【ニュース・ヘッドライン】
- ACC、GLP-1作用剤を肥満症の第一選択に
- FDA、光速承認プログラムを導入へ
- 癌の血液検査
- ロシュ、ルンスミオとポライビーの併用試験が成功
- 片頭痛予防薬アトゲパントがタイマンでトピラマートに勝つ
- JNJ、タービーとテクベイリの併用が治療の難しい多発骨髄腫に良績
- アッヴィ、ベネクレクスタのMDS試験がフェール
- Aldeyra、ドライ・アイ用薬の3巡目の承認審査を申請
- CHMP、遅発性ジスキネジア用薬などの承認を支持
- デュピクセントが水疱性類天疱瘡に適応拡大
- アルカプトン尿症用薬が承認
- インサイトの抗CD19抗体が濾胞性リンパ腫に適応拡大
- 年二回投与型HIV感染予防薬が承認
- CSL、 アナエブリが米国でも承認
- 抗HCV薬が急性期患者に適応拡大
- エレビジスの歩行不能DMDに対する治療を中止
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【今週の話題】
ACC、GLP-1作用剤を肥満症の第一選択に
(2025年6月10日発表)
ACC(米国心臓学会)は体重管理薬に関するエキスパート・コンセンサス声明を臨床ガイダンスとして発表した。これまでは先ずLSM(食事療法や運動療法による生活習慣改善)を施行して、十分な成果が上がらなかったら薬物療法に進むよう推奨していたが、二種類のGLP-1受容体アゴニスト、ノボ ノルディスク ノルディスクのOzempic/Wegovy(semaglutide)とイーライリリーのZepbound/Mounjaro(tirzepatide)に関しては、LSMと同時に開始して心血管健康管理を最適化するよう推奨した。体重管理薬が長期試験で心血管保護作用を示してもどうしても突破できなかった壁が、遂に取り去られた。管理医療組織も保険還付方針を見直すだろうか?
この二剤は肥満症向けと二型糖尿病向けで米国におけるブランド名が分かれているが、ACCは両方に言及している。体重管理に関するガイダンスだが糖尿病でも同じはず、という示唆だろうか?
リンク: ACCの臨床ガイダンス(JACC DOI: 10.1016/j.jacc.2025.05.024)
FDA、光速承認プログラムを導入へ
(2025年6月17日発表)
FDAは、迅速審査の更に先を行く、CNPV(Commissioner’s National Priority Voucher)プログラムを年内に導入すると発表した。現行の優先審査バウチャ制度や加速承認制度、ローリング承認申請制度と似ているが、大きな違いは、承認審査完了後の目標審査期間が1~2ヶ月と途轍もなく短いことと、バウチャを用いて申請する開発品を企業が選択する場合とFDAが指定する場合があること。前述の各種制度が同時適用されることもある。
以下の何れかを満たすと認められた場合、バウチャが交付される。
・アメリカの公衆衛生上の危機に対応
・より革新的な治療をアメリカ人に提供
・充足されない医療ニーズに対処
・国家安全保障を鑑み国内生産を増強
承認審査期間を短縮するために、製薬会社は臨床成績以外の資料を前倒しで提出し審査を開始できるようにする。CMC(化学、製造、管理)に関する資料とレーベル草案は承認申請完了予定日の60日以上前に提出する。審査期間中はFDAの問い合わせに適切に回答する。FDAは関連部署が同時進行的に審査し、一回だけ開かれる合同会議ですり合わせを行う。
FDAは、データが不十分・不完全であった場合や、試験結果が曖昧である場合、そして、非常に複雑な審査を必要とする場合は、審査期間を延長することができる。
バウチャは2年で失効する。譲渡は認められないが、取得企業が買収されても失効しない。
光速審査の前例としては、COVID-19ワクチンのComirnatyやSpikevaxを承認申請の翌月にEUA(非常時使用認可)した。初年度はa limited number of vouchersを供与すると注記しているので、年に一件、二件のスケール感ではなさそうだ。
リンク: FDAのプレスリリース
癌の血液検査
(2025年6月18日発表)
米国カリフォルニア州のGRAIL(Nasdaq:GRAL)は、Galleri MCED(多種腫瘍早期発見)検査の承認申請用試験、PATHFINDER2が中間解析でポジティブな結果になったと発表した。26年上期にFDAに癌のスクリーニング用血液検査としてPMA(医療機器の市販前承認申請)する計画。
ガイドラインに基づき癌のスクリーニング検査が推奨される、過去3年間に発症していない50歳以上の35,878人を北米の施設で組入れ、マンモグラフィやPSA検査などの標準的な検査と共に施行して、3年間追跡したもの。中間解析は事前計画に基づき最初の25,578人を評価した。PPV(陽性判定の的中度)は43%、特異度(陰性判定の的中度)は99.5%だった。腫瘍発生部位の推定も行ったが、正確性は88%だった。
cfDNA(循環無細胞DNA)のメチル化パターンと癌や発生部位の関係を機械学習させた成果物。先立つPATHFINDER試験では6,621人を検査したところ92人が陽性判定となり、その後の臨床診断で35人が癌と診断された(PPV38%)。うち25人は、ルーチンに実施されるスクリーニング検査が存在しない癌だった。偽陽性は62%と結構高い。特異度は99.1%だった。新しいバージョンを用いて再評価した後顧的試験では、PPVが43%、特異度は99.5%と上向いた。
リンク: 同社のプレスリリース
【新薬開発】
ロシュ、ルンスミオとポライビーの併用試験が成功
(2025年6月20日発表)
ロシュは、抗CD20xCD3二重特異性抗体Lunsumio(mosunetuzumab-axgb)の皮下注用製剤と抗CD79b抗体薬物複合体Polivy(polatuzumab vedotin-piiq)を移植不適な難治/再発大細胞型B細胞リンパ腫の治療に用いた第3相SUNMO試験で主目的を達成したと発表した。PFS(無進行生存期間、独立評価方式)のメジアン値が11.5ヶ月とR-GemOx(rituximab、gemcitabine、oxaliplatinの3剤併用)群の3.8ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.41、12ヶ月PFS率は各群48.5%と17.8%だった。全生存期間の解析は未成熟だが、メジアン18.7ヶ月対13.6ヶ月、ハザードレシオ0.80とまあまあな水準になっている。有害事象はG3/4もG5(致死的)も両群大差なかった。適応拡大に向かう考え。
承認されているLunsumioは点滴静注用で、皮下注用は濾胞性リンパ腫の3次治療以降に欧米で承認申請中。
Polivyは、先ごろ、EHA(欧州血液学会)で第3相POLARGO試験の結果が発表された。R-GemOxに追加した群のメジアン生存期間は19.5ヶ月とR-GemOx群の12.5ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.60だった。G5有害事象の発生率は11.7%対4%で上回った。COVID-19流行期だったため感染を経て死亡した患者がR-GemOx群より多かった模様であり、今日にも当てはまるかどうか分からないが、表面上はLuncumio・Polivy併用のほうが効果も副作用も穏やかなように見える。
同社のColumvi(glofitamab-gxbm、抗CD20xCD3二重特異性抗体)もR-GemOxのrituximabに代替する便益を検討した第3相STARGLO試験が成功し、全生存期間のハザードレシオは0.59、メジアン値は未達、R-GemOx群は9ヶ月だった。但し、欧米の施設における成績は今一つで、5月のODAC(FDAの腫瘍学薬諮問委員会)では患者代表者以外の8名が米国患者に対する便益が確認されたとは言えないと反対した。EUは4月に適応拡大を認めており、評価が分かれている。
このように、ロシュだけでも三種類のレジメンが周承認申請期に達しており、医療従事者や患者にとっては、どう使い分けたら良いのか、三本の試験はどの程度比較可能なのか、比較する術はあるのか、悩まなければならない時期になっている。
リンク: ロシュのプレスリリース
片頭痛予防薬アトゲパントがタイマンでトピラマートに勝つ
(2025年6月18日発表)
アッヴィは、反復性/慢性片頭痛におけるatogepantの発作抑制効果をtopiramateと比較した第3相TEMPLE試験が成功したと発表した。欧州、イスラエル、カナダの施設で月4日以上片頭痛を経験する成人患者545人を組入れて、60mgを一日一回、24週間、経口投与したところ、有害事象による投与中止率が12.1%とtopiramateを50~100mg/日投与した群の29.6%を有意に下回った。6種類の副次的評価項目も成功し、平均月間片頭痛半減奏効率は64.1%と39.3%だった。
atogepantはCGRP受容体拮抗剤。MSDが創製、15年に導出した先のAllerganをアッヴィが19年に買収した。反復性/慢性片頭痛の発症抑制薬として21~25年に米国やEUで承認され、日本でも承認申請中。
リンク: アッヴィのプレスリリース
JNJ、タービーとテクベイリの併用が治療の難しい多発骨髄腫に良績
(2025年6月15日発表)
薬にあまり応答しないタイプの多発骨髄腫にジョンソン エンド ジョンソン・グループの二種類の二重特性抗体を併用した第2相RedirecTT-1試験の成績がEHA(欧州血液学会)で発表された。3種類の主要な薬を既に用いてしまった、真性EMD(髄外疾患)を伴う難治/再発骨髄腫の患者90人を組入れて、抗GPRC5DxCD3二重特異性抗体Talvey(talquetamab-tgvs)と抗BCMAxCD3二重特異性抗体Tecvayli(teclistamab-cqyv)を2週毎皮下注したところ、ORR(客観的反応率、独立評価委員会方式)が78.9%、メジアン反応持続期間は13.8ヶ月だった。54.4%の患者が完全反応。被験者の20%を占めたBCMA標的CAR-T療法歴を持っている患者でもORRは83%と高かった。
忍容性は個々の薬のデータと大きな違いはなかった模様。致死的有害事象の発生率は11.1%で、感染症による5人が薬物関連と判定された。
EMDは骨構造と接触していない軟組織や臓器に形質細胞腫が見られる。この二剤を単剤投与した試験のORRはどちらも4割前後だった由。二剤併用により片方の薬に対するエスケープ回路が生じるのを抑制できたのかもしれない。
Tecvayliは23年に米国で難治再発多発骨髄腫の5次治療に加速承認、EUでは4次治療に条件付き承認、24年には日本でも承認された。Talveyは23年に米国で難治再発多発骨髄腫の5次治療に加速承認、EUで4次治療に条件付き承認、日本は第2部会を通過したところ。
リンク: JNJのプレスリリース
リンク: Kummerらの抄録(EHA 2025、LB4001)
アッヴィ、ベネクレクスタのMDS試験がフェール
(2025年6月16日発表)
アッヴィは、Venclexta(venetoclax)の第3相骨髄異形成症候群(MDS)試験、VERONAで主目的を達成できなかったことを明らかにした。IPSS-R予後推測スコアが3点超などの高リスクな新患約500人を組入れて、azacitidineに追加する便益を偽薬追加群と比べたが、全生存期間のハザードレシオは0.908、p=0.3772となった。
Venclextaは経口bcl-2阻害剤。慢性リンパ性白血病や急性骨髄性白血病に承認されている。米国ではジェネンテックと共同開発販売。
リンク: アッヴィのプレスリリース
【承認申請】
Aldeyra、ドライ・アイ用薬の3巡目合格を目指す
(2025年6月17日発表)
米国の医薬品開発企業、Aldeyra Therapeutics(Nasdaq:ALDX)は、ADX 102(reproxalap)をFDAに修正承認申請したと発表した。3巡目なので、受理後の審査期間は6ヶ月となる。
ADX 102はRASP(反応性アルデヒド種)調節作用を持ち、免疫刺激性を持つ有機アルデヒド遊離体に結合し炎症が促進されるのを妨げる。22年にドライ・アイ治療用点眼剤として承認申請したが、FDAがガイダンス文書で要請している兆候改善試験(目の赤さなどを評価)二本と症状改善試験二本のうち、後者が一本だけであったため、審査完了通知を受領した。追加的チャンバー試験(眼に乾燥した風を当て続けて不快感の変化を偽薬と比較)を実施して24年に修正申請したが、ベースライン値に偏りがあったことなどから、再び審査完了通知を受領した。
今回提出した追加的チャンバー試験はベースライン値に偏りがなく、p値は0.002と前回の0.004より更に向上した。FDA相談を踏まえて、有意差に達しなかった追加フィールド試験のデータは提出していない。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認審査・委員会】
CHMP、遅発性ジスキネジア用薬などの承認を支持
(2025年6月20日発表)
EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。
リンク: EMAのプレスリリース
テバのAustedo(deutetrabenazine)は成人の中重度遅発性ジスキネジアの治療薬。二本の試験で12週間の投与によりAIMS(異常不随意運動尺度)が改善した。有害事象は鎮静、下痢、ドライ・マウス、疲労など。活性成分はVMAT-2阻害剤trabenazineの水素基を重水素で置換して忍容性や作用の持続性を改善したもの。米国では17年にオリジナルの一日二回経口投与用製剤がハンチントン舞踏病と遅発性ジスキネジアに承認、23年に一日一回用延長放出製剤Austedo XRが承認された。EUで承認申請されているのは後者。
リンク: EMAのプレスリリース
Partner TherapeuticsのImreplys(sargramostim)は骨髄抑制量の急性放射線曝露によるH-ARS(造血症状型急性放射線症候群)の治療に例外的環境条項に基づいて承認するよう勧告した。7mcg/kgを一日一回、皮下注射する。米国では1991年にLeukine名で血液癌の化学療法・骨髄移植付随療法として承認され、2018年に今回と同様な適応拡大が認められたが、欧州で承認されれば今回が初となる。記憶があやふやなのでこの機会にChatGPT(無償で使える古いバージョン)に尋ねてみたところ、アメリカ以外で承認されていないのは、商業的・臨床的なニーズの低さ、競合薬の存在、安全性・コスト面の問題、および製薬企業の申請戦略の影響が主な要因とのことだった。
米国のレーベルによると、エビデンスはアカゲザルの全身照射後投与試験。一本では60日生存率が78%と偽薬群の42%を上回り、線量を増やしたもう一本でも61%対17%で上回った。用量は骨髄移植付随療法時の用量とほぼ同じとのこと。
sargramosimは2002年にImmunexからバイエルに、09年にバイエルからジェンザイムに、ジェンザイムを子会社化したサノフィが18年にPartner社に、事業譲渡したもの。今回の用途の開発では米国政府の補助金を得ている(トランプ大統領に告げ口する意図で書いているわけではありません)。
リンク: EMAのプレスリリース
SpringWorks Therapeutics(Nasdaq:SWTX)のOgsiveo(nirogacestat)はファイザーからライセンスした選択的ガンマ・セクレターゼ阻害剤。成人の進行性デスモイド腫瘍に用いる。第3相でPFS(無進行生存期間)や疼痛、身体機能などが改善した。米国では23年に承認。
同社は4月にMerck KGaAに買収されることで合意している。
リンク: EMAのプレスリリース
Madrigal Pharmaceuticals(Nasdaq:MDGL)のRezdiffra(resmetirom)は高度選択的肝臓標的甲状腺ホルモン受容体ベータ・アゴニスト。成人の中等度から進行性までの段階の肝線維症を伴う非肝硬変MASH(代謝異常関連脂肪肝炎)の治療に食事療法や運動療法と共に用いることを条件付き承認するよう勧告した。エビデンスは進行中の第3相試験の52週解析で、この試験と支持的エビデンスとなった試験を完了することが本承認切替の要件。米国では24年3月に加速承認された。
第3相では偽薬群、80mg群、100mg群のMASH奏効率(MASH解消且つ線維症が悪化せず)が各10%、26%、30%で2用量とも偽薬を有意に上回った(22年の会社側発表値)。但し、病理学者による個人差があるようで、米国のレーベルでは各群9~13%、26~27%、24~36%とレンジで記載されている。CHMPのリリースは前者の数値が記されているが、共同主評価項目である線維症奏効率(線維症が改善しMASHは悪化せず)を見ると、会社側発表では各群14%、24%、26%、米国のレーベルでは13~15%、23%、24~28%、CHMPの今回のリリースでは17%、27%、29%と三者三様になっている(点推定値の小さな違いに拘ってもしょうがないが、元々の群間差がすごく大きいわけではないので無視もし難い)。
リンク: EMAのプレスリリース
カナダのExCellThera社の子会社であるCordex BiologicsのZemcelpro(allogeneic umbilical cord-derived CD34- cells, non-expanded/dorocubicel)は臍帯血由来の細胞療法。血液癌で骨髄抑制処理を施行し他家幹細胞移植を必要としているが適合ドナーが見つからない場合に条件付き承認するよう勧告した。臍帯血輸血は必要量を確保するのに苦労することがある。本品はCD34陽性細胞だけ抽出してex vivoで培養し、残ったCD34陰性細胞と共に点滴投与する。第2相試験二本のプール分析で25人中21人がメジアン20日以内に好中球生着を達成、血小板も17人でメジアン40日以内に生着した。移植片宿主病の発生率は急性が60%、慢性は13%。この二本の長期追跡と対照試験やレジストリー試験の実施が条件。
同社は北米などでも承認申請を計画している。
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ExCellTheraのプレスリリース
適応拡大の支持を得たのは、
イーライリリーが早期アルツハイマー病用薬として承認申請したKisunla(donanemab)は、24年に米日が承認したが、CHMPは今年3月に否定的意見を纏めた。深刻なARIA(アミロイド関連画像異常)の発生率が被験者の1.6%で発生し3名が死亡、ApoE4を持たないサブグループに限定しても0.8%と1名で、便益を比べリスクが大きいと判定したため。会社側請求を受け、再審を開始した。4月に開始決定と発表したが、2ヶ月を何に費やしたのだろうか?
【承認】
デュピクセントが水疱性類天疱瘡に適応拡大
(2025年6月20日発表)
Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)と開発販売パートナーのサノフィは、抗IL-4Rアルファ・サブユニット抗体Dupixent(dupilumab)を成人の水疱性類天疱瘡(BP)に治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。経口コルチコステロイド(OCS)と同時に治療を開始し、OCSの用量を漸減しながら疾病寛解を目指した第3相試験で、持続的疾病完解率が18.3%と偽薬・OCS併用群の6.1%を有意に上回った。急性汎発性発疹性膿疱症が1名で発生した(偽薬群はゼロ、各群53人を割付け)。日本やEUでも適応拡大申請中。
リンク: 両社のプレスリリース
アルカプトン尿症用薬が承認
(2025年6月19日発表)
英国のCycle PharmaceuticalsはFDAがHarliku(nitisinone)を成人のアルカプトン尿症用薬として承認したと発表した。この希少疾患は、homogentisate 1,2-dioxygenaseの先天的欠乏によりHGA(ホモゲンチジン酸)が結合組織などで蓄積し、骨関節炎や組織黒変症、腎・心疾患を誘導する。nitisinoneは上流の酵素、 4-hydroxyphenylpyruvate dioxygenaseを阻害し、HGAの生成を大きく抑制する。2mg錠を一日一回経口投与する。NIH(米国立衛生研究所)が主導した40人の臨床試験で1年後の尿HGA量が9割減少した。対照観察群は2倍増した。
活性成分はSwedish Orfanが米国では2002年に遺伝性チロシン血症1型の治療薬Orfadinカプセルとして実用化した。Cycle社は温故知新型の希少疾患用薬会社で、同じ活性成分を含有するNityr錠が17年に米国で遺伝性チロシン血症1型用薬Nityr錠として承認されている。
リンク: Cycle社のプレスリリース
インサイトの抗CD19抗体が濾胞性リンパ腫に適応拡大
(2025年6月18日発表)
FDAは、インサイト(Nasdaq:INCY)のMonjuvi(tafasitamab-cxix)を成人の難治/再発濾胞性リンパ腫に用いる適応拡大を承認した。lenalidomide及びrituximabと併用して、12mg/kgを28日サイクルで最初の3サイクルは毎週、その後の9サイクルは隔週、点滴静注する。成人の抗CD20抗体歴のある成人のCD19陽性、CD20陽性、難治/再発濾胞性リンパ腫と辺縁帯リンパ腫を組入れた第3相inMIND試験で、主評価項目に設定された濾胞性リンパ腫サブグループのPFS(無進行生存期間、担当医評価)が22.4ヶ月とlenalidomide、rituximab、偽薬を投与した群の13.9ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.43だった。深刻有害事象の発生率は33%で、深刻感染症(24%)が中心。辺縁帯リンパ腫には効果がなかったのか、レーベルには臨床試験を除き未承認であることが注記されている。
Monjuviは抗CD19ADCC増強抗体。20~21年に造血幹細胞移植不適な難治/再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に加速/条件付き承認された。
リンク: FDAのプレスリリース
年二回投与型HIV感染予防薬が承認
(2025年6月18日発表)
ギリアド・サイエンシズは、FDAがYeztugo(lenacapavir)をHIV/AIDSの曝露前予防(PrEP)薬として承認したと発表した。体重35kg以上の青少年と成人が適応になる。初日は463.5mg/1.5mLを二回皮下注するとともに、300mg錠を2個経口投与、第2日は300mg錠2個服用、その後は最終皮下注から26週毎に463.5mg二回皮下注を反復する。
南アとウガンダの16-25歳のシスジェンダー女性5300人超を組入れた第3相PURPOSE 1試験では一人も発症せず、外部対照群の100人年当り2.41や、Truvada(tenofovir disoproxil fumarate、emtricitabine)群の1.69を有意に下回った。PrEPに承認されている同社のもう一つの医薬品、Descovy(emtricitabine、tenofovir alafenamide fumarate)を投与した群は同2.02で、外部対照群やTruvada群を有意に下回らなかった。米州、南ア、タイのシスジェンダー男性、トランスジェンダー男女、またはノンバイナリー3200人超を組入れた第3相PURPOSE 2試験では同0.10となり、外部対照群の2.37、Truvada群の0.93を有意に下回った。
活性成分は長期作用性カプシド阻害剤。ウイルスRNAを包む蛋白をライフサイクル上の複数の段階で阻害し、複製を妨げる。22~23年にEU、米国、日本で多剤抵抗性HIV/AIDSの治療薬Sunlencaとして承認された。Yeztugoは投与スケジュールにおける皮下注用と錠剤の使い分けが2種類ではなく1種類で、単剤投与するが、わざわざ製品名を変えたのは、治療に単剤投与する誤用を警戒したのだろうか?
リンク: 同社のプレスリリース
CSL、 アナエブリが米国でも承認
(2025年6月17日発表)
オーストラリアのCSL(ASX:CSL)は、FDAがAndembry(garadacimab-gxii)を12歳以上の遺伝性血管浮腫(HAE)における発作傾向抑制薬として承認したと発表した。オート・インジェクターで200mgを一回(但し、治療開始時は2回)、皮下注し、1ヶ月毎に反復する。自己注可。一巡目の承認審査は審査完了通知に終わったため、2月に承認されたEUや日本より遅れた。
HAEの発症プロセスであるカリクレイン・キニン・カスケードをトリガーする、活性化XII因子を標的とするIgG4ラムダ抗体。生来のC1エステラーゼ・インヒビターが欠乏するHAE患者63人を組入れた第3相試験で平均発作頻度が偽薬比80%以上小さかった。61.5%の患者が発作を経験しなかった(偽薬群はゼロ)。活性化XII因子標的薬がHAEリスク抑制薬として承認されたのは初めて。また、CSLの研究所で誕生した遺伝子組換え型抗体医薬がアメリカで承認されたのも初めて。
競合は、武田薬品の抗血漿カリクレイン抗体、Takhzyro(lanadelumab-flyo)やBioCryst Pharmaceuticals(Nasdaq:BCRX)の経口血漿カリクレイン阻害剤、Orladeyo(berotralstat)。どちらもWAC(問屋調達コスト)ベースで年50万ドル前後の高額医薬だ。
リンク: CSLのプレスリリース
抗HCV薬が急性期患者に適応拡大
(2025年6月11日発表)
アッヴィは、Mavyret(glecaprevir、pibrentasvir)が米国で3歳以上の急性C型肝炎の治療に適応拡大したと発表した。第3相一次治療試験で、一日一回、8週間経口投与し、完了の12週後にSVR(持続的ウイルス学的反応率)を確認したところ、96%と高水準を達成した。
後NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤とNS5A阻害剤の合剤で、17年にEU、米国、日本で遺伝子型1~6のC型肝炎ウイルスによる慢性C型肝炎に承認されている。今回の適応拡大で、治療ガイドラインが推奨する急性期の、無症候性の患者にも使えるようになった。
リンク: 同社のプレスリリース
【医薬品の安全性】
エレビジスの歩行不能DMDに対する治療を中止
(2025年6月15日発表)
Sarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)と米国外における販売権を持つロシュは、 夫々、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)用薬Elevidys(delandistrogene moxeparvovec-rokl)に関するアップデートを発表した。歩行不能な患者に対する治療は即時中止し、臨床試験に関しても、対策を決定してプロトロルに導入するまで、投与を停止する。歩行不能な患者で2人目の急性肝不全による死亡が発生したため。臨床試験は免疫抑制剤の使用などを検討しプロトコルに導入した上で再開する考え。歩行可能な患者では死亡例がなく、投与中止は行わないが、免疫抑制剤併用も視野に入れている模様。
Elevidysは、DMD患者で欠損するジストロフィンに代えて、短縮化したマイクロジストロフィンの遺伝子を導入する遺伝子療法。23~25年に米日で条件付き承認されたが、EUは24年6月に承認申請が受理された後、音沙汰がない。米日は何れも歩行可能な患者が対象だが、対象年齢は米国が4~5歳、日本は申請内容通り3~7歳と食い違った。その後、24年にFDAが一部変更を認め、4歳以上の歩行可能患者向けに本承認、歩行不能患者向けに加速承認した。このように、歩行不能な患者に承認している主要国は米国だけで、欧日は第3相ENVISION試験(歩行不能または、8~17歳の歩行可能なDMD患者が対象;米国の市販後コミットメント試験)など臨床試験に参加している患者だけである。
米国のレーベルには警告注意事項として深刻肝不全が記されている。被験者の殆どは歩行可能患者であり、また、肝障害はアデノ随伴ウイルスを用いる遺伝子療法にありがちな副作用なので、歩行不能患者限定のリスクではないだろう。それなのに歩行不能患者だけ中止/停止するのは、確認されている便益の中心がマイクロジストロフィンの発現増加という代理マーカーだけで、運動能力や日常生活機能の改善が未確認であるため、リスクに見合わないという判断だろう。
尤も、歩行可能な幼児における便益も明確ではない。代理マーカーに基づく23年の加速承認も、24年の対象年齢拡大や歩行不能患者加速承認も、FDAの承認審査担当部署は反対したが、当時のCBER(生物学的製剤評価研究センター)のヘッドであったPeter Marks M.D.が覆したものだ。米日欧における承認やその範囲の食い違いを見ても、評価の難しさが窺われる。
Elevidysはこれまでに900人超に投与され、うち歩行不能患者は140人。後者だけのリスクだとしたら発生率は1~2%ということになるが、前者に無垢とは考えにくいので、0.1~0.2%と考えるべきなのだろう。
リンク: Sareptaのプレスリリース
【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】
PDUFA | |
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25/6推 | UCBのdoxecitine・doxribtimine併用(チミジン・キナーゼ2欠乏症) |
25/6/17 | KalVista PharmaceuticalsのKVD900(sebetralstat、遺伝性血管性浮腫) |
25/6/20 | GSKのShingrix(帯状疱疹ワクチンのプレフィルドシリンジ版) |
25/6/27 | SOBIのGamifant(emapalumab-lzsg、Still病における血球貪食リンパ組織球症/マクロファージ活性化症候群) |
25/6/30 | Sentynl TherapeuticsのCUTX-101(copper histidinate、メンケス病) |
25/7推 | JNJのDarzalex Faspro(daratumumab w/hyaluronidase、くすぶり型多発性骨髄腫) |
25/7推 | Dizal PharmaceuticalのDZD9008(sunvozertinib、Ex20ins NSCLC) |
25/7/10 | Regeneron PharmaceuticalsのREGN5458(linvoseltamab、多発骨髄腫) |
25/7/12 | 第一三共のDS-1062(datopotamab deruxtecan、EGFR陽性NSCLC) |
25/7/20 | ロシュのColumvi(glofitamab-gxbm、DLBCL2次治療) |
25/7/22 | ReplimuneのRP1(vusolimogene oderparepvec、進行黒色腫) |
25/7/23 | GSKのBlenrep(belantamab mafodotin-blmf、多発骨髄腫) |
25/7/29 | PTC TherapeuticsのPTC923(sepiapterin、フェニルケトン血症) |
25/7/30 | Regeneron PharmaceuticalsのREGN1979(odronextamab、濾胞性リンパ腫) |
諮問委員会 | |
25/7/17 | ODAC:GSKのBlenrep(belantamab mafodotin-blmf、多発骨髄腫) |
25/7/18 | PPDAC:大塚製薬のRexulti(brexpiprazole、PTSD追加) |
今週は以上です。
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