2019年2月24日

2019年2月24日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • FDA、サンスクリーンを規制対象に 
  • オベチコール酸のNASH適応拡大試験が成功 
  • キイトルーダ、肝細胞腫の市販後薬効確認試験がフェール 
  • ロシュ、抗CD79ADCの承認申請受理 
  • ロシュ、ROS1/TRK阻害剤の承認申請受理 
  • 新規プレウロムチリンの承認申請が受理 
  • アッヴィ、JAK1阻害剤をリウマチに承認申請 
  • キイトルーダ、悪性黒色腫切除後治療に承認 
  • ファイザー、ゼルヤンツの安全性試験で高用量を中止 
  • FDA、フェブリクの死亡リスクを枠付き警告 


【今週の話題】


FDA、サンスクリーンを規制対象に
(2019年2月21日発表)

FDAは、処方箋なしで買えるサンスクリーン(日焼け止め)の成分や表示などに関する規制を導入・強化する案を公表した。パブリックコメントを募集中。

FDAは処方薬やOTC薬、医療機器、食品、タバコなど多くの製品の販売を規制しているが、規制導入前に長年にわたり大きな問題なく流通しているOTC薬については、GRACE(安全かつ有効と一般的に認識されている)製品として販売承認取得を免除している。この認識が覆った場合は再評価の対象になり、もし安全性に深刻な懸念が判明した場合は、メーカーに改めて販売承認申請を求めることになる。

FDAはOTCサンスクリーンをGRACEとみなしていたが、皮膚がん予防策の一つとしての重要性に鑑み、効果や安全性、レーベルなどの吟味が必要と判定。以下の規制や枠組みを提案した。

・現在使われているサンスクリーンの活性成分16種類のうち、GRACEとみなすのは酸化亜鉛と二酸化チタンの二種類、安全性面でGRACEではないとみなされるのはPABA(パラアミノ安息香酸)とサリチル酸トロラミン。残りの12種類は安全性に関する情報が不十分なので業界などに追加データを要請している。

・剤型面でGRACEとみなされるのは、スプレイ、オイル、ローション、クリーム、ジェル、バター、ペースト、軟膏、スティック。パウダーも含める方向だが追加データが必要。ワイプやタオルレット、ボディウオッシュ、シャンプーなどの剤型はFDAがデータを持っていないため新薬とみなす考え。

・SPF値の最大カテゴリーを現在の50+から60+に引き上げることを提案。SPF値15以上の製品についてはSPF値に見合った広いスペクトラムのプロテクションを求める考え。

・製品の表側に活性成分などを表示する。

・虫よけ成分などを含むコンビ製品はGRACEではない。

猶予期間が設けられるのだろうが、規制が始まれば、酸化亜鉛と二酸化チタン以外の活性成分を用いたり、イメージアップや製品差別化目的でサンスクリーン以外の成分を配合するのが困難になりそうだ。

リンク: FDAの発表


【新薬開発】


オベチコール酸のNASH適応拡大試験が成功
(2019年2月19日発表)

Intercept Pharmaceuticals(Nasdaq:ICPT)は、Ocaliva(obeticholic acid)の高量を用いたNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)肝線維症治療試験が成功したと発表した。本年下期に欧米で適応拡大申請する考え。日本は権利を持つ大日本住友製薬が実施した第二相が4年前にフェールしたが、海外で原発性胆汁性肝硬変(PBC)に続いてNASH適応拡大試験も成功したことを受けて、再びエンジンがかかるのではないか。

Ocalivaはウルソデオキシコール酸の類縁体でファルネソイドX受容体に対する力価が著しく高い。16年に欧米でPBCの治療に用いることが承認された。用量用法は5mgを一日一回経口投与、10mgまで増量可。臨床試験では25mgまでテストしたが、致死的な肝毒性が見られるため、抑えめになった。

今回の試験は、NASHによるステージ2または3の肝線維症2500人を偽薬、10mg、または25mgを一日一回経口投与する三群に無作為化割付して18ヶ月間治療するもの。主評価項目は、肝線維症が1ステージ以上改善しNASHが悪化しなかった患者の比率と、NASHが解消し肝線維症が悪化しなかった患者の比率。組入れに時間がかかったため17年にどちらか一つが成功すれば主目的達成と解析計画を変更した。

結果は、931人の中間解析で、25mg群の前者の定義に基づく奏効率が23.1%となり、偽薬群の11.9%を大きく上回った。一方、後者の奏効率は25mg群も10mg群も11%強で、偽薬群の8%を有意に上回らなかった。

この薬の代表的な副作用は掻痒で、25mgの発生率は51%と10mg群の28%や偽薬群の19%を大きく上回った。25mg群の重度掻痒は5%だった。

リンク: Interceptのプレスリリース

キイトルーダ、肝細胞腫の市販後薬効確認試験がフェール
(2019年2月19日発表)

MSDは、抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)のKEYNOTE-240試験がフェールしたことを発表した。米国で昨年7月に加速承認された、肝細胞腫二次治療の市販後薬効確認試験なので、最悪の事態では承認取消も考えられる。しかし、点推定値や名目p値はそれほど悪くないので、総合判断で承認が維持される可能性もあるのではないか。

240試験はNexavar(sorafenib)など全身治療薬による治療歴を持つ患者413人を組入れて、全生存期間やPFS(無進行生存期間)を偽薬群と比較した。前者はハザードレシオ0.78、95%上限0.998、p=0.0238、後者は各0.78、0.99、0.0209となっており、一見すると悪くないが、p値の閾値は各0.0174と0.002とのことで、ハードルをクリアできなかった。

閾値が通常より厳しい理由は不明。中間解析やサブグループ分析に多くのアルファが配分されていたのだろうか。

リンク: MSDのプレスリリース


【承認申請】


ロシュ、抗CD79ADCの承認申請受理
(2019年2月19日発表)

米国連邦政府のつなぎ予算が成立したせいか、複数の医薬品の承認申請が受理された。まず、ロシュのRG7596(polatuzumab vedotin)。優先審査で、審査期限は今年8月19日。

申請の根拠となった第二相試験では、造血幹細胞移植不適の再発難治性びまん性巨細胞型B細胞リンパ腫にRituxan(rituximab)およびTreanada(bendamustine)と併用したところ、完全反応率(独立評価委員会査読)が40%とRituxan・Treandaだけの群の15%を有意に上回った。探索的に実施された全生存期間の解析はメジアン12.4ヶ月対4.7ヶ月、ハザードレシオ0.42だった。主な重度有害事象は熱性白血球減少症など。

Seattle Genetics(Nasdaq:SGEN)からライセンスした抗CD79抗体にMMSE細胞毒を結合したADC(抗体薬物複合体)。第三相では一次治療としてR-CHOP療法のvincristineに代えてRG7596を用いるレジメンをR-CHOPと比較している。

リンク: ロシュのプレスリリース

ロシュ、ROS1/TRK阻害剤の承認申請受理
(2019年2月19日発表)

ロシュは、RG6268(entrectinib)の承認申請もFDAに受理された。審査期限は8月18日。

バイエルがLoxo Oncoogy社(イーライリリーが買収予定)からライセンスして昨年、欧米で発売したVitrakvi(larotrectinib)と同じTRK阻害剤だが、ROS1阻害活性もあり、ロシュはNTRK融合陽性の局所進行性/転移性固形癌の二次治療に加えて、ROS-1陽性転移性非小細胞性肺癌の適応も求めた。複数の臨床初期中期試験のプール解析で、前者に対するORR(客観的反応率)は57%、後者は77%だった。

18年に17億ドルで買収したIgnyta社の開発品。日本は昨年12月に中外製薬がNTRK融合遺伝子陽性固形癌に承認申請した。

リンク: ロシュのプレスリリース

新規プレウロムチリンの承認申請が受理
(2019年2月19日発表)

Nabriva Therapeutics(Nasdaq:NBRV)は昨年12月にlefamulinを米国で承認申請したが、受理されたことを発表した。優先審査で審査期限は8月19日。FDAから、審査に関する大きな問題は現時点ではなく、諮問委員会を開催する予定もない旨、通知してきた由だ。

プレウロムチリン系の半合成抗生剤で、地域感染細菌性肺炎の治療に用いる。経口剤と点滴静注用の二種類の製剤がある。QIDP指定されているため承認されれば新薬排他権や優先審査バウチャーを取得できる。

リンク: Nabriva社のプレスリリース

アッヴィ、JAK1阻害剤をリウマチに承認申請
(2019年2月19日発表)

アッヴィは、ABT-494(upadacitinib)を中重度リウマチ性関節炎の治療薬として承認申請しているが、FDAに受理され、審査期限が今年第3四半期(7-9月)であることが公表された。

IL-6等の受容体の細胞内シグナル伝達物質であるJAK1の経口阻害薬で、感染性関節炎やアトピー性皮膚炎などにも開発されている。

臨床試験の一つでは血栓塞栓性イベントは特に増加しなかったが、30mg群で一名、肺塞栓と心不全による死亡があった。

欧州でも昨年12月に承認申請された。

リンク: アッヴィのプレスリリース


【承認】


ノボの長期作用性第VIII因子が米国承認
(2019年2月19日発表)

ノボ ノルディスクは、FDAがEsperoct(turoctocog alfa pegol)を承認したと発表した。6年前に発売した遺伝子組換え型血液凝固第VIII因子、NovoEightをPEG化して半減期を1.6~1.9倍に長期化したもの。A型血友病のルーチン出血予防に用いる場合、3~4日に一回の投与で足りる。出血時の治療や周術期の出血管理に用いることも承認された。

長期作用性第VIII因子は多くの会社が発売しており、画期性は乏しい。他社の知的所有権の関係でノボは2020年まで発売しない予定。

リンク: ノボのプレスリリース

キイトルーダ、悪性黒色腫切除後治療に承認
(2019年2月19日発表)

MSDのKeytruda(pembrolizumab)を悪性黒色腫のアジュバントに用いることがFDAに承認された。ステージIIIの癌を完全切除した後の再発リスク削減に用いる。Keynote-054試験では無再発生存のハザードレシオが偽薬比0.57だった。G3-5の治療時発現有害事象は14.7%で発生した(偽薬群は3.4%)。

リンク: MSDのプレスリリース


【医薬品の安全性】


ファイザー、ゼルヤンツの安全性試験で高用量を中止
(2019年2月19日発表)

ファイザーは、JAK3阻害剤Xeljanz(tofacitinib、和名ゼルヤンツ)の安全性確認試験に関して、高用量群の投与量を10mg一日二回から5mg一日二回に移行すると発表した。独立データ監視委員会が安全性シグナルを探知して通知してきたため。

このA3921133試験は12年に米国で中重度関節リウマチの治療薬として承認された時のフェーズIVコミットメントとして、承認用量である5mg一日二回と未承認の10mgの腫瘍リスクや心血管リスクをTNF阻害剤(北米ではHumira、その他ではEnbrel)と比較するもの。50歳以上で一つ以上の心血管リスク因子を持つ、典型的なリウマチ患者よりも高リスクが対象だ。

独立データ監視委員会の役割は、被験者を未知のリスクから守るために安全性指標に群間の大きな偏りが発生していないかデータを定期的にチェックすること。被験者保護を徹底するために、治験を運営主導する医師とは異なる、利害関係のない人が参加する。

今回は、高用量群とTNF阻害剤群の間で肺塞栓の発生率に統計学的にも臨床的にも大きな差が発生した。更に、死亡リスクも標準用量群やTNF阻害剤群と比べて高かった。

他のリウマチ性関節炎試験や市販後監視ではこのようなリスクは見られなかった由だが、他のJAK阻害剤では散見されているリスクなので、等閑に付すことはできない。感染症や腫瘍に関する懸念からリウマチでは10mg一日二回は日米欧何れの当局も承認しなかったが、潰瘍性大腸炎ではインダクション時の標準的用量であり、メンテナンスでも必要に応じて許容されている。このため、未承認用量の話と一蹴することもできない。

もう一つの懸念である腫瘍についても、結果が注目される。リウマチ試験における皮膚がん(メラノーマを除く)の発生率は100人年当り0.5程度だが、米国の添付文書は、皮膚がんのリスクを持つ患者に投与する場合は定期的な皮膚検査を行うよう推奨している。免疫抑制剤的抗リウマチ薬は様々な形で腫瘍に係り得るので、大規模な疫学調査が必要だ。

JAK阻害剤では、イーライリリー/インサイトのJAK1/2阻害剤、Olumiant(baricitinib、和名オルミエント)も第2相と第3相の合計で心静脈血栓・肺塞栓が5例、100人年当り1.2の頻度で発生した。対照群はゼロだった。抗リウマチ薬として承認申請され、日欧は17年にすんなり承認したが、FDAは至適用量や安全性の再検討を求め、諮問委員会を経て、4mgは承認せず2mgだけ承認した。

XeljanzとOlumiantは選択性が真逆だが、JAKのほうが1と3でヘテロダイマーを形成していたりするので、臨床的な差異はそれほど鮮明ではない。

リンク: ファイザーのプレスリリース(pdfファイル)

FDA、フェブリクの死亡リスクを枠付き警告
(2019年2月21日発表)

FDAは2009年に痛風治療薬として承認した武田薬品のUloric(febuxostat、日本はオリジネーターの帝人ファーマがフェブリク名で販売)の適応縮小・警告強化を決定した。大規模安全性確認試験の所見に基づき、心血管疾患による死亡や全死亡が増加するリスクを枠付き警告。適応をもう一つのキサンチンオキシダーゼ阻害剤であるallopurinolに不応不耐だけに限定した。

allopurinolは尿酸の合成を阻害することによって痛風の原因である尿酸結晶の蓄積を緩和するが、深刻な皮膚障害などが生じることがある。Uloricは効果や安全性に優れ、ある程度なら腎障害にも使える薬として期待されて第三相入りしたが、安全性データは期待されたほどではなく、それどころか、心血管安全性懸念が浮上。市販後安全性確認試験では1000人年当りの死亡数が26とallopurinol群の22を上回り、うち心血管関連死亡は15対11だった。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: WhiteらのCARES心血管安全性試験論文(NEJM誌)






今週は以上です。

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