2024年8月17日

第1068回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • WHO、エムポックスの流行で非常事態宣言 
  • メディケア・パートDの価格交渉が決着 
  • ファイザー/ビオンテック陣営も二種混合ワクチンの製剤見直しへ 
  • インサイト、抗癌剤の適応拡大試験が成功 
  • エムポックス治療薬のリアル・ワールド試験がフェール 
  • 第3相二本成功し開発停止 
  • 小野のDecipheraが腱滑膜巨細胞腫用薬を申請 
  • イミフィンジを小細胞性肺癌に適応拡大申請 
  • チクングニア熱ワクチンを承認申請 
  • 老視治療薬を承認申請 
  • 人工血管の承認審査が長引く 
  • イミフィンジが肺癌の術前術後付随療法として承認 
  • ギリアド、原発性胆管炎治療薬が承認 
  • インサイトの慢性GvHD治療薬が承認 
  • ネモリズマブが米国でも承認 
  • 新たなrhPTH(1-34)が承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


WHO、エムポックスの流行で非常事態宣言
(2024年8月14日発表)

WHOはエムポックスの再流行を受けて国際的に懸念すべき公衆衛生危機(public health emergency of international concern)を宣言した。コンゴ民主共和国(DRC)で10年以上前から散発的に流行しているオルソポックスウイルス属ウイルスによる感染症で、近年は渡航者を中心に日本など周辺国以外でも症例報告がある。WHOは22年7月に同様な宣言を行い、23年5月には終結を宣言したが、今夏に急増、暦年累計報告数は15600例(うち死亡は537人)と23年通年を上回った。DRC周辺国だが今まで感染例が報告されていなかったブルンジ、ケニア、ルワンダ、ウガンダでも発生した。WHOによると、感染者の85%は男とセックスする男。今年のDRCでは、15歳未満を含む小児の症例も多いようだ。

アフリカでエムポックス・ワクチンが承認されているのは二ヶ国だけであるため、WHOはメーカー二社に非常時使用リスト収載を要請するよう求めた。ACDC(アフリカ疾病管理予防センター)が200万回分のワクチンを調達すべく支援を求めたのを受けて、Bavarian Nordic(Nasdaq Copenhagen:BAVA)はMVA-BNワクチンを約21.5万回分提供すると発表した。うち4万回分は同社が寄贈、残りはHERA(欧州衛生危機準備対応機構)が調達して寄贈する。一部報道によると、米国も5万回分をDRCに提供する計画だ。

MVA-BNワクチン(米国名米Jynneos、カナダではImvamune、欧州ではImvanex)の売上高は2020年の5.4億DKKが21年には7.3億DKK、22年は17.3億DKK、そして23年には50.2億DKK(現在の為替で換算すると約1100億円)と、急増している。

リンク: WHOのプレスリリース
リンク: Bavarian Nordicのプレスリリース(8/13付)


メディケア・パートDの価格交渉が決着
(2024年8月15日発表)

高齢者向け医療保険制度であるメディケアなどを所管するCMS(Center for Medicare and Medicaid Services)は一部医薬品に関してメーカーと2026年分の値引き交渉を進めてきたが、結果を発表した。23年時点の建値と比べて3~7割の値引きを実現しており、10製品合計で正味かっかうベースのメディケア支出を60億ドル、自己負担を15億ドルの節減となる。

米国は公定薬価がなく医療保険や薬剤費給付組織毎に製薬会社と交渉する。特許性新薬に関しては毎年のように建値の値上げが行われ、経時的に値下がりする多くの国と正反対だ。流れに掉さしたのが2022年インフレ抑制法で、メディケア・パートD(外来薬が対象)の支出で上位を占める医薬品についてCMSに価格交渉を命じた。初年度にあたるのが2026年で、上位10製品について価格を決定した。2027年分は対象が15品目に増える。製薬会社はメディケアとの取引を止める権利を持つが、憲法違反などを理由に提訴する程度に留まっており、これまでのところ、司法の支持は得られていない。

図表:メディケア・パートDの調達価格(2026年分)
薬品名
一般名
価格(30日分、ドル)年間支出額
2026年2023年定価変化率(百万ドル)
Januviasitagliptin113.0527.0-79%4,091
Novologなど各種インスリン119.0495.0-76%2,612
Farxigadapagliflozin178.5556.0-68%4,342
Enbreletanercept2,355.07,106.0-67%2,951
Jardianceempagliflozin197.0573.0-66%8,840
Stelaraustekinumab4,695.013,863.0-66%2,988
Xareltorivaroxaban197.0517.0-62%6,309
Eliquisapixaban231.0521.0-56%18,275
Entrestosacubitril/
valsartan 
295.0628.0-53%3,430
Imbruvicaibrutinib9,319.014,934.0-38%2,371
2023年の価格はリスト・プライスに基づく。年間支出額はメディケア パートDにおける23年実績(値引き前)。
出所:CMS

リンク: CMSのプレスリリース

【新薬開発】


ファイザー/ビオンテック陣営も二種混合ワクチンの製剤見直しへ
(2024年8月16日発表)

ファイザーとドイツのビオンテックは、インフルエンザとCOVID-19の二種混合mRNAワクチンの開発状況をアップデートした。18~64歳を組入れた第3相試験で共同主評価項目の一つであるSARS-CoV-2に対する免疫原性は両社のCOVID-19ワクチンComirnatyと非劣性だったが、インフルエンザ・ウイルスに対してはA型に関しては承認されているワクチンを上回ったもののB型では抗体価幾何平均値も抗体陽転率も見劣りしたため、非劣性を達成できなかった。改良を検討する考え。

インフルエンザのmRNAワクチンはB型のデータが今一つで、ライバルのモデルナも最初の第3相がフェール、製剤改良後の第3相で遂にVictoria株にもYamagata株にも非劣性達成した。

ビオンテック陣営も第1世代の4価インフルエンザ・ワクチンは第3相試験の65歳以上のコフォートにおけるワクチン効率が承認ワクチン比非劣性ではなく、18~64歳のコフォートでもB型には十分な効果が確認されなかった(あまり流行しなかったことも影響したかもしれない)。今回、第2世代3価インフルエンザ・ワクチンの18-64歳を組入れた第2相でA型・B型ともに強固な免疫応答が見られたことも発表されており、65歳以上の試験で再現されるようなら、先行するモデルナとの差をこれ以上広げずに済むだろう。

リンク: 両社のプレスリリース


インサイト、抗癌剤の適応拡大試験が成功
(2024年8月15日発表)

Incyte(Nasdaq:INCY)はMonjuvi(tafasitamab-cxix)の第3相濾胞性リンパ腫試験、inMIND試験で主目的などを達成したと発表した。適応拡大申請する考え。

Fc領域装飾抗CD19抗体で、20~21年に米欧で難治/再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫用薬として承認された。20年にMorphoSysからライセンスしたものだが、ノバルティスのMorphoSys買収に伴い、権利を完全取得した。

今回の試験は抗CD20免疫療法または化学免疫療法歴を持つ難治/再発性の濾胞性リンパ腫や辺縁帯リンパ腫を組入れて、 lenalidomideとrituximabのレジメンに追加する便益をオープン・レーベルで検討した。主目的はPFS(無進行生存期間、治験医評価)で、副次的評価項目である盲検独立評価ベースのPFSも成功した。データは未公表。

リンク: 同社のプレスリリース


エムポックス治療薬のリアル・ワールド試験がフェール
(2024年8月15日発表)

SIGA Technologies(Nasdaq:SIGA)はNIAID(米国立アレルギー感染症研究所)が主導したTPOXX(tecovirimat)のエムポックス治療試験、PALM 007がフェールしたと発表した。米国で類似した疾患である天然痘治療薬として承認され、EUではエムポックス(旧称サル痘)や牛痘も含めて21年に例外条項に基づく承認を得ているので意外な、そして残念な結果だ。他にも複数の試験が進行しているので25年頃から結果が判明するのを待ちたい。

TPOXX(欧州名はTecovirimat)はオルソポックス・ウイルスのVP37エンベロープ・ラッピング蛋白を阻害して感染細胞からの出芽を防ぐ経口剤。患者の体重に応じて400~600mgを一日2~3回、服用する。PALM 007は流行の中心地であるコンゴ民主共和国の二施設で体重3kg以上の皮膚病変のあるエムポックス患者597人を入院させて偽薬またはtecovirimatを14日間投与したもの。主評価項目は病変が治癒(かさぶた化、落屑、または新表皮層形成)するまでの期間。データは未公表。

発症7日以内に無作為化割付けされたサブグループや、皮膚病変が10ヶ所以上の重症患者では意味のある改善が見られた由。エムポックスは天然痘ほど重くないので、軽症患者や発症から時間の経った患者には小さな便益しかない可能性も十分考えられる。

このほかに、NIAIDがAIDS Clinical Trials Groupと共にSTOMP試験を米州や日本、南ア、タイで18歳以上の患者を対象に実施中。更に、カナダで18歳以上を対象にPLATINUM-CAN試験、スイス、ブラジル、アルゼンチンの施設で14歳以上のUNITY試験、欧州の施設でEPOXI試験も進行中。

リンク: SIGAのプレスリリース


第3相二本成功し開発停止
(2024年8月13日発表)

米国ロサンジェルスの医薬品開発会社、ACELYRIN(Nasdaq:SLRN)は、ABY-035(izokibep)の第3相化膿性汗腺炎試験で主目的を達成したと発表した。後期第2/第3相乾癬性関節炎試験も既に成功発表しており、承認申請に向かいそうなものだが、進行中の後期第2相/第3相ぶどう膜炎試験を完了まで進める以外はこれ以上の開発を見送る。資金上の制約が理由。経営資源を抗IGF1R抗体lonigutamabにシフトして25年に第3相甲状腺眼症試験を開始する考え。

izokibepはIL-17Aに結合する二つのドメインとアルブミン結合ドメインを持つ18.6kDaの融合蛋白。上記試験では160mgを週一回(乾癬性関節炎試験では2週毎群も)、投与した。乾癬性関節炎試験では週一回群と2週毎群の第16週ACR50達成率が各43%、40%となり、偽薬群の15%を有意に上回った。化膿性関節炎試験では160mg週一回群の第12週HiSCR75達成率が33%と偽薬群の21%を上回った(p=0.0294)。主な有害事象は注射箇所反応。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


小野のDecipheraが腱滑膜巨細胞腫用薬を申請
(2024年8月16日発表)

小野薬品は、6月に完全子会社化したDeciphera PharmaceuticalsがDCC-3014(vimseltinib)を切除不能腱滑膜巨細胞腫(TGCT)の治療薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は25年2月17日。EUでも7月に申請受理されている。

TGCTはCSF1の遺伝子転座がトリガーする希少疾患で、CSF1が過剰発現し受容体陽性炎小細胞の病変に集積する。米国の患者数は9000人程度と推測されている。19年に第一三共のTuralio(pexidartinib)が米国で承認された。同薬はTuralioと同様なCSF1受容体拮抗剤で、第3相MOTION試験で30mgを一日二回、経口投与したところ、ORR(客観的反応率、独立放射線学的評価)が40%と偽薬群のゼロを大きく上回った。メジアン反応持続期間は不明。ORRはTuralioの39%と大差ないが、肝毒性は見られなかった由であり、差別化要因になりうる。

リンク: 小野のプレスリリース(和文)


イミフィンジを小細胞性肺癌に適応拡大申請
(2024年8月15日発表)

アストラゼネカは米国で抗PD-1抗体Imfinzi(durvalumab)を限局型小細胞性肺癌の化学放射線療法後維持療法に適応拡大申請し受理されたと発表した。優先審査で、審査期限は24年第4四半期とだけ公表されている。日本でも7月に申請済み。

同時化学放射線療法に疾病安定または反応した患者に1500mgを4週毎点滴静注する。第3相ADRIATC試験でメジアン生存期間が55.9ヶ月と偽薬群の33.4ケ月を上回り、ハザードレシオは0.73、p=0.01だった。この試験は同社のImjudo(tremelimumab)を併用する群も設定されているが未だ結果が出ていない。

リンク: 同社のプレスリリース


チクングニア熱ワクチンを承認申請
(2024年8月13日発表)

デンマークのワクチン製造会社、Bavarian Nordic(Nasdaq Copenhagen:BAVA)は6月に欧米でチクングニア熱ワクチンのCHIKV VLPを承認申請していたが、米国の審査期限は来年2月14日に決まった。欧州も加速審査を受けているため来年上期には結論が出そうだ。

Emergent BioSolutions(NYSE:EBS)から事業譲渡を受けて入手した、チクングニア・ウイルスのVLP(ウィルス用粒子)にアルミなどを添加したワクチン。12~64歳の3250人を組入れて一回筋注した試験で、第22日中和抗体陽転率が98%と偽薬群の1%を大きく上回った。

リンク: 同社のプレスリリース


老視治療薬を承認申請
(2024年8月12日発表)

米国の LENZ Therapeutics(Nasdaq:LENZ)はLNZ100(aceclidine)を老視における近見視力を改善する薬としてFDAに承認申請した。一日一回点眼用のアセチルコリン受容体アゴニストで、瞳孔収縮作用によりピンホール効果が生じ近見視力が向上すると考えられている。臨床試験では奏効率(近見視力が視力表で3行以上改善し遠見視力は1行以上悪化しない)が偽薬群を有意に上回った。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


人工血管の承認審査が長引く
(2024年8月9日発表)

Humacyte(Nasdaq:HUMA)はFDAにATEV(無細胞性組織工学血管)の承認を申請しているが、審査期限である8月10日の前日に、生物学的製品を所管するCBERのleadership(指導者)から、審査にもっと時間がかかる旨の連絡や謝罪を受けたことを明らかにした。

生分解性ポリマーで2ヶ月間組織培養した上で拒絶反応などの原因になる細胞由来の物質を除去したもの。各種事故などにより下肢血管が損傷し自家静脈移植が困難な患者を組入れた第2相で、評価対象51人の30日二次開存率が90.2%だった。対照群に設定された人工血管の文献データは78.9%だった。一次開存率は84.3%、文献データは無い。FDAの提案により、ウクライナの病院における戦時損傷者に対する人道的使用16人の症例も提出した。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認】


イミフィンジが肺癌の術前術後付随療法として承認
(2024年8月15日発表)

FDAはアストラゼネカのImfinzi(durvalumab)を切除可能非小細胞性肺癌の摘出術の前と後に投与する用法を承認した。EGFR変異やALK再編成のない癌が適応になる。エビデンスとなる第3相AEGEAN試験では、化学療法による術前付随療法にImfinziを追加し、術後も単剤投与する便益を偽薬追加・投与群と比較したところ、EFS(進行などの事象を伴わずに生存、盲検独立中央評価)のハザードレシオが0.68、p=0.0039だった。

既報のように、7月の諮問委員会では術前療法と術後療法の便益を別々に検討すべきという点で投票権を持つ委員全員が一致したが、本件に関しては、追加試験を要請して承認が遅れるのは望ましいことではないと考える委員が多かったようだ(正式採決は無し)。諮問委員会から承認まで1ヶ月以上かかることが多いが、本件は3週間と早かった。

図表:抗PD-(L)1抗体の非小細胞性肺癌術前/術後試験のサマリー
介入時期試験名試験薬ハザードレシオ
術後IMpower-010atezolizumab0.66 (0.50-0.88)
KEYNOTE-091pembrolizumab0.73 (0.60-0.89)
ADJUVANT BR.31durvalumab有意差なし
術前CHECKMATE-816nivolumab0.63 (0.45-0.87)
術前術後KEYNOTE-671pembrolizumab0.58 (0.46-0.72)
AEGEANdurvalumab0.68 (0.53-0.88)
CHECKMATE-77Tnivolumab0.58(0.42-0.81)
注:ハザードレシオの対象はEFS(無イベント生存期間)またはDFS(無病生存期間)、偽薬対照。ADJUVANT BR.31試験はPD-L1発現>25%のサブグループのDFS。カッコ内は95%信頼区間。
出所:各種資料より作成。

リンク: FDAのプレスリリース


ギリアド、原発性胆管炎治療薬が承認
(2024年8月14日発表)

ギリアド・サイエンシズはFDAがLivdelzi(seladelpar)を成人のPBC(原発性胆管炎)の治療薬として加速承認したと発表した。第一選択であるUDCA(ウルソデオキシコール酸)に応答不十分の患者に追加投与、またはUDCA不耐に単剤投与する。臨床試験では血清アルカリ・フォスファターゼなどの代理マーカーが改善した掻痒スコアも偽薬比有意に改善した。。延命効果や非代償性肝炎のリスクを抑制する作用は別途、確認試験中。

PPARデルタ・アゴニストで10mgを一日一回経口投与する。2006年にJanssen Pharmaceuticaから権利を取得して開発したCymaBay Therapeuticsを、今年3月に企業価値ベース43億ドルで買収して入手したもの。日本の権利は昨年1月に科研製薬が取得した。

類薬はイプセンがGenfit(Nasdaq:GNFT)からライセンスしたPPARアルファ/デルタ・アゴニストが6月にIqirvo(elafibranor)として承認された。どちらも一ヶ月分の価格は12000ドル前後。

リンク: ギリアドのプレスリリース


インサイトの慢性GvHD治療薬が承認
(2024年8月14日発表)

FDAはIncyte (Nasdaq:INCY) の抗CSF-1受容体抗体Niktimvo(axatilimab-csfrand)を慢性GvHD(移植片対宿主病)の治療薬として承認した。二次治療歴を持つ体重40kg以上の小児と成人が適応になる。推奨用量0.3mg/kg(上限36mg)を2週毎に30分点滴静注する。241人を組入れた第2相試験でORR(客観的反応率、2014年NIHコンセンサス基準)が75%だった。投与開始から反応までのメジアン期間は1.5ヶ月、反応持続期間は1.9ヶ月、12ヶ月反応持続率(新規全身性治療を開始せずに生存;反応持続期間とは異なり進行の有無は不問)は60%だった。深刻有害事象発生率は44%。

剤形は50mgバイアルのみだが同社は低量バイアルを承認申請する予定。

16年にSyndax Pharmaceuticals (Nasdaq:SNDX)がUCBのUCB6352をライセンス、Incyteは21年9月に開発商業化権を取得し、米国は共同販売、海外は単独開発販売する。

IncyteはJAK阻害剤Jakafi(ruxolitinib)も21年に慢性GvHDに適応拡大している。臨床成績はNiktimvoと大きくは変わらない。

リンク: FDAのプレスリリース


ネモリズマブが米国でも承認
(2024年8月13日発表)

スイスのガルデルマは、FDAがNemluvio(nemolizumab-ilto)を成人の結節性痒疹の治療薬として承認したと発表した。中外製薬が開発し日本ではマルハが販売するミチーガの活性成分をデュアル・チャンバー・プリフィルド・ペンに仕立てたもの。初回は30mgを二回、皮下注し、その後は4週毎に体重90kg未満の場合は一回、以上の場合は二回ずつ、投与する。臨床試験では16週奏効率(PP-NRSが4点以上改善)が一本では56%(偽薬群は16%)、もう一本では49%(同16%)だった。IGAベース奏効率は各26%(7%)と38%(11%)だった。

同社はアトピー性皮膚炎にも承認申請しているが、結節性痒疹は優先審査指定されたため早く結果が出た。

リンク: 同社のプレスリリース


新たなrhPTH(1-34)が承認
(2024年8月12日発表)

FDAはアセンディス・ファーマ (Nasdaq: ASND) のYorvipath(palopegteriparatide、開発名TransCon PTH)を成人の副甲状腺機能低下症の治療薬として承認した。カルシウム製剤及び活性化ビタミンD(Ca+avD)でプリトリートした患者を組入れた第3相試験で、24週総合反応率(アルブミン調整血清カルシウム(ACSCa)水準が正常化などのハードルをクリア)が68.9%と偽薬群追加群の4.8%を大きく上回った。有害事象は注射箇所反応や血管拡張の兆候症状、頭痛などが増加した。18mcg一日一回皮下注で開始し、ACSCa水準をモニターしながらCa+avDとともに用量調整する。承認申請は22年8月なのでほぼ丸々2年かかった。発売は24年第4四半期以降になる予定。

副甲状腺ホルモンのプロドラッグをPEG化した遺伝子組換え医薬品。同適応を持つ武田薬品のNatparaは遺伝子組換え型ヒト全長PTHで、50mcg一日一回皮下注で開始し滴定する。2002年に米国で骨粗鬆症用薬として承認されたイーライリリーのForteoは遺伝子組換え型ヒトPTH(1-34)で20mcgを一日一回皮下注する。Natparaはゴム部品断片の混入の恐れから19年に米国でリコールとなり、24年末を持って全世界における販売が終了する予定。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: 同社のプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
24年8月推ノバルティスのKisqali(ribociclib、乳癌摘出術後アジュバント)
24年8月推JNJのRybrevant(amivantamab-vmjw)とlazertinib(ex19del/L858R NSCLC)
24/8/22Regeneron PharmaceuticalsのREGN5458(linvoseltamab、多発骨髄腫)
24年9月推JNJのDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj、HSCT補助療法)
24年9月ロシュのOcrevus皮下注(ocrelizumab、hyaluronidase、多発性硬化症)
24/9/5Travere TherapeuticsのFilspari(sparsentan、IgA腎症本承認切替)
24/9/18Vanda PharmaceuticalsのVLY-686(tradipitant、胃麻痺)
24/9/21Zevra Therapeuticsのarimoclomol(ニーマン・ピック病C型)
24/9/24IntraBioのIB1001(ニーマン・ピック病C型)
24/9/26Karuna Therapeutics(BMS)のKarXT(xanomelineとtrospium、統合失調症)
24/9/26Syndax PharmaceuticalsのSNDX-5613(revumenib、難治再発KMT2A再編成急性白血病)
24/9/27リジェネロンのDupixent(dupilumab、好酸球性COPDを追加)
24/9/27サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、未治療多発骨髄腫4剤併用)
諮問委員会
24/9/9AMDAC:Iterum Therapeuticsのsulopenem etzadroxil/probenecid錠(非複雑性尿路感染症)



今週は以上です。

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