2024年2月17日

第1142回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • ソルビトール脱水素酵素欠乏症の第3相中間解析が成功 
  • 経口遺伝性血管浮腫発作治療薬の第3相が成功 
  • 大塚、アルツハイマー性アジテーションの第3相がフェール 
  • CSLもapoA-Iの心筋梗塞再発予防試験がフェール 
  • サレプタ、DMD用薬の対象年齢拡大を申請 
  • タピナロフをアトピーに適応追加申請 
  • BMS、AugtyroをNTRK融合型固形癌に適応拡大申請 
  • PPARデルタ・アゴニストを原発性胆管炎に承認申請 
  • BridgeBio、ATTR-CM用薬を承認申請 
  • タグリッソを一次治療にも承認 
  • ゾレアを突発的食物アレルギー抑制に適応拡大 
  • T細胞療法を悪性黒色腫に加速承認 
  • メルクのc-MET阻害剤、米国で本承認に切替 
  • 初の凍傷治療薬が承認 
  • FDA、オニバイドを一次治療にも承認 
  • 武田、budesonideの粘性懸濁液が好酸球性食道炎に承認
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


ソルビトール脱水素酵素欠乏症の第3相中間解析が成功
(2024年2月15日発表)

Applied Therapeutics(Nasdaq:APLT)はアルドース還元酵素阻害剤AT-007(govorestat)をガラクトース血症やSORD(ソルビトール脱酸素酵素)欠乏症などに開発し、前者は昨年12月に欧米で承認申請したばかりだが、後者も第2/3相の中間解析で主評価項目を達成した。FDAと承認申請に向けて相談する考え。複雑な試験で良く分からないところが多々あるが、酵素欠乏による希少疾患用なので容認されるかもしれない。

この第2/3相試験は複数回の中間解析で様々な便益を評価していることが印象的。昨年2月には、50人の中間解析で血漿sorbitol水準が90日間の治療により平均52%低下したことが発表された。今回は56人の12ヶ月解析で、共同主評価項目のうち、ソルビトール水準の低下はp<0.001、ソルビトール水準と複合臨床的評価項目(10メートル歩行走行テスト、4段昇段テスト、座位起立テスト、6分歩行テスト、背屈テストに基づく)の相関性はp=0.05となった。

この試験の最終的な主評価項目は24ヶ月時点の10メートル歩行走行テストとなっており、同社は引き続き追跡する予定。

SORD欠乏症は遺伝性疾患でCharcot-Marie-Tooth病の一形態。米国の罹患者数は3300人、欧州は4000人と推定されている。

古典的ガラクトース血症の第3相は主評価項目はフェールしたが複合評価指標における幾つかの症状は改善が見られたため承認申請した。EMAは承認申請を受理、FDAが受理するかどうかはもうそろそろ明らかになるだろう。SORD欠乏症も酵素欠乏による希少遺伝性疾患なので、有害代謝物であるガラクチトールが減少し、臨床的な便益を支持するある程度のエビデンスを収集できれば、承認される可能性がありそうだ。

リンク: 同社のプレスリリース


経口遺伝性血管浮腫発作治療薬の第3相が成功
(2024年2月13日発表)

KalVista Pharmaceuticals(Nasdaq:KALV)は、KVD900(sebetralstat)の第3相遺伝性血管浮腫(HAE)発作治療試験が良好な結果になったと発表した。24年上期に米国で、下期までに欧日でも、承認申請する考え。初めての経口剤なので、発作後に注射用薬より早い段階で服用される可能性があり、更に早く症状緩和できるようになるかもしれない。

血漿カリクレイン阻害剤。第2相試験で服用後12時間以内にレスキュー治療が必要になった患者が15%と偽薬群の半分に留まり、副次的評価項目である症状改善までの時間も1.6時間と偽薬群の9時間より大きく短縮された。第3相のKONFIDENT試験では12歳以上の小児成人患者136人を偽薬群、新たに設定された300mg群、そして600mg群に無作為化割付けした。110人で264回発作が起き、症状改善が始まるまでのメジアン時間は各群6.72時間、1.61時間、1.79時間で、両用量とも偽薬比有意な違いがあった。シーケンシャルに実施された副次的評価項目の解析は、重症度緩和奏効率も、完解までの時間も、両用量とも有意な差があった。24時間完解率は各群28%、44%、52%。

この試験は発作予防薬を用いている患者も組み入れており、両群合わせて24人で58回の発作が起きたが、このような患者にも効果が見られた。

治療関連有害事象の発生率は各群4.8%、2.3%、2.2%と大差なく、深刻例はなかった。有害事象による治験離脱もなかった。

リンク: 同社のプレスリリース


大塚、アルツハイマー性アジテーションの第3相がフェール
(2024年2月13日発表)

大塚製薬は、AVP-786(deudextromethorphan hydrobromide, quinidine sulfate)の第3相試験がフェ-ルしたと発表した。アルツハイマー型認知症における攻撃的言動などのアジテーション症状を改善する効果を検討したが、2用量群共に偽薬比有意な差がなかった。有害事象は転倒が増加した。

15年に買収したAvanir Pharmaceuticalsが12年にConcert Pharmaceuticalsからライセンスしたもの。10年に米国で情動調節障害治療薬として承認されたNuedexta(dextromethorphan、quinidine sulfate)の類似品で、NMDA受容体拮抗・シグマ-1作動剤dextromethorphanの水素を重水素に置換することでCYP2D6による代謝を抑制、2D6を阻害するために併用するquinidineの用量を減らすことを可能にした。

Nuedextaはアルツハイマー病患者などのアジテーションに流用されることがあり、19年には介護施設の認知症患者に投与した医師にAvanirがキックバックを払っていたとされる件で米国司法省と1.16億ドルの司法和解を結んでいる。Nuedextaが果たせなかった治験成功をAVP-786が達成できれば良かったが、実現しなかった。

リンク: 大塚のプレスリリース(和文、pdfファイル)


CSLもapoA-Iの心筋梗塞再発予防試験がフェール
(2024年2月11日発表)

CSL(ASX:CSL)はヒト由来アポリポプロテインA-Iの第3相AEGIS-II試験がフェールしたと発表した。急性心筋梗塞の診断から5日以内で、PCI/薬物治療後の再発リスクが高い18200人を、試験薬と偽薬に2対1割付けして週一回、4回静注し、90日間のMACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)を追跡したもの。データは4月6日にACC(米国心臓学会)で発表する考え。

後期第2相試験でも30日MACEを改善する作用は見られなかったが、検出力不足だったので結論が出せなかった。

HDLの主構成物質であるアポA-Iは、Medicine CompanyもA-Iミラノという心血管疾患リスクの低さと関連する多型の遺伝子組換え版を用いてIVUS(血管内超音波)試験を行ったが、16年にフェールした。

リンク: CSLのプレスリリース

【承認申請】


サレプタ、DMD用薬の対象年齢拡大を申請
(2024年2月16日発表)

サレプタ・セラピューティックスはElevidys(delandistrogene moxeparvovec-rokl)の加速承認を本承認に切替えるとともに、歩行可能な4~5才児という限定を解除すべく、FDAに追加申請し受理された。審査期限は6月21日。

第3相EMBARK試験に基づく。主評価項目の52週North Star Ambulatory Assessment総合スコアは偽薬比有意に改善しなかったものの、副次的評価項目のうつ伏せから起立までの時間(ベースラインの3.5秒から偽薬調整後0.67秒低下)や10メートル歩行走行テスト(4.8秒から同0.42秒低下)が有意に改善した。治療関連深刻有害事象の発生率は11%(偽薬群は0%)だった。

Elevidysはデュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子療法。ある程度機能するマイクロジストロフィンの遺伝子をアデノ随伴ウイルスベクターで導入する。

リンク: 同社のプレスリリース


タピナロフをアトピーに適応追加申請
(2024年2月14日発表)

Roivant Sciences(Nasdaq:ROIV)の皮膚病領域における子会社であるDermavant Sciencesは、Vtama(tapinarof 1%クリーム)を2歳以上のアトピー性皮膚炎の治療薬としてFDAに適応追加申請した。2歳以上の中重度アトピー性皮膚炎を組入れた二本の試験で、奏効率(Validated Investigator Global Assessment for Atopic Dermatitisで評価)が一本は46%(偽薬群は18%)、もう一本は45%(同14%)だった。有害事象は、乾癬試験と同様に、毛包炎などの発生率が偽薬群を上回った。

アリル炭化水素受容体調節剤で、表皮細胞の新陳代謝やバリア形成にかかわる遺伝子の発現を促す。22年に米国で乾癬治療薬として承認され、日本でもJTが乾癬に承認申請中。

リンク: 同社のプレスリリース


BMS、AugtyroをNTRK融合型固形癌に適応拡大申請
(2024年2月14日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは、Augtyro(repotrectinib)を12歳以上のNTRK(Neurotrophic tropomyosin kinase receptors)遺伝子融合のある局所進行/転移/切除不適な固形癌に米国で適応拡大申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は6月15日。

ROS1やTRK、ALKを阻害する経口剤で、昨年11月に米国で成人のROS1再編成のある局所進行/転移非小細胞性肺癌に承認された。日欧でも承認審査中だが、EUでは今回の適応も申請している。22年に74億ドルで買収したTurning Point Therapeuticsの開発品。

リンク: BMSのプレスリリース


PPARデルタ・アゴニストを原発性胆管炎に承認申請
(2024年2月12日発表)

CymaBay Therapeutics(Nasdaq:CBAY)はseladelparを原発性胆管炎の管理薬としてFDAに承認申請し、受理された。優先審査を受け、審査期限は8月14日。EUでも上期中に承認申請する考え。日本は昨年、科研製薬が開発商業化権を取得した。

18年前にJohnson and JohnsonからライセンスしたPPARデルタ・アゴニスト。類薬はイプセンがGenfit(Nasdaq:GNFT)からライセンスしたelafibranorを一足先に欧米で承認申請し、米国の審査期限は6月10日となっている。どちらも成人の、UDCA(ursodeoxycholic acid)に十分応答しないまたは不耐の患者が対象。第3相は主評価項目の定義が異なるのか偽薬群の奏効率がかなり異なっており、効果を比較するのは現時点では難しそうだ。

同日、ギリアド・サイエンシズによる企業買収で合意したことも発表した。一株当たり32.5ドル、先週末の株価比27%のプレミアム、総額はエクイティ・バリュー・ベースで43億ドル。

リンク: CymaBay のプレスリリース(NDA)
リンク: ギリアドとCymaBayのプレスリリース(買収合意)


BridgeBio、ATTR-CM用薬を承認申請
(2024年2月5日発表)

BridgeBio Pharma(Nasdaq:BBIO)はacoramidisをATTR心筋症(トランスサイレチン型心アミロイドーシス)用薬として欧米で承認申請し受理されたと発表した。審査期限は11月29日。

スタンフォード大学発のコンパウンドで、トランスサイレチンの4量体構造に結合し安定化させ、アミロイドーシスに至るプロセスを妨げる。第3相ATTRibute-CM試験でNYHAクラスIとIIの患者632人を800mgを一日二回経口投与する群と偽薬群に2対1割付けして転帰を比較したところ、パートAの主評価項目である12ヶ月後の6分歩行テストはフェールしたが、パートBの30ヶ月複合評価項目のWin Ratioが1.8、p<0.0001となり、成功した。構成項目のうち全死亡だけの副次的評価はp=0.057と有意ではなかったが、心血管入院が50%少なかったことなどが寄与した模様だ。

Win Ratio法は、各群1例ずつをランダムに選択して優先順位に即して勝ち負けを決める。例えば、投与開始の半年後に各群1人ずつ心筋梗塞を発症し、偽薬群は即死、試験薬群はその半年後に死亡したようなケースでは、一般的な解析法であるtime-to-event法では優劣無しと評価されるが、Win Ratio法では最優先となる全死亡時期に半年の違いがあるため試験薬の勝ちとなる。Win Ratio法を採用したのは、主評価項目の構成が全死亡、心血管関連入院、NT-proBNPの変化、6分歩行距離となっており重要性がかなり異なるためだ。

日本の権利はアクテリオンが取得、先日、ブリッジング・スタディの30ヶ月生存率が対照群より高かった旨を発表している。

リンク: BridgeBioのプレスリリース

【承認】


タグリッソを一次治療にも承認
(2024年2月16日発表)

FDAはアストラゼネカのTagrisso(osimertinib)を一次治療に使うことを認めた。EGFRの遺伝子にエクソン19欠損又はエクソン21のL878R変異を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌における、再発治療限定を解除するもの。白金薬ベースの化学療法と併用する。FLAURA2試験でPFS(無進行生存期間)のメジアン値が25.5ヶ月とTagrissoだけを投与した群の16.7ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.62だった。副次的評価項目の全生存期間については、目標進捗率が45%と未成熟だが損なわれるようなトレンドは観察されていない、という文言がレーベルに記載された。G3以上の有害事象の発生率は64%とTagresso単剤群の27%を上回った。骨髄抑制などにより被験者の半数近くが何れかの薬を中止した。

FDAは今回の申請を、優先審査、ファースト・トラック、再生医療先端治療、そして希少疾患として指定し審査した。

リンク: FDAのプレスリリース


ゾレアを突発的食物アレルギー抑制に適応拡大
(2024年2月16日発表)

FDAはジェネンテックのXolair(omalizumab)を1歳以上の免疫グロブリンE(IgE)調停性食物アレルギーを抑制する目的で使用することを認めた。突発的な曝露に備える趣旨であり、少数だが応答しない患者もいるため、アレルゲンを回避する努力は続ける必要がある。

抗IgE抗体で、米国では03年に管理不良喘息症用薬として承認され、その後、ある種の慢性副鼻腔炎や蕁麻疹に適応拡大した。今回のエビデンスとなったのはNIH(米国立医療研究所)が主導したアレルゲン・チャレンジ試験。ピーナツに加えてもう一つの食品にアレルギーを持つ1~17歳の168人を組入れて16~20週間治療したところ、68%の患者が600mg以上のピーナツ蛋白(約2.5個分)を摂取しても中等度以上のアレルギー症状を起こさなかった(偽薬群は6%)。一方で、17%の患者は耐容量が増えなかった。

カシューナッツでは42%、牛乳は66%、卵は67%が中等度以上のアレルギー症状を起こさなかった。

Xolairはアナフィラキシーのリスクが枠付き警告されている。

リンク: FDAのプレスリリース


T細胞療法を悪性黒色腫に加速承認
(2024年2月16日発表)

FDAはIovance Biotherapeutics(Nasdaq:IOVA)のAmtagvi(lifileucel)を成人の切除不能/転移黒色腫用薬として加速承認した。PD-1標的抗体医薬(BRAFにV600変異を持つ場合はBRAF阻害剤も)による治療歴を持つ患者が適応になる。臨床試験におけるORR(客観的反応率、解析対象73人)は31.5%、反応持続期間のメジアン値は未達、反応者の43.5%は12ヶ月以上持続した。枠付き警告は、治療関連死(160人中12人)、重度の血球減少(G3以上の熱性好中球減少症発生率47%)、感染症、心肺症、腎障害。

切除した腫瘍細胞から採取し培養した腫瘍浸潤リンパ球(主としてCD4/CD8陽性T細胞)の細胞療法。リンパ枯渇療法を7日間施行した後に投与し、その後2~4日間、遺伝子組換えIL-2製剤を12時間おきに投与して増殖を促す。

当初は20年に承認申請の予定だったが、腫瘍抗原を認識するT細胞がどの程度あるのか測定することが難しいため、FDAが力価アッセイに関して様々な追加データを要求、承認申請が23年3月に遅れ、審査期間も延長された。

リンク: FDAのプレスリリース


メルクのc-MET阻害剤、米国で本承認に切替
(2024年2月15日発表)

FDAはメルクの米国子会社であるEMDセラノのTepmetko(tepotinib)をMET遺伝子にエクソン14スキップのある転移非小細胞性肺癌に承認した。この適応は21年に加速承認した時と同じ。薬効評価方法もORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)と反応持続期間で同じ。臨床試験が進捗し、症例数が約310人とほぼ倍増、反応持続期間の追跡期間も増加したため、本承認に切り替えた。通常は無作為化割付け対照試験で延命またはそれに準じる効果を確認する必要があるが、希少疾患用の分子標的薬ではFDAがフレキシブルな対応を行うことがある。

リンク: FDAのプレスリリース


初の凍傷治療薬が承認
(2024年2月14日発表)

FDAは、Eicos SciencesのAurlumyn(iloprost)を成人の重度凍傷の治療薬として承認した。指切除のリスクを抑制する。有害事象は頭痛、紅潮、動悸、悪心嘔吐などで、症候性低血圧のリスクが警告注意されている。

プロスタグランディンI2の類縁体で、他社の吸入用製剤が肺高血圧症治療薬として欧米日で承認されている。Aurlumynは静注点滴用製剤で、臨床試験では一日6時間、最大8日間投与した。パッケージ・インサートが未公開なのでエビデンスは明らかではないが、FDAのリリースで参照されている、フランスで行われた治験研究と推測される。スキー・リゾートとして有名なシャモニーの医師が2011年にNew England Journal of Medicine誌に寄稿した治験報告によると、96年から08年に山岳救助隊に運ばれてきた重度凍傷患者47人に、復温に加えてアスピリンと血管拡張剤buflomedilの静注を施行した上で3群に割付けて最大8日間治療し、骨スキャンで指切断が必要と判定されるリスクを比較した。アスピリン・buflomedil継続投与群は60%が指切断判定されたのに対して、アスピリン・iloprost併用群は0%、アスピリン・iloprostに加えて初日だけrTPAを投与した群は19%だった。

尚、buflomedilは欧州の一部国で末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)の治療に長年用いられていたが、安全域が狭く、PAOD患者がしばしば合併する腎障害で曝露が増加することなどが響き、痙攣や癲癇重積症の副作用が報告され、2011年にフランスが承認停止、翌年、欧州委員会も承認停止を勧告した。

EicosはCiVi Biopharmaの子会社で、どちらも未上場。設立は上記論文の刊行より後なので、既存の活性成分と既存の治験記録を活用して承認を取得する企業戦略なのかもしれない。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Cauchyらの治験報告書簡(N Engl J Med 2011; 364:189-190)
リンク: Wilderness Medical Societyの凍傷予防治療ガイドライン


FDA、オニバイドを一次治療にも承認
(2024年月日発表)

FDAはイプセンのOnivyde(irinotecanリポソーム製剤)を転移膵臓腺腫の一次治療に用いる適応拡大を承認した。50mg/m2を90分点滴静注、oxaliplatinを120分点滴静注、leucovorin30分点滴静注、fluorouracil46時間点滴静注という順番のコースを2週毎に施行する。

未治療の転移膵管腺腫を組入れた第3相NAPOLI 3試験で、メジアン生存期間が11.1ヶ月と、nab-paclitaxelとgemcitabineを併用した群の9.2ヶ月を僅かに上回り、ハザードレシオは0.83、p=0.04だった。副次的評価項目のPFS(無進行生存期間)はメジアン7.4ヶ月対5.6ヶ月、ハザードレシオは0.69。G3/4の治療時発現有害事象は下痢や悪心、疲労が低カリウム血症の発生率が上回った一方、骨髄抑制は下回った。

Onivydeは15~16年に米欧で、20年には日本でも、二次治療に承認された。17年にMerrimack Pharmaceuticalsから関連資産を取得したもの。今回の承認に伴い225百万ドルの目標達成金を貰えるMerrimackは、5月に特別株主総会を招集し、会社清算の承認を得る考え。

リンク: FDAのプレスリリース


武田、budesonideの粘性懸濁液が好酸球性食道炎に承認
(2024年2月12日発表)

武田薬品は、FDAがEohilia(budesonide)を11歳以上の小児・成人の好酸球性食道炎の治療薬として承認したと発表した。一巡目の審査は期限超過の末に審査完了となり、追加試験を推奨されたことから一時は開発中止となったが、何とかゴールにたどり着いた。

budesonideの粘着付着性局所性経口剤。2mg/10mLを一日二回、経口投与する。ゲル・ボールペンのインクはフリクション・ボールが紙の上で転がると液状化し、紙の上で再び固形化する。Eohiliaも同様なメカニズムを利用しており、10秒以上シェイクして粘度を落としてから服用する。

当方が把握している範囲では、08年にVerus PharmaceuticalsがMeritage Pharmaに権利を譲渡、11年にViroPharmaがMeritage買収オプションを取得、13年にViroPharmaを買収したShireが15年にオプション行使、19年に武田がShireを買収という経緯。

好酸球性食道炎では22~23年にRegeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab)が米欧で適応拡大した。皮下注用で、従来治療法に不応不適な患者に限定されている。年齢下限は昨年、米国で、1歳に引き下げられた。もう一つの違いは、Eohiliaは12週を超える投与の有効性や安全性が確認されていない。最初にEohiliaの12週コースを施行し、不十分/不耐ならDupixentにスイッチするイメージだろう。

リンク: 武田薬品のプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
24年1QイーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)
24/2/22 Venatorx Pharmaceuticalsのcefepime・taniborbactam併用(複雑尿路感染症)
24/2/26 Minerva NeurosciencesのMIN-101(roluperidone、統合失調症の陰性症状)
24年3月推BeiGeneのBrukinsa(zanubrutinib、FL obinutuzumab併用)
24年3月推BeiGeneのtislelizumab(未治療食道扁平上皮腫)
24年3-4月ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)
24/3/13Mirum社のLivmarli(maralixibat、進行性家族性管内胆汁鬱滞症に一変)
24/3/14 Madrigal社のMGL-3196(resmetirom、NASH/MASH)
24/3/14 BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、CLL追加)
24/3/18 Orchard TherapeuticsのOTL-200(atidarsagene autotemcel、異染性白質ジストロフィー)
24/3/21ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)
24/3/26MSDのMK-7962( sotatercept、肺動脈高血圧症)
24/3/27 AkebiaのVafseo(vadadustat、透析期CKDの貧血症)
24/3/31Regeneron社のREGN1979(odronextamab 、一部のリンパ腫)
諮問委員会
24/3/5MIDAC:Lumicellのpegulicianine(乳腺腫瘍摘出後の残存腫瘍造影)
24/3/14ODAC:Geronのimetelstat sodium(骨髄異形成症候群)
24/3/15ODAC:Legend/JNJのCarvyktiとBMSのAbecma(多発骨髄腫)



今週は以上です。

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