2018年11月4日

2018年11月4日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • SB623の外傷性脳損傷試験が成功 
  • BMSのアタッチメント阻害剤がヴィーヴでデビューへ 
  • サノフィ、デング熱ワクチンを米国でも承認申請 
  • FDA諮問委員会、産後鬱治療薬の承認を支持 
  • ローブレナ、米国でも承認 
  • キイトルーダ、扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療承認 
  • EUがbcl-2阻害剤とrituximabの併用を承認 
  • イクスタンジ、EUでハイリスクnmCRPCに承認 


【新薬開発】


SB623の外傷性脳損傷試験が成功
(2018年11月1日発表)

サンバイオは、SB623の第二相外傷性脳損傷(TBI)試験で主目的を達成したと発表した。日米の医療施設でTBIから12ヶ月以上経ち安定的な運動障害を被る患者をSB623の三用量群とシャム(穿孔だけ)に無作為化割付して24週後のFugl-Meyer運動スケールの変化を比較したところ、試験薬(三群プール)は平均8.7低下し、シャム群の2.4低下と有意な差があった。

このスケールは関節を動かす能力などを夫々0、1、2の3段階で評価する。同社によると、TBIの障害部位は患者によって区々だが、もし歩行障害だとすると、8ポイントの差は歩けなかった患者が歩けるようになった位の差を示唆するという。

SB623は他家骨髄間葉系幹細胞に神経成長に係るNotch-1の細胞内ドメインの遺伝子を導入したもの。障害部位の近くに頭蓋内投与する。20年1月期までに日本で再生医療等製品として承認申請する予定。

SB623は慢性期脳梗塞でも第二相試験中で、この用途は北米の共同開発販売権を大日本住友製薬が保有している。日本の同用途の権利は帝人が保有していたが今年2月に返還された。

リンク: サンバイオのプレスリリース(pdfファイル)

BMSのアタッチメント阻害剤がヴィーヴでデビューへ
(2018年10月31日発表)

ヴィーヴ・ヘルスケアは、fostemsavirの第三相試験の48週データを発表した。HIV/AIDSで6種類の抗ウイルス剤クラスのうち4種類以上に耐性、不耐、かつまた禁忌の患者を組入れて、最適なバックグランド・セラピーとfostemsavirを投与したところ、48週ウイルス抑制成功率(<40コピー/mL)が54%(272人中146人)となった。CD4陽性T細胞数は139個/mL増加。一方、深刻な有害事象が35%の患者で発生。7%が有害事象を理由に中止した。ヴィーヴは19年に承認申請する考え。

16年にBMSから取得した抗HIV薬パイプラインの一つで、アタッチメント・インヒビターtemsavirのプロドラッグ。HIVエンベロープのgp120に結合してウイルスがCD4陽性T細胞に結合・侵入するのを妨げる。BMSのアタッチメント・インヒビターに関する長年の研究が、GSKと塩野義製薬、ファイザーのHIV合弁会社であるヴィーヴによって、結実することになる。

リンク: ヴィーヴのプレスリリース

【承認申請】


サノフィ、デング熱ワクチンを米国でも承認申請
(2018年10月30日発表)

サノフィは、デング熱ワクチンDengvaxiaを米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は来年5月1日。

デング熱は蚊が媒介するデングウイルス感染症で、東南アジアや中南米の一部、米国領ではプエルトルコやヴァージン・アイランドで風土病となっている。感染しても症状が出るとは限らない一方で、重篤なデング出血を合併することもある。

Dengvaxiaは弱毒化黄熱病ウイルスに4血清型全てのデングウイルスの抗原を導入した生ワクチンで、08年に買収したAcambisがセントルイス大学のライセンスに基づいて開発した。15年のメキシコを皮切りに幾つかの国で販売承認され、フィリピンでは無料キャンペーンで70万人以上が接種したが、16年になって、未感染者が接種すると感染した時の病状が重くなるリスクが顕在化。政府がサノフィに損害賠償を求める事態になった。

「キプロスの蜂」と呼ばれる現象と同じような話である模様だ。デングウイルス感染は二回目の感染時に免疫機構がパニックを起こして過敏反応してしまうことがあり、ワクチンが初めての暴露である患者でも、同じことが起きる可能性がある。分からないことも多く、一回目と二回目の血清型が異なると発生しやすいとか、誘導された抗体力価が特定の水準以上である場合が危険とか、様々な指摘がされている。

WHOは抗体検査で陽性だった人だけに接種するよう勧告している。10月に肯定的意見をまとめたEUのCHMPも同様。武田が行っているTAK-003(DENVax)の第三相試験も同様。

リンク: サノフィのプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、産後鬱治療薬の承認を支持
(2018年11月2日発表)

FDAの精神薬理学薬諮問委員会と薬品安全リスク管理諮問委員会の共同会議は、Sage Therapeutics(Nasdaq:SAGE)が難治性産後鬱治療薬として承認申請したZulresso(brexanolone)を検討し、18人の委員のうち17人が承認を支持した。薬効は18人全員、安全性は16人が支持した。

米国では年40万人が産後鬱を経験すると言われている。Zulressoはニューロステロイドであるallopregnanoloneの特許性製剤で、GABA-A受容体の陽性アロステリック調整作用を持つ。60時間点滴静注した第三相試験では、HAM-DトータルスコアやCGI-Iが偽薬比有意に改善した。

意外なのは、140人の投与実績のうち6人で失神・前失神・意識喪失が見られたこと。乳児を抱かないようにしたり、速やかに対処できるよう投与完了後数時間経つまで監視を受ける必要があり、リスク評価・緩和戦略が導入される。

同社は類似した作用機序を持つ経口剤を開発、鬱病治療薬として第三相試験を開始する予定で、日本では塩野義製薬がライセンスした。失神リスクは作用機序に伴うものである可能性があるので、現在進行中の第二相産後鬱試験の結果を注視したい。経口剤なら患者は自由に行動できる。意識喪失が起きた時の転倒や交通事故のリスクが高いので、安全性の要求水準が高くなる。

リンク: Sageのプレスリリース


【承認】


ローブレナ、米国でも承認
(2018年11月2日発表)

ファイザーは、Lorbrena(lorlatinib、和名ローブレナ)がFDAにALK陽性転移性非小細胞性肺癌用薬として承認されたと発表した。同社のXalkori(crizotinib)を含む二剤以上のALK阻害剤歴を持つ場合、あるいはAlecensa(alectinib)またはZykadia(ceritinib)による一次治療歴を持つ患者が適応になる。ファイザーはXalkoriを第一世代、他社の二品を第二世代、そしてLorbrenaは第三世代と呼んでいる。日本では9月に承認。

臨床試験では32%の患者で深刻な有害事象が発生した。肺炎、呼吸困難、発熱、精神状態変化、呼吸不全などだ。致死的有害事象の発生率は2.7%だった。

リンク: ファイザーのプレスリリース

キイトルーダ、扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療承認
(2018年10月30日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab)を扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療にcarboplatin及びpaclitaxel(nab-paclitaxelでも可)と併用する適応拡大がFDAに承認されたと発表した。Keytrudaの適応はPD-L1検査値との関係が複雑だが、今回の適応では不問とされた。

KEYNOTE-407試験に基づくもので、三剤併用群のメジアン生存期間は15.9ヶ月、二剤だけの標準療法群は11.3ヶ月、ハザードレシオ0.64と良好な成果を上げた。治療関連有害事象による死亡は各群10人(3.6%)と6人(2.1%)だった。

リンク: MSDのプレスリリース

EUがbcl-2阻害剤とrituximabの併用を承認
(2018年11月1日発表)

ロシュは、Venclyxto(venetoclax、米国名Venclexta)を再発性難治性CLL(慢性リンパ性白血病)の再発治療薬としてMabThera(rituximab、米国名Rituxan)と併用する適応拡大がEUに承認されたと発表した。

ジェネンテックがアッヴィと共同開発・販売している経口bcl-2阻害剤。rituximab併用でbendamustineとrituximabを併用する標準療法と全生存期間を比較したところ、ハザードレシオが0.48、有意な差があった。効果は高いが副作用リスクも高いので注意が必要。

ロシュは、持病を持つCLLの初度治療にVenclyxtoとGazyva(obinutuzumab)を併用した第三相CLL14試験の成功も発表した。PFS(無進行生存期間)がchlorambucilとGazyvaを併用した標準療法群を有意に上回った。データは学会で発表する考え。適応拡大申請を行う考え。

リンク: ロシュのプレスリリース(EU承認)
リンク: 同(一次治療試験成功)

イクスタンジ、EUでハイリスクnmCRPCに承認
(2018年10月29日発表)

アステラス製薬は、経口アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤Xtandi(enzalutamide)をハイリスクのnmCRPC(非転移性去勢抵抗性前立腺癌)に用いる適応拡大申請がEUに承認されたと発表した。

PROSPER試験に基づくもので、未だ転移はしていないがPSA値が急上昇(10ヶ月以内の期間に倍増)している高リスク患者をXtandi群と偽薬群に2対1割付して無転移生存期間を比較したところ、メジアン36.6ヶ月対14.7ヶ月、ハザードレシオ0.29、p<0.001だった。

リンク: アステラスのプレスリリース(pdfファイル)







今週は以上です。

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