【ニュース・ヘッドライン】
- FDA諮問委員会が抗PD-(L)1抗体の適応縮小を検討へ
- tirzepatideが二型糖尿病診断リスクを削減
- BMS、米国でもデュアルICIを肝癌1Lに承認申請
- EUでエンハーツを極低her2に適応拡大申請
- exenatideインプラントはやっぱり承認されず
- リジェネロン、BCMAxCD3抗体の承認が遅延
- KP.2対応ワクチンが承認
- デュアルEGFRブロック・レジメンが承認
- レケンビが英国で承認されたが...
- 遅報:ファイザーの鎌状赤血球症治療薬の臨床試験で死亡者が予想以上
- 論文:semaglutideに自殺自傷シグナル
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【今週の話題】
FDA諮問委員会が抗PD-1抗体の適応縮小を検討へ
(2024年8月22日発表)
FDAは9月26日に腫瘍学薬諮問委員会を招集して抗PD-1抗体などの胃腸癌と食道癌における適応をPD-L1陽性に限定する当否について意見を聞くと発表した。
抗PD-(L)1抗体の適応は、再発治療に単剤投与する場合はPD-L1陽性腫瘍に限定されることが多いが、一次治療に化学療法などと併用する場合は限定されないことが多い。近年は、第3相一次治療標準療法併用試験でPD-L1陽性サブグループと全被験者の両方の解析を主評価項目とする事例もしばしば見られる。どちらも達成した場合、陰性サブグループにも有効と早合点しがちだが、実際はそうとも限らない。問題は、第一に、効果が小さいだけで有害ではなかった場合に、適応に含めて医師や患者の判断に委ねるべきか否か。第二に、陰性サブグループのデータが一部の学会以外で公表されなかった場合、参加しなかった医師や患者を無知のまま放置することにならないか?
欧米の承認審査は揺れ動いている。米国では、MSDのKeytruda(pembrolizumab)はKEYNOTE-811試験のORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)中間解析データに基づき21年にher2陽性の局所進行切除不能/転移胃/胃食道接合部腺腫の一次治療にtrastuzumab、fluoropyrimidine、及び白金薬と併用することが加速承認されたが、同試験のPFS(無進行生存期間)解析で、腫瘍と腫瘍浸潤免疫細胞のPD-L1発現度の指標であるCPSが1以上のサブグループにしか効果が見られなかったため、23年に適応限定された。
同月、KeytrudaはKeyNote-859試験の全生存データに基づき、her2陰性の局所進行切除不能/転移胃/胃食道接合部腺腫の一次治療に、fluoropyrimidine及び白金薬と併用することが承認された。CPS≧1のサブグループと比べて陰性サブグループの数値は見劣りしたが限定されなかった。一方、EUでは、1ヶ月後にCPS≧1限定で承認された。
Opdivoは進行/転移胃/胃食道接合部癌や食道腺腫の一次治療に化学療法と併用で21年に加速承認された。BMSは市販後薬効確認試験の全生存解析を提出したはずだが、まだ本承認切替は実現していない。EUでは米国承認の半年後にher2陰性かつCPS≧5に限定で承認された。切除不能進行/転移食道扁平上皮腫一次治療(化学療法またはYervoy併用)では22年に米国でPD-L1不問で承認されたが、EUではPD-L1≧1%に限定された。
更に、BeiGene(百済神州、Nasdaq:BGNE;HKEX:6160)は抗PD-1抗体tislelizumabを切除不能局所進行/転移食道扁平上皮腫の再発治療(単剤)と一次治療(化学療法併用)で承認申請している。欧州では再発治療で承認されている。
諮問委員会では、この抗PD-1抗体三剤と上記試験の一部で併用された抗CTLA-4抗体Yervoy(ipilimumab)をまな板に上げる予定。
リンク: FDAのプレスリリース
【新薬開発】
tirzepatideが二型糖尿病診断リスクを削減
(2024年8月20日発表)
イーライリリーはtirzepatideの第3相SURMOUNT-1試験でpre-diabetes(境界型糖尿病)患者の二型糖尿病発症を9割以上抑制したと発表した。昔からある議論だが、進行を遅らせたのか、それとも診断を見誤らせたのか、はたまた発症前に治療を開始したと考えた方がよいのか、現時点では受け止めが難しい。
このGIP/GLP-1受容体アゴニストは二型糖尿病薬Mounjaro/マンジェロとして米欧日で承認され、肥満症用途でも欧州では同名、米国ではZepbound名で承認されている。SURMOUNT-1は肥満症用途での承認申請用試験で、米国や南米、中国、インド、日本などの施設で糖尿病ではなく肥満症またはリスク因子を持つ太り過ぎの成人2539人を組入れて偽薬、5mg、10mg、または15mgを週一回皮下注して、72週間の体重抑制効果を比較した。今回の解析は、ベースライン時点でpre-diabetesと診断された1032人のサブグループを176週間追跡して二型糖尿病の発症リスクを副次的評価項目の一つとして検討したもの。試験薬群3群のプール分析で偽薬比93%(treatment-regimen estimandベース)/94%(efficacy estimandベース)低く、第1種過誤制御後で統計的に有意だった。
薬物治療中の二型糖尿病患者の血糖値が正常範囲に収まっていても治癒したとは言わないし、糖尿病ではないとも言わない。pre-diabetesの段階で投薬治療する便益を検討するためには腎症または心血管疾患のリスクを遅延開始群と比較する必要がある。尤も、投薬を中止した後でも血糖値がリバウンドしないようなら意味があるかもしれない。プレスリリースによると、176週間の治療の後、17週間のoff-treatment期間に投与を止めた患者では体重も血糖値もリバウンドし、二型糖尿病リスク削減率が88%に低下した(ベースは不明)。第1種過誤制御後で統計的に有意だった。もし試験薬群の全てを対象とした解析でこの程度の軟化なら注目できるように感じられるが、承認されている薬の投与を強制的に止めることはできないだろうから、プレスリリースの書きぶり通りに、中止した一部の被験者だけの数値と受け止めた方がよさそうだ。そうなると、第3の因子が混ざっている可能性が否定できないだろう。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認申請】
BMS、米国でもデュアルICIを肝癌1Lに承認申請
(2024年8月21日発表)
ブリストル マイヤーズ スクイブは抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab)と抗CTLA-4抗体Yervoy(ipilimumab)を併用で成人の切除不能肝細胞腫の一次治療に用いる適応拡大申請を米国で行い、受理された。優先審査とは記されておらず、審査期限は25年4月21日と、月足らずだ。
第3相CheckMate-9DW試験で二剤併用群のメジアン生存期間が中間解析で23.7ヶ月となり、VEGF受容体拮抗剤のsorafenibとlenvatinibから医師が選んで投与する群の20.6ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.79、p=0.018だった。G3/4治療連関有害事象の発生率は各群41%と42%で大差なかった。
EUでも7月に同様な承認申請が受理されている。
リンク: BMSのプレスリリース
EUでエンハーツを極低her2に適応拡大申請
(2024年8月19日発表)
第一三共は抗her2抗体薬物複合体Enhertu(trastuzumab deruxtecan)の適応を、従来のher2標的療法が苦手としていたher2低発現乳癌にも拡大すべく、第3相試験を二本実施。IHC法で2+と判定されたが異なった検査法であるISH法では陰性判定だった癌や、1+の癌については22~23年に米欧日で化学療法歴を持つ患者に適応拡大が認められた。今回、IHC法2+且つISH法陰性、IHC法1+、またはIHC法0+で、内分泌療法歴を持つが化学療法未施行の乳癌に欧州で適応拡大申請し受理された。
IHC法では膜染色の強度に着目して0、1+、2+、3+の4段階で評価する。Herceptin(trastuzumab)などのこれまでのher2標的療法は乳癌の15~20%を占めるher2高発現型(IHC法3+、または、IHC法2+かつISH陽性)に用いられてきた。IHC法で2+だがISH陰性や、IHC法1+は、her2高発現型ではないホルモン受容体陽性乳癌の60~65%を占めるので、対象患者数が大きく増加する。
尚、IHC法で0と判定されるのは染色増が認められない、または、10%以下の腫瘍細胞に不完全で微かな/かろうじて膜染色が認められた場合だが、Enhertuの想定適応は後者のみなので、IHC法0ではなく0+と呼んでいると推測される。
米国でも申請中と推測される。ASCO(米国臨床腫瘍学会)のエキスパート・オピニオンによるとIHC法の0と1+を検査で識別するのは簡単ではない。今回も0のすべてが適応になるわけではないので、抵抗勢力が顕在化するかもしれない。
リンク: 同社のプレスリリース(和文、pdfファイル)
【承認審査・委員会】
exenatideインプラントはやっぱり承認されず
(2024年8月23日発表)
FDAはITCA 650(GLP-1作用剤exenatideの長期放出性インプラント)を承認しないことを決定し、官報で公告した。承認申請から8年、やっと決着した。承認申請者のIntarcia Therapeuticsは昨年、主要資産をi2o Therapeuticsに売却したが、前者の会長兼社長兼CEOが後者の同じポジションに就任しており、意図は不明。i2Oのホームページは準備中のようだ。
マッチ大のミニポンプを腹部皮下に埋め込み活性成分を長期放出させる。初回は一日20mcgを放出する2.56mg規格を投与、3ヶ月後に一日60mcgを放出する14.05mg規格を投与し、6ヶ月毎に反復する。第3相二型糖尿病試験で血糖降下作用がDPP-IV阻害剤のsitagliptinを上回ったが、17年に審査完了通知を受領、19年に再申請したが20年に再び審査完了通知を受領した。各種異議申立て手続きを試みたが奏功せず、市民請願制度を利用してFDA上層部に介入を求めたが、昨年9月の内分泌代謝薬諮問委員会でも19人の委員全員が承認に反対。今回、FDA副長官が承認しないことを決定した。
活性成分はByetta名で承認されているが、ITCA 650の臨床試験では急性腎障害の発生率が1.8%と対照群の1.0%を上回り、心血管安全性確認試験ではMACE(心筋梗塞などの主要心血管事象)や深刻有害事象、全死亡者数が対照群を上回った。また、薬剤の放出量が不安定になる現象が見られた。このため、追加試験などにより安全性が確認されるまで承認できないと判定された。
リンク: FDAの承認拒否決定書(pdfファイル)
リジェネロン、BCMAxCD3抗体の承認が遅延
(2024年8月20日発表)
Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)はREGN5458(linvoseltamab)を3次以上の治療歴を持つ難治/再発多発骨髄腫用薬として欧米で承認申請しているが、米国は審査完了通知を受領した。フィル/フィニッシュ工程を委託している第三者の施設で、FDAが別会社の開発品に関わる査察を実施した時の指摘事項がネックになった。先方は既に対処を終えFDAの再査察を待っている状態とのことなので、時期は不透明だが承認の希望は持てるのではないか。
BCMAとCD3を架橋する二重特異性抗体。第二相試験でメジアン5前治療歴を持つ患者117人におけるORR(客観的反応率、独立評価委員会方式)が71%、完全反応率は46%だった。治療時発現有害事象死亡率は12%で、14人中11人は感染症によるもの。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認】
KP.2対応ワクチンが承認
(2024年8月22日発表)
ファイザー/ビオンテックとモデルナは、夫々、COVID-19 KP.2株対応ワクチンがFDAに承認されたと発表した。12歳以上は正式な承認、6ヶ月児から11歳まではEUA(非常時使用認可)。
EUや日本は親系統に当たるJN.1株に対応したワクチンを要求し、ファイザー/ビオンテックのJN.1株対応Comirnatyは7月に英国で、8月には日本でも、承認された。ワクチンが標的とするウイルスのスパイク蛋白はJN.1でもKP.2でも大きな違いがないようであり、メーカーの開発・製造負担が増えるだけのようだ。
流行株はさらに変遷し、米国における8月17日に終わる二週間の感染シェアはKP.3.1.1が36%、KP.1が16.8%、KP.2.3とLB.1(これもJN.1の亜系統)が各14%となっている。22/23年シーズンのXBB.1.5株対応ワクチンはJN.1系統に強くないので、追加免疫を必要とする人は今シーズンのワクチンを接種することになる。
リンク: ファイザー/ビオンテックのプレスリリース
リンク: モデルナのプレスリリース
デュアルEGFRブロック・レジメンが承認
(2024年8月20日発表)
FDAはジョンソン・エンド・ジョンソングループのJanssen BiotechのRybrevant(amivantamab-vmjw)とLazcluze(lazertinib)を局所進行/転移非小細胞性肺癌の一次治療に併用することを承認した。EGFRのエクソン19欠如またはエクソン21にL858R置換のある腫瘍が適応になる。
前者は21年に米欧で加速/条件付き承認されたEGFRとMETの二重特異性抗体。後者は第3世代EGFR阻害剤で、韓国のOscotec(KOSDAQ:039200)の米国子会社Genoscoからライセンスした韓国のYuhanから、JNJが韓国外の権利を取得した。第3相MARIPOSA試験でPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のメジアン値が23.7ヶ月とTagrisso(osimertinib)群の16.6ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.70、統計的に有意だった。全生存期間の解析は未成熟だが悪い傾向は見られていない。
抗EGFR抗体とEGFRチロシン・キナーゼ阻害剤の併用は副作用が増えるだけというイメージがあったが、この二剤が覆した。
アストラゼネカも同様な内容のFLAURA2試験でTagrissoに化学療法を追加する便益を検討したところ、メジアン生存期間が25.5ヶ月とTagrisso群の16.7ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.62、統計的に有意だった。全生存期間の解析は未成熟だが悪い傾向は見られず、今年、米欧で適応拡大が承認された。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: JNJのプレスリリース
レケンビが英国で承認されたが...
(2024年8月22日発表)
英国の薬品承認機関、MHRAは、エーザイ/バイオジェンのLeqembi(lecanemab)を早期アルツハイマー病の治療薬として承認した。但し、ApoE4ホモ接合型や抗凝固薬(ワルファリンなど)による治療を受けている人などは禁忌。
EUはCHMPが7月に否定的意見を纏めたが、英国は米日などに続いた。但し、国民医療制度であるNHSが保険還元しない可能性があり、シティーの就業者などの私的医療保険に加入している人以外は、全額自己負担になりそうだ。NHSの下部組織であるNICE(国立医療技術評価機構)が、効果が小さく副作用リスクがあり費用が高いことに否定的なドラフト・ガイダンスを公表しており、パブコメ受付中。結果を第3者委員会が検討し、大きな問題が浮上しなければ、ガイダンスが確定し保険還元対象外が決まる。
リンク: MHRAのプレスリリース
リンク: NICEのニュース
【医薬品の安全性】
遅報:ファイザーの鎌状赤血球症治療薬の臨床試験で死亡者が予想以上
(2024年7月29日発表)
EMA(欧州医薬品庁)は22年2月に12歳以上の鎌状赤血球症(SCD)治療薬として承認したファイザーのOxbryta(voxelotor)に関する調査を先月29日に開始した。おそらく、19年に加速承認したFDAもデータを検討していることだろう。
22年10月にGlobal Blood Therapeuticsを54億ドル(エクイティ・バリュー・ベース)で買収して入手した、鎌状ヘモグロビン重合阻害剤。274人を二用量群と偽薬群に無作為化割付けした第3相で二用量ともヘモグロビン増加奏効率が偽薬を大きく上回った。
調査をトリガーしたのは、二本の試験の死亡者。一本は米国で加速承認時に市販後コミットメントとして位置付けられた032試験で、2~14歳の脳梗塞リスク因子を持つSCD患者を組入れてTCD(径頭蓋ドップラー)検査によりリスク抑制効果を検討したもの。サブサハラ・アフリカを中心に中東、米英の施設も参加した。試験薬群は8人が死亡し偽薬群の2人を大きく上回った。8人全員がサブサハラ地域の被験者で、うち3人がマラリア感染によるもの、2人は敗血症。
もう一本の042試験はSCD患者の足潰瘍を改善する効果を検討するために12歳以上のSCD患者88人をケニア、ナイジェリア、ブラジルの試験で実施している。まだ盲検試験が完了していないが、偽薬群も含めて9人が死亡しており、うち8人は既にオープン・レーベル延長試験に進んでいるため試験薬群であったことが判明している。8人中4人はマラリア感染が死因又は関与した。
試験薬との関連は明らかではないが、白血球減少作用が響いた可能性もあるようだ。発生地域に偏りがあり欧米地域の患者に対するインプリケーションは不透明だ。
EMAはファイザーに詳細データなどを請求中。回答を踏まえて検討し10月に結論、または検討継続事項をまとめる予定。
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: 欧州委員会のReferral文書(7/30付、pdfファイル)
論文:semaglutideに自殺自傷シグナル
(2024年8月20日発表)
米国のGLP-1作用剤のレーベルには甲状腺C細胞腫に関する枠付き警告や膵炎、胆石、低血糖、急性腎不全、糖尿病性網膜症、心拍数上昇、自殺行動/思慮などに関する警告注意が列記されている。このうち自殺行動/思慮は、これまでの疫学研究でリスクは検出されず、FDAも引き続き調査するが懸念されるデータは無い、という趣旨の声明を出している。ところが、JAMA Network Openに、不均衡分析でリスクのシグナルが検出されたという論文が刊行された。
WHOの有害事象報告データを用いて、ノボ ノルディスクのsemaglutideとliraglutideによる治療を受けている患者の自殺自傷に関する報告オッズ比(ROR)やベイズ・インフォメーション・コンポーネント(IC・・・0超であれば有意)を算出したケース・コントロール・スタディ。semaglutideのRORは1.45(95%信頼区間1.18-1.77)、ICは0.53(同0.19-0.78・・・0超であれば有)だった。鬱病患者におけるリスクを検出する意図で実施した、抗鬱剤同時使用例における感受性分析はRORが4.45(2.52-7.86)、ICは1.96(0.98-2.63)、benzodiazepines同時使用例でも同様な結果だった。糖尿病薬dapagliflozinやmetformin服用例との比較ではRORが高かった。
不均衡分析は様々な薬の様々な稀な副作用を発見するための予備的な手法で、FDAやPMDAなどの承認審査機関も実施しているとのことだ。FDAやEMA(欧州薬品庁)は、シグナルが検出された複数の医薬品を都度まとめて発表しているが、第3の因子が関与していたり、有害事象報告の内容が不十分だったり信頼性に問題があったり、様々なノイズが混じりうるため、次の段階として情報を精査し信憑性を検討することになる。尚、副作用について因果関係や生物学的もっともらしさを断定するのは容易ではなく、ある程度の信頼性のあるデータが揃ったら統計学的に分析して有意なら真実性が高いと判定することになる。
GLP-1作用剤の自殺・自傷リスクはこれまでも懸念されているところであり、今回の論文で見方が大きく変わる訳ではないが、これまでの認識とは異なるシグナルが見つかり、病気や治療薬の影響で自殺行動・思慮リスクが比較的高いと考えられている鬱病患者で特に高まるというのがもし真実であるならば、重要な情報になりうる。
今回の研究の特徴は、自殺自傷症例のうち、二型糖尿病でも肥満症でもないオフレーベル使用者の構成比が3割強と一番大きいこと。このサブグループにおけるリスクが低いようではないので、危険性は便益と天秤にかけて考えるべし、という反論はこのサブグループに関しては必ずしも当てはまらないことに注意したい。
リンク: Schoretsanitisらの試験論文(JAMA Network Open)
【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】
PDUFA | |
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24年8月推 | ノバルティスのKisqali(ribociclib、乳癌摘出術後アジュバント) |
24年9月推 | JNJのDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj、HSCT補助療法) |
24年9月 | ロシュのOcrevus皮下注(ocrelizumab、hyaluronidase、多発性硬化症) |
24/9/5 | Travere TherapeuticsのFilspari(sparsentan、IgA腎症本承認切替) |
24/9/18 | Vanda PharmaceuticalsのVLY-686(tradipitant、胃麻痺) |
24/9/21 | Zevra Therapeuticsのarimoclomol(ニーマン・ピック病C型) |
24/9/24 | IntraBioのIB1001(ニーマン・ピック病C型) |
24/9/26 | Karuna Therapeutics(BMS)のKarXT(xanomelineとtrospium、統合失調症) |
24/9/26 | Syndax PharmaceuticalsのSNDX-5613(revumenib、難治再発KMT2A再編成急性白血病) |
24/9/27 | リジェネロンのDupixent(dupilumab、好酸球性COPDを追加) |
24/9/27 | サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、未治療多発骨髄腫4剤併用) |
諮問委員会 | |
24/9/9 | AMDAC:Iterum Therapeuticsのsulopenem etzadroxil/probenecid錠(非複雑性尿路感染症) |
24/9/13 | GIDAC:InterceptのOcaliva(obeticholic acid、加速承認維持の当否) |
24/9/18 | PAC:小児用薬の市販後安全性監視(特別な議題はない由) |
24/9/20 | VrBPAC:百日咳ワクチンの薬効確認試験の手法など |
24/9/26 | ODAC:抗PD-1抗体の胃/食道癌における適応範囲(PD-L1陽性限定の当否) |
今週は以上です。
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