2019年3月17日

2019年3月17日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • FDAがベンタナSP142アッセイを乳癌のコンパニオン診断薬として承認 
  • サイラムザ、タルセバ併用一次治療試験が成功 
  • JNJ、ダラザレックスのRd併用レジメンを承認申請 
  • Rhoキナーゼ阻害剤の合剤が承認 
  • ヘムライブラ、EUでも無インヒビターに承認 
  • リツキサンによるPV治療がEUで承認 


【今週の話題】


FDAがベンタナSP142アッセイを乳癌のコンパニオン診断薬として承認
(2019年3月11日発表)

先週号で書いたように、FDAはTecentriq(atezolizumab、和名テセントリク)をPD-L1陽性トリプル・ネガティブ乳癌の一次治療に用いる適応拡大を承認したが、ロシュの週明けのプレスリリースによると、コンパニオン診断薬としてロシュ・グループのVENTANA社のPD-L1アッセイ(SP142)も承認した。

SP142はTecentriqの他の適応でも承認されているが、注目されるのは、nab-paclitaxelとTecentriqの併用療法によって便益を受ける患者を特定する上で、腫瘍に浸潤している免疫細胞のPD-L1発現状況を評価することは不可欠というプレスリリースの記述だ。Tecentriqは類薬の中で初めて乳癌に対する便益を立証したが、これが成功の秘訣かもしれない。

抗PD-1/PD-L1抗体の数多くの適応のうち一部はPD-L1陽性/強陽性に限定される。検査アッセイは複数あり、製品によって判定結果が異なる場合もある。評価対象も、BMS/小野薬品のOpdivoのように腫瘍細胞だけを検査する場合と、TecentriqやアストラゼネカのImfinziのように腫瘍浸潤免疫細胞も検査する場合、そして、MSDのKeytrudaのように適応によって異なる場合があり、複雑だ。

尤も、どのアッセイで何を検査するかは医学上の問題ではなく企業の嗜好や戦略の問題なのではないかと私は想像している。非小細胞性肺癌を除いて、一つの抗PD-1/PD-L1抗体が効果を示せば、他の製品も、PD-L1検査アッセイを問わず、治験が成功することが多いからだ。

例外がTecentriqのトリプル・ネガティブ乳癌で、本当は他の製品も効くのか、それとも通常のpaclitaxelではなく免疫抑制が小さいアルブミン懸濁型paclitaxelを併用したことが秘訣なのか、不思議に思っていたが、もう一つ、腫瘍浸潤免疫細胞も検査したことが寄与した可能性も浮上してきた。

リンク: ロシュのプレスリリース


【新薬開発】


サイラムザ、タルセバ併用一次治療試験が成功
(2019年3月12日発表)

イーライリリーは、抗VEGFR-2抗体Cyramza(ramucirumab、和名サイラムザ)の転移性非小細胞性肺癌一次治療試験が成功したと発表した。EGFR活性化変異を持つ患者にTarceva(erlotinib、和名タルセバ)と併用するレジメンのPFS(無進行生存期間)をTarceva・偽薬併用群と比較したところ、有意に上回った。データは今後の学会で発表する考え。治療効果はどの程度なのか、第2世代EGFR阻害剤のデータと見比べてどうなのか、などを知りたいところだ。

リンク: イーライリリーのプレスリリース


【承認申請】


JNJ、ダラザレックスのRd併用レジメンを承認申請
(2019年3月12日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのヤンセン・ファーマシューティカルは、Darzalex(daratumumab、和名ダラザレックス)をRevlimid(lenalidomide)及びdexamethasoneと併用で自家幹細胞移植不適の新患多発骨髄腫に用いる適応拡大をFDAに申請した。FDAのReal-Time Oncology Reviewの対象とのことなので、短期間で承認される可能性がありそうだ。

エビデンスとなるMAIA試験で、代表的な一次治療レジメンであるRevlimid・dexamethasone併用レジメンとPFS(無進行生存期間)を比較したところ、ハザードレシオは0.56、p値は0.0001未満だった。メジアンは未達、Rdレジメンは31.9ヶ月。完全反応率は48%対25%で大きく上回った。G3/4の治療時発現有害事象で多かったのは好中球減少症(50%で発生)、リンパ球減少症(15%)、肺炎(14%)、貧血(12%)など。

Darzalexはジェンマブから世界独占開発販売権を取得した抗CD38完全ヒト化抗体。多発骨髄腫用薬として四次治療にモノセラピーで、三次治療や二次治療に三剤併用で、一次治療にVelcadeなどと四剤併用で、FDAに承認されている。

リンク: JNJのプレスリリース


【承認】


Rhoキナーゼ阻害剤の合剤が承認
(2019年3月12日発表)

Aerie Pharmaceuticals(Nasdaq:AERI)は、FDAがRocklatanを承認したと発表した。開放隅角緑内障や高眼圧症の眼圧上昇を治療する。同社が開発して17年12月にFDA承認を得たRhoキナーゼ阻害剤、netarsudilと、プロスタグランジンのlatanoprostの合剤で、前者が線維柱帯による房水流出、後者がブドウ膜強膜路による流出を改善する。一日一回点眼。

リンク: Aerie社のプレスリリース

ヘムライブラ、EUでも無インヒビターに承認
(2019年3月14日発表)

ロシュは、Hemlibra(emicizumab、和名ヘムライブラ)を重度A型血友病でインヒビターを持たない患者のルーチン出血予防に用いる適応拡大がEUに承認されたと発表した。同時に、これまでの週一回に加えて、二週毎あるいは四週毎の投与も承認された。

血液凝固第IX因子と第X因子に結合する二重特異性抗体で中外製薬が創製、ロシュに海外の権利を導出したもの。インヒビターを持ち第VIII因子を使えない患者の代替的治療法として初承認されたが、日米に続いて今回、欧州でも、無インヒビターに用いることが可能になった。皮注で遺伝子組換え型第VIII因子より投与頻度が少ないので、頻繁に出血する患者の予防用途に簡便。

リンク: ロシュのプレスリリース

リツキサンによるPV治療がEUで承認
(2019年3月15日発表)

ロシュは、MabThera(rituximab、米名Rituxan、和名リツキサン)を中重度尋常性天疱瘡(PV)の治療に用いる適応拡大がEUに承認されたと発表した。米国でも昨年6月に承認されている。PVは罹患率が10万人に3人の希少疾患。

リンク: ロシュのプレスリリース






今週は以上です。

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