2023年1月14日

第1085回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • 小児脳腫瘍薬の承認申請用試験が成功 
  • 経口インスリンの第3相がフェール 
  • 向精神薬をアルツハイマー性アジテーションに適応拡大申請 
  • レカネマブを欧州でも承認申請 
  • vamoroloneは標準審査に 
  • バイオマリンのA型血友病遺伝子治療の3年目データ 
  • 喘息発作治療用合剤が承認 


【新薬開発】


小児脳腫瘍薬の承認申請用試験が成功
(2023年1月8日発表)

Day One Biopharmaceuticals(Nasdaq:DAWN)はDAY101(tovorafenib)の第2相再発/進行性pLGG(小児低悪性度神経膠腫)試験が良好な結果になったと発表した。今年上期中に承認申請する考え。

このFIREFLY-1試験は生後6ヶ月以上の患者を組み入れてORR(客観的反応率、RANO基準に基づく盲検独立中央評価)を検討している。今回、解析対象となった69人はメジアン3治療歴を持ち、86%は承認されている薬がもう無い。結果は、確認完全反応3人、確認部分反応31人、未確認部分反応1人でORR64%となった。疾病安定化を含めると91%。

有害事象は毛髪変色、CPK上昇、貧血、疲労、ラッシュが多くの患者で発生した。

経口II型汎RAF阻害剤で、武田薬品のミレニアム・ファーマシューティカルズが2011年にSunesis Pharmaceuticals(現Viracta Therapeutics)からライセンス、Day Oneは19年に武田とSunesisから一部の希少疾患を除く権利を取得した。

リンク: Day Oneのプレスリリース


経口インスリンの第3相がフェール
(2023年1月12日発表)

Oramed Pharmaceuticals(Nasdaq:ORMP)はORMD-0801の最初の第3相二型糖尿病試験がフェールしたと発表した。二本目の結果を待たずにこの用途の開発中止を決めた(非アルコール性脂肪性肝炎の第2相が進行中)。

インスリンに賦形剤を付与して小腸での分解を回避し腸上皮通過を可能にした、インスリンの経口カプセル製剤。第3相は2~3種類の経口剤を服用しても管理不良な二型糖尿病710人を組入れて8mgを一日一回、または二回、投与する効果を偽薬と比較した。主評価項目の26週HbA1cも、副次的評価項目の空腹時血糖値も、有意な差がなかった。

後期第2相試験では0.8%程度の有意な治療効果が見られたが、異常値が出た二施設のデータを解析対象から除外している。時々聞く話ではあるが、治験施設の選定や監督がキチンとできていたのか、他の施設は大丈夫なのか、気にかかるところだ。第3相は当初計画では1~3種類の経口剤を服用しても管理不良の二型糖尿病を組入れる予定で、ClinicalTrials.govの記述もそうなっているが、いつの間にか2~3種類服用者に変更された様子である。盲検解除前なら問題ないが、事前の検討が十分だったのか、気にかかる。二本目は薬物療法を受けていない、またはmetforminだけの患者を対象としているので、もし単剤治療しか受けていない患者には期待できないと信じる根拠があるならば、結果を待たずに中止したのも理解できる。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


向精神薬をアルツハイマー性アジテーションに適応拡大申請
(2023年1月10日発表)

大塚製薬と共同開発パートナーのルンドベックはRexulti(brexpiprazole)をアルツハイマー型認知症に伴うアジテーションの治療に用いる効能追加をFDAに承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は5月10日。諮問委員会に上程される見込み。向精神薬をアルツハイマー病に用いると死亡リスクが高まる可能性があるが、例外になりうるか、エビデンスは十分であるかが注目される。

非定型向精神薬のベストセラーAbilify(aripiprazole)の類薬で15~18年に米日欧で統合失調症などに承認された。今回の用途は3本の第3相が実施され、二本で主評価項目のCMAI(Cohen-Mansfield Agitation Inventory)の改善が偽薬を有意に上回った。フェールした試験も副次的評価項目であるCGS-S(Clinical Global Impression-Severity Illness)のアジテーション評価が有意に改善した。

アルツハイマー病患者は怒りっぽくなることがあり、介護者などに危険を及ぼす場合は対策が必要になる。向精神薬がしばしば用いられるが、複数の薬の臨床試験で死亡率が上昇しため、正式に承認された薬はない。Rexultiの第3相では試験薬群も偽薬群も死亡率が1%未満だったとのことだが、臨床試験は選ばれた医療施設の選ばれた医師が厳選された患者を対象に実施するので、現実の医療では奏効率は低下し副作用は増加すると思うべきである。

リンク: 両社のプレスリリース(和文、pdf)


レカネマブを欧州でも承認申請
(2023年1月11日発表)

エーザイとバイオジェンは、抗アミロイド・ベータ抗体lecanemabをEUで早期アルツハイマー病に承認申請した。米国では先日、Leqembi名で加速承認されたところ。日本でも3月までに申請予定。米国の加速承認は脳内アミロイド量を削減する効果を検討した第2相試験に基づくものだが、承認審査中に第3相で症状スコアの悪化が偽薬群の7掛け程度で収まることが確認されたため、加速承認の直後に本承認切替申請され、次いでEU、次いで日本という順番になった。開発はエーザイが主導しているが、日本が最後になったのは当局の感触が良くないのか、それとも、単に日本の優先順位が低いのだろうか?

リンク: 両社のプレスリリース(和文)

【承認審査・委員会】


vamoroloneは標準審査に
(2023年1月9日発表)

スイスのSanthera Pharmaceuticals(SIX:SANN)と米国のReveraGen Biopharma(未上場)は昨年10月に米国でvamoroloneをデュシェンヌ型筋ジストロフィー用薬として承認申請したが、優先審査の要望は受け入れられず、審査期限は10月26日となった。FDAは諮問委員会召集を考えていない。ローリング申請が認められた、unmet medical needsを標的とする薬なので順当なら優先審査指定されるだろうし、もし申請内容に大きな論点があるというなら諮問委員会に上程されるだろうから、奇妙な話だ。

欧州の施設で4~6歳の歩行可能な121人を組み入れた後期第2相試験で、6mg/kg/日群が起立テストや6分歩行テスト、10メートル走行歩行テストで偽薬比有意な改善を示した。prednisone群との比較は有意差がなかった模様。

vamoroloneは抗炎症作用を持つが体重や筋骨格系に影響しないステロイドの経口液製剤。SantheraはReveraGenからライセンスした。

リンク: 両社のプレスリリース(pdfファイル)


バイオマリンのA型血友病遺伝子治療の3年目データ
(2023年1月8日発表)

BioMarin Pharmaceutical(Nasdaq:BMRN)はRoctavian(valoctocogene roxaparvovec)の第3相重度A型血友病試験、GENEr8-1のフォロー・アップ・データを公表した。施行後3年目は治療を必要とする出血の年率発生率が平均1.0、メジアン値はゼロで、依然として高い出血防止効果を示した。解析対象数が若干異なるが、この試験のベースライン時点の数値は4.8、1年目は0.9、2年目は0.7だった。第VIII因子の予防的投与を受けている患者に投与した試験で継続投与が認められているが、3年経過時点では被験者の92%が打ち切った。

アデノ随伴ウイルス5型をベクターとして第VIII因子の遺伝子を肝臓で発現させる遺伝子療法。遺伝子療法は一回治療するだけで済む印象があるが、これまでのところ、長期的な持続性は承認後に確認する手筈になることが多い。Roctavianは上記試験の2年追跡データなどに基づき昨年8月にEUで条件付き承認された。米国は3月31日が審査期限だが、今回のデータを提出する予定なので、会社側は延期されると予想している。

リンク: 同社のプレスリリース


【承認】


喘息発作治療用合剤が承認
(2023年1月11日発表)

FDAはアストラゼネカのAirsupra(albuterol、budesonide)を成人の喘息症患者のレスキュー・セラピーとして承認した。短期作用性ベータ2作用剤とコルチコステロイドのpMDI吸入用合剤で、発作時の気管支収縮を治療し、再発や増悪を抑制する目的で、各90mcgと80mcgの合剤を一度に二回ずつ吸入する。必要に応じて、24時間に最大12回まで吸入できる。他のベータ2作用剤配合剤と同様に、心血管疾患、不整脈、高血圧症の患者は副作用に注意する。

喘息症で増悪リスクの高い患者は長期作用性ベータ2作用剤やムスカリン受容体拮抗剤のような気管支拡張剤とコルチコステロイドを1~3剤吸入して予防する(維持療法)。増悪時は短期作用性ベータ2作用剤を吸入する(レスキュー・セラピー)のが一般的だが、今回初めて、気管支拡張作用は期待できないが発作の源となる炎症を抑制するコルチコステロイド合剤が承認された。第3相試験では維持療法だけではER入室/入院などのリスクを十分に管理できない患者に追加投与したところ、albuterolだけを追加した群と比べて増悪が27%少なかった。Airsupraの一日当たり吸入頻度は平均2.6回だった。

同社は4歳以上の患者に承認申請したが、臨床試験組入れ数が限定的であることや、幼小児にステロイドを投与するリスクなどから、諮問委員会でも17歳以下は反対が賛成を上回った。

13年にPearl Therapeuticsを買収して入手した開発品の一つ。同じ英国のAvillion社が米国での開発販売権を持っており、第3相も同社が主導した。アストラゼネカは米国商業化オプションを持っている。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: アストラゼネカのプレスリリース





今週は以上です。

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