【ニュース・ヘッドライン】
- サークリサの移植可能多発骨髄腫試験が成功
- エムパベリの希少疾患試験が成功
- Aldeyra、ドライアイ治療薬の追加試験が成功
- バイエル、ケレンディアの心不全アウトカム試験が成功
- MSD、抗TIGHT抗体の第3相がまたフェール
- Actinium、提携先が見つかるまでIomab-Bの開発を見送り
- Exelixis、Cabometyxの適応拡大を申請
- MDMAは承認されず
- ノボ、セマグルチドの心不全適応拡大申請を撤回
- 百済神州、抗PD-1抗体の適応拡大がまた遅延
- 初の点鼻用アドレナリンが承認
- FDAが凍結乾燥血漿をEUA
- レミトロが米国でも承認
- セルビエ、IDH阻害剤が米国で承認
- ファビハルタがIgA腎症に適応拡大
- Purdue社の新製品が承認
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【新薬開発】
サークリサの移植可能多発骨髄腫試験が成功
(2024年8月8日発表)
サノフィはドイツなどの研究者共同治験グループが主導したSarclisa(isatuximab)のGMMG-HD7試験が主目的を達成したと発表した。データは学会で公表される予定、用法追加申請も行われるだろう。
20年に米欧日で多発骨髄腫の再発治療薬として承認された抗CD38抗体。幹細胞移植不適な患者の一次治療にRVdレジメン(Revlimid、Velcade、dexamethasone)に追加する用法拡大申請中だが、今回の試験は、幹細胞移植を受ける多発骨髄腫患者にRVdレジメンによる移植前導入療法を施行する時にSarclisaを追加する便益を検討したもの。PFS(無進行生存期間)がRVdレジメンだけの群を有意に上回った。移植後維持療法の内容を問わず便益が見られた。
同薬の類似した試験では第3相IsKia試験で移植可能新患多発骨髄腫にKRdレジメン(Kyprolis、Revlimid、dexamethasone)と併用したところ、最小残存病変(MRD)すら検出されない反応率が導入療法後で45%とKRdレジメンだけの26%を上回った。地固め療法後でも77%対67%、オッズ比1.67だった(但しp=0.049とボーダーライン近辺)。4月のFDA腫瘍学諮問委員会で、この厳しい判定基準に基づく反応率が臨床的便益のサロゲートマーカーになりうると認められたので、今後はまず無MRD反応率で加速承認を取り、同じ試験のPFSで本承認に切替える開発方針が広がるかもしれない。
リンク: 同社のプレスリリース
エムパベリの希少疾患試験が成功
(2024年8月8日発表)
Apellis Pharmaceuticals(Nasdaq:APLS)と開発販売パートナーのSobi(STO:SOBI)は、Empaveli(pegcetacoplan)が第3相VALIANT試験で主目的を達成したと発表した。適応拡大申請に向かうのではないか。12歳以上のC3糸球体症やIC-MPGN(免疫複合体膜性増殖性糸球体腎炎)の患者124人を組入れて、偽薬またはEmpaveliを週2回、26週間投与したところ、蛋白尿(尿蛋白クレアチニン比の対数変換値)が偽薬比68%減少した。C3糸球体症の患者にもIC-MPGNにも、成人にも青年にも、腎移植後でもそれ以外でも、便益が見られた。eGFR安定化なども加味した副次的複合評価項目も達成した。
皮下注用C3補体阻害剤で、21~23年に米欧日で発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬として承認された。硝子体注射用製剤が加齢性黄斑変性に伴う地図状萎縮の治療薬Syfovreとして米国で23年に承認されたが日常生活機能は改善しないことなどからEUでは承認されなかった。
リンク: 同社のプレスリリース
Aldeyra、ドライアイ治療薬の追加試験が成功
(2024年8月8日発表)
Aldeyra Therapeutics(Nasdaq:ALDX)はADX 102(reproxalap)の第3相チャンバー試験で主目的を達成したと発表した。年内に米国で再承認申請する予定。
RASP(反応性アルデヒド種)調節剤で、免疫原となる有機アルデヒド遊離体に結合し炎症を抑制する。0.25%点眼液。第3相試験二本でシルマー・テスト値(検査紙を下瞼に挟み涙の量を測定する)に偽薬群比有意な差が確認され、ドライアイ疾患チャンバー試験(目に乾燥した風を100分間当てる)で偽薬投与時より症状スコアの悪化が有意に小さかった(こちらはクロスオーバー試験)。しかし、FDAがドラフト・ガイダンスで示した兆候改善作用を支持する試験二本と症状改善作用を支持する試験二本という要求を満たしていないと判定され、昨年11月に審査完了通知を受領した。
追加試験もチャンバー試験で、試験薬投与時は第80~100分の症状評価スコア(0~100点)がベースライン比2点程度の悪化に留まり、偽薬投与時より5点程度小さかった(点数はグラフから読み取り)。p値は0.004だった。両群とも最初の40分は次第に悪化していったが二回目の点眼後は両群とも悪化が小さくなった。群間差は早い段階から広がり、維持された。
同社は審査完了通知受領の数週間前にアッヴィに開発生産販売オプションを供与しており、行使された場合、米国は共同販売、海外はアッヴィが単独販売することになる。
リンク: Aldeyraのプレスリリース
バイエル、ケレンディアの心不全試験が成功
(2024年8月5日発表)
バイエルはKerendia(finerenone)の心不全アウトカム試験、FINEARTS-HFで主目的を達成したと発表した。データをESC(欧州心臓学会)会議で発表し、適応拡大に向けて当局と相談する考え。
非ステロイド系のミネラルコルチコイド受容体拮抗剤(MRA)で、21~22年に米欧日で二型糖尿病関連慢性腎不全における心血管転帰を改善する薬として初承認された。FINEARTS-HF試験はNYHAクラスII-IVの症候性心不全で駆出率が軽度低下・保持(LVEF≧40%)されている患者約5500人を日米欧などの施設で組み入れ、10~20mgを一日一回投与する群と偽薬群の心不全転帰(心血管死または心不全による初度/再入院や緊急受診)を比較したもの。
リンク: 同社のプレスリリース
MSD、抗TIGHT抗体の第3相がまたフェール
(2024年8月8日発表)
MSDはMK-7684A(vibostolimab)とKeyturda(pembrolizumab)の固定用量配合剤で様々な第3相試験を実施しているが、二本目の中途打切りが決まった。抗TIGHT抗体は、抗PD-(L)1抗体に次ぐ、そして併用効果が期待できる、有望な免疫強化療法の一つと考えられてきたが、他社開発品も含め、どうもパッとしない。
5月にはステージII-IV黒色腫の切除術後療法としての便益をKeytruda群と比べたKEYVIBE-010試験の中間解析で独立データ監視委員会が無益認定、中止が決まった。今回は進展型小細胞肺癌の一次治療における便益を検討したKEYVIBE-008試験の中間解析で無益認定、中止が決まった。どちらも抗PD-(L)1にMK-7684Aを追加しても寿命(前者は無再発生存期間、後者は全生存期間)は伸びず副作用が増えるだけという結果になった。
リンク: 同社のプレスリリース
Actinium、提携先が見つかるまでIomab-Bの開発を見送り
(2024年8月5日発表)
米国ニューヨークの放射性医薬開発会社、Actinium Pharmaceuticals(NYSE AMERICAN:ATNM)は、Iomab(I-131 apamistamab)の承認申請を断念し、パートナーが現れるまで開発を見送る方針転換を発表した。FDAが承認申請前会議で後ろ向きだったため。
Fred Hutchinson Cancer Research Centerからライセンスした抗CD45抗体・ヨウ素131結合体。第3相SIERRA試験で北米の55歳以上の活性期難治再発急性骨髄性白血病153人を組入れ、他家造血幹細胞移植前の骨髄枯渇処理として強度軽減前処理(fludarabineと低量全身照射)に併用する群の持続的完全寛解率をvenetoclaxなどを併用する標準的強度軽減前処理群と比較したところ、22%対ゼロで統計的に有意な差があった。対照群の過半がクロスオーバーしたことなどから延命効果は確立していないが、クロスオーバーしなかったサブグループの1年生存率は13%で試験薬群の26%を下回った。
しかし、FDAは、全生存期間を主評価項目とするクロスオーバー不可の対照試験を推奨した。対照群の併用薬をcyclophosphamideに限定することも推奨した。
急性骨髄性白血病で骨髄移植を受ける患者は米国より欧州のほうが多い模様で、同社はスエーデンのImmedica ABに欧州中東北アフリカにおける権利を供与している。契約一時金3500万ドルの小さなディールだ。第3相をもう一本行うのは資金的に難しい模様であり、パートナーが現れるまでは他の前臨床段階のパイプラインに集中する考え。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認申請】
Exelixis、Cabometyxの適応拡大を申請
(2024年8月6日発表)
Exelixis(Nasdaq:EXEL)は米国でマルチ・キナーゼ阻害剤Cabometyx(cabozantinib)の適応拡大を申請し受理されたと発表した。成人の、治療歴のある、局所進行/切除不能または分化/中程度分化した、膵臓または膵外のNET(神経分泌細胞腫)に用いるもので、審査期限は来年4月3日。第3相CABINET試験でPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)の偽薬比ハザード・レシオが膵NETコフォートでは0.25、膵外NETコフォートでは0.50だった。
同社はロシュと提携し様々な癌で抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)併用第3相試験を実施している。非小細胞性肺癌はフェールしたが、今回、転移去勢抵抗性前立腺癌のCONTACT-02試験に基づき、適応拡大申請する考えも明らかにした。新ホルモン療法(abiraterone、apalutamide、darolutamide、enzalutamide)の一つによる治療歴を持つ患者を組入れて、Cabometyx・Tecentriq併用群のPFS(同上)をabiraterone・prednisone併用またはenzalutamideにスイッチする群と比較したもので、中間解析でハザードレシオ0.64となり成功認定された。全生存期間の解析は中間だけでなく最終解析でもトレンドに留まったことが明らかにされたが、数値が中間解析のハザード・レシオ0.79、メジアン値の差2ヶ月弱からどう変わったかは不明。
リンク: 同社のプレスリリース(NDA受理)
リンク: 同(中間決算発表リリース:CONTACT-02試験について言及)
【承認審査・委員会】
MDMAは承認されず
(2024年8月9日発表)
Lykos Therapeutics(旧社名MAPS PBC)はMDMAカプセル(midomafetamine)をPTSD(トラウマ後ストレス障害)の精神療法補助療法としてFDAに承認申請していたが、審査完了通知を受領した。追加的薬効・安全性確認試験の実施を推奨されたが、資金面の制約もあり、再審査請求や不服申立てなどの手続きを取る考え。
同社は非営利研究教育機関であるMultidisciplinary Association for Psychedelic Studiesがサイケデリックやマリファナなどの医療用途を探求すべく2014年に設立したPublic Benefit Corporation(株主だけでなく公益の追及も求められる州法上の法人形態)。現在、複数の企業がこれらの物質を医療用途で開発しているが、同社が昨年12月に承認申請第1号となった。しかし、FDAの評価は厳しく、6月に開催された諮問委員会でも便益が危険を上回ると判定した委員は11人中1人だけだった。偽薬と異なり気分に影響するため二重盲検が担保されず、第三者がテレビ会議で重症度を評価する評価者盲検が導入されたがこちらも推測不可能ではないことや、乱用リスクや心血管安全性などの検討が不十分と見做されたことが響いた。
承認申請時点ではここまで厳しい評価を受けるとは思わなかった。
他の未承認医薬品や健康食品、健康法、宗教信条でもしばしば見られることだが、特定の人たちが熱心に支持していても、ほかの人たちは無関心で一部の人たちは批判的という言説は珍しくない。大学教授が言うことでも、医学博士でも、傾聴する時は民主主義国には言論の自由があることを失念してはいけないと、思い知らされた。
リンク: Lykosのプレスリリース
ノボ、セマグルチドの心不全適応拡大申請を撤回
(2024年8月7日発表)
ノボ ノルディスクは、24年上半期決算発表にあわせて、大ヒット肥満症治療薬Wegovy(semaglutide)の心不全効能追加申請を米国では撤回したことを明らかにした。理由は不明だが、患者の主観的評価がある程度改善するだけでは足りないと判断されたのではないだろうか。入院死亡リスク抑制効果の代理マーカーになりうることを示す意図なのか、現在効能追加申請中の糖尿病性腎症アウトカム試験、FLOWのデータなどを25年初めに提出して再申請する考え。
申請の根拠はHFpEF(駆出率保持心不全)のSTEP HFpEF試験二本。一本はWegovyの適応である肥満症を伴う患者、もう一本は米国ではOzempic名で販売されている製品の適応である二型糖尿病を伴う患者を組入れて52週間治療し、KCCQ-CSS(カンザスシティ心筋症質問票臨床要約スコア)と体重の変化を偽薬群と比較した。KCCQ-CSSは群間差がどちらも8点前後、体重減は群間差が6~10%程度だった。6分歩行テストも17メートル程度の差があった。
KCCQ-CSSはKCCQの総合症状スコア(下肢腫脹や疲労・息切れなどによる行動制約の発生頻度や程度を評価)と身体制約スコア(日常生活機能に関わる6項目を評価)を複合したもの。点数範囲は0~100で高いほどQOLが高い。患者が自記する。近年に心不全関連の適応を得た薬の第3相を見ると、ATTRアミロイドーシス治療薬も、閉塞性肥大性心筋症治療薬も、KCCQ-CSSは副次的評価項目で、主評価項目は入院や死亡などのもっと深刻な、主観の入る余地が少ないイベントのリスクだ。FDAは20年4月の評価文書でKCCQはHFpEFなどの評価項目として妥当と認めているが治験開始前に相談するよう求めている。統計的に有意であることは最低要件として、どの程度差があれば臨床的に意味があるか、判然としないからだろう。
ライバルのイーライリリーはイーライリリーはGLP-1/GIP作用剤Zepbound(tirzepatide)の第3相SUMMIT試験で共同主評価項目を達成したと発表した。KCCQ-CSSの群間差は7点程度でWegovyと大差なく、心不全イベント(緊急心不全受診、心不全入院、経口利尿薬治療強化、または心血管死)のハザード・レシオは0.63、p=0.026と良好な結果だが、ノボの試験にも言えることだが、数百人規模の試験で心不全入院/心血管死に有意な差が出るようには思えず、各エンドポイントの内訳が公表されるまでは、KCCQ-CSSは心不全転帰の代理マーカーになりうるとは言い難い。
もしハードなエンドポイントも改善しているならば、もしかしたら、SUMMIT試験が裏付けとなってsemaglutideの心不全転帰改善作用が承認されるような、敵塩逸話になるかもしれない。
リンク: ノボの決算発表リリース(GlobeNewsWire、pdfファイル)
リンク: StogiosらのKCCQ-CSSに関する総論(European Journal of Heart Failure、2021年)
百済神州、抗PD-1抗体の適応拡大がまた遅延
(2024年8月7日発表)
BeiGene(百済神州、Nasdaq:BGNE、HKEX:6160)は米国で抗PD-1抗体Tevimbra(tislelizumab-jsgr)を食道扁平上皮腫の一次治療薬として適応拡大申請していたが、承認が遅延していることを24年第2四半期決算発表時に公表した。中米欧日などで未治療の切除不能/局所進行/難治/転移性の患者を組入れたRATIONAL 306試験の中間解析で化学療法に追加した群の全生存期間のハザード・レシオが0.66と良好な結果を出したが、治験実施施設の査察が遅延し、7月の審査期限に間に合わなかった。
同社は一部の中国企業と異なり欧米の施設も巻き込んで同薬の第3相試験を行っており、23年にEU、24年に米国で初承認された。米国が遅れたのは米国政府職員の渡航制限などにより生産委託先の中国工場の査察ができなかったため。Tevimbraは胃/胃食道接合部腺腫の一次治療にも適応拡大申請されており、審査期限は12月となっているが、こちらは大丈夫なのだろうか?
リンク: BeiGeneのプレスリリース
【承認】
初の点鼻用アドレナリンが承認
(2024年8月9日発表)
FDAはepinephrineの初めての点鼻用スプレーを承認した。ARS Pharmaceuticals(Nasdaq:SPRY)のneffyで、成人と体重30kg以上の小児のI型アレルギー反応(アナフィラキシーを含む)の救急治療に用いる。薬物動態・薬力学的試験(PK・PD)で血中濃度が注射用製品と同程度だった。注射用薬と同様に、症状が改善しなかったら(同じ鼻腔に)再点鼻する。欧州でも6月にEURneffy(adrenaline)名でCHMPの肯定的意見を得ている。
22年10月に承認申請、23年5月に諮問委員会で大多数が支持したが、反復投与時のPK・PD試験を承認の後ではなく前に実施するよう求められ、審査完了通知を受領した。昨年8月のガイダンスに即してnitrosamine試験も求められ、当初見込みから1年以上遅れて承認された。
リンク: FDAのプレスリリース
FDAが凍結乾燥血漿をEUA
(2024年8月9日発表)
FDAはOctapharma Pharmazeutika Produktionsges.m.b.H.(スイスのOctapharmaのオーストリア子会社)のoctaplasLG PowderをEUA(非常時使用認可)した。戦闘中の火器や爆弾などによる出血/血液凝固異常を治療する際に、血漿が入手できない、または使用が現実的でない場合に用いる。
370~1520人から採取した血液を凍結乾燥した製品。冷蔵不要、2~25℃で保存でき、有効期間が2年間と長いことが特徴。A型とAB型の製品しかEUAされていない。凍結乾燥血漿は日本企業も米国連邦政府の要請に基づき開発を進めている。
リンク: FDAのプレスリリース
レミトロが米国でも承認
(2024年8月8日発表)
Citius Pharmaceuticals(Nasdaq:CTXR)はFDAがLymphir(denileukin diftitox-cxdl)を全身性治療歴を持つ成人のステージI-IIIの難治/再発皮膚T細胞リンパ腫用薬として承認したと発表した。IL-2受容体に結合するタンパクとジフテリア毒素を細胞融合したもので、IL-2受容体CD25サブユニット陽性菌状息肉腫やセザリー症候群組入れた試験でORR(客観的反応率、独立評価)が36%、完全反応率は8.7%、メジアン反応持続期間は6.5ヶ月だった。致死例もある毛細管漏出症候群が枠付き警告されている。
同社にとって最初の製品なので販売体制を整えるため資金調達が必要だが、希薄化を回避するために腫瘍学事業をCitius Oncologyとしてスピンアウトし、SPAC(将来の事業会社合併を視野に上場したペーパー・カンパニー)であるTenX Keane Acquisition(Nasdaq:TENK)と合併させることを決めている。来年1月までにLymphirを発売する考え。
米国で99年に加速承認されたが14年に自主回収となってしまったONTAK(denileukin diftitox)の純度を高めたもので、日本ではエーザイが開発要請に応じて21年にレミトロ名で承認を取得している。CitiusはエーザイからライセンスしたDr. Reddy'sから欧米などの権利を取得した。
リンク: Citiusのプレスリリース
セルビエ、IDH阻害剤が米国で承認
(2024年8月8日発表)
セルビエはFDAがVoranigo(vorasidenib)を12歳以上の小児・成人のグレード2星状細胞腫/乏突起神経膠腫用薬として承認したと発表した。IDH1またはIDH2に感受性変異を持つ手術後(生検なども含む)の癌が適応になる。欧州でも承認申請中。
Agios Pharmaceuticalsの腫瘍学ポートフォリオを2020年に買収して得たIDH阻害剤。摘出術後に残余病変が残った、あるいは再発した患者の初めての薬物療法としての便益を偽薬と比較した試験でPFS(無進行生存期間、盲検独立放射線学的評価)のハザードレシオが0.39だった。
リンク: セルビエの米国法人のプレスリリース
ファビハルタがIgA腎症に適応拡大
(2024年8月8日発表)
ノバルティスはFabhalta(iptacopan)が米国で成人の原発性免疫グロブリンA腎症(IgA腎症)に適応拡大したと発表した。UPCR(尿蛋白クレアチニン比)改善作用に基づく加速承認で、同じ試験のもう一つの主評価項目であるeGFR(推算糸球体濾過量)が確認された段階で本承認切替を申請する考え。
可逆的B因子阻害剤で23~24年に米欧日で発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療薬として承認された。経口剤であることやARBと併用できることが長所。PNHと異なりIgA腎症は競合薬の価格水準が半分以下であることが販促面のハンデ。
リンク: 同社のプレスリリース
Purdue社の新製品が承認
(2024年8月7日発表)
Purdue Pharma L.P.はFDAがZurnai(nalmefene hydrochloride)をオピオイド過剰摂取の救急治療薬として承認したと発表した。12歳以上の患者に皮下または筋肉注射する。活性成分は昔から使われているが、オート・インジェクター製品は初。
同社はオピオイド治療薬の販売などに関して数多くの訴訟が提起され、20年に米国連邦司法省と刑事民事合わせて63億ドルの支払いで和解、21年にはNY破産裁判所で企業清算・公益法人化が承認された。創業家であるSacklers一族の賠償については最高裁が高裁決定を僅差で破棄・差戻しし、破産宣告していないのに上限額を決める場合は、債権者やオピオイド被害者の同意が必要と断じた。
オピオイド乱用は専ら米国に特異的な現象なので関連企業の命運には関心が薄れた。被害者救済や公益に資するとはいえ、未だ事業活動を続けているとは知らなかった。
リンク: 同社のプレスリリース
【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】
PDUFA | |
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24年8月推 | ガルデルマのnemolizumab(結節性掻痒とアトピー性皮膚炎) |
24年8月推 | ノバルティスのKisqali(ribociclib、乳癌摘出術後アジュバント) |
24年8月推 | JNJのRybrevant(amivantamab-vmjw)とlazertinib(ex19del/L858R NSCLC) |
24/8/10 | Humacyteの人無細胞性血管(緊急動脈再建術) |
24/8/14 | CymaBay/ギリアドのseladelpar(原発性胆管炎) |
24/8/14 | アセンディス・ファーマのTransCon PTH(palopegteriparatide、副甲状腺ホルモン低下症) |
24/8/22 | Regeneron PharmaceuticalsのREGN5458(linvoseltamab、多発骨髄腫) |
24/8/28 | Incyteのaxatilimab(慢性GvHD3L) |
24年9月推 | JNJのDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj、HSCT補助療法) |
24年9月 | ロシュのOcrevus皮下注(ocrelizumab、hyaluronidase、多発性硬化症) |
24/9/5 | Travere TherapeuticsのFilspari(sparsentan、IgA腎症本承認切替) |
24/9/18 | Vanda PharmaceuticalsのVLY-686(tradipitant、胃麻痺) |
24/9/21 | Zevra Therapeuticsのarimoclomol(ニーマン・ピック病C型) |
24/9/24 | IntraBioのIB1001(ニーマン・ピック病C型) |
24/9/26 | Karuna Therapeutics(BMS)のKarXT(xanomelineとtrospium、統合失調症) |
24/9/26 | Syndax PharmaceuticalsのSNDX-5613(revumenib、難治再発KMT2A再編成急性白血病) |
24/9/27 | リジェネロンのDupixent(dupilumab、好酸球性COPDを追加) |
24/9/27 | サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、未治療多発骨髄腫4剤併用) |
諮問委員会 | |
24/9/9 | AMDAC:Iterum Therapeuticsのsulopenem etzadroxil/probenecid錠(非複雑性尿路感染症) |
今週は以上です。
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