2024年12月21日

第1186回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • ノボの減量用合剤の第3相が成功したが... 
  • MSD、HIV合剤の第3相が成功 
  • Omeros、TA-TMA治療薬を再承認申請へ 
  • 抗IGF-1R抗体の二本目の甲状腺眼症試験が成功 
  • MSD、TIGHTとLAG-3の抗体の開発を中止 
  • GSKの抗PD-1抗体も卵巣癌一次治療試験で延命できず 
  • イムブルビカを欧州でMCL一次治療に適応拡大申請 
  • MSD、抗RSV抗体を承認申請 
  • Zealand社のGLP-2作用剤は承認されず 
  • 皮下注用amivantamabの承認はお預け 
  • オンデキサの本承認切替は成らず 
  • アレモが米国でも承認 
  • 対象患者数が多い嚢胞性線維症用薬が承認 
  • ビラフトビがBRAF-V600E変異大腸癌の一次治療に適応拡大 
  • FDAはGIP/GLP-1作用剤を閉塞性睡眠時無呼吸に承認 
  • 初の家族性カイロミクロン血症候群用薬が承認 
  • ALK阻害剤が承認 
  • テムセルが米国で粘り勝ち承認 
  • ブイタマーが米国でもアトピーに承認 
  • 抗IL-31RA抗体がアトピーに適応拡大 
  • デンマーク薬品庁、EMAにセマグルチドのNAIONリスク評価を要請 
  • FDA、アステラスのVMS用薬の肝毒性を枠付き警告 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


ノボの減量用合剤の第3相が成功したが...
(2024年12月20日発表)

ノボ ノルディスクはCagriSema(アミリン類縁体cagrilintideとGLP-1作用剤semaglutideの固定用量合剤)の最初の第3相肥満症試験の結果を発表した。偽薬比大きく低下したが、会社側が期待していた25%低下には届かなかったため、株価が2割以上下落した。

このREDEFINE 1試験は肥満症やリスク因子を持つオーバーウェートの患者3400人を合剤群(各2.4mg配合)、偽薬群、cagrilintide群、semaglutide群に無作為化割付けして週一回皮下注を68週間反復した。主目的は合剤群と偽薬群の体重減少率と5%削減奏効率。製薬会社にとって重要なtrial product estimandでは体重が各群22.7%、2.3%、11.8%、16.1%低下し、合剤群は偽薬比有意だった。共同主評価項目の25%減量奏効率は各群40.4%、0.9%、6.0%、16.2%で合剤は偽薬比有意。FDAや医療従業者、患者にとって有用なtreatment policy estimandベースの解析では、各群の体重減少率は20.4%、3.0%、11.5%、14.9%だった。25%減量奏効率は言及されていない。有害事象は胃腸系など。

treatment policy estimandは被験者が投与を止めたり、プロトコルで認められている場合は別の薬を追加したりスイッチしたりした後のデータも解析対象にする。試験薬のパワーが十分に反映されなかったり誇張されたりするリスクがあるが、どんなに効果が高くても忍容性が悪くて多くの患者が止めてしまう薬では困るし、現実の医療では、効果が不十分な時は他の薬の追加を検討実施するだろうから、期待値に即したデータを取得できるメリットがある。

効果が若干高く出ることが多いtrial product estimand/efficacy estimandベースでも減量が25%に届かなかった一因は、忍容性のようだ。用量滴定を認めるプロトコルが採用されていたこともあり、68週時点で最大用量を使用していた患者の比率は合剤群が57.3%、cagrilintide群が82.5%、semaglutide群は70.2%だった。

第3相はこのほかに、糖尿病も合併する患者を組入れた試験や、心血管疾患高リスク患者の心血管アウトカム試験、肥満症においてイーライリリーの競合薬Zepbound(tirzepatide)と減量作用を比較する試験などが進行中。semaglutide群をどれだけ上回ることができるか、注目される。

リンク: 同社のプレスリリース


MSD、HIV合剤の第3相が成功
(2024年12月19日発表)

MSDは二種類の逆転写阻害剤の配合錠をテストした第3相HIV/AIDSスイッチ試験二本で主目的を達成したと発表した。初めて治療を受ける患者を組入れた第3相も進行中で、成功なら承認申請に向かおう。

このMK-8591Aは、ヌクレオシド系逆転写酵素転移阻害剤MK-8591(islatravir)と18~20年に米欧日で承認された非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤Pifeltro(doravirine)の活性成分を各0.25mgと100mg配合したもので、HIV/AIDS治療では一般的な3剤以上の併用より1剤少なくなっている。スイッチ試験は他のレジメンでウイルス増殖を抑制できている患者を組入れて一日一回経口投与し、管理失敗(RNA量が50コピー/mL以上に増加)するリスクを一本は従来治療継続群と、もう一本はギリアドのBiktarvy(bictegravir、emtricitabine、tenofovir)と、比較したところ、どちらも非劣性解析が成功した。Biktarvy対照試験は優越性解析も行われたがフェールした。安全性主評価項目(有害事象発生率と有害事象投与打切り率)も達成した。

islatravirは大類洋博士らがヤマサ醤油および、世界初の抗HIV/AIDS薬zidovudineを発見した満屋裕明国立国際医療研究センター研究所長と共同で研究開発したファースト・イン・クラスの開発品。別の非ヌクレオシド系逆転写阻害剤開発品と併用した試験でリンパ球やCD4陽性T細胞の減少が見られためMK-8591Aの臨床試験も一次、停止されたが、主犯は併用薬だった模様で、islatravirの用量(中止された試験では週一回20mg)を減らしてMK-8591Aの第3相を再開した経緯がある。

リンク: MSDのプレスリリース


Omeros、TA-TMA治療薬を再承認申請へ
(2024年12月19日発表)

米国ワシントン州シアトルの医薬品開発会社Omeros(Nasdaq:OMER)は、OMS721(narsoplimab)の自然歴対照試験が良好な結果となったことを発表した。TA-TMA(造血幹細胞移植関連血栓性微小血管症)における治療効果を検討した第3相単群試験の生存期間解析と、患者レジストリーから抽出した100例以上の類似患者データを比較したところ、ハザードレシオ0.32(95%信頼区間0.23-0.44)、p<0.00001だった。EAP(FDAの認可の元に承認前の開発品を患者に供給するプログラム)のデータでも同様な研究を行って、FDAに再承認申請する考え。

OMS721は補体系が活性化する経路の一つであるレクチン経路に介入する、抗MASP-2抗体。20年に承認申請したが、治療効果が確立していないとして審査完了通知を受領、再試験を促された。公式紛争調停手続きを経て、全生存期間の自然歴対照研究などを実施して追加提出することを決めた。

同種幹細胞移植は欧米で年3万件実施されるが、TA-TMAの発生率は4割と推定され、重症例は死亡リスクが高い。承認されている治療薬はないので新薬のニーズは高い。

リンク: 同社のプレスリリース


抗IGF-1R抗体の二本目の甲状腺眼症試験が成功
(2024年12月16日発表)

米国マサチューセッツ州の医薬品開発会社、Viridian Therapeutics(Nasdaq:VRDN)は、VRDN-001(veligrotug)の二本目の第3相試験、THRIVE-2で主目的を達成したと発表した。慢性甲状腺眼症の患者188人を10mg/kgを3週毎点滴静注する群と偽薬群に2対1割付けして15週治療し、眼球突出応答率(突出が2mm以上減少し反対側の目は2mmg以上増加しなかった患者の比率)を比較したところ、各群56%と8%となり大きな差があった。突出減少幅や複視解消率などの解析も成功した。

活性期甲状腺眼症113人を組入れたTHRIVE試験でも眼球突出応答率が70%対5%と大きな差を実現しており、25年下期に承認申請する考え。

米日で承認されている類薬であるHorizon Therapeutics(Nasdaq:HZNP)のTepezza(teprotumumab)は聴力低下が警告・事前注意事項となっている。臨床試験では聴力障害の発生率が10%と偽薬群の0%を上回った。VRDN-001はリスクが小さいことが期待されているが、今回の試験における発生率は12.8%(偽薬群3.2%)、THRIVE試験では16%(同10.5%)と、大きく変わるようには見えない。尤も、偽薬群の発生率がかなり違うので定義が異なる可能性があり、比較すべきではないのかもしれない。

Viridianは、結合部位が同じで半減期を延長した皮下注用のVRDN-003も第3相試験中で、26年上期に成否判明する予定。8週毎または4週毎と投与頻度も低く、オートインジェクターも用意されるので、Tepezzaとの戦いはこちらが担うことになりそうだ。

リンク: Viridian社のプレスリリース


MSD、TIGHTとLAG-3の抗体の開発を中止
(2024年12月16日発表)

MSDは抗TIGHT抗体MK-7684(vibostolimab)と抗LAG-3抗体MK-4280(favezelimab)の開発中止を発表した。どちらもKeytruda(pembrolizumab)との配合剤を用いて第3相試験中だが、前者は進展型小細胞性肺癌一次治療試験と黒色腫術後アジュバント試験に続き、非小細胞性肺癌の一次治療試験二本が中間解析で無益認定され、進行中の同時化学放射線療法併用試験も総合的な判断により中止を決定した。後者は9月に転移結腸癌試験がフェールし、古典的ホジキン型リンパ腫試験の組入れを総合的判断により中止決定した。既に組入れられた被験者は望めば継続投与を受けることができる。

PD-(L)1標的薬の爆発的な成功を受けて、シナジーが期待できるTIGHTやLAG-3標的薬の開発が多くの会社で進められたが、BMSの抗LAG-3抗体relatlimab-rmbwなどを除いて、成功より失敗が目立っている。MK-7684の場合は有害事象による投与中止が比較的多かった模様だ。

リンク: 同社のプレスリリース


GSKの抗PD-1抗体も卵巣癌一次治療試験で延命できず
(2024年12月20日発表)

GSKは進行卵巣癌の一次治療に抗PD-1抗体Jemperli(dostarlimab-gxly)を追加する便益を検討した第3相試験で主目的のPFS(無進行生存期間)を達成したと発表した。偽薬追加群比で統計的に有意に上回ったが、同社がしばしば言及する、『臨床的に意味のある』という形容は記されていない。全生存期間の解析はフェールしており、100点満点とは言えなそうだ。数値は未発表。

この、GSKとフランスの研究者共同治験組織であるGINECOが実施したFIRST-ENGOT-OV44試験は、carboplatinとpaclitaxelによる導入療法と同社のPARP阻害剤Zejula(niraparib)による維持療法の両方にJemperliを追加する群を偽薬追加群を比較した。尚、当初はZejulaと偽薬を比較するための群も設定されたが期中に適応拡大したため打ち切られた。ZejulaはBRCAなどの特徴的な変異を持たない卵巣癌にも承認されているが、エビデンスとなる試験でPFSを達成したものの全生存期間はフェールした。この試験が全群、続行していれば、違った答えが出たかもしれないので、残念だ。

卵巣癌は抗PD-(L)1抗体の苦手分野だ。今月、MSDも、BRCA変異の無い進行卵巣癌の一次治療化学療法試験で、PFSは達成したが全生存期間の解析はフェールしたことを公表している。

リンク: GSKのプレスリリース

【承認申請】


イムブルビカを欧州でMCL一次治療に適応拡大申請
(2024年12月18日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、傘下のJanssen-Cilag InternationalがEUにBTK阻害剤Imbruvica(ibrutinib)の二種変更を申請したと発表した。自家幹細胞移植が適応になる成人の未治療マントル細胞腫における標準的導入療法であるR-CHOPに追加し、自家幹細胞移植(ASCT)に進んだか否かを問わず、維持療法としても2年間単剤投与するもの。Imbruvicaは慢性リンパ性白血病などに承認されており、マントル細胞腫ではEUで再発難治治療に、日本では限定なしに、承認されている。

今回のエビデンスはEuropean MCL NetworkのTRIANGLE試験。18-65歳の870人をR-CHOPまたはR-DHAPによる導入療法後にASCTを施行するA群、これにImbrubicaを追加するA+I群、Imbrubicaを追加しASCTは施行しないI群に無作為化割付けして転帰を比較したもの。分かりやすい指標である3年生存率を見ると、各群86%、91%、92%となっている。主評価項目(フェールなく生存した期間)の解析も似たような結果で、A+I群がA群を上回るという仮説が立証されると共に、A群がI群を上回るという仮説は立証されなかった(むしろI群のほうが数値は良い)。

G3以上の有害事象発生率はA+I群がかなり上回っている。

ASCTをオミットできる選択肢が生まれそうだ。今年のASH(米国血液学会)でも、米国で実施されたやや異なった試験でASCTを割愛できる可能性が示された。ECOG-ACRIN EA4151試験で最初の導入療法によりMRD(微小残存病変)が10のマイナス5乗レベルで陰性となった18~70歳のマントル細胞腫患者500人余をASCT施行後にrituximabによる3年間の維持療法を行う群とrituximab維持療法だけを行う群に無作為化割付けして全生存期間を比較したところ、第3次中間解析で無益水準に達した。intent-to-treatベースのハザードレシオは1.11、3年生存率は82.1%と82.7%、治療を受ける前に離脱した患者を除外した解析でも各1.00、86.2%、84.8%だった。尚、この試験は導入でも維持でもBTK阻害剤はほとんど使われなかった。

抄録(Fenskeら、LBA-6)を読む限りでは非劣性試験では無さそうだし、ASCT群は維持療法開始時期が遅れるだろうからその影響もあるかもしれず、何れにせよ特定の条件下だけに当てはまる話だが、治療成果に応じて選択肢が生まれるのは良いことだ。

リンク: JNJのプレスリリース


MSD、抗RSV抗体を承認申請
(2024年12月17日発表)

MSDはMK-1654(clesrovimab)を0歳児のRSV感染症予防薬としてFDAに承認申請し受理されたと発表した。審査期限は25年6月10日なので、順調なら秋には投与が始まることになる。

RSウイルスのF蛋白に結合するIgG1型抗体。H鎖の一部置換により半減期を延長、シーズンに一回の筋注で足りるようにした。最初のRSVシーズンを迎える健康な早産児や正期産児を組入れた試験では、150日間のRSVによる下部気道感染症受診が偽薬比60%減少した。重度のものに関しては91%減。RSV感染すると重症化するリスクのある最初のRSVシーズンを迎える乳幼児を組入れた試験では、安全性がアストラゼネカの月一回投与型類薬、palivizumabと同程度で、RSV関連株気道感染症受診も同程度だった。尚、アストラゼネカが開発しサノフィが販売しているBeyfortus(nirsevimab-alip)はシーズンに一回の筋注で足りるので、現実の医療では競争相手になる。筆者も付き添ったことがあるが、風邪の患者も多い待合室で月一回とは言え長時間過ごすのは決して良い気分ではない。

リンク: MSDのプレスリリース

【承認審査・委員会】


Zealand社のGLP-2作用剤は承認されず
(2024年12月19日発表)

デンマークのZealand Pharma(Nasdaq:ZEAL)は米国でZP 1848(glepaglutide)を非経口栄養補給を受けている短腸症候群の治療薬として承認申請していたが、審査完了通知を受領した。市販を予定する用量に関するエビデンス不足を指摘されたため、二本目の第3相を実施して再申請する考え。欧州は予定通り25年に、他の地域は二本目の成功後に、申請する予定。

長期作用性GLP-2作用剤で既存類薬である武田薬品のGattex(teduglutide)が一日一回皮下注であるのに対して、第3相では10mg週一回と同週二回の皮下注をテストした。後者は非経口栄養量が偽薬比有意に減少したが前者は若干多く減った程度だった。当然、10mg週二回を承認申請したものと思っていたが、今回の発表を見ると、違うのかもしれない。

リンク: Zealandのプレスリリース(GlobeNewswire)


皮下注用amivantamabの承認はお預け
(2024年12月16日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは抗EGFRxMET二重特異性抗体amivantamabの皮下注用新製剤を欧米で承認申請しているが、米国は審査完了通知を受領した。製造施設の承認前査察で指摘事項があったため。

最近よくある遺伝子組換え型ヒト・ヒアルロニダーゼと組み合わせた製品。EGFRにエクソン19欠損またはL858R置換を持つ局所進行/転移性非小細胞性肺癌を組入れてlazertinib併用時の作用を静注用と比較した第3相PALOMA-3試験で、ORR(客観的反応率)と薬物動態が非劣性、注射箇所反応の発生率は5分の1だった。

リンク: 同社のプレスリリース


オンデキサの本承認切替は成らず

アストラゼネカのAndexXa(inactivated-zhzo)はXa阻害剤を服用している患者が事故や手術などの理由で作用を止めなければならない時の解毒剤として米欧日で承認されている。米欧は加速承認/条件付き承認なので市販後に追加試験で臨床的便益などを確認する必要があり、順調なら本承認に切り替わる見込みだったが、一部報道によると、今回、FDAは本承認切替を認めなかったようだ(アストラゼネカは審査完了通知を受領したと発表していないが、メディアの照会に回答した)。

脳内出血を発症した、apixabanまたはrivaroxabanを服用している患者を組入れたANNEXA-1試験で止血奏効率が67%と通常医療群の53%を上回ったが、11月の諮問委員会資料によると、虚血性脳卒中などの血栓性イベントが増加し、血栓関連死亡率も2.5%と対照群の0.9%を上回った。

【承認】


アレモが米国でも承認
(2024年12月20日発表)

FDAはノボ ノルディスクのAlhemo(concizumab-mtci)を12歳以上のインヒビターを持つA型またはB型血友病のルーチン出血予防薬として承認した。一日一回、皮下注する。臨床試験では年率出血リスが投与しなかった群と比べて86%低下した。有害事象は注射箇所反応や蕁麻疹など。血栓リスクが高まる。

血友病は欠乏する凝固因子の補充療法が有効だが、A型血友病の3割、B型の1割前後で抗体が生じ、無効になる。Alhemoは体内のTFPI(組織因子経路インヒビター)をブロックする抗体で、TFPIが血液凝固第X因子の活性化を妨げるのを防ぐ。日本では23年に承認、今年6月にはインヒビターを持たない患者にも使用が認められた。欧州では10月にCHMPが肯定的意見を纏めた。

リンク: FDAのプレスリリース


対象患者数が多い嚢胞性線維症用薬が承認
(2024年12月20日発表)

米国のVertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)は、FDAがAlyftrek(通称vanza triple、vanzacaftor、tezacaftor、deutivacaftorの合剤)を6歳以上のこの薬に応答する変異を一つ以上保有する嚢胞性線維症の治療薬として承認したと発表した。同社は嚢胞性線維症財団の支援を受けて多くの嚢胞性線維症用薬を開発発売してきた。Alyftrekは5年前に承認されたTrikafta(elexacaftor、tezacaftor 、ivacaftorの合剤)と効果は大差ないが、適応になる変異が多いため米国の対象患者数が推定150人増え、一日二回ではなく一回の経口投与で足り、脂肪接種に制約がない。また、他社に支払う売上ロイヤルティ率が既存製品より低い模様。

リンク: 同社のプレスリリース


ビラフトビがBRAF-V600E変異大腸癌の一次治療に適応拡大
(2024年12月20日発表)

FDAはファイザーの子会社であるArray BioPharmaのBraftovi(encorafenib)をBRAF-V600E変異のある転移結腸直腸癌の一次治療に用いることを加速承認した。抗EGFR抗体cetuximab及びmFLOFOXレジメンと併用で、75mgカプセル4個を一日一回、経口投与する。エビデンスとなるBREAKWATER試験の中間解析でORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)が61%、メジアン反応持続期間が13.9ヶ月となり、cetuximab・mFOLFOX6併用などの標準療法を施行した群の40%、11.1ヶ月を上回った。有害事象は末梢神経症や悪心嘔吐など。リパーゼ上昇や好中球減少も見られた。

試験は続行中で、市販後コミットメントとして、メーカー側はPFSや全生存期間の解析を行って提出する必要がある。

Braftoviは同社のMEK阻害剤Mektovi(binimetinib)と併用でBRAF-V600変異を持つ切除不能/転移黒色腫などに用いることが米欧日で承認されている。

リンク: ファイザーのプレスリリース


FDAはGIP/GLP-1作用剤を閉塞性睡眠時無呼吸に承認
(2024年12月20日発表)

FDAはイーライリリーのGIP/GLP-1作用剤Zepbound(tirzepatide)の適応を成人の肥満患者における中重度閉塞性睡眠時無呼吸に拡大した。カロリー制限や身体運動増加と併用する。標準的治療法であるPAP(気道陽圧療法)を使用している患者としていない患者を組入れたそれぞれの試験でAHI(無呼吸低呼吸指数)が偽薬比大きく減少した。GLP-1作用剤は適応外用途も含めて人気があるためか、FDAのプレスリリースは、便益について16行解説した後、副作用の説明に22行を割いている。

EUではCHMPが、肥満症は既承認用途なので適応拡大は認めないという意見を纏め、治験成績をレーベルに記載するだけに留めるよう求めた。エビデンスとなる試験は肥満症を併発する患者だけを対象にしており、そもそも閉塞性睡眠時無呼吸患者の過半が肥満と言われているので、適応拡大というよりは効能追加と呼ぶ方がしっくり来る。勿論、FDAもCHMPもしっくりと来るかどうかではなく法令に則り判断したのだろうか。

リンク: FDAのプレスリリース


初の家族性カイロミクロン血症候群用薬が承認
(2024年12月19日発表)

FDAはIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)のTryngolza(olezarsen)を家族性カイロミクロン血症候群(FCS)治療薬として承認した。トリグリセライド(TG)の代謝を抑制する、ApoC-IIIの発現を妨げるアンチセンス薬。低脂肪食とともに、80mgを月一回皮下注する。第3相試験では空腹時TG値(ベースライン平均は2630mg/dL)が半年後に偽薬比42.5%低下した。低脂肪食を励行した症例では深刻な合併症である激性膵炎の発生が減少した。主な有害事象は過敏反応などの注射箇所反応や血小板減少など。報道によると、価格は年59.5万ドルで設定される。

同社は欧州などで類薬のWaylivra(volanesorsen)を販売しているが、米国でFCS用薬が承認されたのは他社も含めて初。GalNAc結合技術を採用し、Waylivraより低量、低頻度の投与を実現した。

リンク: FDAのプレスリリース


ALK阻害剤が承認
(2024年12月18日発表)

FDAはXcovery HoldingsのEnsacove(ensartinib)を成人のALK陽性局所進行/転移非小細胞性肺癌用薬として承認した。他のALK阻害剤による治療歴を持たない患者が適応になる。第3相の一次治療試験で、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)が25.8ヶ月と、実薬であるcrizotinibを投与した群の12.7ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.56だった。全生存期間のハザードレシオは0.88だったがp=0.45で有意には成らなかった。有害事象はラッシュ、筋骨格痛、便秘など。

中国では親会社のBetta Pharmaceuticals(貝達薬業)が20年に承認取得している。

リンク: FDAのプレスリリース


テムセルが米国で粘り勝ち承認
(2024年12月18日発表)

FDAはMesoblast(ASX:MSB、Nasdaq:MESO)のRyoncil(remestemcel-L-rknd)を2ヶ月児以上の小児のステロイド抵抗性急性移植片対宿主病(SR-aGVHD)用薬として承認した。承認申請から足掛け4年、日本でJCRファーマがテムセル名で承認を得てから9年を経たが、FDAが要請した追加試験が実現しないまま、承認に至った。

他家間葉系幹細胞を医薬品化したもの。54人の単群試験で28日反応率が70%、うち完全反応は30%、部分反応41%だった。メジアン反応持続期間は54日。有害事象は感染症など。これらの数値は6年前に第3相成績が発表された時の数値と大差ない。

リンク: FDAのプレスリリース


ブイタマーが米国でもアトピーに承認
(2024年12月16日発表)

オルガノンはFDAがVtama(tapinarof)を2歳以上のアトピー性皮膚炎に適応拡大を認めたと発表した。アリル炭化水素受容体モジュレーターのクリーム製剤で一日一回、患部に薄く塗布する。審査期間中に長期延長試験のデータを提出したため審査期間が3ヶ月延長されたが、結局、元々の審査期限の数日遅れで承認された。22年に尋常性乾癬治療薬として承認されている。今回も、枠付き警告や警告・事前注意が無いクリーンなレーベルになっている。

日本ではライセンシーの日本たばこが6月に両適応症で承認を取得した。

リンク: オルガノンのプレスリリース


抗IL-31RA抗体がアトピーに適応拡大
(2024年12月14日発表)

ガルデルマはFDAがNemluvio(nemolizumab-ilto)を12歳以上の中重度アトピー性皮膚炎に適応拡大したと発表した。局所性処方薬に十分応答しない患者に、局所性コルチコステロイド且つ又カルシニューリン阻害剤と併用する。8月に承認された結節性掻痒と一緒に申請されたが、優先審査ではないために今になった。

中外製薬からライセンスしたIL-31受容体アルファに結合する抗体医薬。日本ではマルホがライセンス、ミチーガ名で22年にアトピー用薬として、今年3月には結節性掻痒にも、承認取得した。

リンク: ガルデルマのプレスリリース

【医薬品の安全性】


デンマーク薬品庁、EMAにセマグルチドのNAIONリスク評価を要請
(2024年12月16日発表)

デンマーク薬品庁はEMAのPRAC(医薬品リスク評価委員会)にGLP-1作用剤semaglutideのNAION(非動脈炎性前部虚血性視神経症)リスクを評価するよう要請すると発表した。南デンマーク大学が実施した疫学研究二本でsemaglutideによる治療を受けている糖尿病患者のリスク上昇が見られ、一本ではハザード比が2.81だった。薬品庁が調査したところ、7月から12月10日までに19件の有害事象が報告された。

semaglutideはハーバード大学のコフォート研究でも二型糖尿病患者におけるハザード比が4.28、肥満症患者では7.64だった。

NAIONの罹患率は低く、semaglutide群でも10000人に2人程度のようだ。

リンク: デンマーク薬品庁のプレスリリース


FDA、アステラスのVMS用薬の肝毒性を枠付き警告
(2024年12月16日発表)

FDAはアステラス製薬のVeozah(fezolinetant)の肝臓副作用警告を枠付き警告に格上げした。閉経に伴う中重度血管運動神経症状の治療薬として米欧で承認されているが、市販後も肝臓副作用例が報告されているため。内容は従来とほぼ同じで、処方開始前や初年度は所定のタイミングで肝機能検査を行い、閾値以上なら水準によって投与を中止、または検査頻度を上げる。

肝機能検査値を元に肝障害のリスクを評価する方法としてはHyの法則が有名だが、Veozahの例を見ると、アミノトランスフェラーゼと総ビリルビンのどちらかだけでも大きく上昇した場合は対処が必要なようだ。

リンク: FDAのプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
24年12月BeiGeneのTevimbra(tislelizumab、胃・GEJ腺腫一次治療追加)
24/12/20Lexicon PharmaceuticalsのZynquista(sotagliflozin、一型糖尿病)
24/12/27Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリー症候群)
24/12/29BMSのOpdivo(nivolumab)の皮下注用新製剤
25Q1推第一三共のEnhertu(trastuzumab deruxtecan、her2低/極低転移性乳癌追加)
25Q1推アストラゼネカのCalquence(acalabrutinib、未治療マントル細胞腫追加)
25年1月ノボ ノルディスクのOzempic(semaglutide、FLOW糖尿病性腎症アウトカム試験追加)
25/1/15Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(リンパ増殖性疾患)
25/1/17アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS G12C変異再発転移結腸直腸癌追加)
25/1/25エーザイのLeqembi(lecanemab、維持用量用量追加)
25/1/29第一三共のDS-1062(datopotamab deruxtecan、HR陽性her2陰性切除不能/転移乳癌)
25/1/29Stealth BioTherapeuticsのelamipretide(バース症候群)
25/1/30VertexのVX-548(suzetrigine 、急性疼痛)
25/1/31Axsome TherapeuticsのAXS-07(急性片頭痛)
諮問委員会
25/1/10AADPAC:生化学工業のSI-6603(腰椎椎間板ヘルニアに伴う根性痛)



今週は以上です。

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