【ニュース・ヘッドライン】
- アムジェン、抗FGFR2b抗体の第3相が成功
- モデルナ、mRNA型インフルエンザワクチンの予防試験が成功
- コセンティクスの巨細胞性動脈炎試験はフェール
- MSD、エアウィンのアウトカム試験データを承認申請
- JNJ、EUでAkeegaをHRR変異型ホルモン感受性前立腺癌に適応拡大申請
- Regeneronの抗BCMAxCD3も承認
- 中華EGFR阻害剤が承認
- 抗IFN-gamma抗体がスティル病によるHLH/MASに適応拡大
- 二種類のADHD治療薬の6歳未満における体重減少リスク
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【新薬開発】
アムジェン、抗FGFR2b抗体の第3相が成功
(2025年6月30日発表)
アムジェンはbemarituzumabが第3相試験の中間解析で主目的を達成したと発表した。全生存期間が統計的に有意且つ臨床的に意味のある延長を見せた。
21年にFive Prime Therapeuticsを19億ドルで買収して入手した、FGFR(線維芽細胞増殖因子受容体)2bに結合する抗体。このFORTITUDE-101試験はFGFR2bが過剰発現しher2は陰性の進行胃・胃食道接合部(G/GEJ)癌で一次治療を受ける患者を組入れて、mFOLFOX6レジメンに追加する便益を偽薬追加群と比較した。FGFR2b過剰発現の定義は、セントラルラボにおけるIHC(免疫組織染色)法検査で腫瘍の10%以上で2+または3+。進行G/GEJ癌の16%程度が該当するとのこと。試験薬はmFOLFOX6の投与スケジュールに合わせて2週毎に15mg/kgを投与した(但し、第1サイクルは第8日にも7.5mg/kgを投与)。
データは未公表。類似した内容の第2相FIGHT試験では副次的評価項目である全生存期間のハザードレシオが0.58(メジアンは未達対偽薬追加群12.9ヶ月)、上記のFGFR2b過剰発現の定義に該当するサブグループ96人における事後的解析では0.41(25.4ヶ月対11.1ヶ月)だった。
特徴的な治療時発現有害事象は視力の低下、点状角膜炎、角膜上皮欠損、ドライ・アイなど眼の異常で、発生率だけではなく重症度も偽薬追加群を上回った。貧血、好中球減少症、悪心なども増加した。
もう一本、mFOLFOX6またはCAPOXにOpdivo(nivolumab)を追加するレジメンに更に追加して全生存期間の延長を図る第3相も進行中。どちらも日本の施設も参加している。
リンク: 同社のプレスリリース
モデルナ、mRNA型インフルエンザワクチンの予防試験が成功
(2025年6月30日発表)
モデルナは、mRNA-1010が第3相P304試験で主目的を達成したと発表した。先に成功したP303試験と合わせて、承認申請に向けて当局と相談する考え。
mRNAベースの季節性インフルエンザ・ワクチン。今回の試験は欧米韓台の施設で50歳以上の40805人を組入れて、インフルエンザ様疾患のリスクを既存の標準用量インフルエンザ・ワクチンと比較した。rVE(相対的ワクチン効率)が26.6%(95%信頼区間16.7-35.4%)と有意に上回った。3種類の対応株におけるrVEも各22~29%、65歳以上においては27.4%、などなど、各種サブグループ分析も成功的な結果になった。
一本目のP303試験では65歳以上を組入れて当時のスタンダードであった4価ワクチンの免疫原性をサノフィのFluzone HD(高量版)と比較した。何れもGMT(幾何平均抗体価)や抗体陽転率が4ウイルス型それぞれに関して有意に上回った。ワクチンに付き物の有害事象は増加した。
同社はCOVID-19ワクチンとの二種混合ワクチンmRNA-1083を24年に承認申請したが、トランプ政権下のFDAにP303試験だけでは不十分と見なされ、撤回した。臨床的な便益を確認できたので、本命となるべきmRNA-1083の承認にも視野が開けたのではないか。
リンク: 同社のプレスリリース
コセンティクスの巨細胞性動脈炎試験はフェール
(2025年7月3日発表)
ノバルティスは、抗IL-17A抗体Cosentyx(secukinumab)の第3相GCAptAIN試験で主目的を達成できなかったと発表した。成人の新患または再発性の巨細胞性動脈炎患者を偽薬、150mg、または300mg群に無作為化割付けして、ステロイド・テイパリング(用量漸減)を進めながら52週間投与し、300mg群の持続的寛解率を偽薬群と比較したが、期待は実現しなかった。副次的評価項目のステロイド累積投与量やステロイド関連毒性は数値上、減少した(偽薬群はステロイドを52週かけて漸減し中止を目指したのに対して、試験薬群は26週かけて漸減・中止を目指すプロトコル)。
Cosentyxは米国などで乾癬性関節炎、中重度尋常性感染、強直性脊椎炎、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎、化膿性汗腺炎、付着部関連関節炎、若年性脊椎関節炎に承認されている。
巨細胞性動脈炎は頭部などの動脈で炎症が発生し様々な症状が出る希少疾患。上記と同様なステロイド・テイパリング試験に基づき中外/ロシュの抗IL-6受容体抗体Actemra(tocilizumab)やアッヴィのJAK1阻害剤Rinvoq(upadacitinib)が米欧日で承認されている。
リンク: ノバルティスのプレスリリース
【承認申請】
MSD、エアウィンのアウトカム試験データを承認申請
(2025年7月2日発表)
MSDは肺動脈高血圧症(PAH)治療薬Winrevair(sotatercept-csrk)のレーベルにZENITH試験のデータを追加すべくFDAに承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は10月25日。
21年にAcceleron Pharma(Nasdaq:XLRN)を115億ドルで買収して入手した、ActRIIA(activin receptor type IIa) とIgG1の融合蛋白。24~25年に米、EU、日本で成人の肺動脈高血圧症(WHOグループI)用薬として承認された。適応範囲は若干異なっており、EUはエビデンスとなった第3相STELLAR試験の組み入れ条件に即してWHO機能クラスIIとIIIに限定、日本も同IとIVにおける有効性及び安全性は確立していないと注記したのに対して、FDAは限定しなかった。
ZENITH試験は標準療法を受けているWHO機能クラスIIIとIVの患者で死亡リスクが高いと推測される患者を組入れて、Winrevairを追加する便益を検討したもの。STELLAR試験の主評価項目が6分歩行距離であるのに対して、全死亡/肺移植/PAHによる24時間以上の入院という臨床的に重大な転帰を評価した。結果は、メジアン10.6ヶ月追跡の中間解析で発生率が17.4%と偽薬群の54.7%を下回り、ハザードレシオ0.24と有意に抑制された。副次的評価項目の全死亡も7人対13人、ハザードレシオ0.42となったが、成功認定の閾値には到達しなかった。
STELLAR試験でも副次的評価項目である死亡/臨床的悪化のハザードレシオが0.16で有意だった。ZENITHで再現されたことから、機能クラスIIとIIIで進行リスクが中高度の、PAH診断から1年以内の患者を組入れた第3相HYPERION試験も打ち切られた。
リンク: MSDのプレスリリース
JNJ、EUでAkeegaをHRR変異型ホルモン感受性前立腺癌に適応拡大申請
(2025年7月3日発表)
ジョンソン エンド ジョンソンはEUでAkeega(niraparib、abiraterone acetate)の適応拡大を申請したと発表した。成人のHRR(相同組換え修復)変異型転移性ホルモン感受性前立腺癌にprednisone(同)と併用する適応を追加する。第3相AMPLITUDE試験でrPFS(放射線学的無進行生存期間)がabiraterone acetate・prednisone(同)併用群を有意に上回り、ハザード・レシオは0.63だった。被験者の2~3割を占めたBRCA変異型では0.52と更に大きな差があった。全生存期間のハザード・レシオは各0.79と0.75で正しい方向を指しているが未だ有意差は出ていない。
転移性ホルモン感受性(去勢感受性)前立腺癌は転移したがホルモン療法に対する応答性は失われていない状態。その25%程度でHRR変異が見られ、更にその半分はBRCA遺伝子の変異。
abirateroneはCYP17阻害剤。テストステロンの合成を阻害する。同社のZytigaの活性成分。niraparibはPARP1/2阻害剤。MSDから権利を取得して開発しZejula名で発売までに漕ぎ着けた、Tesaro社(後にGSKが買収)から日本以外の市場で前立腺癌における開発販売権を取得し合剤として開発、23年にEUと米国で成人のBRCA有害変異型転移去勢抵抗性前立腺癌にprednisone(またはprednisolone)と併用する用途用法で初承認されている。日本は武田薬品が開発販売権を保有しているが、今回の適応で開発しているかどうかは不明。
リンク: JNJのプレスリリース
【承認】
Regeneronの抗BCMAxCD3も承認
(2025年7月2日発表)
FDAはRegeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)のLynozyfic(linvoseltamab-gcpt)を加速承認した。BCMAとCD3に結合する二重特異性抗体で、成人の難治・再発多発骨髄腫で、プロテアソム阻害剤、IMiD(lenalidomideなどの免疫調停薬)、そして抗CD38抗体を含む4次以上の治療歴を持つ患者が適応になる。LINKER-MM1試験で4次以上の治療歴を持つ80人のサブグループにおけるORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)が70%となり、その72%は12ヶ月時点でも反応を維持していた。
上記試験は3次以上の治療歴を持つ患者を組入れており、intent-to-treatベースのORRは71%と、上記のサブグループ解析と大差ない。EUでは4月に3次以上に条件付き承認された。なぜ米国は3次治療患者を除外したのか、理由は明らかではない。全例などから考えられるのは、組入れ数が僅少だったのかもしれない。
枠付き警告はサイトカイン放出症候群(G3以上の発生率は1%未満)とICANS(免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群、G3/4の8%)。先行するCAR-T療法や二重特異性抗体はこれらの副作用に関するREMS(リスク評価緩和戦略)が、不要化されたところで、FDAの方針が変わったのかと思われたが、Lynozyficは課せられた。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: (参考)BMSのREMS解除等に関するプレスリリース(6/26付)
中華EGFR阻害剤が承認
(2025年7月2日発表)
FDAはDizal (Jiangsu) Pharmaceutical(SHEX:688192、迪哲医药)の選択的不可逆的EGFR阻害剤Zegfrovy(sunvozertinib)を加速承認した。成人の白金薬ベースの化学療法中または終了後に進行した、EGFR遺伝子にエクソン20挿入変異のある局所進行/転移非小細胞性肺癌に単剤投与する。中国、米国、日本、韓国などの施設が参加した第2相WU-KONG1B試験で200mgを一日一回、食事と共に経口投与した85人におけるcORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)が46%、メジアン反応持続期間は11.1ヶ月だった。警告注意事項は間質性肺疾患/肺臓炎、胃腸系有害事象、皮膚有害反応、眼毒性、胚胎毒性。コンパニオン診断薬としてLife TechnologiesのOncomine Dx Express Testも承認された。
第3相WU-KONG28が市販後薬効確認試験を兼ねると推測される。日本は参加していないようだ。
中国では上記第2相に基づき23年8月に条件付き承認された。
リンク: FDAのプレスリリース
抗IFN-gamma抗体がスティル病によるHLH/MASに適応拡大
(2025年6月28日発表)
Swedish Orphan Biovitrum(STO:Sobi)は、FDAがGamifant(emapalumab-lzsg)の適応拡大を承認したと発表した。18年に新生児以上の小児・成人における難治性、再発性、進行性、または従来療法不耐の原発性HLH(血球貪食リンパ組織球症)に承認されたガンマ・インターフェロンに対する抗体で、今回、新生児以上の小児・成人のスチル病(疑い例や全身性若年性特発性関節炎を含む)患者におけるコルチコステロイド不十分応答/不耐のHLH/MAS(マクロファージ活性化症候群)あるいは再発性MASに用いることができるようになった。
欧州では18年に原発性HLH用途で承認申請されたが、症例数が少なく薬効評価も難しいとして、CHMP(医薬品科学的評価委員会)が否定的に評価した。
リンク: 同社のプレスリリース
【医薬品の安全性】
二種類のADHD治療薬の6歳未満における体重減少リスク
(2025年6月30日発表)
FDAはamphetamineおよびmethylphenidateの延長放出製剤に関してレーベル変更を行うと発表した。ADHD治療薬として承認されているが、6歳未満の患者に投与すると体重減少を齎すリスクがあるため。6歳未満には承認されていないが、医師は自分の判断で処方することが可能なので、Limitation of Useセクションに曝露が高まり有害反応発生率が高まる旨を記載する。既に4製品のレーベルには記載済みだが、他の製品の薬物動態試験でも同様な懸念が確認されたため、全製品のレーベルに追加すべく製薬会社に要請中。
6歳未満にも承認されている即放性製剤ではこのようなリスクは見られないとのこと。
リンク: FDAのプレスリリース
【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】
PDUFA | |
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25/6推 | UCBのdoxecitine・doxribtimine併用(チミジン・キナーゼ2欠乏症) |
25/6/17 | KalVista PharmaceuticalsのKVD900(sebetralstat、遺伝性血管性浮腫)・・・遅延 |
25/6/20 | GSKのShingrix(帯状疱疹ワクチンのプレフィルドシリンジ版) |
25/6/30 | Sentynl TherapeuticsのCUTX-101(copper histidinate、メンケス病) |
25/7推 | JNJのDarzalex Faspro(daratumumab w/hyaluronidase、くすぶり型多発性骨髄腫) |
25/7/20 | ロシュのColumvi(glofitamab-gxbm、DLBCL2次治療) |
25/7/22 | ReplimuneのRP1(vusolimogene oderparepvec、進行黒色腫) |
25/7/23 | GSKのBlenrep(belantamab mafodotin-blmf、多発骨髄腫) |
25/7/29 | PTC TherapeuticsのPTC923(sepiapterin、フェニルケトン血症) |
25/7/30 | Regeneron PharmaceuticalsのREGN1979(odronextamab、濾胞性リンパ腫) |
25/8推 | バイエルのBAY3427080(elinzanetant、血管運動神経症状) |
25/8推 | インサイトのZynyz(retifanlimab-dlwr、肛門扁平上皮癌に適応拡大) |
25/8推 | ベーリンガー・インゲルハイムのBI 1810631(zongertinib、her2変異非小細胞性肺癌) |
25/8/8 | LENZ TherapeuticsのLNZ100(aceclidine、老視) |
25/8/12 | InsmedのINS1007(brensocatib、気管支拡張症) |
25/8/15 | Tonix PharmaceuticalsのTNX-102 SL(cyclobenzaprine舌下錠、線維筋痛症) |
25/8/18 | Chimerix(Nasdaq:CMRX)のONC201(dordaviprone、難治H3-K27M変異びまん性グリオーマ) |
25/8/19 | PTCセラピューティクスのPTC-743(vatiquinone、フリードライヒ運動失調症) |
25/8/19 | Regeneron PharmaceuticalsのEyelea(aflibercept、網膜静脈閉塞症後の黄斑浮腫に適応拡大) |
25/8/21 | Ionis Pharmaceuticalsのdonidalorsen(遺伝性血管浮腫) |
25/8/27 | PrecigenのPRGN-2012(zopapogene imadenovec、難治呼吸器乳頭腫症) |
25/8/27 | Saol TherapeuticsのSL-1009(sodium dichloroacetat、ピルビン酸脱水素酵素複合体欠乏症) |
25/8/29 | サノフィのSAR444671(rilzabrutinib、免疫性血栓性血小板血症) |
25/8/31 | エーザイのLeqembi(lecanemab、早期アルツハイマー病の皮下注用追加) |
25/8/31 | Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD) |
諮問委員会 | |
25/7/17 | ODAC:GSKのBlenrep(belantamab mafodotin-blmf、多発骨髄腫) |
25/7/18 | PPDAC:大塚製薬のRexulti(brexpiprazole、PTSD追加) |
今週は以上です。
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