2018年11月25日

2018年11月25日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • メルク/ファイザーの抗PD-L1、卵巣癌試験がフェール 
  • 第一三共もFLT3阻害剤を承認申請 
  • FDA、血球貪食リンパ組織球症治療薬を承認 
  • FDA、ヘッジホッグ阻害剤をAMLに承認 
  • アッヴィのbcl-2阻害剤もAMLに適応拡大 
  • RPE65網膜ジストロフィーの遺伝子療法がEUでも承認 
  • FDA、ジレニア中止後の症状悪化を警告 


【新薬開発】


メルク/ファイザーの抗PD-L1、卵巣癌試験がフェール
(2018年11月19日発表)

ドイツのメルクとファイザーは、抗PD-L1抗体Bavencio(avelumab、和名バベンチオ)の第三相卵巣癌再発治療試験がフェールしたと発表した。抗PD-1/PD-L1の用途としては新しいだけに注目されたが残念な結果になった。卵巣癌の第三相はもう一本、一次治療三剤併用試験が進行中。

Bavencioはメルクがファイザーと提携して開発、17年に日米欧で承認された。抗PD-1/PD-L1としては後発であるためか、他社の開発があまり進んでいない転移性メルケル細胞腫がリード・インディケーションだった。希少疾患で、欧米の推定患者数は各2500人、日本は75人とのことである。その後、米国では転移性尿路上皮癌の再発治療も承認され、また、腎細胞腫一次治療axitinib併用試験が成功、承認申請の見込みである。

今回のJAVELIN Ovarian 200試験は、白金薬抵抗性/難治性の卵巣癌をモノセラピー、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤(対照群)、両剤併用の3群に無作為化割付して全生存期間を比較したもの。PD-L1発現状況は不問。結果は、モノセラピーのハザードレシオが1.14、併用は0.89で、どちらも有意に上回らなかった。この患者層にBavencioが有効と考えた根拠はどの程度強固だったのか、改めて尋ねたくなるような結果だ。

リンク: 両社のプレスリリース

【承認申請】


第一三共もFLT3阻害剤を承認申請
(2018年11月22日発表)

第一三共は、経口FLT3チロシンキナーゼ阻害剤quizartinib(キザルチニブ)を再発性難治性AML(急性骨髄性白血病)用薬として米国で承認申請し、受理された。審査期限は来年5月25日。AMLの3割程度を占める、FLT3の遺伝子の塩基配列繰返し箇所に重複変異があるタイプ(FLT3-ITD)が適応になる。第三相試験ではメジアン生存期間が6.2ヶ月と化学療法群の4.7ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.76、統計的に有意な差があった。有害事象はQT延長など。

昨年、同じ作用機序を持つノバルティスのRydapt(midostaurin)がFLT3-ITD型AMLの一次治療化学療法併用薬として欧米で承認された。後期のようにAMLでは続々と新薬が承認されているので、生存競争は厳しい。quizartinibの試験ではRydapt歴を持つ患者も組入れたので、どの程度の効果があったのか注目される。

米国サンディエゴのAmbit Biosciences社が開発、09年にアステラス製薬が世界共同開発商業化権を取得したが、13年に戦略上の理由で解約、14年に第一三共がマイルストンを含めて総額4億ドルで会社ごと買収した。

日本では10月に、欧州でも11月に申請された。

リンク: 第一三共のプレスリリース(和文)


【承認】


FDA、血球貪食リンパ組織球症治療薬を承認
(2018年11月20日発表)

FDAは、HLH(原発性血球貪食リンパ組織球症)の初めての治療薬となるGamifant(emapalumab-lzsg)を承認した。HLHは免疫細胞が異常に活性化、肝臓や脳、骨髄に障害をもたらす、高死亡率の超希少疾患。NKT細胞やCTLが分泌するインターフェロン・ガンマの著増が見られる。

GamifantはスイスのNovimmuneが開発・承認申請した抗インターフェロン・ガンマ抗体で、再発性、難治性、または従来の治療法に不耐の成人小児が適応になる。27人の幼小児を組入れた臨床試験で63%が反応し、70%の患者が幹細胞移植に進むことができた。主な有害事象は感染症や高血圧、点滴箇所反応、低カリウム血、発熱など。

Novimmuneは優先審査バウチャーを取得した。Swedish Orphan Biovitrum(STO:SOBI)が全世界での開発販売権を保有しており、将来的には事業を継承する予定。欧州でも承認審査中。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: 両社のプレスリリース

FDA、ヘッジホッグ阻害剤をAMLに承認
(2018年11月21日発表)

FDAはファイザーのヘッジホッグ阻害剤Daurismo(glasdegib)を75歳以上または強化化学療法が不適な新患AML(急性骨髄性白血病)用薬として承認した。低量cytarabineと併用で一日一回、経口投与する。ファイザーは12月に発売する予定。WAC(卸取得コスト)は30日分16925ドルの見込み。

ヘッジホッグ・パスウェイは胚形成時に重要な役割を果たす。成人では機能していないが、異常活性化すると癌の幹細胞の発達・生存に関与すると考えられている。承認の根拠となった第二相試験ではメジアン生存期間が8.8ヶ月と低量cytarabineだけの群の4.3ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.46、統計的に有意だった。深刻有害事象の発生率は79%で、熱性好中球減少症や肺炎、出血、敗血症などが見られた。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ファイザーのプレスリリース

アッヴィのbcl-2阻害剤もAMLに適応拡大
(2018年11月21日発表)

アッヴィは、bcl-2阻害剤Venclexta(venetoclax)をAML(急性骨髄性白血病)に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。75歳以上または併存症により強化化学療法の対象にならない新患に、azacitidine、decitabine、または低量cytarabineと併用する。

承認の根拠となった第二相試験ではazacitidineと併用した患者では完全寛解率37%、decitabine併用では54%だった。

リンク: アッヴィのプレスリリース

RPE65網膜ジストロフィーの遺伝子療法がEUでも承認
(2018年11月23日発表)

ノバルティスは、EUがLuxturna(voretigene neparvovec)を両アレルRPE65調停性遺伝性網膜ジストロフィーの治療薬として承認したと発表した。20万人に一人の希少疾患で、視力低下や失明をもたらす。Luxturnaは増殖しないよう操作したアデノ随伴ウイルスをベクターにしてRPE65遺伝子を導入する、in vivo遺伝子治療。米国では昨年12月に承認。スパーク社の開発品で、ノバルティスは米国外での開発販売権を持っている。

リンク: ノバルティスのプレスリリース


【医薬品の安全性】


FDA、ジレニア中止後の症状悪化を警告
(2018年11月20日発表)

FDAはGilenya(fingolimod、和名ジレニア/イムセラ)の安全性情報を発出した。投与を中止した後に多発性硬化症の病状が大きく悪化するリスクがある、というもの。米国で承認されて以来の8年間で35例が報告されている。治療前の状態よりも悪化した事例もあるようだ。転帰は回復6例、部分的回復17例、回復せずあるいは永続的障害が8例。副作用や効果不足により投与を中止する場合は十分に注意し患者にもリスクを伝えるよう勧告している。

リンク: FDAの安全性情報





今週は以上です。

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