2024年11月30日

第1083回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • 懐かしい抗鬱剤のナルコレプシー試験が成功 
  • MSD、Winrevairのもうちょっと重症の試験が成功 
  • トルカブの前立腺癌試験が成功 
  • ASH:インサイトの抗CD19抗体の三剤併用試験 
  • Cassava社、アルツハイマー試験がフェール 
  • Biohaven社、脊髄筋萎縮症の第3相がフェール 
  • ロシュ、抗TIGHT抗体の第3相がまたフェール 
  • GSK、抗BCMA抗体薬物複合体を再承認申請 
  • アムヴトラを心筋症型に適応拡大申請 
  • アルドース還元酵素阻害剤の承認審査が完了 
  • EUでOcalivaの条件付き承認が失効 
  • BridgeBioのTTR安定化剤が承認 
  • FDA、Skysona患者における血液癌症例を検討 
  • EUもアステラスのVMS治療薬の規制強化へ 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


懐かしい抗鬱剤のナルコレプシー試験が成功
(2024年11月26日発表)

Axsome Therapeutics(Nasdaq:AXSM)は、AXS-12(reboxetine)の第3相ナルコレプシー試験、ENCOREが成功したと発表した。先に成功した第3相SUMPHONY試験の被験者のうち68人を組入れて全員に6ヶ月間投与した後に、偽薬スイッチ群と継続投与群に無作為化割付けして3週間の盲検対照試験を行ったところ、週間脱力発作頻度が偽薬群は10.29回増加したが試験薬群は1.32回の増加に留まり、有意な差があった。日中の眠気や集中力評価でも有意差があった。米国で承認申請に向けて当局と相談する考え。同社によると、特許は少なくとも2039年まで有効、希少疾患薬指定を受けているので承認されれば7年間の排他権を獲得できる。

選択的ノルエピネフリン再取込阻害剤。ファルマシアが97年にEUで抗鬱剤として承認取得したが、米国は2回の承認可能通知を経て01年に非承認通知を受領した。Axsomeはファルマシアを03年に買収したファイザーから20年に開発商業化権を取得した。SYMPHONY試験では第5週の週間脱力発作頻度が偽薬群は66%減、試験薬群は83%減で率比は0.49、p=0.18だった。

リンク: Axsome社のプレスリリース


MSD、Winrevairのもうちょっと重症の試験が成功
(2024年11月25日発表)

MSDはWinrevair(sotatercept-csrk)の第3相ZENITH試験の独立データ監視委員会が中間解析で繰上げ終了を勧告したと発表した。オープンレーベル延長試験に移行して、全員が試験薬による治療を受けられるようにする。

WinrevairはactivinのIIa型受容体とIgG1の融合蛋白で、24年に米欧で成人の肺動脈高血圧症(WHOグループI)用薬として承認された。日本でも先日、承認申請。米国ではWHO機能分類に基づく限定は課されていないが、エビデンスとなった第3相STELLAR試験はIIとIIIに分類される患者324人を組入れており、主評価項目の6分歩行テストと、副次的複合評価項目の死亡/臨床的悪化リスクの両方で偽薬比良績を上げた。

今回の試験はIIIとIVで死亡リスクが高い患者172人を組入れて、全死亡/肺移植/増悪による24時間以上の入院のリスクを偽薬と比較した。有害事象や深刻有害事象の群間の偏りは見られなかった。

肺動脈高血圧症(WHOグループI:特発性、遺伝性、結合組織関連のもの)におけるWHO機能分類はメジアン生存期間と関連性が見られ、I(身体活動に制約なし)とII(呼吸困難などが通常身体活動で発生)は6年、III(通常以下の身体活動でも発生)は2.5年、IV(安静時でも呼吸困難など)は6ヶ月と言われる。IVの場合は延命効果が最も重要に感じられるが、どうだったのだろうか?そもそもIVの組入れ数はどの程度あったのだろうか?

リンク: 同社のプレスリリース


トルカブの前立腺癌試験が成功
(2024年11月25日発表)

アストラゼネカはTruqap(capivasertib)の第3相CAPItello-281試験で主目的を達成したと発表した。PTEN欠乏型de novo転移性(診断当初から転移が見られる)ホルモン感受前立腺癌(HSPC)の一次治療としてabirateroneとアンドロゲン枯渇療法の併用レジメンに追加する便益を検討したもので、PFS(無進行生存期間、放射線学的評価)が偽薬比で統計的に有意な、かつ臨床的に意味のある、延長を示した。PTEN欠乏denovo mHSPCは米国で年5万人程度が診断されるとのこと。

TruqapはPI3Kカスケードを調停するAKTの阻害剤。23年に米国でPIK3CAやATK1、PTENに変異のあるホルモン受容体陽性her2陰性の局所進行/転移乳癌の二次治療薬としてfulvestrantと併用することが承認された。今年は日欧でも承認された。

リンク: 同社のプレスリリース


ASH:インサイトの抗CD19抗体の三剤併用試験
(2024年11月25日公開)

ASH(米国血液学会)の抄録が一般公開され、インサイトが8月に成功発表した第3相inMIND試験のトップラインが判明した。Fc加工抗CD19ヒト化抗体であるMonjuvi(tafasitamab-cxix)の濾胞性リンパ腫における便益を検討したもので、抗CD20抗体歴を持つCD19陽性CD20陽性の難治・再発濾胞性リンパ腫と辺縁帯リンパ腫を組入れて、lenalidomide及びrituximabのレジメンに追加する効果を検討したもので、主評価項目である濾胞性リンパ腫サブグループにおけるPFS(無進行生存期間、治験医評価)がメジアン22.4ヶ月と偽薬追加群の13.9ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.43だった。盲検独立評価によるPFSも成功した。全生存期間の解析は未成熟だがハザードレシオは0.59と好ましい方向を向いている。深刻有害事象の発生率は36%(偽薬追加群は32%)。

Monjuviは20~21年に米欧で、lenalidomide併用でびらん性大細胞型B細胞リンパ腫に用いることが加速承認/条件付き承認された。元々はMorphoSysからライセンスしたものだが、先方がノバルティスに買収されたため、契約条件に則り権利を完全取得した。

リンク: Sehnらの抄録(ASH 2024 LBA-1)


Cassava社、アルツハイマー試験がフェール
(2024年11月25日発表)

米国テキサス州のCassava Sciences(Nasdaq:SAVA)は、simufilamの一本目の第3相軽中度アルツハイマー病試験がフェールしたと発表した。100mgフィルムコート錠を一日二回、52週間投与し効果を偽薬と比較したが、ADAS-cog12の増加は2.8点(偽薬は3.2点)、ADCS-ADLの低下は3.3点(同3.8点)と、何れもほんの少し良かっただけでp値は各0.43と0.40だった。もう一本、50mgもテストする第3相が進行していたが中止を決定した。

simufilamは後期第2相がフェールしたが、別の研究者のラボで再解析したところ良好な成績に転じ、第3相に進んだ。この研究者はsimufilmの共同発明者で同社のコンサルタントでもあるため利益相反があるが、開示しないまま成功発表し資金調達に進んだことなどからSEC(米国証券取引委員会)の捜査を受け、4000万ドルを支払う結果となった。また、この研究者などがJournal of Neuroscience、PLOS One、そしてAlzheimer's Research and Therapyで発表した論文が次々と撤回された。このため、第3相の成否が別な意味で注目されていた。

試験成績と合わせて資金調達も発表するのはバイオ企業の一般的な所作だが、Cassavaの事例を見ると、くれぐれも公正開示に配慮したほうが良いだろう。

リンク: 同社のプレスリリース


Biohaven社、脊髄筋萎縮症の第3相がフェール
(2024年11月25日発表)

Biohaven Pharmaceutical(NYSE:BHVN)はBHV-2000(taldefgrobep alfa)の第3相脊髄筋委縮症(SMA)試験がフェールしたと発表した。但し、臨床的に意味のある差が見られたことや被験者の87%を占めたカフカス人種サブグループにおけるデータは良好なものだった。FDAと今後を相談する考え。

ブリストル マイヤーズ スクイブからライセンスした、アドネクチンとIgG1のFc領域の融合蛋白。筋骨格細胞の成長を抑制するミオスタチンに特異的に結合する。ロシュがライセンスしてデュシェンヌ型筋ジストロフィーの第2/3相試験を実施したが中間解析で無益認定され、権利を返還した経緯を持つ。

SMA用薬の開発では、前駆体であるプロミオスタチンを標的とするScholar Rock(Nasdaq:SRRK)の抗体、SRK-015(apitegromab)が第3相試験でHFMSE(Hammersmith Functional Motor Scale Expanded)を偽薬比有意に改善、25年第1四半期に承認申請の予定だ。一方、Biohavenは追随できなかった。

尚、Biohaven社はファイザーに買収されたが、狙いの片頭痛領域以外のパイプラインは新生Biohavenとして22年にスピンアウトされた。

リンク: 同社のプレスリリース


ロシュ、抗TIGHT抗体の第3相がまたフェール
(2024年11月26日発表)

ロシュはRG6058(tiragolumab)の第3相非小細胞性肺癌Tecentriq(atezolizumab)併用試験で全生存期間の最終解析がフェールしたと発表した。少なくとも数値上は良好に推移していたはずなので意外な結果だ。

このSKYSCRAPER-01試験は日本も含む世界の医療施設で一次治療を受けるPD-L1高発現局所進行切除不能/転移非小細胞性肺癌の患者534人を組入れて、偽薬またはRG6058(600mg3週毎)をTecentriq(1200mg3週毎)と併用し、PFS(無進行生存期間)と全生存期間を比較した。PFSは22年にフェールしたが、全生存期間の中間解析は未成熟ながら数値上は上回る、と報じられ、手違いがあった模様で23年に公表された第2次中間解析はハザードレシオ0.81(95%上限1.03)、メジアン値は偽薬群16.7ヶ月、試験薬群は22.9ヶ月というものだった。

抗PD-(L)1抗体とシナジーが期待された抗TIGHT抗体だが、これまでに複数のコンパウンドの複数の第3相がフェールしている。RG6058とTecentriqの併用は、SKYSCRAPER-06試験(局所進行切除不能/転移非扁平上皮非小細胞性肺癌一次治療、pemetrexed及び白金薬と併用)とSKYSCRAPER-02C試験(進展型小細胞性肺癌一次治療、carboplatin及びetoposideと併用)が既にフェールしている。SKYSCRAPER-08試験(中国などアジアでの切除不能/転移食道扁平上皮腫一次治療、paclitaxel及びcisplatinに併用)は成功したが、今日の標準療法であるKeytruda(pembrolizumab)が対照群で採用されておらず、4剤対2剤の比較であるため受け止めが難しい。Keytrudaの3剤併用試験の数値と見比べると良さそうに見えるが、承認申請したという話は聞かない。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


GSK、抗BCMA抗体薬物複合体を再承認申請
(2024年11月25日発表)

GSKはBlenrep(belantamab mafodotin-blmf)を多発骨髄腫の二次治療薬として承認申請し受理されたと発表した。審査期限は25年7月23日。BioWaの技術で開発したBCMAを標的とする抗体と、薬物の複合体。Velcade(bortezomib)またはPomalyst(pomalidomide、そしてdexamethasoneと3剤併用する。

20年に多発骨髄腫のサルベージ・セラピーとして単剤投与する用法で米国で加速承認、EUでも条件付き承認されたが、市販後薬効確認試験に位置付けられたDREAMM-3試験(3次治療、単剤v.s. pomalidomide・dexamethasone併用)がフェールし、23年2月に米国で、今年3月にはEUでも、承認取消となっていた。前後して、DREAMM-7試験と同8試験が成功、EUでは7月に承認申請受理、日本でも9月に申請されたところだ。

リンク: GSKのプレスリリース


アムヴトラを心筋症型に適応拡大申請
(2024年11月25日発表)

Alnylam Pharmaceuticals(Nasdaq:ALNY)は米国でAmvuttra(vutrisiran)をATTR-CM(トランスサイレチン型心アミロイドーシス)に適応拡大申請し受理されたと発表した。優先審査バウチャを利用したため審査期限は25年3月23日になった。日本でも11月に一変申請された。第3相試験で全死亡・心血管イベントを偽薬比28%抑制、全死亡だけの解析でも、tafamidis服用者や非服用者だけの解析でも、同様な結果だった。

トランスサイレチンの遺伝子を標的とする短鎖RNA介入薬。22年に米欧日でトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー用薬として承認された。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


アルドース還元酵素阻害剤の承認審査が完了
(2024年11月27日発表)

米国NY州のApplied Therapeutics(Nasdaq:APLT)はAT-007(govorestat)を古典的ガラクトース血症の治療薬としてFDAに承認申請していたが、審査完了通知を受領した。FDAは審査の途中で重要な追加資料が提出された場合に審査期間を最大3ヶ月、延長することができるが、今回の事例では申請の3ヶ月後という異例の早さで延長されており、前途が危ぶまれた。一方で、当初は検討されていた諮問委員会上程が結局見送られ、良いほうに向かっているようにも感じられた。会社側はFDAの指摘事項などを開示しておらず、不透明感が更に高まっている。

ガラクトース血症は常染色体劣性遺伝子疾患。ガラクトースをグルコースに分解する酵素が欠乏、ガラクチトールなどの毒性代謝物が組織に蓄積する。AT-007はガラクトースをガラクチトールに変換するアルドース還元酵素の中枢神経浸透性、選択的な阻害剤。2~17歳の患者を組入れた第3相がフェールしたが日常生活機能や行動機能、認知機能などの指標は好ましい変化を見せた。

SORD欠乏症の第2/3相試験も有望な結果になった模様で、25年第1四半期に承認申請する考え。

リンク: 同社のプレスリリース


EUでOcalivaの条件付き承認が失効
(2024年11月24日発表)

英国のAdvanz Pharmaは、EUでOcaliva(obeticholic acid)の承認が取消されたと発表した。16年に、ウルソデオキシコール酸に十分応答しない原発性胆汁性胆管炎の治療薬として承認されたが、承認継続の条件である市販後薬効確認試験がフェールし、今年8月に欧州委員会が取消した。欧州連合一般裁判所が暫定的停止命令を出し一旦はペンディングとなったが、この命令が更新されなかったため、即時承認取消となった。同社は引き続き係争する考え。また、EU加盟国の承認を条件に、人道的供給制度による提供も考えている。

米国のIntercept Pharmaceuticals(Nasdaq:ICPT)からライセンスした、ウルソデオキシコール類縁体。米国でも16年に加速承認されたが、取消されるのではないか。

リンク: Advanz社のプレスリリース

【承認】


BridgeBioのTTR安定化剤が承認
(2024年11月25日発表)

FDAは、米国カリフォルニア州のBridgeBio Pharma(Nasdaq:BBIO)のAttruby(acoramidis)を成人の変異型または野生型ATTR-CM(トランスサイレチン調停アミロイドーシスによる心筋症)の治療薬として承認した。臨床試験で全死亡/心血管疾患入院のハザードレシオが0.645だった。メーカー側はこれまで塩酸塩ベースで400mgのフィルムコート錠2錠を一日二回ずつ服用、としていたが、レーベルでは356mgフィルムコート錠と記されている。尚、ATTR-CMのカッコ内の説明が上記Amvuttraに関する記述と一致しないが、レーベルの記載に従った(もともとATTR調停疾患の和名は英語の直訳とやや異なっている)。

第3相ATTRibute-CM試験で主評価項目である心血管関連イベントのWin Ratioが偽薬比1.8、p<0 .0001="" br="" in="" ratio="">
報道によると、薬価は28日分が$18,759と、ファイザーのVyndaqel/Vyndamax(tafamidis meglumine/tafamidis)並みに設定された。臨床試験に参加した患者には生涯に亘り無償提供する。

バイエルが商業化権を持つ欧州でも承認申請中。日本はアストラゼネカの子会社が19年に開発商業化権を取得した。Kumar創業者兼CEOはプレスリリースの中で次は欧州、日本、そしてブラジルとと言っている。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: BridgeBio社のプレスリリース

【医薬品の安全性】


FDA、Skysona患者における血液癌症例を検討
(2024年11月27日発表)

FDAは、22年に承認したcALD(脳副腎白質ジストロフィー)の遺伝子療法、Skysona(elivaldogene autotemcel)の血液癌リスクについて、レーベル変更のような措置が必要か検討していることを明らかにした。既知のリスクであるが、懸念されたとおりに、治療後の追跡期間が延びるにつれて、発症例が増えてきたため。深刻な疾患なので承認を取消すような話にはならないのではないか。

cALDは進行性不可逆的神経変性疾患を齎すX染色体性遺伝子疾患。治療しないと5年内に死亡と言われる。Skysonaはbluebird bio(Nasdaq:BLUE)が開発したex vivo遺伝子療法。患者で欠乏するABCD1遺伝子の相補DNAを、レンチウイルス・ベクターを用いて患者から採取したCD34陽性造血幹細胞に導入し、培養して患者に投与する。臨床試験成績の事後的解析に即して、4~17歳の早期活性期患者が適応になる。発症後に主要な機能障害を被らずに24ヶ月生存する確率が推定72%(n=11)と、自然歴データの43%(n=7)を上回った。

最も重要な副作用が血液学的腫瘍。承認時点では、二本の試験合計で67人中3人がMDS(骨髄異形成症候群)を発症していた。3例ともウイルスベクターが癌原遺伝子(癌遺伝子に変わる可能性のある遺伝子)に組み込まれており、少なくとも2例ではSkysonaがMDSのドライバーとなった可能性があるようだ。挿入されるのが癌原遺伝子であるせいか、治療から発症まで時間がかかり、MECOM遺伝子に統合した2人は1年後と2年後、MECOMのパラログ(遺伝子重複により変化したもの)であるPRDM16に統合した、第1号被験者は、7.5年後だった。このため、時間が経つにつれて発症例が増加することが当初から危惧されていた。

実際、10月にNew England Journal of Medicineに掲載された論文では、67人中7人に罹患率が上昇している。うちMDSは6人、AML(急性骨髄性白血病)が1人で、造血幹細胞移植後に移植片対宿主病を発症した1人が死去した。

尚、EUでは米国より早く21年に承認されたが、bluebird社は、もう一つの遺伝子治療薬も含めて、薬価に不満を示し承認返上した。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Duncanらの論文(New England Journal of Medicine、24年10月9日)


EUもアステラスのVMS治療薬の規制強化へ
(2024年11月29日発表)

EMA(欧州薬品庁)のファーマコビジランス委員会、PRACは、11月の会議で、アステラス製薬の閉経期中重度VMS(血管運動神経症状)治療薬、Veoza(fezolinetant、米国名Veozah)について、肝障害リスクに注意を促すDHPC(直接的医療従事者向け通信;ドクターレター)を発出することで合意した。EMA内の手続きを経てメーカーが送付する。

このNK3受容体拮抗を投与すると肝機能検査値異常が表れることがあるが、23年に米欧で承認された段階では、総ビリルビンの異常上昇(2xULN)を伴い肝障害が懸念される症例は発生していなかった。しかし、市販後報告が寄せられたことから、米国では今年8月に警告・事前注意事項が強化され、当該症例は発生しておらず投与を続けても数値が治療開始前の水準に戻るという文言がレーベルから削除され、肝機能検査を行うタイミングは開始前、開始の3ヶ月後、6ヶ月後、9ヶ月後の4回だったが1ヶ月後、2ヶ月後が追加され、投与を中止すべき閾値が示された。

今回、PRACも、1ヶ月後と2ヶ月後の検査を追加する考え。

患者は、肝障害に関連しているかもしれない兆候症状が表れたら、服用を止めて医療従事者に相談する。具体例として、PRACのリリースは、疲労、掻痒、黄疸、暗色尿、食欲低下、腹痛を挙げている。米国のレーベルでは、更に、悪心嘔吐、白色便も列挙している。

リンク: EMAのプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
24年11月推住友ファーマのGemtesa(vibegron、BPH用薬服用者の過活動膀胱)
24年12月推Zealand PharmaのZP 1848(glepaglutide、短腸症候群
24年12月推アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、小細胞性肺癌)
24年12月推ガルデルマのNemluvio(nemolizumab-ilto、アトピー性皮膚炎)
24年12月BeiGeneのTevimbra(tislelizumab、胃・GEJ腺腫一次治療追加)
24/12/20Lexicon PharmaceuticalsのZynquista(sotagliflozin、一型糖尿病)
24/12/27Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリー症候群)
24/12/28XcoveryのX-396(ensartinib、ALK陽性非小細胞性肺癌)
24/12/29BMSのOpdivo(nivolumab)の皮下注用新製剤
24/12/29Neurocrine BiosciencesのNBI-74788(crinecerfontカプセル、古典的先天性副腎過形成)
24/12/30Neurocrine BiosciencesのNBI-74788(crinecerfont経口液)
25Q1推第一三共のEnhertu(trastuzumab deruxtecan、her2低/極低転移性乳癌追加)
25Q1推アストラゼネカのCalquence(acalabrutinib、未治療マントル細胞腫追加)
25年1月ノボ ノルディスクのOzempic(semaglutide、FLOW糖尿病性腎症アウトカム試験追加)
25/1/2Vertexのvanzaトリプル(vanzacaftor、tezacaftor、deutivacaftor、嚢胞性線維症)
25/1/15Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(リンパ増殖性疾患)
25/1/17アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS G12C変異再発転移結腸直腸癌追加)
25/1/25エーザイのLeqembi(lecanemab、維持用量用量追加)
25/1/29第一三共のDS-1062(datopotamab deruxtecan、HR陽性her2陰性切除不能/転移乳癌)
25/1/29Stealth BioTherapeuticsのelamipretide(バース症候群)
25/1/30VertexのVX-548(suzetrigine 、急性疼痛)
25/1/31Axsome TherapeuticsのAXS-07(急性片頭痛)


今週は以上です。

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