2019年2月17日

2019年2月17日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • ASCO GU:バイエル、アンドロゲン受容体阻害剤の前立腺癌試験成功 
  • ASCO GU:イクスタンジの転移性CSPC試験のデータ発表 
  • ASCO GU:キイトルーダとインライタの併用はスーテントより優れる 
  • ギリアド、ASK1阻害剤の第三相がフェール 
  • キイトルーダを頭頚部癌の一次治療に適応拡大申請 
  • FDA諮問委員会がJNJのエスケタミンをポジティブに評価 
  • ノバルティスの肝蛭症治療薬が米国でも承認 


【新薬開発】


ASCO GU:バイエル、アンドロゲン受容体阻害剤の前立腺癌試験成功
(2019年2月14日発表)

昨年10月に成功発表されたBAY-1841788(darolutamide)の第三相非転移性去勢抵抗性前立腺癌(nmCRPC)試験のデータがASCO GUシンポジウムとNew England Journal of Medicines誌で発表された。アンドロゲン枯渇療法薬(ADT)と併用した群の無転移生存期間は40.4ヶ月とADTと偽薬を併用した群の18.4ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオ0.41、p<0.001だった。

全生存期間は中間解析でハザードレシオ0.71、p=0.045だが有意ではなかった。承認申請に向かうことになりそうだ。

darolutamideはアンドロゲン受容体阻害剤。14年にオライオン社(OMX:ORNAV)から共同開発販売権を取得したもの。類薬では18年に日米で承認されたジョンソン・エンド・ジョンソンのErleada(apalutamide)と対象患者が同じ。売上高や適応の広さでトップのアステラス製薬/ファイザーのXtandi(enzalutamide)も昨年、同用途で承認された。

無転移生存期間のハザードレシオは夫々0.28と0.29で、数値上はdarolutamideより良い。そのせいか、バイエルのプレスリリースは忍容性を強調しているが、競争環境は厳しそうだ。

リンク: バイエルのプレスリリース

ASCO GU:イクスタンジの転移性CSPC試験のデータ発表
(2019年2月11日発表)

アステラス製薬がファイザーと共同開発共同販売しているXtandi(enzalutamide、和名イクスタンジ)のARCHES試験の結果がASCO GUで発表された。アンドロゲン除去療法が効果を失っていないのに転移した転移性ホルモン感受性前立腺癌を組入れて放射線学的転移のない生存期間(rPFS)を偽薬と比較したところ、Xtandi追加群はメジアン未達、偽薬追加群は19.4ヶ月でハザードレシオは0.39、p<0.001だった。

全生存期間は未成熟(解析に必要な発生数に達していない)。両社は適応拡大申請の予定。

リンク: 両社のプレスリリース

ASCO GU:キイトルーダとインライタの併用はスーテントより優れる
(2019年2月11日発表)

ASCO GUではMSDのKeytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)をファイザーのInlyta(axitinib、和名インライタ)と併用で末期/転移性腎細胞腫の一次治療に用いる効果をファイザーのSutent(sunitinib、和名スーテント)と比較した試験のデータも公表された。全生存期間のハザードレシオは0.53、p=0.0001、PFSのハザードレシオは0.69、p=0.0001だった。G3からG5までの有害事象による治験離脱は6.3%でSutentの10.1%を下回った。

PD-1/PD-L1阻害剤は予想以上に幅広い疾患に有効で、腎細胞腫ではBMSのOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)とYervoy(ipilimumab)の併用が承認されている。ハザードレシオはKeytruda・Inlyta併用のほうが数値上、良く、また、先月同じ内容で適応拡大申請されたメルク/ファイザーのBavencio(avelumab)と比べても数値が見栄えするため、肺癌だけでなく腎細胞腫でもKeytrudaが優位に立ちそうだ。

リンク: MSDのプレスリリース

ギリアド、ASK1阻害剤の第三相がフェール
(2019年2月11日発表)

ギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)は、GS-4997(selonsertib)の第三相NASH代償性(F4)肝硬変試験のフェールを発表した。48週後に組織学的評価スコアが改善しNASHが悪化しなかった患者の比率は偽薬群が12.8%に対して6mg群(一日一回経口)は12.5%、12mg群は14.4%と大差なかった。第二相の結果も判然としないものであったため高リスク試験とみなされていたので、サプライズではないだろう。

リンク: ギリアドのプレスリリース


【承認申請】


キイトルーダを頭頚部癌の一次治療に適応拡大申請
(2019年2月11日発表)

MSDは抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)を再発難治性頭頚部扁平上皮種の一次治療に用いる適応拡大申請を米国で行い受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は6月10日。

標準療法と比較した第三相標準療法対照試験では、モノセラピーはCPSスコア20%以上の癌に、化学療法併用はCPS1%以上の癌に、有意な延命効果を示した。

リンク: MSDのプレスリリース


【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会がJNJのエスケタミンをポジティブに評価
(2019年2月12日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンのSpravato(esketamine)がFDAの精神薬理学薬諮問委員会と薬品安全性リスク管理諮問委員会の共催会議に上程され、賛成14、反対2、棄権1の圧倒的多数で難治性鬱病の治療における便益が危険を上回ると判定した。FDAも承認に前向きな模様であり、REMS(リスク評価・緩和戦略)の内容も好評価を受けた様子なので、審査期限が3月4日とあまり余裕がないが、無事承認されるのではないか。

オフレーベルで使用されているketamineのS異性体を点鼻スプレイにしたもので、NMDA受容体を非競合的・活性依存的に拮抗し、ドパミンの再取り込みを阻害する。難治性鬱病の治療薬をスイッチする時に、新しい抗鬱剤と併用する。週二回投与。有効率が他の薬と比べて高く、作用のオンセットが早い。但し、第三相4本のうち明確に成功と言えるのは短期治療試験と離脱試験の低用量群だけだった。

忍容性面では、ketamineと同様に、解離感覚や血圧上昇、眩暈、鎮静が見られ、多くは投与の2時間以内に発生する。このため、REMS(リスク評価・緩和戦略)の下に、投与後2時間の密接監視を徹底し、患者に直接提供するのを禁止し、レジストリーを行う予定。諮問委員会が肯定的に判断した一因は、REMSの内容がしっかりしていることである模様だ。

リンク: JNJのプレスリリース


【承認】


ノバルティスの肝蛭症治療薬が米国でも承認
(2019年2月13日発表)

ノバルティスはFDAが肝蛭症治療薬のEgaten(triclabendazole)を承認したと発表した。6歳以上が適応になる。古くから用いられていてWHOが推奨リストに収載している唯一の肝蛭症治療薬だが、米国承認は初。特許が既に失効しており、ノバルティスは2005年からWHOに寄付を続けている。従って、売上利益は小さいだろう。顧みられない熱帯病に対する治療薬を開発し承認取得した会社に供与される優先審査バウチャーを取得したのが唯一の米国承認における金銭的見返りではないか。

リンク: ノバルティスのプレスリリース







今週は以上です。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

0 件のコメント:

コメントを投稿