2024年10月12日

第1076回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • EMA、利益相反規制を強化 
  • ターゼナの前立腺癌試験で延命効果も確認 
  • キイトルーダのペリアジュバントHNSCC試験が成功 
  • PTC社、フリードライヒ運動失調症用薬の承認申請を断行へ 
  • 抗ミオスタチン抗体のSMA試験が成功 
  • JNJ、薬剤放出ディバイスの膀胱癌試験が無益中止 
  • Neuvivo、ALS用薬の承認申請を断行 
  • Aldeyra、ドライアイ用薬を再承認申請 
  • PTC社、フェニルケトン尿症治療薬を米国でも承認申請 
  • 遅報:Elevar、肝臓癌用薬を再承認申請 
  • FDA諮問委員会、バース症候群用薬の評価が分かれた 
  • Zealand社、先天性高インスリン血症の適応まだ取得できず 
  • ファイザーの抗TFPI抗体が承認 
  • ジェネンテックのPI3K阻害剤が承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


EMA、利益相反規制を強化
(2024年10月10日発表)

EMA(欧州薬品庁)は諮問委員などに関する利益相反規制の強化を決めた。EU司法裁判所が不備を認定したため。今後は、承認申請されている製品と同じ疾病に用いる製品に関与している人や臨床試験の主任研究員なども対象となり、また、CHMPなどだけでなく、SAG(科学的諮問グループ)やAHEG(アド・ホック専門家グループ)、ETF(エマージェンシー・タスク・フォース)、MSSG(薬品不足対応グループ)、MDSSG(医療機器不足対応グループ)などでも利益相反管理が行われる。

きっかけは、スペインのPharmaMar(MSE:PHM)が多発骨髄腫用薬として申請したAplidin(plitidepsin)が承認されず提訴した件と、フランスのDebrégeas et associés Pharmaがアルコール依存症治療薬として申請したHopveus(sodium oxybate)が承認されず提訴した件に関する控訴審判決。前者は一部の委員が他社の競合薬の開発に関わっていることなど、後者はAHEG委員のうち2名に利益相反が認められることなどを、利益相反と認定した。EMAは両案件の承認審査をやり直すとともに、審査中の案件も一部やり直したため、エーザイ/バイオジェンがアルツハイマー病薬として承認申請したLeqembi(lecanemab)などの審査も遅延した。

リンク: EMAのプレスリリース

【新薬開発】


ターゼナの前立腺癌試験で延命効果も確認
(2024年10月10日発表)

ファイザーはPARP阻害剤Talzenna(talazoparib)を乳癌に加えて前立腺癌にも開発し、23~24年に米日欧で成人の去勢抵抗性前立腺癌の転移後初度治療にXtandi(enzalutamide)と併用することが承認された。厳密な適応は国によって異なり、米国はでHRR(相同組換え修復)遺伝子に変異、日本ではBRCA遺伝子に変異、EUでは化学療法が臨床的に適応にならないことが要件となっている。エビデンスとなる第3相TALAPRO-2試験は共同主評価項目であるHRR遺伝子変異陽性コフォートだけでなく全被験者の解析でもrPFS(放射線学的無進行生存期間、盲検独立中央評価)がXtandi・偽薬併用群を有意に上回ったが、HRR遺伝子変異陽性コフォートのハザードレシオが0.46であるのに対して、陰性のサブグループは事後的分析で0.70と見劣りしたことなどが影響したものと推測される。

今回、上記試験の全生存期間の最終解析が成功したことが発表された。PFSと同様に、HRR遺伝子変異コフォートも、全被験者の解析も成功した。数値は未発表。HRR変異陰性サブグループの数値が注目される。

リンク: 同社のプレスリリース


キイトルーダのペリアジュバントHNSCC試験が成功
(2024年10月8日発表)

MSDはKeytruda(pembrolizumab)のKeyNote-689試験が中間解析で主目的を達成したと発表した。適応拡大申請に向かうのではないか。ステージIII/IV局所進行性頭頚部扁平上皮腫(HNSCC)の切除術を予定する新患患者704人を組入れて、術後に一定期間、標準的化学療法を施行する群と、術前術後にKeytrudaも投与する群のEFS(無イベント生存期間)を比較したところ、後者が有意に上回った。期中に副次的評価項目に格下げされた主要病理学的反応率の解析も成功した。同じく副次的評価項目の全生存期間はトレンドに留まっている。解析する順位が最上位に位置付けられているCPS(Combined Positive Score)が10以上のサブグループの数値が有意水準に到達していないため1以上や全被験者の正式な解析ができないと書いており、おそらく、検出力が高くなる後二者の名目p値は良好なのだろう。

それにしても、HNSCCにおける治験成績はぶれまくっている。白金薬治療歴を持つ進行患者を組入れたKeyNote-040試験では全生存期間が実薬対照群を有意に上回らなかった。但し、点推定値自体は良好で、多重解析を予定していなかったら、成功判定されていたかもしれない。CPSが20以上の患者の一次治療として白金薬レジメンと併用したKeyNote-048試験では全生存期間がcetuximabと白金薬レジメンを併用した群を有意に上回った。一方、局所進行性の患者を対象に化学放射線療法に追加してEFS延長を目指したKeyNote-412試験はトレンドに留まった。

リンク: MSDのプレスリリース


PTC社、フリードライヒ運動失調症用薬の承認申請を断行へ
(2024年10月8日発表)

PTCセラピューティクス(Nasdaq:PTCT)はPTC-743(vatiquinone)が第3相フリードライヒ運動失調症試験の長期延長試験で疾病進行を遅らせる作用を示したため12月に米国で承認申請する考えであることを発表した。Stealth BioTherapeuticsがバース症候群治療薬として承認申請したelamipretide(後述)と似たような経緯であり、最初のハードルは受理されるかどうかだろう。

フリードライヒ運動失調症の多くではミトコンドリア蛋白の遺伝子機能低下が見られる。PTC-743はミトコンドリアにおけるエネルギー・酸化ストレス経路の制御に関わる15リポキシゲナーゼの阻害剤。第3相MOVE-FAに成人小児146人を組入れて72週間治療し、mFARSの変化を比較したが、偽薬群は2.83点、試験薬群は1.22点、群間差は1.6でp=0.14とフェールした。但し、重要な指標である直立安定性サブスケールでは名目p値が0.021だった。治療時発現深刻有害事象の発現率は両群とも11%だった。

この発表からほぼ1年半経ち、今回、追跡期間を144週に伸ばしたデータと自然歴(FACOMS疾病登録)の比較で、mFARSの群間差が3.7点、p<0.0001となったことが明らかにされた。3年間の進行を半分に抑制した由。

リンク: 同社のプレスリリース


抗ミオスタチン抗体のSMA試験が成功
(2024年10月7日発表)

米国マサチューセッツ州ケンブリッジの新興バイオ企業、Scholar Rock(Nasdaq:SRRK)は、SRK-015(apitegromab)の第3相2/3型脊椎筋委縮症(SMA)試験、SAPPHIREで主目的を達成したと発表した。25年第1四半期に欧米で承認申請する考え。

同社はTGFベータ・スーパーファミリーの研究で実績を持ち、社名(水石)はその構造が水石に似ていることに因んでいる。第3相はSpinraza(nusinersen)またはEvrysdi(risdiplam)による治療を受けている2歳以上の歩行不能な2型、3型SMA患者188人を偽薬、10mg/kg、または20mg/kgを4週毎点滴静注する3群に無作為化割付けして52週間治療し、HFMSE(Hammersmith Functional Motor Scale Expanded)の変化を比較した。共同主評価項目は2~12歳の156人における、2用量群プール・データと20mg/kg群の偽薬比。

2用量群プール分析ではHFMSE(ベースライン値は26点)が偽薬調整後で1.8点改善した(p=0.0192)。次順位の20mg/kg群の解析は偽薬調整後で1.4点改善したがp=0.1149でフェールした。この試験では多重性を補正するために片方が0.05超であった場合はもう片方が0.025以下なら成功判定するプロトコルだったため、前者が成功認定された。10mg/kg群が2.2点改善した(名目p=0.0121)ことが寄与した格好だ。13~21歳の32人(偽薬と20mg/kg群に割付け)の探索的解析でも好ましいトレンドが見られた由。深刻有害事象の発現率は偽薬群10%、10mg/kg群17%、20mg/kg群22%だった。

POC試験では20mg/kgしかテストしなかったが、薬力学/薬物動態面でも忍容性でも10mg/kgと大差なかったようなので、低用量だけ承認申請するのではないか。

尚、Spinrazaの類似試験では15ヶ月後のHFMSEが3.9点改善、シャム群は1.0点悪化し、偽薬調整後の治療効果は4.9点だった。Evrysdiの類似試験ではHFMSE(副次的評価項目)が1年後に0.95点改善、偽薬群は0.37点改善し治療効果は0.58点だった。

SRK-015は、筋肉の成長を抑制するmyostatinの非活性体である潜在型myostatinを標的とするIgG4ラムダ型抗体。類薬はBiohaven Pharmaceuticals(NYSE:BHVN)の抗myostatinアドネクチンtaldefgrobep alfaも向こう半年以内に第3相結果が判明する予定。ロシュも中外由来の抗体RG6237/GYM329で第2/3相試験中。

リンク: Scholar社のプレスリリース


JNJ、薬剤放出ディバイスの膀胱癌試験が無益中止
(2024年10月7日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、TAR-200の第3相SunRISe-2試験が中止になったことに関して声明を発表した。画期的な治療法になりうると自信を持っており、予定通り、やや異なった癌を組入れた第2相SunRISe-1試験に基づいて25年初めに米国でTAR-200単剤を承認申請する考え。

19年に買収したTARIS Biomedicalの開発品で、シリコンチューブ型ディバイスを膀胱内に留置してgemcitabineを持続放出させる。SunRISe-2試験では全摘術不適または拒否の高リスク筋層浸潤膀胱癌(MIBC)550人を組入れて、同社が開発している抗PD-1抗体JNJ-63723283(cetrelimab)と併用で3週毎に最大3年間投与する群のEFS(無イベント生存期間)を同時化学放射線療法と比較した。独立データ監視委員会(IDMC)の推奨と事前に設定された中間解析に基づき、優越性不実により中止された。

一方、SunRISe-1試験はBCG治療歴のある全摘不適/拒否の高リスク非筋層浸潤膀胱癌(NMIBC)を組入れてTAR-200、cetrelimab、両剤併用の完全反応率を検討したもの。今年のAUA(米国泌尿器学会)の発表によるとTAR-200単剤群の完全反応率(n=58)は83%、1年反応持続率は74%、深刻有害事象の発生率は7%だった。第3相はBCG歴のない高リスクNMIBC試験や、BCG後に再発し全摘不適/拒否の高リスクNMIBC試験が進行中だが、成否判明は2030年頃の見込み。

プレスリリースが妙なのは、第一に、SunRISe-2試験の成功のハードルが高いことを最初に記していること。恰も、誰かが先に発表または報道したのを受けて釈明を兼ねた声明を出したかのようだ。尤も、ClinicalTrials.govにはJanssen Research & Developmentがスポンサー兼届出者と記されているので、運営も成果発表も研究者共同治験グループが主導する試験ではなさそうだが。第二に、中止の経緯や理由がはっきりと記されていないこと。優越性が示されないため中止とあるが、通常は中間解析で有意差が出なくても粛々と続行するところだ。更に、通常なら、中間解析に基づきIDMCが中止推奨した、と書くところだろう。おそらく、IDMCは無益認定までは踏み込んでいないのだろう。

以上のことから邪推すると、IDMCが安全性または生存に関わる懸念を表明し、中間解析の結果も中止基準には触れないがすごく良いものでもなかったため中止したのではないか、と思ってしまう。学会発表などを控えて公表できないのかもしれないが、このような邪推を排するためには踏み込んだ説明が必要だろう。

リンク: JNJのプレスリリース

【承認申請】


Neuvivo、ALS用薬の承認申請を断行
(2024年10月7日発表)

米国カリフォルニア州の新興医薬品開発会社Neuvivoは、NP001をALS(筋萎縮性側索硬化症)用薬として承認申請した。受理されるだろうか。

pH調整亜塩素酸ナトリウム製剤で、4週毎に3-5日連続で30分点滴静注を反復する。第2相試験で発症3年未満、FVCが70%以上の136人を偽薬、1mg/kg、2mg/kgの3群に無作為化割付けしてALSFRS-R(機能評価尺度)を比較したところ、ベースライン(38点)比で各群4.7点、4.1点、3.7点低下し、両用量とも偽薬比有意な差は見られなかった。肺活量の解析もフェールした。比較的良い成果があった高CRP値患者に限定して後期第2相を実施したが、ALSFRS-Rも、肺活量も、フェールした。但し、40~65歳のサブグループでは比較的良好な数値が出た。このため、今回の承認申請は適応を何らかのサブグループに絞ったものと想像される。

Neuvivoは、この二本の試験を実施したNeuraltus Pharmaceuticalsの創業者らが2021年に設立したようだ。経緯やNeuraltus社の帰趨は不明。

リンク: Neuvivoのプレスリリース


Aldeyra、ドライアイ用薬を再承認申請
(2024年10月3日発表)

Aldeyra Therapeutics(Nasdaq:ALDX)はADX 102(reproxalap)をドライアイの兆候・症状治療薬として米国で再承認申請した。2年前に承認申請していたが、薬効のエビデンスが兆候に関しては二本あるものの症状は1本しかなかったため審査完了通知を受領。改めてドライアイ疾患チャンバー試験(1~3時間強風を当てて目を乾燥させ不快感を計測する)を成功させた。結果論で言えば、この試験を先にやっていればもっと早く承認申請できただろう。

リンク: 同社のプレスリリース


PTC社、フェニルケトン尿症治療薬を米国でも承認申請
(2024年10月1日発表)

PTCセラピューティクスはPTC923(sepiapterin)を小児と成人のフェニルケトン尿症用薬として米国で承認申請し受理された。先輩格であるバイオマリンのKuvan(sapropterin)はテトラヒドロビオプテリン(BH4)の合成類縁体だが、sepiapterinはBH4の前駆体を化学合成したもの。第3相離脱試験で継続投与群のPhe値が偽薬にスイッチした群を有意に下回った。欧州では3月に申請、ブラジルや日本でも承認申請する考えだ。2020年にCensa Pharmaceuticalsを買収して入手した。

リンク: PTC社のプレスリリース


遅報:Elevar、肝臓癌用薬を再承認申請
(2024年9月23日発表)

韓国のHLB(028300:KS)の子会社であるElevar Therapeuticsは、米国で抗PD-1抗体camrelizumabとVEGFR-2阻害剤rivoceranibを切除不能肝細胞腫の併用一次治療に再承認申請した。23年5月に承認申請したが、camrelizumabを生産するHengrui Pharmaの工場におけるCMC(化学、製造、管理)問題や、米国連邦職員の渡航制限によりロシアとウクライナの治験実施施設の査察ができないことなどから、今年5月に審査完了通知を受領していた。会合でFDAが前者は解消、後者は承認申請後で可と伝えた模様だ。

camrelizumabは中国では19年にJiangsu Hengrui Pharmaceuticals(江蘇恒瑞医薬、上海:600276)が承認を取得、23年2月には上記試験に基づき肝細胞腫に適応拡大した。rivoceranibは米国のAdvenchen Laboratoriesが中国の権利をHengruiに、それ以外の地域の権利をHLBに、ライセンスした。HLBは、その後、全世界の権利を取得しHengruiに対するライセンス元となった。中国では14年に承認取得。一般名はUSANでもINNでもrivoceranibだが中国ではapatinibと呼ばれClinicalTrials.govでは試験によりどちらかの名称が登録されている。

リンク: Elevar社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、バース症候群用薬の評価が分かれた
(2024年10月10日発表)

FDAは心臓腎臓薬諮問委員会を招集し、米国のStealth BioTherapeutics(Nasdaq:MITO)がバース症候群の治療薬として承認申請したelamipretideについて意見を聞いたところ、薬効を認めた委員が10人、認めなかった委員が6人と、意見が分かれた。BSF(バース症候群財団)が報じたほど強力勧奨とは思えないが、いずれにせよ、採決結果は参考に過ぎず、審査担当部署がどう判断するか、そして難病薬の承認に前向きなFDA上層部が介入するか否か、注目される。審査期限は来年1月29日。

バース症候群はX染色体上のtafazzinをコードする遺伝子などに変異があり、cardiolipinが欠乏しミトコンドリア機能が低下、心不全や不整脈、白血球減少症などを発症する。40歳以上生存することは少なく、4歳までに死亡する患者も少なくない。罹患率は男性100万人当り1人、推定患者数は米国で130~150人、世界で230~250人。elamipretideはcardiolipinに結合しミトコンドリア機能を改善するとされる。

第2/3相TAZPOWER試験で12歳以上の患者12人に40mgまたは偽薬を一日一回、12週にわたり皮下投与したところ、6分歩行検査の成績が試験薬群は約443m(ベースライン値は400m)、偽薬群は444m(同413m)となり、有意な差がなかった。共同主評価項目である疲労改善効果も見られなかった。FDAは再試験を推奨したが同社は患者数が少ないことや深刻な難病であることなどから、一部の副次的評価項目の改善や、延長試験のデータ、そしてジョンズ・ホプキンズの自然歴データ19例との比較などを行い、承認申請を断行した。BSFも4200人を超える署名を集めて後押しした。

深刻な超希少疾患では十分な症例を集めるのは難しく、無作為化割付けしても上手く行くようには思えず、また、もしその疾患が様々な疾患のごった混ぜであった場合、ノイズに騙されるリスクを内在する。TAZPOWERの試験成績を見ても、12人中2人は試験薬にも、クロス・オーバー後に投与した偽薬にも、良く応答し6分歩行距離が増加している。不十分なエビデンスに基づいて承認の当否を判断するのは躊躇されるが、再試験の間に患者が死んでいくことを受け入れるのも耐え難い。かと言って、効くかどうか分からない薬を承認してしまうと、その後の新薬開発の妨げになる可能性がある。一番合理的なのは、米国には未承認薬が効くかどうか試してみる権利(right to try)が認められたので、再試験が成功し再申請するまでの間、製薬会社が患者に無償提供することだろう。

リンク: Fierce Biotechの報道
リンク: Barth Syndrome Foundationの声明


Zealand社、先天性高インスリン血症の適応まだ取得できず
(2024年10月8日発表)

Zealand Pharma(Nasdaq:ZEAL)は糖尿病患者の重度低血糖症治療薬Zegalogue(dasiglucagon)を超希少疾患である小児先天性高インスリン血症に適応拡大すべく23年にFDAに承認申請したが、また審査完了通知を受領した。一回目と同様に、薬効や安全性、品質面の問題ではなく、生産委託先の査察が完了していないため。予定より遅れ8~9月に実施されたが、指摘事項が解消と認定されたかどうか、通知待ちのようだ。

この承認申請は、3週間以内の短期治療に関わるものと、ウェアラブル・ポンプによる3週超の連続投与に関わるものに分かれている。後者は追加情報の提出が必要になり、年内に回答する予定。

リンク: 同社のプレスリリース(GlobeNewswire)


【承認】


ファイザーの抗TFPI抗体が承認
(2024年10月11日発表)

FDAはファイザーのHympavzi(marstacimab-hncq)を12歳以上のインヒビターを持たないA型またはB型の血友病用薬として承認した。週一回、オートインジェクターで皮下注射して出血事故を抑制する。

体内のTFPI(組織因子経路インヒビター)に結合して、TFPIが活性化血液凝固第X因子及び組織因子・活性化第VII因子複合体と結合して凝固反応を抑制するのを妨げる。臨床試験で血液凝固因子の予防的投与を行わない群と比べて出血事故を大きく抑制し、予防的投与を行った群と比べても見劣りしない効果を示した。価格は年795,600ドルと、競合薬と同様に高い。欧州では9月にCHMPが肯定的意見をまとめた。日本では2月に承認申請された。

インヒビターがないなら血液凝固因子補充療法が第一選択だろうから、需要が本格化するのはインヒビターを持つ、ロシュの抗第IX因子/第X因子ヒト化二重特異性抗体Hemlibra(emicizumab-kxwh)が適応にならないB型血友病向けが、承認されてからだろう。

類薬はノボ ノルディスクのアレモ(コンシズマブ/concizumab)が昨年9月に日本でインヒビター保有のA/B型血友病に承認され、今年6月に非保有者に適応拡大した。米国でも申請されたが審査完了通知を受領し、適切な投与を担保するための施策の検討や生産プロセスに関する追加情報などを求められた。欧州でも承認審査中。

リンク: FDAのプレスリリース


ジェネンテックのPI3K阻害剤が承認
(2024年10月10日発表)

FDAはロシュ・グループのジェネンテックが申請したItovebi(inavolisib)を審査期限の7週間前倒しで承認した。成人の局所進行/転移乳癌のうち、PIK3CA変異があり、ホルモン受容体陽性、her2陰性で、内分泌療法薬による術後アジュバント療法中または完了後1年以内に再発し、その後の治療を未だ受けていない患者が適応になる。ファイザーのCDK4/6阻害剤Ibrance(palbociclib)、及び、選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーターfulvestrantと併用する。エビデンスとなるINAVO120試験ではPFS(無進行生存期間)のメジアン値が15.0ヶ月とIbrance、fulvestrant、偽薬の3剤を投与した群の7.3ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.43だった。副次的評価項目の全生存は未成熟で有意水準に到達していないが、中間解析のハザードレシオは0.64(95%信頼区間0.43-0.97)と好ましい方向を向いている。レーベル上の警告・事前注意事項は高血糖、口内炎、下痢、胚胎毒性。

ホルモン受容体陽性乳癌のうちPIK3CA変異は4割。PI3K阻害剤はノバルティスのPiqray(alpelisib)やアストラゼネカのTruqap(capivasertib)が一足先に承認されているが、Itovebiの適応の分かりやすい違いはCDK4/6阻害剤も併用すること。一方で、術後アジュバントでCDK4/6阻害剤を使った患者にも有効なのかは別途、臨床試験が必要だろう。

リンク: FDAのプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
24/10推CSLのCSL312(garadacimab、遺伝性血管浮腫)
24/10/6Merusのzenocutuzumab(NRG1融合陽性のNSCLCと膵癌)
24/10/15Alfasigma(Intercept Pharmaceuticals)のOcaliva(obeticholic acid、アウトカム試験)
24/10/17アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS G12C変異再発転移結腸直腸癌)
24/10/25Iterum Therapeuticsのsulopenem etzadroxilとprobenecid(単純尿路感染症)
24/11推住友ファーマのGemtesa(vibegron、BPH用薬服用者の過活動膀胱)
24/11/9アステラス製薬のzolbetuximab(claudin18.2陽性胃・胃食道接合部腺腫)
24/11/13PTC TherapeuticsのUpstaza(eladocagene exuparvovec、AADC欠損症)
24/11/16Autolus TherapeuticsのAUTO1(obecabtagene autoleucel、急性リンパ芽球性白血病)
24/11/28Applied TherapeuticsのAT-007(govorestat、ガラクトース血症)
24/11/29BridgeBio Pharmaのacoramidis(ATTR心筋症)
24/11/29Jazz PharmaceuticalsのZW25(zanidatamab、her2+胆道癌)
諮問委員会
24/10/31EMDAC:Lexiconのsotagliflozin(CKDを伴う一型糖尿病)
24/11/19DSRMAC/PDAC:非定型向精神薬clozapine(流通処方制限の緩和)



今週は以上です。

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