【ニュース・ヘッドライン】
- ノバルティス、ルセンティスを未熟児網膜症に適応拡大申請へ
- JNJ、FGFR阻害剤を尿路上皮種に承認申請
- 兎製ヒトC1エステラーゼインヒビターの予防用途は審査完了に
- CHMPが網膜遺伝子治療などに肯定的意見
【新薬開発】
ノバルティス、ルセンティスを未熟児網膜症に適応拡大申請へ
(2018年9月22日発表)
ノバルティスは、抗VEGF抗体フラグメントのLucentis(ranibizumab)を未熟児網膜症の治療に用いた第三相試験の結果をEuropean Society of Retina Specialistsの学会で発表した。惜しくもフェールしたが奏効率自体は良いものであり、安全性も踏まえて、米国で適応拡大申請する考え。
このRAINBOW試験は26ヶ国の医療施設で225人の患者を組入れ、0.1mg群と0.2mg群の24週奏効率を標準療法であるレーザー手術と比較した。結果は各群75%、80%、66.2%となり数値上は上回ったが、p値は0.0254と、閾値の0.025を下回った(二種類の用量をテストしたため多重性を回避するためにアルファの0.05を半分ずつ配分したのだろう。
低出生体重児は網膜の血管が異常成長し網膜剥離に至るリスクがある。状況が悪い場合は周辺の網膜細胞をレーザーで治療するが、将来的に眼鏡による矯正が必要になる可能性がある。また、新生児に全身麻酔を施行すると脳細胞に悪影響を及ぼすことがある。
加齢性黄斑変性などの治療薬として承認されているLucentisは硝子体注射なので感染症などのリスクを伴う。RAINBOW試験のプロトコルは明らかではないが、もし全身麻酔を施行したなら、そのリスクは大差ないことになる。
一番の問題は、長期的な転帰が明らかではないことだ。ノバルティスは長期延長試験を実施して2022年に結果を分析する考えだ。
リンク: ノバルティスのプレスリリース
【承認申請】
JNJ、FGFR阻害剤を尿路上皮種に承認申請
(2018年9月18日発表)
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、JNJ-42756493(erdafitinib)をFDAに承認申請したと発表した。想定適応は、局所進行性・転移性尿路上皮種で特定のFGFR変異を持ち、化学療法後に進行した患者。第二相単群試験では反応率が42%だった。
汎FGFR阻害剤で、08年にAstex Therapeutics(現在は大塚グループ)から世界開発販売権を取得したもの。このFGFR変異は尿路上皮種の1~2割が該当する模様だ。今年3月に第三相実薬対照試験が開始された。
リンク: JNJのプレスリリース
【承認審査・委員会】
兎製ヒトC1エステラーゼインヒビターの予防用途は審査完了に
(2018年9月19日発表)
ファーミング(Euronext:PHARM)はFDAにRuconest(conestat alfa)を遺伝性血管浮腫の発作予防に用いる適応拡大を申請していたが、審査完了通知を受領した。薬効のエビデンスが小規模な第二相試験二本だけで不十分とみなされた模様だ。
遺伝性血管浮腫は3万人に一人の希少疾患で、補体系免疫炎症反応に係るC1インヒビターの欠損により皮膚や小腸、口腔、喉に痛みを伴う浮腫が発生する。Ruconestはトランスジェニック技術を用いてウサギの乳腺に遺伝子組換え型ヒトC1インヒビターを分泌させ、ミルクから回収するもの。米国では14年に発作治療薬として承認されたが、予防のほうが市場性が高い。
リンク: ファーミングのプレスリリース
CHMPが網膜遺伝子治療などに肯定的意見
(2018年9月21日発表)
EUの薬品審査機関であるEMAの科学的評価委員会、CHMPは、9月の会合で、スパーク・テラピュティクス(Nasdaq:ONCE)の遺伝子治療などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。
リンク: EMAのプレスリリース
スパーク社のLuxturna(voretigene neparvovec)は両アレルRPE65調停性遺伝性網膜ジストロフィーの成人小児を適応とする遺伝子療法。20万人に一人の希少疾患で、視力低下や失明をもたらす。Luxturnaは増殖しないよう操作したアデノ随伴ウイルスをベクターとしてRPE65遺伝子を導入する。米国では昨年12月に承認。米国外の開発販売はノバルティスが行う。
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ノバルティスのプレスリリース
次に、イーライリリーのEmgality(galcanezumab)はCGRP(calcitonin gene-related peptide)中和抗体。片頭痛の予防に用いる。第三相間欠性片頭痛試験では、月間片頭痛日数の減少が4~5日と偽薬群より2日前後少なかった。月一回皮注で、オートインジェクターも用意されている。
リンク: イーライリリーのプレスリリース
Melinta Therapeutics(Nasdaq:MLNT)のVabomere(meropenem、vaborbactam)はカルバペネム系のベータラクタムと、クラスAとクラスCのベータラクタマーゼを阻害する新クラスの化合物の合剤で、カルバペネム耐性菌対策になることが期待される。適応は昨年8月に承認された米国より広く、複雑腹腔内感染症、複雑尿路感染症、院内感染肺炎/人口呼吸器関連肺炎、菌血症など。
昨年、Medicines Companyから買収したRempex Pharmaceuticalsの開発品。
リンク: Melintaのプレスリリース
バイエルのJivi(damoctocog alfa pegol)はPEG化遺伝子組換え型血液凝固第VIII因子で、A型血友病の出血治療と高リスク患者の予防に用いる。米国は今年8月、日本でも今月、承認された。予防に用いる場合は週二回投与だが、管理良好なら5日毎に減らすことが可能なようだ。
リンク: バイエルのプレスリリース
協和発酵キリンのPoteligeo(mogamulizumab、和名ポテリジオ)はCCR4を標的とするヒト化抗体で、全身治療歴を有する成人の菌状息肉腫やセザリー症候群に用いる。
リンク: 協和発酵キリンのプレスリリース(和名)
武田薬品のAlunbrig(brigatinib)はALK陽性の末期非小細胞性肺癌に用いる。crizotinib不応不耐の二次治療試験も、crizotinib対照一次治療試験も成功したALK阻害剤の一つ。
MSDのPifeltro(doravirine)は非核酸系の逆転写酵素阻害剤(NNTRI)。HIV/AIDSの多剤併用療法に用いる。合剤のDelstrigo(doravirine、lamivudine、 tenofovir disoproxil)も肯定的意見を得た。他のNNTRIと交叉耐性がある。米国では8月に承認。
リンク: MSDのプレスリリース
適応拡大で肯定的意見を得たのは、まず、アステラス製薬/ファイザーのXtandi(enzalutamide)。用途は高リスク非転移性去勢抵抗性前立腺癌。
次に、Exelixis(Nasdaq:EXEL)が開発し日米以外ではイプセン(Euronext:IPN)が開発販売するVEGFR阻害剤、Cabometyx(cabozantinib)。用途は、肝細胞腫。Nexavar(sorafenib)による一次治療の次に使う。
アッヴィがジェネンテックと共同開発販売するbcl-2阻害剤、Venclyxto(venetoclax)は、rituximabと併用で慢性リンパ性白血病の二次治療に用いることが支持された。
リンク: アッヴィのプレスリリース
さて、Sarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)はExondys(eteplirsen)をデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬として承認申請し、米国ではFDA上層部の鶴の一声で承認されたが、EUはCHMPが否定的意見を出した。Sareptaは再審査請求したが、今回、同じ結論になった。
ジストロフィンの発現と運動機能の改善は必ずしもリンクしないため、6分歩行テストなどで運動機能改善効果を確認すべきだが、Exondysの試験では偽薬比有意な差がなかった。
日本新薬はNS-065を別のタイプのデュシェンヌ型筋ジストロフィー用途で開発しているが、第二相試験の運動機能分析結果が10月に海外の学会で発表される予定だ。Sareptaの二の舞になるかどうか、注目される。
リンク: Sareptaのプレスリリース
今週は以上です。
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