2025年7月12日

第1215回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • EMBARK試験でイクスタンジ追加の延命効果確認 
  • Cogent社、c-KIT阻害剤の承認申請向け試験が成功 
  • 大鵬薬品、InqoviをAMLに適応拡大申請 
  • MSD、日本発の抗HIV-1薬を承認申請 
  • JNJ、Caplytaの統合失調症再燃予防データをsNDA 
  • ハンター症候群用薬を承認申請 
  • ウゴービ高量をEUで承認申請 
  • UltragenyxのMPS IIIA遺伝子療法は審査完了 
  • Capricor社のDMD細胞療法も審査完了 
  • ケサンラの用量漸増法が変更 
  • 経口カリクレイン阻害剤がやっと承認 
  • テビムブラがEUで鼻咽頭癌に適応拡大 
  • 乳児用マラリア治療薬がスイスで承認 
  • PRAC、チクングニア熱ワクチンの高齢者接種停止を解除へ 
  • PRACがクロザピンの検査負担を緩和、バルプロ酸の父性催奇性をさらに検討 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


EMBARK試験でイクスタンジ追加の延命効果確認
(2025年7月10日発表)

ファイザーは、アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤Xtandi(enzalutamide)がEMBARK試験で延命効果を示したと発表した。既に欧米では承認されている用法だが、普及に向け追い風になりそうだ。

この試験は、前立腺癌の根治的全摘/放射線療法を受けた後に、PSA値が9ヶ月で倍増などの生化学的リスク因子が現れたホルモン感受性前立腺癌を対象に、leuprolideと併用する便益などを検討した。5年MFS(無転移生存期間)率が83.5%とleuprolide・偽薬併用群の71.4%を上回り、ハザード・レシオは0.42だった。副次的評価項目のXtandi単剤投与群とleuprolide・偽薬群の解析もハザード・レシオ0.63で成功した。このデータに基づき、米国では23年に、EUでも24年に、単剤・併用共に承認された。

今回、併用群の全生存期間解析がポジティブな結果になり、単剤投与群も上回るトレンドが示されたようだ。数値は未公表。参考までに、23年に治験成績がAUA(米国泌尿器学会)やNew England Journal of Medicineで発表された時に示された全生存期間の中間解析値は、併用群のハザードレシオが0.59(95%信頼区間0.38-0.91)、p=0.02(中間解析に割り当てられたアルファは0.0001なので有意とは言えない)、単剤群は0.78(同0.52-1.17)、p=0.23だった。

リンク: 同社のプレスリリース


Cogent社、c-KIT阻害剤の承認申請向け試験が成功
(2025年7月7日発表)

Cogent Biosciences(Nasdaq:COGT)は、CGT9486(bezuclastinib)が第2相非進行性全身性肥満細胞症試験で主評価項目と主要副次的評価項目を達成したと発表した。年末に承認申請する考え。

主目的のTSS(全般的症状尺度)は24週間の治療で24.3点低下、偽薬群の15.4点低下を有意に上回った。先行他社の肥満細胞症試験と異なり、Mastocytosis Symptom Severity Daily Diaryに基づいて評価しているため、効果を見比べることはできない。副次的評価項目のうち血清トリプターゼ(肥満細胞活性化のバイオマーカー)半減奏効率は各群87.4%と0%だった。有害事象は毛髪変色や味覚異常、悪心、ALT/AST上昇など。深刻有害事象の発生率は各群4.2%と5.0%で大差ない。治療関連有害事象による離脱率は5.9%、全てALT/AST上昇によるもので全例解消した。

第3相GIST(消化管間質腫瘍)試験や承認申請向け進行肥満細胞症試験の結果も年内に判明する見込み。

KIT D816V変異などエクソン17変異型にも活性を持つc-KIT阻害剤。第一三共の子会社だったPlexxikonからライセンスしたKiq LLCが、20年7月にUnum Therapeutics(Nasdaq:UMRX)の庇を借りて母屋を乗っ取り、10月に現社名に変更した。

リンク: Cogent社のプレスリリース

【承認申請】


大鵬薬品、InqoviをAMLに適応拡大申請
(2025年7月10日発表)

大鵬薬品はInqovi(decitabine、cedazuridine)の適応拡大申請がFDAに受理されたと発表した。成人の強化寛解導入療法不適な新患急性骨髄性白血病(AML)にvenetoclax(アッヴィのベネクレクスタ)と併用するもの。本剤はシチジンデアミナーゼ阻害剤と合剤にすることでDNAメチル化阻害剤decitabineの経口投与を可能にしたもので、venetoclaxも経口剤なので利便性がある。審査期限は26年2月25日。

北米やスペインの施設で実施されたASCERTAIN-V試験の後期第2相ポーションで、101人のうち46.5%が完全寛解を達成した。メジアン生存期間は15.5ヶ月だった。有害事象による治験離脱率は8.9%。60日死亡率は9.9%で、今年のEHA(欧州血液学会)発表に関わる一部報道によると、疾病進行による死亡が3人、有害事象による死亡が7人だった。

大鵬はエーザイから導入して開発し、20年に米国でMDS(骨髄異形成症候群)とCMML(慢性骨髄探求性白血病)に承認取得した。EUでは承認されなかったが、23年に薬物動態試験に基づき標準的寛解導入療法不適な新患AMLに単剤投与する用途に、Inaqovi名で、承認された。

リンク: 同社のプレスリリース


MSD、日本発の抗HIV-1薬を承認申請
(2025年7月10日発表)

MSDは米国でMK-8591A(doravirine、islatravir)を承認申請し受理されたと発表した。成人のHIV-1感染症で、抗レトロウイルス療法によりウイルスを抑制できている患者がスイッチするもの。審査期限は26年4月28日。

18年に欧米で承認された非ヌクレオシド逆転写阻害剤Pifeltroの活性成分と、新開発・新作用機序のヌクレオシド系逆転写酵素トランスロケーション阻害剤islatravirの固定用量合剤。一錠を一日一回経口投与するだけで足りる。Biktarvy(bictegravir/emtricitabine/tenofovir alafenamide)からスイッチする便益を検討した試験でも、様々な併用レジメンからスイッチした試験でも、RNA量が50コピー/mLを上回るようになってしまった患者の比率が治験前と同じレジメンを継続投与した群と非劣性だった。

islatravirは横浜薬科大の大類洋博士らがヤマサ醤油と満屋裕明国立国際医療研究センター研究所長と共同研究開発したもの。ウイルスのDNA鎖に紛れ込んで伸長を妨げる。半減期が長く、週一回投与も可能となるはずだったが、MK-8507(ulonivirine)と併用した試験でリンパ球数やCD4+T細胞が減少してしまう現象が見られ、FDAが治験停止を命じたことがある。その時点でMK-8591Aの第3相は二本が成功していたが、新たに、islatravirの用量を0.25mgと1/3に減らして追加第3相を実施、上記の成果を上げた。二本とも、総リンパ球数やCD4カウントの変化は対照群と大差なかったようだ。

リンク: MSDのプレスリリース


JNJ、Caplytaの統合失調症再燃予防データをsNDA
(2025年7月8日発表)

ジョンソン エンド ジョンソンは、Caplyta(lumateperone)の統合失調症継続投与試験、304試験のデータをFDAにsNDA(追加的承認申請)した。19年に統合失調症の急性期治療薬として承認された時に課された市販後試験の一つで、Caplyta投与に応答した患者を継続投与群と偽薬スイッチ群に無作為化割付けして26週間追跡し、症状再燃までの期間を比較したもの。ハザード・レシオは0.37、偽薬群は38.6%が再燃を経験したのに対して、継続投与群は16.4%だけだった。他の統合失調症治療薬と同様に、急性期を脱した後も治療を続ける便益が明らかになった。

4月に子会社化したIntra-Cellular TherapiesがBMSからライセンスして開発した、選択的5-HT2A受容体アンタゴニスト。米国で双極性障害IまたはIIの鬱症状の治療にも承認されており、昨年12月には、鬱病にも適応拡大申請された。

リンク: JNJのプレスリリース


ハンター症候群用薬を承認申請
(2025年7月7日発表)

米国カリフォルニア州のDenali Therapeutics(Nasdaq:DNLI)は米国でDNL310(tividenofusp alfa)を承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年1月5日。

ハンター症候群(MPS II)の酵素補充療法。患者で欠乏するIDS(iduronate-2-sulfatase)を、トランスフェリン受容体などの輸送体に結合する装飾Fc領域と細胞融合して、血管脳関門通過性を持たせたもの。日本で21年に承認されたJCRファーマのイズカーゴ(パビナフスプアルファ)と似ている。

欧州米州の第1/2相試験で47人24週間投与したところ、脳脊髄液中のヘパラン硫酸が90%低下し、全員が正常またはそれに近い水準に低下した。このデータで加速承認を取得し、進行中の第2/3相COMPASS試験(ヘパラン硫酸やVineland Adaptive Behavior Scaleの変化を武田/シャイア/ジェンザイムのElaprase(idursulfase)と比較)で本承認切替を図る。

リンク: 同社のプレスリリース


ウゴービ高量をEUで承認申請
(2025年7月8日発表)

ノボ ノルディスクは肥満症治療薬Wegovy(semaglutide)の高量版をEUで承認申請したと発表した。他地域での申請状況は不明。

GLP-1作用剤Wegovy/Ozempicの最大承認用量は、肥満症/リスク因子を持つオーバー・ウェイトの治療では2.4mg、二型糖尿病では2mg。同社は肥満症のSTEP UP試験と肥満且つ二型糖尿病のSTEP UP T2D試験で7.2mgの体重管理効果を偽薬と72週に亘り比較したところ、共同主評価項目の体重減少率と5%減量奏効率が、trial product estimandベース(試験対象の効果を知るためにプロトコル順守例/順守期間だけを解析)でも、treatment policy estimandベース(実医療における便益を知るために投与中止例なども含めて解析、米国のレーベルにはこちらのデータが収載される)でも、有意に上回った。7.2mg群は2.4mg群と比べても数値が上回った。胃腸有害事象の発生率は2.4mgと大差無さそうだが、T2D試験ではジセステジア(異常感覚)の発生率が7.2mg群は18.9%、2.4mg群は4.9%、偽薬群は0%となった。尚、二型糖尿病の血糖管理に関しては2.4mgと大差無さそうだ。

図表:セマグルチド高量試験の体重減少率

7.2mg群2.4mg群偽薬群
STEP UP試験
treatment policy estimandベース18.7%15.6%3.9%
trial product estimandベース20.7%17.5%2.4%
STEP UP T2D試験
treatment policy estimandベース13.2%10.4%3.9%
trial product estimandベース14.1%10.7%3.6%
出所:各種資料から作成


リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


UltragenyxのMPS IIIA遺伝子療法は審査完了
(2025年7月11日発表)

Ultragenyx Pharmaceutical(Nasdaq:RARE)はUX111(rebisufligene etisparvovec)をMPS IIIA(Sanfilippo症候群A型)用薬として加速承認するようFDAに申請していたが、審査完了通知を受領した。CMC(化学、製造、管理)に関わる指摘があった。臨床成績や治験実施施設の査察に関わる指摘事項はなかった由。対処して早期に再承認申請する考え。

患者で欠乏するSGSH(N-sulfoglucosamine sulfohydrolase)遺伝子をAAV9ベクターを用いて中枢神経組織などに導入し、欠乏によるグリコサミノグリカンの蓄積を防ぐもの。臨床試験で脳脊髄液ヘパラン硫酸を抑制する作用などを示した。Abeona Therapeutics(Nasdaq:ABEO)からライセンスした。

尚、審査期限は8月18日だった。

リンク: 同社のプレスリリース


Capricor社のDMD細胞療法も審査完了
(2025年7月11日発表)

Capricor TherapeuticsはCAP-1002(deramiocel)をデュシェンヌ型筋ジストロフィー用薬としてFDAに承認申請していたが、審査完了通知を受領した。薬効確認不十分と判定されたようだ。CMC(化学、製造、管理)に関わる追加データも提出したが審査が間に合わなかった模様。104人を組入れた第3相試験が進行中で、同社のロサンジェルス施設製造品を用いたコフォートAは既に結果が出た模様だが成否は未公表、サンディエゴ施設品のコフォートBは今四半期中の開票の予定で、成功なら再申請する考え。

心筋を含む他家心細胞塊由来の細胞医療製品。分泌されるエクソソームが、酸化ストレス・炎症・線維化の低減や筋細胞生成の増加を促し、運動機能や心機能を改善すると考えられている。第2相HOPE-2試験で上腕機能低下を伴う20人を組入れて偽薬または1.5億セルを3ヶ月毎に4回点滴静注したところ、PUL(上腕機能)が偽薬比有意に改善した。自然歴対照試験も実施された。6月に連邦官報の事前公表版で7月30日の諮問委員会に上程されることが明らかになったが、直ぐに取り消された。

日本新薬が米国や日欧などでの販売権を保有している。

尚、審査期限は8月31日だった。期限前に承認された事例は少なくないが、1ヶ月以上残して審査完了通知を、しかも2案件連続で、出すのは異例のように感じる。もしかしたら、長官が審査担当センターの評価の妥当性を検討する時間を確保するために、あるいは、承認審査を1~2ヶ月で終わらせる新しい制度の導入を前に、従来より早く審査を進めるよう促しているのだろうか?

リンク: 同社のプレスリリース

【承認】


ケサンラの用量漸増法が変更
(2025年7月9日発表)

イーライリリーは、FDAがアルツハイマー性軽度認知障害・軽度認知症の治療薬Kisunla(donanemab-azbt)の投与スケジュール変更を承認したと発表した。ARIA-E(アミロイド関連画像異常-浮腫)の発生率低下が見込まれる。

24年に米国で承認された時の投与スケジュールは、最初の3回は700mg(350mgバイアル二本)、4回目以降は維持用量の1400mgと二段階漸増だった。新用法は、350mg、700mg、1050mg、そして1400mgと細かく漸増するもの。3種類の投与スケジュールを承認用法と比較した後期第3相TRAILBLAZER-ALZ 6試験で、新用法はARIA-E発生率が16%と承認用法の25%を下回った。高リスク遺伝子型であるApoE4ホモ接合型では各24%と57%だった(但し各群21人とサンプル数が小さい)。ARIA-H(アミロイド関連画像異常-出血)の発生率は25%対28%で有意差なし。ApoE4ホモ接合型では29%対48%だったが有意水準には達していない(レーベル記載値・・・学会/論文発表値とはやや異なる)。

他の安全性評価項目は大差なかった。薬効指標であるアミロイド・プラク減少量も大差なかった。

尚、他の漸増法をテストした2群におけるARIA-E発生率は18%台だった。

リンク: 同社のプレスリリース


経口カリクレイン阻害剤がやっと承認
(2025年7月7日発表)

米国のカルビスタ ファーマシューティカルズ(Nasdaq:KALV)は、FDAがEkterly(sebetralstat)をHAE(遺伝性血管浮腫)の治療薬として承認したと発表した。12歳以上の患者が急性発作を起こした時に600mg(300mg錠2個)を経口投与する。急性期治療用の経口剤は初めて。第3相KONFIDENT試験で症状緩和までの時間が偽薬比有意に短かった。有害事象は頭痛など。禁忌は重度肝障害やCYP3A4の中高度インデューサー/高度インヒビター併用。

PDUFA(処方薬ユーザー課金法)に基づく審査期限は6月17日だった。一部報道によると、遅延したのは、Marty Makary FDA委員長が理由を明らかにしないまま審査担当部署の意見を覆し審査完了通知を出す方向で圧力をかけたためだという。

欧州や日本(科研製薬がライセンス)でも承認申請中。

リンク: 同社のプレスリリース


テビムブラがEUで鼻咽頭癌に適応拡大
(2025年7月10日発表)

BeOne Medicines(Nasdaq:ONC)はEUでTevimbraが鼻咽頭癌に適応拡大したと発表した。成人の、根治切除/放射線療法が適応にならない転移/難治鼻咽頭癌の一次治療に、gemcitabine及びcisplatinと併用する。5月にCHMPを通過していたが、当方が報告し落としてしまった。

中台タイの施設で実施された第3相無作為化割付け二重盲検試験、RATIONALE-309の中間で、PFS(無進行生存期間)のメジアン値が9.2ヶ月とgemcitabine・cisplatin・偽薬併用群の7.4ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.52、統計的に有意だった。

FDAは専ら中国で実施された試験の信憑性に懐疑的だが、EUはエビデンスとして受け入れている模様で、Tevimbraは今回の承認で適応対象が5種類の臓器の癌に拡大した。

リンク: 同社のプレスリリース


乳児用マラリア治療薬がスイスで承認
(2025年7月8日発表)

ノバルティスは、Coartem Baby/Riamet Babyがスイスで承認されたと発表した。Marketing Authorization for Global Health Products制度に基づきアフリカの8ヶ国(Burkina Faso、Côte d'Ivoire、Kenya、Malawi、Mozambique、Nigeria、Uganda、そしてTanzania)やWHOも審査に参加しており、ノバルティスがこれら8ヶ国で申請すれば90日以内の承認が見込まれる。

Medicines for Malaria Ventureと共同で開発した急性非複雑性マラリア感染症治療薬。2009年に米国で承認され、2016年に日本で、2019年12月にはスイスでも承認された。経口投与できる点が長所。米国では生後2ヶ月以上且つ体重5kg以上が適応。スイスでは体重5kg以上が適応だったが、今回の新製剤の承認で2kg以上5kg未満の患者も治療できるようになった。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: Swissmedicのプレスリリース

【医薬品の安全性】


PRAC、チクングニア熱ワクチンの高齢者接種停止を解除へ
(2025年7月11日発表)

EMA(欧州薬品庁)のファーマコビジランス委員会、PRACは、Valneva(Euronext Paris:VLA)の弱毒化生チクングニア熱ワクチンIxchiqの高齢者接種停止を解除すると発表した。フランスや米国で接種後にチクングニア熱感染症や脳炎を発症した症例が報告されたため、殆どを占めた65歳以上の接種を4月にフランスが停止、5月にはPRACも暫定的な措置として禁止していたが、チクングニア感染時のリスクが高くワクチンの便益が大きいのもこの年齢層であることから、解除を決めた。感染リスクが高い人が便益と危険を十分に検討した上で接種する。免疫低下者は従来通り禁忌。

米国でも5月にFDAとCDC(疾病管理予防センター)が65歳以上の接種停止を勧奨する考えを示したが、どうなっただろうか?尚、5月時点では深刻有害事象数は17例、うち2人死亡と発表されていたが、今回、28例、3人死亡に増加した。世界の累計接種数は43400回。

リンク: PRACのプレスリリース


PRACがクロザピンの検査負担を緩和、バルプロ酸の父性催奇性をさらに検討
(2025年7月11日発表)

PRACは向精神薬clozapineに関する規制を一部緩和することを決めた。また、抗癲癇薬valproateに関して、新しい研究結果が出たため検討を継続することを明らかにした。

clozapineは1960年代に登場し、従来の向精神薬に十分応答しない統合失調症にも有効な非定型向精神薬として重宝されたが、深刻な好中球減少リスクがあるため、定期的にANC(好中球絶対数)検査を行う必要がある。深刻な好中球減少症の発生時期は治療開始後1年、特に最初の18週間がほとんどなので、今回、PRACは、検査頻度を1年経ったら12週毎、2年経過後は年1回に減らすことを決定した。

発売から30年以上経ち、副作用監視や発生時の対処法が浸透したことなどから、医療従事者や患者の負担を一部緩和する動きが他国でも出ている。米国では今年2月にREMS(リスク評価緩和戦略)が解除され、ANC検査の頻度は治療開始後6ヶ月経ったら2週毎、1年経ったら月一回、に変更された。

valproateは癲癇や双極障害、国によっては片頭痛にも承認されている。胚胎毒性を持つが、この薬にしか反応しない患者もいるので、完全な妊婦禁忌にはなっていない。今回俎上に上がっているのは、精子を通じて胚胎移行するリスク。EMAはvalproate製剤の承認の条件として市販後に神経発達障害などのリスクを他の抗癲癇薬(lamotrigineまたはlevetiracetam)と比べる後顧的観察的試験を実施するよう求めた。IQVIAが受託してデンマーク、ノルウェー、スエーデンの患者登録データを集計解析したところ、修正ハザード・レシオが1.50(95%信頼区間1.09-2.07)となったため、昨年1月にPRACが予備的注意勧告を行った。

ところが、Christensenらがデンマークだけのデータを用いて父親がvalproateに曝露したグループとそうでないグループの比較を行ったところ、修正ハザード・レシオは1.10(同0.88-1.37)となった。修正前の数値は1.59(1.28-1.96)だが、父親が精神疾患、などの交絡因子を調整すると有意性が失われた。ということは、valproateのリスクではなく病気自体、あるいは同じ疾病の薬全般のリスクである可能性も否定できないことになる。今年5月に刊行されたlamotrigine・levetiracetam曝露例との比較研究ではハザード・レシオは修正前で0.99、修正後で1.02と大差なかった。

PRACは検討を継続する考え。

リンク: PRACのプレスリリース
リンク: Christensenらの試験論文(JAMA Network Open、2024年)
リンク: 同(同、2025年)

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
25/7推JNJのDarzalex Faspro(daratumumab w/hyaluronidase、くすぶり型多発性骨髄腫)
25/7/20ロシュのColumvi(glofitamab-gxbm、DLBCL2次治療)
25/7/22ReplimuneのRP1(vusolimogene oderparepvec、進行黒色腫)
25/7/23GSKのBlenrep(belantamab mafodotin-blmf、多発骨髄腫)
25/7/29PTC TherapeuticsのPTC923(sepiapterin、フェニルケトン血症)
25/7/30Regeneron PharmaceuticalsのREGN1979(odronextamab、濾胞性リンパ腫)
25/8推バイエルのBAY3427080(elinzanetant、血管運動神経症状)
25/8推インサイトのZynyz(retifanlimab-dlwr、肛門扁平上皮癌に適応拡大)
25/8推ベーリンガー・インゲルハイムのBI 1810631(zongertinib、her2変異非小細胞性肺癌)
25/8/8LENZ TherapeuticsのLNZ100(aceclidine、老視)
25/8/12InsmedのINS1007(brensocatib、気管支拡張症)
25/8/15Tonix PharmaceuticalsのTNX-102 SL(cyclobenzaprine舌下錠、線維筋痛症)
25/8/18Chimerix(Nasdaq:CMRX)のONC201(dordaviprone、難治H3-K27M変異びまん性グリオーマ)
25/8/19PTCセラピューティクスのPTC-743(vatiquinone、フリードライヒ運動失調症)
25/8/19Regeneron PharmaceuticalsのEyelea(aflibercept、網膜静脈閉塞症後の黄斑浮腫に適応拡大)
25/8/21Ionis Pharmaceuticalsのdonidalorsen(遺伝性血管浮腫)
25/8/27PrecigenのPRGN-2012(zopapogene imadenovec、難治呼吸器乳頭腫症)
25/8/27Saol TherapeuticsのSL-1009(sodium dichloroacetat、ピルビン酸脱水素酵素複合体欠乏症)
25/8/29サノフィのSAR444671(rilzabrutinib、免疫性血栓性血小板血症)
25/8/31エーザイのLeqembi(lecanemab、早期アルツハイマー病の皮下注用追加)
諮問委員会
25/7/17ODAC:GSKのBlenrep(belantamab mafodotin-blmf、多発骨髄腫)
25/7/18PPDAC:大塚製薬のRexulti(brexpiprazole、PTSD追加)



今週は以上です。

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