2024年8月3日

第1066回

【ニュース・ヘッドライン】

  • リリーのGLP-1作用剤も心不全アウトカム試験が成功 
  • インサイト、抗PD-1抗体の第3相が二本成功 
  • 未治療CLLのカルケンス三剤併用試験の一部が成功 
  • CETP阻害剤の第3相が成功 
  • ファイザー、DMD遺伝子療法の開発を中止 
  • FibroGen、抗CTGF抗体の第3相が5連敗に 
  • バイエル、VMS用薬を承認申請 
  • Vertex、新規作用機序の鎮痛剤を承認申請
  • セムブリックスの一次治療を承認申請 
  • FDA諮問委員会、NPC用薬の便益を多数が認めた 
  • MAGE-A4標的T細胞療法が承認 
  • GSK、抗PD-1抗体の子宮体がん適応範囲が拡大 
  • 移植適合多発骨髄腫のD-VRdレジメンが承認 
  • galantamineプロドラッグがアルツハイマー病に承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


リリーのGLP-1作用剤も心不全アウトカム試験が成功
(2024年8月1日発表)

イーライリリーはGLP-1/GIP作用剤Zepbound(tirzepatide)の第3相心不全アウトカム試験、SUMMIT試験で共同主目的を達成したと発表した。効能追加を申請するのではないか。

米州中印露などの施設でHFpEF(左心駆出率保持の心不全)を伴う肥満症患者731人を組入れて偽薬またはtirzepatideを週一回皮下注し転帰を比較したもの。二型糖尿病の有無は不問。主評価項目のうち、急性心不全受診、心不全入院、経口利尿薬治療強化、または心血管死の何れかが発生するまでの期間を評価した複合評価項目はハザードレシオ0.63、p=0.026だった。もう一つの、第52週におけるKCCQ-CSS(カンザスシティ心筋症質問票臨床要約スコア)の改善は偽薬群が12.7点、試験薬群は19.5点だった(投与中止例も継続評価する「治療レジメン・エスティマンド」ベース、p値は不記載)。

前者の解析は、服薬増量と心血管死は患者にとって大きな違いなので、項目毎のデータも必要だ。p値も気になる水準だが、アルファの配分など多重性補正方法は記載されていない。

競合品であるノボ ノルディスクのGLP-1作用剤Wegovy(semaglutide)はSTEP HFpEF試験二本のうち肥満症併発患者に2.4mgを週一回皮下注した試験で第52週のKCCQ-CSSがベースライン値の59点から偽薬群は8.7点、試験薬群は16.6点改善し、p<0.001だった。糖尿病併発患者を組入れた試験では各群6.4点と13.7点上昇した。尚、肥満症試験の数値は「治療ポリシー・エスティマンド」ベースでtirzepatideの数値と比較可能と思われるが、後者のベースは論文抄録には記されていない。製薬会社は試験薬の効果だけが反映される「試験薬エスティマンド」を好む傾向があるが、FDAはintent-to-treatと同様に医師や患者が期待すべき効果が示唆される「治療ポリシー・エスティマンド」を重視しており、少なくともこれまでは、レーベルに記載されるのはこちらのデータだけである。

異なった薬の異なった試験のデータなので大雑把な比較しかできないが、KCCQ-CSSの治療効果(偽薬群との差)は大差ないように見える。

リンク: イーライリリーのプレスリリース


インサイト、抗PD-1抗体の第3相が二本成功
(2024年7月30日発表)

インサイト(Nasdaq:INCY)は2024年第2四半期決算発表の中で、Zynyz(retifanlimab-dlwr)の第3相肛門癌試験と同じく非小細胞性肺癌試験で主目的を達成したことを明らかにした。データは未公表。

17年にMacroGenicsからライセンスした抗PD-1抗体。23年に米国で全身性治療を初めて受ける転移/難治局所進行メルケル細胞腫に単剤投与する薬として加速承認され、今年4月にはEUでも通常承認された。

インサイトは21年に第2相肛門癌試験に基づき欧米で承認申請したが、成就しなかった。今回の第3相Podium-303試験は化学療法歴のない切除不能局所再発/転移肛門管扁平上皮腫瘍を組入れて、carboplatinとpaclitaxelの標準療法に追加する便益を偽薬追加群と比較した。主評価項目はPFS(無進行生存期間)。もう一つの第3相PODIUM-304試験は転移非小細胞性肺癌の一次治療として白金薬ベースの化学療法に追加する便益を偽薬追加と比較した。主評価項目は全生存期間。この用途では抗PD-(L)1と三剤併用するのが標準療法と思われるので、MSDのKeytruda(pembrolizumab)の治験成績を外挿して真贋を測る工夫が必要だろう。

リンク: 同社のプレスリリース


未治療CLLのカルケンス三剤併用試験の一部が成功
(2024年7月29日発表)

アストラゼネカはBTK阻害剤Calquence(acalabrutinib)の第3相AMPLIFY試験の中間解析でvenetoclax(アッヴィ/ジェネンテックのbcl-2阻害剤Venclexta)及びobinutuzumab(ロシュの抗CD20抗体Gazyva)を併用した群のPFS(無進行生存期間)が標準療法群比で統計的に有意且つ臨床的に意味のある延長を果たしたと発表した。データは未公表。現時点では不明な点が多い。

Calquenceは本試験の対象である未治療のCLL(慢性リンパ性白血病)に関して単剤投与とobinutuzumab併用が米国で承認されている。今回の試験は、未治療成人CLL(但し17p欠損型やTP53変異型は除く)をacalabrutinibとvenetoclaxの併用群(以下、AV群)、この二剤とobinutuzumabを決まった期間、三剤併用する群(AVO群)、または標準療法群(SOC群:fludarabine、cyclophosphamide及びrituximabのFCRレジメン又はbendamustineとrituximabのFRレジメン)に無作為化割付けして、オープンレーベルでPFSを比較した。主評価項目はAV群とSOC群のIRC(独立評価委員会)ベースPFS。主要副次評価項目は両群の治験医評価によるPFSと、AVO群とSOC群のIRCベースや治験医評価によるPFSなど。

プレスリリースで明らかにされていないのは、まず、主解析の成否。未成熟なのかもしれないが、副次的評価項目の解析が意味を持つのは主解析が成功した後なので、今回の発表には重要な情報が欠落していることになり、もし主解析がフェールしたのならAVO群のデータを統計学的に有意とは呼べないはずだ。有意な差があったのがIRCベースなのか、治験医評価なのか、両方なのかも明記されていない。

また、SOC群のレジメンはNCCT(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインでは65歳未満の重大な併存症がない患者向けの望ましいレジメンとその他の推奨レジメンとされており、65歳以上などの患者には異なったレジメンが推奨されていることも留意点だ。被験者は65歳未満が多いのかもしれないが、少なくとも組入れ/除外条件は65歳で区切っていない。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース


CETP阻害剤の第3相が成功
(2024年7月29日発表)

オランダのNewAmsterdam Pharma(Nasdaq:NAMS)は、obicetrapibの最初の第3相試験が成功したと発表した。あと二本の結果を待って承認申請する考え。

田辺三菱製薬のCETP阻害剤TA-8995をライセンスしたもの。アムジェンが開発していたこともあるが、ファイザーに続いてMSDのCETP阻害剤も心血管アウトカム試験でそこそこの成果しか出なかったことを受けて17年に開発を中止した経緯がある。

今回のBROOKLYN試験では、最大耐容量のスタチンなどを服用してもLDL-C値が十分に管理できないHeFH(ヘテロ接合性家族性高脂血症)の患者に偽薬または10mgを一日一回、追加投与したもの。12週間でLDL-C値(試験薬群のベースライン値は123mg/dL)が偽薬群は0.3%上昇したが試験薬群は36.1%低下し、差の36.3%は統計的に有意だった。HDL-Cなども有意に改善した。52週の各群のLDL-Cはベースライン比+10.3%、-31.1%、-41.5%となり、専ら偽薬群の悪化により差が拡大した(但し、ClinicalTrials.govでは副次的評価項目として列記されておらず、プレスリリースにも明記されていない)。

他にアテローム性疾患やezetimibe配合剤の第3相も進行中。心血管アウトカム試験のPREVAILは26年頃の成否が判明する見込み。

リンク: 同社のプレスリリース


ファイザー、DMD遺伝子療法の開発を中止
(2024年7月30日発表)

ファイザーは2024年第2四半期の決算発表用スライドの脚注で、DMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)プログラムを中止したことをこそっと明らかにした。本文や決算発表プレスリリースにはPF-06939926(fordadistrogene movaparvovec)の第3相で主目的を達成できなかったことしか記しておらず、無念さが伝わってくる。

殆どのDMD患者で欠乏するジストロフィンを補うために、遺伝子療法に適したサイズのミニジストロフィン遺伝子を遺伝子組換えAAV9で導入するもの。第3相で病状診断スコアも10メートル歩行走行テストなどの副次的評価項目もフェールした。

一方、マイクロジストロフィン遺伝子を遺伝子組換えAAV74で導入するサレプタ・セラピューティックスのElevidys(delandistrogene moxeparvovec-rokl)は23年に米国でジストロフィン発現増強作用に基づき加速承認され、歩行能力を検討した第3相は主目的がフェールしたものの、10メートル歩行走行テストなどが改善したことなどから、今年6月に本承認され、歩行できない患者にも適応が広がった。両剤の差は紙一重のようにも感じられるが、結果的は大違いとなった。

リンク: ファイザーの決算発表用スライド(pdfファイル、11頁末尾に記載)


FibroGen、抗CTGF抗体の第3相が5連敗に
(2024年7月30日発表)

FibroGen(Nasdaq:FGEN)はFG-019(pamrevlumab)の第3相デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)試験、LELANTOS-2試験で主目的を達成できなかったと発表した。ステロイド治療を受けている6~11歳の歩行可能なDMD患者70人を偽薬群と35mg/kgを2週毎静注する群に無作為化割付けして52週間のNSAA(North Star Ambulatory Assessment)総スコアの変化を比較したが、偽薬調整後で-0.528、p=0.555とフェールし、副次的評価項目も全滅した。

この抗CTGF抗体は昨年6月に12歳以上の歩行不能なDMD患者を組入れた第3相LELANTOS-1試験と特発性肺線維症の第3相ZEPHYRUS-1試験がフェール。今年7月には膵癌の第3相と第2/3相がフェールしており、今回で5連敗となった。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


バイエル、VMS用薬を承認申請
(2024年8月1日発表)

バイエルはBAY3427080(elinzanetant)を米国で閉経期の中重度VMS(血管運動神経症状)治療薬として承認申請した。第3相試験二本でVMSの発生頻度を抑制し重症度を緩和した。GSKからスピンアウトした会社から更にスピンアウトしたKaNDy Therapeuticsを20年に買収して入手したNK-1,3受容体拮抗剤。類薬ではアステラス製薬のNK-3受容体拮抗剤Veozah(fezolinetant)が23年に米欧で承認されている。

リンク: バイエルのプレスリリース


Vertex、新規作用機序の鎮痛剤を承認申請
(2024年7月30日発表)

Vertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)は米国でVX-548(suzetrigine)を中重度急性期疼痛の治療薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は25年1月30日。

末梢神経系の疼痛シグナル伝達に重要な役割を果たす電位依存性ナトリウム・チャネル、NaV1.8を選択的に阻害する経口剤。第3相試験は三本の試験に腹壁形成術やバニオン切除術、整形術などを受けた患者を組入れて12時間毎に投与し、偽薬より疼痛が緩和することや安全性を確認した。オピオイド系以外の鎮痛剤が承認されればCox-2阻害剤以来、四半世紀ぶりだ。

リンク: 同社のプレスリリース


セムブリックスの一次治療を承認申請
(2024年7月29日発表)

ノバルティスはScemblix(asciminib)を新患フィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病慢性期(Ph+CML-CP)の治療薬として米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受ける。審査期限は不明。リアル・タイム・オンコロジー・レビュー(RTOR)の対象となったので通常の6ヶ月より早く承認される可能性がある。

ABLのミリストイル・ポケットを標的とする新しいタイプのBCR-ABL阻害剤で、米日欧などでPh+CML-CPの3次治療に承認されている。今回の申請はASC4FIRST試験に基づくもの。80mgを一日一回、48週間経口投与したところ、MMR(分子遺伝学的第奏効)率が68%と標準療法群(imatinib、nilotinib、dasatinib、またはbosutinib)の49%を有意に上回った。imatinibだけとの比較も上回った。G3以上の有害事象発生率は38%でimatinibの44%、第2世代品(他の3剤)の55%より増えなかった。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、NPC用薬の便益を多数が認めた
(2024年8月2日発表)

FDAはGeMDAC(遺伝代謝疾患諮問委員会)を招集し、Zevra Therapeutics(NasdaqGS:ZVRA)がニーマン・ピック病C型(NPC)治療薬として承認申請したarimoclomolの便益について検討した。16人の委員のうち11人が支持、5人が不支持となり、一歩前進したが、採決に拘束力はなく、不透明感が残る。審査期限は9月21日。

これまでの経緯は、デンマークのOrphazyme社が権利を取得して開発し20年に承認申請したが、薬効評価方法の妥当性などが指摘され、審査完了通知を受領した。EUでも予備的採決が否定的な結果になり申請を取り下げた。一方、フランスなどでは特例的に有償販売が認められた。Zevraは22年にOrphazymeを2000万ドル足らずで買収、評価方法を若干変えたり作用機序などに関わる基礎研究を実施して、延長試験のデータと合わせて23年12月に再承認申請した。優先審査だが審査期間が延長され上記になった。

NPCはNPC1/2の欠損によりライソゾームにコレステロールなどが蓄積、肝脾腫やカタレプキシーなどを併発する。過半は20歳までに死亡すると言われている。欧米の推定患者数は1800人。治療薬は日欧などでmiglustatが承認されているが、米国は薬効のエビデンスが不十分として審査完了通知を受領、メーカー側がそれ以上の承認取得努力をしたようには見えず、オフレーベル使用に留まっている。欧米の施設で2~18歳の患者50人を組入れたarimoclomolの第2/3相でも、7割以上が継続使用していた。この試験で主論点となったのは主評価項目の妥当性。NPC臨床重症度尺度の17ドメインのうち歩行、構語、認知、微細運動、咀嚼の5ドメインを抜粋したもので、数値上は偽薬より良好だったがp=0.0506と有意ではなかった。また、FDAは認知や咀嚼に関わる評価の有効性に疑問を呈した。このため、Zevraは認知ドメインを除外し、咀嚼ドメインの評価を見直して、再提出した。

リンク: Zevra社のプレスリリース

【承認】


MAGE-A4標的T細胞療法が承認
(2024年8月2日発表)

FDAは、英国のAdaptimmune(Nasdaq:ADAP)のTecelra(afamitresgene autolecel)を特定の滑膜肉腫に加速承認した。固形癌のT細胞療法として第2号、抗原受容体を人工的に導入した製品では初になる。

MAGE-A4(メラノーマ関連抗原A4)を認識する高親和性、特異的TCRをレンチウイルスで患者から採取したT細胞に導入することで、T細胞が見過ごしがちなMAGE-A4発現癌に対する活性を増強したもの。言わば、CAR-T療法の固形癌版。適応は、成人の切除不能/転移滑膜肉腫で、但し、化学療法歴を持ち、HLA型がA*02:01P、A*02:02P、A*02:03P、またはA*02:06Pで、MAGE-A4抗原が陽性の場合。A*02:05Pのヘテロ/ホモ接合型は禁忌。米国で年400人が対象になるようだ。第2相SPEARHEAD-1試験で評価対象44人のORR(客観的反応率)が43%(完全反応4.5%)、メジアン反応持続期間は6ヶ月だった。

価格は72.7万ドルと高い。Agilent TechnologiesのMAGE-A4 IHC 1F9 pharmDxがコンパニオン診断薬として承認された。HLAアリルの検査に関してはThermo Fisher ScientificとSeCore CDx HLA-A Locus Sequencing Systemで対応すべく提携した。尚、Pという接尾語は初めて見たが、様々なサブタイプ(例えばA*02:02:01とA*02:02:02)のうち、発現する抗原認識部位が同じものをまとめて示しているようだ。

T細胞療法では2月にIovance Biotherapeutics(Nasdaq:IOVA)のAmtagvi(lifileucel)がある種の黒色腫向けに加速承認されたが、これは切除した腫瘍から採取した腫瘍浸潤リンパ球を培養したもので、遺伝子装飾はされていない。

AdaptimmuneはNY-ESO-1を認識するletetresgene autoleucelの滑膜肉腫や粘液型/円形細胞脂肪肉腫を治療するピボタル試験が中間解析で目的達成しており、25年に承認申請する予定。MAGE-4といい、NY-ESO-1といい、とうとうゴールする企業が出てきた。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Adaptimmuneのプレスリリース


GSK、抗PD-1抗体の子宮体がん適応範囲が拡大
(2024年8月1日発表)

GSKはFDAがJemperli(dostarlimab-gxly)の適応を拡大し、原発性進行/難治性内膜腫(初発進行/再発子宮体癌)の一次治療化学療法併用におけるdMMR(DNAミスマッチ修復機能欠損)/MSI-H(高頻度マイクロサテライト不安定性)型限定を解除したと発表した。内膜腫における対象患者が3~5倍に膨らむことになる。

19年にTesaro社を買収して入手したパイプラインの一つで抗PD-1抗体。21年に欧米で初承認された。エビデンスである第3相RUBY試験のパート1では、共同主評価項目の一つであるdMMR/MSI-HサブグループにおけるPFS(無進行生存期間)だけでなく全被験者のPFSも有意に上回り、未成熟で有意水準には到達していなかったとはいえ全生存期間も好ましい方向を向いていた。ところが、どういう訳か、米欧ともにdMMR/MSI-Hに適応限定された。その後、全生存期間の解析でも有意差が確認されたが、dMMR/MSI-Hではないサブグループだけの探索的解析はハザードレシオ0.79、95%上限は1.044と今一つだった。ところが、今回、限定が解除された。

抗PD-1抗体ではMSDのKeytruda(pembrolizumab)が一足早く6月に適応拡大したが、エビデンスはKeyNote-868試験におけるPFSで延命効果は確認されていない。

リンク: GSKのプレスリリース


移植適合多発骨髄腫のD-VRdレジメンが承認
(2024年7月30日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、Darzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj、和名ダラキューロ配合)を自家造血幹細胞移植適合の未治療多発骨髄腫に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。移植前にこの抗CD38抗体をVelcade(bortezomib)、Revlimid(lenalidomide)、dexamethasoneと併用(D-VRdレジメン)し、移植後にRevlimidと二剤併用で地固めするもので、PFSをVRdレジメン(移植前に左記の三剤、後にRevlimidで地固め)と比較した第3相PERSEUS試験の中間解析でハザードレシオが0.42、p<0.0001となり、中間解析の中止基準である0.0126を下回った。48ヶ月PFS率は84.3%対67.7%、G3/4有害事象は好中球減少症や肺臓炎、下痢などが増加した。

リンク: 同社のプレスリリース


galantamineプロドラッグがアルツハイマー病に承認
(2024年7月29日発表)

カナダの医薬品開発会社Alpha Cognition(CSE:ACOG)は、FDAがZunveyl(benzgalantamine)を軽中度アルツハイマー病薬として承認したと発表した。25年第1四半期に発売する計画。

galantamineのプロドラッグで胃腸系有害事象が穏やかであることが期待される。遅放性錠だが、5mg一日二回で開始し10mg、15mgと滴定していく用量用法は23年前に承認されたgalantamineの即放性錠と同じで、19年前に承認された延長放出製剤の10mg一日一回とは異なる。生物学的同等性試験に基づく承認なので、レーベルの初承認年の欄には2001年と記され、忍容性や仮説検証試験のデータは専らgalantamineの試験のものだ。

アセチルコリン還元酵素阻害剤の一つであるgalantamineは胃腸系副作用が泣き所なのでプレスリリース記載の通りに忍容性が向上するなら朗報だが、レーベルにはそれらしい記載は見当たらなかった。レーベル記載事項以外をセールストークに使ってはいけないというFDAの方針が変わったという話は本当のようだ。

リンク: 同社のプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
24年8月推ガルデルマのnemolizumab(結節性掻痒とアトピー性皮膚炎)
24年8月推ノバルティスのKisqali(ribociclib、乳癌摘出術後アジュバント)
24年8月推JNJのRybrevant(amivantamab-vmjw)とlazertinib(ex19del/L858R NSCLC)
24/8/10Humacyteの人無細胞性血管(緊急動脈再建術)
24/8/11Lykos Therapeuticsのmidomafetamine(PTSD)・・・旧社名MAPS
24/8/13Citius Pharmaceuticalsのdenileukin diftitox(再発皮膚T細胞リンパ腫)
24/8/14CymaBay/ギリアドのseladelpar(原発性胆管炎)
24/8/14アセンディス・ファーマのTransCon PTH(palopegteriparatide、副甲状腺ホルモン低下症)
24/8/20セルヴィエのvorasidenib(グリオーマ)
24/8/22Regeneron PharmaceuticalsのREGN5458(linvoseltamab、多発骨髄腫)
24/8/28Incyteのaxatilimab(慢性GvHD3L)
24年9月推JNJのDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj、HSCT補助療法)
24年9月ロシュのOcrevus皮下注(ocrelizumab、hyaluronidase、多発性硬化症)
24/9/5Travere TherapeuticsのFilspari(sparsentan、IgA腎症本承認切替)
24/9/18Vanda PharmaceuticalsのVLY-686(tradipitant、胃麻痺)
24/9/21Zevra Therapeuticsのarimoclomol(ニーマン・ピック病C型)
24/9/24IntraBioのIB1001(ニーマン・ピック病C型)
24/9/26Karuna Therapeutics(BMS)のKarXT(xanomelineとtrospium、統合失調症)
24/9/26Syndax PharmaceuticalsのSNDX-5613(revumenib、難治再発KMT2A再編成急性白血病)
24/9/27リジェネロンのDupixent(dupilumab、好酸球性COPDを追加)
24/9/27サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、未治療多発骨髄腫4剤併用)



今週は以上です。

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