2024年12月7日

第1184回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • DS-1062の申請データが明らかに 
  • ノバルティス、ファビハルタのスイッチ試験が成功 
  • 膀胱癌のウイルス療法試験が成功 
  • ゼップバウンドがガチンコで勝利 
  • Relmada社、抗鬱剤が第3相で3連敗 
  • イミフィンジを筋層浸潤膀胱癌に承認申請 
  • ロシュ、抗CD20/CD3抗体をより早期のDLBCLに承認申請 
  • イミフィンジが小細胞性肺癌に適応拡大 
  • Merus社のNRG1標的薬が承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


DS-1062の申請データが明らかに
(2024年12月5日発表)

第一三共はアストラゼネカと共同開発販売している抗TROP2抗体医薬複合体、DS-1062(datopotamab deruxtecan)を米欧日で承認申請中だが、適応範囲が若干異なる。ホルモン受容体陽性her2陰性乳癌は共通するが、欧州では成人の治療歴のある局所進行/転移非扁平上皮非小細胞性肺癌にも申請している。米国でも両適応を求めたが、後者は申請後の全生存期間の解析で対照群のdocetaxelを有意に上回ることができず、結局、11月に申請撤回になってしまった。第一三共は、代わりに、成人の前治療歴(EGFR標的薬を含む)のある局所進行/転移非小細胞性肺癌という初耳の用途で加速承認申請したが、エビデンスとなるデータがESMO Asia 2024で公表された。

第3相TROPION-Lung01の症例のうち、EGFR変異のある39例と、白金薬と分子標的薬による治療歴を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌を組入れた第2相TROPION-Lung05試験のうちEGFRのある78人のプール解析を行ったところ、cORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)が42.7%(完全反応5人、部分反応45人)、メジアン反応持続期間は7.0ヶ月だった。メジアン生存期間は15.6ヶ月だが対照群が設定されていないので参考値。被験者はメジアンで3次治療歴を持ち、82%がアストラゼネカのEGFR阻害剤Tagrisso(osimertinib)を一次治療や再発治療で経験していたが、このサブグループのデータもcORR44.8%、反応持続期間6.9ヶ月と同程度だった。

グレード3以上の治療関連有害事象発生率は23%、特別関心有害事象(作用機序的に特にチェックすべき副作用)に設定された口内炎/口腔粘膜炎が69%で発生したがG3以上は9%だった。G3以上の査読薬物関連間質性肺疾患は発生しなかった。

リンク: 両社のプレスリリース(Business Wire)
リンク: ESMO Asia Congress 2024 - Conference Calendar(LBA7の箇所に抄録あり)


ノバルティス、ファビハルタのスイッチ試験が成功
(2024年12月6日発表)

ノバルティスは経口可逆的B因子阻害剤Fabhalta(iptacopan)の後期第3相APPULSE-PNH試験がポジティブな結果になったと発表した。抗C5抗体(eculizumabまたはravulizumab)による治療を受けてヘモグロビン値が10g/dL以上に維持できている、赤血球輸血も受けなくてすんでいるPNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)患者52人を欧米韓の施設で組入れて24週間投与した試験で、ヘモグロビン値が開始前より改善した。データは学会などで発表する考え。

23~24年に米欧日でPNH用薬として承認された。エビデンスとなった第3相では一本は未治療患者、もう一本は先輩薬であるアレクシオン社の抗C5抗体、Soliris(eculizumab)またはUltomiris(ravulizumab)で治療してもヘモグロビン値が10g/dL以上に回復しない患者を対象とした。そのためか、日本では、抗C5抗体で十分な効果が得られない場合に限定されているが、米欧では限定されなかった。FDAやEUが認めても保険組織や加盟国が保険還元を認めないようなこともあるだろうから意味があるだろう。

リンク: 同社のプレスリリース


膀胱癌のウイルス療法試験が成功
(2024年12月5日発表)

米国カリフォルニア州のCG Oncology(Nasdaq:CGON)はCG0070(cretostimogene grenadenorepvec)の第3相試験成績をSUO(泌尿器癌学会)年次総会で発表した。25年下期に承認申請する考え。

増殖性アデノウイルスにGM-CSFとE2F-1プロモータを結合して免疫刺激性を強化し腫瘍細胞選択発現性を持たせた腫瘍溶解性ウイルス療法。このBOND-003試験は、BCGに応答しなかった高リスク非筋層浸潤上皮内膀胱癌(NMICB CIS)の患者を組入れて、週一回のペースで6回投与し、反応なら維持療法に移行、不応の場合は導入療法を繰り返した。66人の中間解析では完全反応率75.7%、105人の解析では75.2%だったが、今回の110人の解析は74.5%となった。反応持続期間はまだメジアンに未達、24ヶ月反応持続率は56.6%だった。G3以上の治療関連有害事象や治療関連有害事象による投与中止は発生しなかった。

尚、上記はcomplete response at any timeと呼ばれているので、通常の、反応が一定期間持続したものだけをカウントする確認完全反応率とは異なるのかもしれない。

日本ではキッセイ薬品が開発販売権を取得、上記試験に参加している。

リンク: CG Oncologyのプレスリリース


ゼップバウンドがガチンコで勝利
(2024年12月4日発表)

イーライリリーはGLP-1/GIP作用剤Zepbound(tirzepatide)の後期第3相SURMOUNT-5試験で体重低下作用がノボ ノルディスクのGLP-1作用剤Wegovy(semaglutide)を有意に上回ったと発表した。夫々の偽薬対照試験の成績から予想されたことではあるが、直接比較試験で確認したのは意義がある。但し、優越に係わるもう一つの重要な指標である、忍容性の比較は言及されていない。

米国の施設で肥満、または一つ以上の体重関連リスク因子を持つオーバーウェイトで、糖尿病ではない患者751人を組入れたオープンレーベル試験。承認最大用量を目標に滴定し、最大忍容量(Zepboundは10または15mg、Wegovyは1.7または2.4mg)で総計72週間治療したところ、体重が各群20.2%と13.7%低下し、有意な差があった。

尚、この二社が治験成績を発表する時はefficacy estimandベースの数値を主、米国のレーベルに記載されるtreatment policy estimand(treatment regimen estimand)ベースを補足として記述することが多いが、上記の数値は後者で前者は開示されていない。後者は投与を止めたり他剤を追加した症例も最後まで追跡するので、忍容性もある程度反映される。

両剤は用量漸増段階が異なり、Zepboundは2.5mgで開始、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mgと6段階ある。米国のレーベルでは維持用量は5mg、10mg、または15mgを進めているが、上記試験では5mgが欠けている。Wegovyは0.25mgで開始、5段階で15mgに到達し、推奨維持用量は上記試験と同じ1.7mgまたは2.4mg。

リンク: イーライリリーのプレスリリース


Relmada社、抗鬱剤が第3相で3連敗
(2024年12月4日発表)

米国フロリダ州の医薬品開発会社、Relmada Therapeutics(Nasdaq:RLMD)は、REL-1017(esmethadone)の第3相Reliance II試験で独立データ監視委員会が無益認定し、続行しても主目的達成する可能性は低いと判定したことを公表した。第3相は既に二本フェールしており、もう一本がもうそろそろ判明するはずだが、期待しにくい。

methadoneのS異性体でNMDA受容体阻害作用は持つがオピオイド作用は小さい。第3相は初日に75mg、2日目以降は25mgを一日一回経口投与し4週後のMADRS10改善を偽薬と比較したReliance III単剤投与試験とReliance I追加投与試験がフェール。今回は負荷用量なしで追加投与したが、3連敗となった。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


イミフィンジを筋層浸潤膀胱癌に承認申請
(2024年12月6日発表)

アストラゼネカは抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)を米国で筋層浸潤膀胱癌に適応拡大申請し受理されたと発表した。全摘術の前に化学療法と併用で、術後に単独で、投与する。優先審査を受け、審査期限は25年第2四半期。欧日でも申請中。

術前化学療法と比較した第3相NIAGARA試験で、EFS(無イベント生存期間)のハザードレシオが0.68だった。副次的評価項目の全生存期間のハザードレシオは0.75、2年生存率は82.2%、化学療法群は75.2%だった。G3/4やG5の治療関連有害事象発生率は両群大差なかった。

尚、共同主評価項目であるpCR(病理学的完全反応率)は、6月の学会発表時も、今回も、プレスリリースに記されていない。pCR達成なら術後投与は必要か、という議論があったが、データはどうなっているのだろう?

リンク: 同社のプレスリリース


ロシュ、抗CD20/CD3抗体をより早期のDLBCLに承認申請
(2024年12月5日発表)

ロシュは米国でColumvi(glofitamab-gxbm)の適応拡大を申請し受理されたと発表した。一次治療歴を持つ自家造血幹細胞移植不適の再発/難治DLBCL(びらん性大細胞型B細胞リンパ腫)にgemcitabine及びoxaliplatinのレジメンと併用するもの。gemcitabine、oxaliplatin及びrituximabを併用するレジメンと比較した第3相STARGLO試験で全生存期間のハザードレシオが0.59、p=0.011、メジアン値は未達、対照群は9ヶ月だった(23年3月カットオフ値)。審査期限は25年7月20日。

B細胞のCD20と細胞毒性T細胞のCD3を架橋する二重特異性抗体。23年に米欧で、成人の再発/難治DLBCLの3次治療に単剤投与することが加速承認/条件付き承認された。今回、延命効果が確認できたので通常承認に切り替わるのではないか。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認】


イミフィンジが小細胞性肺癌に適応拡大
(2024年12月4日発表)

FDAはアストラゼネカのImfinzi(durvalumab)を限局型小細胞性肺癌に用いることを承認した。同時化学放射線療法を受け疾病安定化以上の応答があった患者の維持療法として持ちいる。抗PD-(L)1抗体がこの用途で承認されたのは初めて。

第3相ADRIATIC試験でメジアン生存期間は55.9ヶ月と偽薬群の33.4ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオ0.73、p=0.01だった。共同主評価項目のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のハザードレシオは0.76、p=0.016だった。G3/4有害事象発生率は両群24%強。

日本でも適応拡大申請中。

リンク: FDAのプレスリリース


Merus社のNRG1標的薬が承認
(2024年12月4日発表)

FDAは、オランダのMerus(Nasdaq:MRUS)のBizengri(zenocutuzumab-zbco)をNRG1遺伝子融合のある非小細胞性肺癌と膵腺腫に加速承認した。全身性治療中または後に進行した進行、切除不能、転移癌が適応になる。単群試験で非小細胞性肺癌64人のcORR(確認客観的反応率)が33%、メジアン反応持続期間は7.4ヶ月、膵腺腫30人ではcORR40%、反応持続期間のレンジは3.7~16.6ヶ月だった。枠付き警告は胚胎毒性、警告事前注意事項は点滴関連反応、間質性肺疾患、左心室機能不全。

NRG1はher3のレガンドであるneuregulin 1の遺伝子で、非小細胞性肺癌や膵臓腺癌の1%前後で他の遺伝子と癌原性融合が見られる。Bizengriはher2とher3に結合する二重特異性抗体で、両受容体のヘテロダイマーカー化を阻害してPI3K/AKT/mTOR経路の活性化を抑制すると共に、抗体依存的細胞毒性を発揮する。米国法人と同じくマサチューセッツ州を本籍とする未上場企業、Partner Therapeuticsが米国単独販売権を持っている。審査期限より2ヶ月早い承認なので上市準備が大変だ。

リンク: FDAのプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
24年12月推Zealand PharmaのZP 1848(glepaglutide、短腸症候群
24年12月推ガルデルマのNemluvio(nemolizumab-ilto、アトピー性皮膚炎)
24年12月BeiGeneのTevimbra(tislelizumab、胃・GEJ腺腫一次治療追加)
24/12/20Lexicon PharmaceuticalsのZynquista(sotagliflozin、一型糖尿病)
24/12/27Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリー症候群)
24/12/28XcoveryのX-396(ensartinib、ALK陽性非小細胞性肺癌)
24/12/29BMSのOpdivo(nivolumab)の皮下注用新製剤
24/12/29Neurocrine BiosciencesのNBI-74788(crinecerfontカプセル、古典的先天性副腎過形成)
24/12/30Neurocrine BiosciencesのNBI-74788(crinecerfont経口液)
25Q1推第一三共のEnhertu(trastuzumab deruxtecan、her2低/極低転移性乳癌追加)
25Q1推アストラゼネカのCalquence(acalabrutinib、未治療マントル細胞腫追加)
25年1月ノボ ノルディスクのOzempic(semaglutide、FLOW糖尿病性腎症アウトカム試験追加)
25/1/2Vertexのvanzaトリプル(vanzacaftor、tezacaftor、deutivacaftor、嚢胞性線維症)
25/1/15Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(リンパ増殖性疾患)
25/1/17アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS G12C変異再発転移結腸直腸癌追加)
25/1/25エーザイのLeqembi(lecanemab、維持用量用量追加)
25/1/29第一三共のDS-1062(datopotamab deruxtecan、HR陽性her2陰性切除不能/転移乳癌)
25/1/29Stealth BioTherapeuticsのelamipretide(バース症候群)
25/1/30VertexのVX-548(suzetrigine 、急性疼痛)
25/1/31Axsome TherapeuticsのAXS-07(急性片頭痛)



今週は以上です。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。