど様々なタイプの認知症に関連する精神症状の治療効果を検討した。12週間のランイン期間に34mg(20mgに減量可)を一日一回経口投与し、所定の改善を達成した患者を継続投与群と偽薬スイッチ群に無作為化割付して二重盲検で幻覚・妄想の再発(第三者が査読)までの期間を比較した。独立データ監視委員会が中間解析で成功認定した。
精神症状改善効果を検討する試験は偽薬効果が大きくハードルが高いので、便法として今回のような離脱試験が行われる。日本のジェイゾロフトが一例だ。難しいのは、効いた人は止めないほうが良いという裏付けはあるものの、効くという裏付けや有効率はランイン期間のプロトコルやデータをキチンと自分で確認しなければならない。
高齢者における死亡リスクも要チェックだ。尤も、高齢認知症患者の精神症状の治療に広くオフレーベル使用されている非定型向精神薬も死亡リスクが高まる。この用途では、患者の生命以外の要素も重視されるのだろう。
リンク: ACADIAのプレスリリース
エーザイ/バイオジェン、BACE1阻害剤の第三相二本を中止
(2019年9月13日発表)
エーザイとバイオジェンは、共同開発しているBACE1阻害剤、E2609(elenbecestat)の第三相試験二本を中止すると発表した。早期アルツハイマー病の進行を抑制する効果を検討していたが、独立データ安全性監視委員会(IDSMC)が中止を勧告した。危険便益比率が好ましくなかったとのこと。
プロトコルに基づいて中間で中止を勧告する時は、大きく分けて二つのパターンがある。一つは治験を続行しても主目的を達成する可能性が極めて低いと統計学的に判定される場合、無益性が認定される。もう一つは、有害事象と比べて便益が小さい又は見られない場合、独立データ安全性監視委員会が、最大の使命である被験者の利益を守るために、治験運営委員会に中止を勧告する。
バイオジェンのプレスリリースを読むと後者のパターンのように感じられるので、これまでに第三相試験が中止された多くの他社のBACE阻害剤と同様に、効果が見られないだけでなく逆に進行を促進してしまう懸念が浮上したのだろう。
リンク: バイオジェンのプレスリリース
【承認審査・委員会】
FDA諮問委員会がピーナツアレルギーの減感作療法用薬の承認を支持
(2019年9月13日発表)
FDAのアレルギー製品諮問委員会は、Aimmune Therapeutics(Nasdaq:AIMT)が4-17歳のピーナツアレルギー患者の減感作療法として承認申請したPalforzia(開発コードAR101)を検討し、効果については9人中7人、安全性は8人が支持した。審査期限の12月21日までに承認される可能性が高まった。
AR101はピーナツに含まれる13種類の蛋白の混合物で、食事に混ぜて毎日服用する。30mgのピーナツ蛋白を忍容しない患者を組入れた第三相試験では、1年間の治療後のフード・チャレンジで4-17歳のサブグループは67%が600mgまで忍容するようになった。偽薬群は4%だった。深刻な有害事象の発生率は2.4%(偽薬群は0.8%)で、胃腸や全身性アレルギー性過敏反応など。AR101群のほうが治験期間中のエピネフィリンの使用頻度が高かった。
治療に伴うリスクも大きいため、最初の二回はアレルギー性ショックなどに対処できる施設で投与するなどのREMS(リスク評価緩和戦略)が導入される見込み。
リンク: Aimmuneのプレスリリース
【承認】
直ぐに使えるグルカゴン製品が米国で承認
(2019年9月10日発表)
Xeris Pharmaceuticals(Nasdaq:XERS)は、FDAがGVOKE(glucagon)を承認したと発表した。Ready-to-Useの注射用グルカゴンで、インスリン治療中の糖尿病患者が重度低血糖に陥った時に用いる。プレフィルド・シリンジとオートインジェクターが用意されている。
既存のグルカゴン製品と異なり調合などの手間がかからない製品では、イーライリリーの点鼻用グルカゴン粉末、Baqsimiも今年7月に承認されている。Baqsimiは対象年齢が4歳以上、GVOKEは2歳以上なので若干広い。また、経鼻薬に特有な鼻詰まりや涙目、充血も回避できるだろう。
リンク: Xeris社のプレスリリース
【医薬品の安全性】
FDA、CDK4/6阻害剤の肺炎リスクを警告
(2019年9月13日発表)
FDAは、ホルモン受容体陽性転移性乳癌に承認されているCDK4/6阻害剤三剤に関して、間質性肺疾患/肺臓炎のリスクを警告した。臨床試験や市販後に1-3%の患者で発生し、0.1%未満なので稀ではあるが致死例もあった。このため、息切れなどの症状に注意し、発生/増悪したら投薬を中断するよう勧告した。
対象は、ファイザーのIbrance(palbociclib、和名イブランス)、イーライリリーのVerzenio(abemaciclib、和名ベージニオ)、そしてノバルティスのKisqali(ribociclib、本邦未承認)。
日本でも欧米に先立ち、厚労省がイブランスとベージニオの添付文書に間質性肺疾患の警告を掲載させている。
リンク: FDAのプレスリリース
FDAとEMA、ラニチジンからNDMAが微量検出された
(2019年9月13日発表)
FDAとEMA(欧州薬品庁)は、Zantacという商標名で販売されているものを含む一部のranitidine製品に微量のNDMA(N-nitrosodimethylamine)が見つかった旨の報告を受け検討を開始した。NDMAは発癌性が疑われており、医薬品では一部のARB(アンジオテンシンII受容体拮抗剤)製品から検出されリコールに至ったことが記憶に新しい。ranitidineの場合は、今のところ、食品や水に含まれる程度の微量なので危害は小さく服用を続けても大丈夫と欧米当局共に判断している。服用を止めたい場合は、処方薬の場合は医師に相談し、OTC製品の場合は他の薬にスイッチすることも可能。
ranitidineはグラクソが商業化したH2ブロッカーで、胃食道逆流症や胸やけなどの治療に用いられている。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: EMAのプレスリリース
今週は以上です。
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