【ニュース・ヘッドライン】
- COVID-19関連:
- EU、旧型二価ワクチンに続いて新型も承認
- その他の領域:
- 5価髄膜炎菌ワクチンの第3相が成功
- オプジーボもIIB/C黒色腫アジュバント試験が成功
- FGF21類縁体の後期第2相NASH試験が成功
- コセンティクスの化膿性乾癬炎試験が成功
- 副腎白質ジストロフィー用薬を承認申請
- Clovis社、PARP阻害剤の適応拡大申請を断行
- アルファ・マンノシドーシス補充療法を米国でも承認申請
- 肝腎症候群用薬が米国でもやっと承認
- 新作用機序の尋常性乾癬治療薬が承認
【COVID-19関連】
EU、旧型二価ワクチンに続いて新型も承認
(2022年9月12日発表)
EMA(欧州薬品庁)のCHMP(医薬品審査委員会)はComirnaty Original/Omicron BA.4-5(オミクロンBA.4/BA.5亜系統適合二価ワクチン)を12歳以上の追加接種用COVID-19ワクチンとして承認することに肯定的意見を出した。欧州委員会も同日に承認。Comirnaty Original/Omicron BA.1(同BA.1亜系統適合二価ワクチン)の11日後と、旧型オミクロンや新型オミクロンの抗原を含む製品が相次いで承認された。
オミクロン株の流行は年初のBA.1から現在は欧米日共にBA.5にシフトしているので、BA.4-5適合二価ワクチンのほうが好ましいが、難点は、臨床試験のエビデンスが限られていること。米国や日本は片方しか承認されていないので、今すぐ接種するか、新型の治験結果が発表されたり承認されたりするのを待つか、二択だが、EU加盟国の場合、選択の余地があるだけに悩ましい。各国がどちらを選ぶか、注目される。
日本もBA.1版の特例承認の翌日にコミナティのBA.4/5版が承認申請された。欧米より遅いが、承認される頃には臨床成績が判明しているだろうから、むしろ好タイミングかもしれない。但し、政府がBA.1版の在庫が消化されるまでBA.4/5版の接種を遅らせるリスクがあるかもしれない。
リンク: EMAのプレスリリース
【新薬開発】
5価髄膜炎菌ワクチンの第3相が成功
(2022年9月15日発表)
ファイザーはMenABCWY(5価髄膜炎菌ワクチン)の第3相試験が成功したと発表した。データは未発表。第4四半期以降に米国などで承認申請する計画。
髄膜炎菌性髄膜炎を予防するワクチンはACWYの4群をカバーするものとB群だけの二種類あるが、5価ワクチンなら接種回数を減らせる。GSKの開発品も第3相の結果が出る頃であり、承認後は啓蒙予算の拡大も見込める中、B群をカバーするワクチンの普及拡大につながるかどうか、注目される。
MenABCWYは同社のACWY群ワクチンNimenrixとB群ワクチンTrumenbaを配合したもの。今回の試験は欧米の施設で10~25歳の2431人をMenABCWY二回接種群と既存ワクチン群(GSKのACWY群ワクチンMenveoを一回、Trumenbaを二回)に無作為化割付してhSBA(血清殺菌性抗体価)4倍増達成率を比較した。尚、この試験は既にACWY群ワクチンを一回接種した人も組入れたが、B群ワクチン接種済の人は除外している。
結果は、5群全てについて非劣性だった。ACWY群に関しては、一回接種後の達成率もMenveo一回接種と非劣性で、初回免疫例では一回接種後でも二回目後でもMenveo一回接種を上回った(この試験は開始から2年しか経っていないので試験中にMenveoを二回打った人はいないだろう)。B群の4血清型に関しては二回接種後の達成率がTrumenba二回接種後を上回った。
CDC(米国疾病予防管理センター)の髄膜炎菌ワクチンに関する接種勧奨は、11~12歳に全員がACWY群ワクチンを一回接種、16歳になったら一回追加接種する。他の世代でも高リスクなら接種勧奨。一方、B群ワクチンは10歳以上の高リスクの人だけだ。但し、16歳~23歳の人は医療従事者と本人が協議の上、短期的保護を目的に接種しても良い。回数は一回以上接種した方が良い。
ACWY群ワクチンが普及した結果、髄膜炎菌性髄膜炎はB群が主流になったので、TrumenbaやGSKのBexseroの重要性が高まっているはずだが、米国青少年のB群ワクチン一回接種は三人に一人以下、二回接種はもっと少ない由。Trumenbaの価格は一回170ドル程度、Menveoは150ドル程度なのでMenABCWYの価格を300ドルと推定すると、完全に置き換われば市場規模が5割程度拡大することになる。
リンク: ファイザーのプレスリリース
オプジーボもIIB/C黒色腫アジュバント試験が成功
(2022年9月15日発表)
ブリストル マイヤーズ・スクイブは、Opdivo(nivolumab)の第3相CheckMate-76K試験が中間解析で目的を達成したと発表した。ステージIIB/Cの黒色腫を完全切除した後に480mgを4週毎、最大12ヶ月点滴静注し、再発予防効果を偽薬と比較したもの。データは未発表。適応拡大申請に向かうのではないか。
OpdivoはステージIIIB/C/IVの黒色腫については完全切除後アジュバント療法が承認されている。競合するMSDのKeytruda(pembrolizumab)は一足先に両方の段階の患者に承認された。
リンク: BMSのプレスリリース
FGF21類縁体の後期第2相NASH試験が成功
(2022年9月13日発表)
米国サウス・サンフランシスコのAkero Therapeutics(Nasdaq:AKRO) は、AKR-001(efruxifermin)の後期第2相NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)試験が成功したと発表した。奏効率が二用量とも40%前後と、偽薬の20%を有意に上回った。第3相に進むのではないか。
18年にアムジェンからライセンスした長期作用性FGF21(線維芽細胞増殖因子21)類縁体で、週一回皮注する。今回のHARMONY試験は線維症のステージが2または3のNASH患者128人を偽薬、28mg、50mgの三群に無作為化割付して24週間治療し、奏効率(肝臓線維症が1ステージ以上改善し、且つ、NASHが悪化しない)を比較した。結果は各群20%、39%、41%となり両用量とも偽薬を有意に上回った。薬効解析対象はベースラインと第24週の肝生検データがある113人。データがない患者は非奏功例と見なして試算すると、各群の奏効率は19%、36%、32%となる。
副次的評価項目の、NASHが解消し線維症は悪化しなかった患者の比率も各15%、47%、76%と良好な結果になった。NASH解消且つ線維症1ステージ以上改善の比率も5%、29%、41%となった。主評価項目と異なり、高用量のほうが成績が良い。
忍容性の開示は限定的だが、治療時発現深刻有害事象は50mg群で1例(胃食道逆流症歴のある患者で食道炎)、有害事象による治験離脱は28mg群で2人、50mg群で1人、発生した。
後期第2相は他にGLP-1作用剤アドオン試験と代償性肝硬変試験が進行中で23年に開票する見込み。
リンク: 同社のプレスリリース
コセンティクスの化膿性汗腺炎試験が成功
(2022年9月10日発表)
ノバルティスは抗IL-17A抗体Cosentyx(secukinumab)の第3相試験が二本とも良好な結果になったことを発表した。EUでは既に適応拡大申請、米国でも年末までに申請予定。承認されれば抗TNF-アルファ抗体Humira(adalimumab)以来となる。
この試験は300mgを週一回、4回投与した後に2週毎または4週毎に投与し、16週後のHiSCR奏効率を偽薬と比較した。SUNSHINE試験では2週毎群が45.0%と偽薬群の33.7%を有意に上回ったが、4週毎群はp値が0.0418に留まりフェールした。SUNRISE試験では各42.3%、31.2%、46.1%となり、両用量とも有意差があった。
副次的評価項目である皮膚痛の改善は、2週毎群の二試験プール分析で偽薬を有意に上回った。
Cosentyxは乾癬性関節炎や乾癬の治療に維持期は4週毎投与することが承認されている。静注用製剤と自己注可能な皮注用製剤があるが、上記試験でどちらが採用されたのかは明らかではない。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認申請】
副腎白質ジストロフィー用薬を承認申請
(2022年9月14日発表)
スペインの中枢神経系希少疾患用薬開発会社、Minoryx Therapeuticsは、MIN-102(leriglitazone)をX-ALD(X染色体性副腎白質ジストロフィー)の成人の治療薬としてEUで承認申請し受理されたと発表した。米国ではFDAと次のステップについて相談中とのこと。第2/3相試験は主評価項目がフェールしたが、希少難病なので副次的評価項目などに基づいて条件付き承認される可能性もありそうだ。
X-ALDはALDPの遺伝子であるABCD1の変異により細胞内に極長鎖脂肪酸が蓄積、中枢神経系における脱髄や神経細胞変性、副腎機能低下などをもたらす。X染色体上の遺伝子なので男性の患者が多い。罹患率は新生男児2万人に一人と推定されている。小児は造血幹細胞移植が有効。エルカ酸とオレイン酸の混合物(通称Lorenzoのオイル)が使われることもあるが効果については諸説ある。21年にEUでbluebird bio(Nasdaq:BLUE)が開発した遺伝子療法、Skysona(elivaldogene autotemcel)が承認されたが、薬価が折り合わず返上、本丸の米国では9月16日に審査結果が判明する。
MIN-102はPPARガンマ・アゴニストで、pioglitazoneなどより脳浸透性が良い。第2/3相のADVANCE試験では、AMN(副腎脊髄ニューロパチー)の成人男性116人を試験薬群と偽薬群に盲検下で2:1無作為化割付して96週間治療し、運動機能の変化を6分歩行テストで評価した。フェールしたが、早期症候性患者では臨床的に意味のある群間差が見られた由(上記Lorenzoオイルも早期段階には有効という研究がある)。副次的評価項目では、新規/進行性の脳病変が試験薬群77人中3人で発生したが、偽薬群は39人中8人と5倍多かった。深刻な進行段階であるcALD(脳副腎白質ジストロフィー)と診断された患者数も、試験薬群はゼロ、偽薬群は6人と大きな差があった。
MIN-102は小児のcALDもpivotal試験中。
リンク: 同社のプレスリリース
Clovis社、PARP阻害剤の適応拡大申請を断行
(2022年9月13日発表)
米国コロラド州のClovis Oncology(Nasdaq:CLVS)はRubraca(rucaparib)を欧米で進行卵巣癌の一次治療後地固め療法に適応拡大申請したと発表した。第3相ATHENA試験のモノセラピー・パートに基づくものだが、FDAは事前相談で全生存期間のデータがもっと成熟するまで待つように助言した模様なので、at riskだ。
Rubracaは遺伝子複製ミスの修復に係るポリ(ADPリボース)ポリメラーゼの阻害薬で、BRCA変異陽性の進行卵巣癌の3次治療薬として16年に米国で加速承認された。市販後薬効確認試験でPFS(無進行生存期間、担当医評価)が化学療法群を有意に上回り、本承認に切り替えられたが、その試験の全生存期間の解析で死亡リスクが高まる懸念が浮上、承認返上に至った。
白金感受卵巣癌の二次治療に応答した患者の再発予防用途は現在も承認されているが、アストラゼネカなどの類薬が一次治療応答後再発予防に適応拡大したため、出番が殆どなくなってしまった。その意味でも今回の申請は背水の陣である。
リンク: 同社のプレスリリース
アルファ・マンノシドーシスの補充療法を米国でも承認申請
(2022年9月12日発表)
イタリアのChiesi Farmaceutici S.p.A.の希少疾患子会社は、米国でvelmanase alfaをαマンノシドーシス治療薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、23年上期に審査結果が出る見込み。
この疾患はαマンノシダーゼの欠乏により炭水化物などのマンノーズを代謝できず、オリゴサッカライドがリポソームに蓄積、知的障害や肝膵肥大、筋骨格異常などをもたらす。有病率は世界で100万人に1~9人の超希少疾患。本剤は遺伝子組換え型αマンノシダーゼで、臨床試験では血清オリゴサッカライドが正常水準まで低下した。
18年4月にLamzede名でEUの例外的環境状況に基づく承認を取得した
リンク: 同社のプレスリリース(PR Newsire)
【承認】
肝腎症候群用薬が米国でもやっと承認
(2022年月日発表)
アイルランド籍のマリンクロットは、FDAがTerlivaz(terlipressin)を肝腎症候群治療薬として承認したと発表した。腎機能が急速に低下している成人患者の腎機能を改善する。血清クレアチニンが5mg/dL超の患者では便益が期待できない。呼吸不全が枠付警告で、臨床試験における発生率は15%(偽薬群は7%)。深刻例や致死例もあった。体液過剰やグレード3のACLF(急速進行する肝不全)が高リスク。低酸素や呼吸器症状、冠動脈などの虚血は禁忌。治療中は連続パルスオキシメーターでモニターする。
活性成分は選択的バソプレシン1受容体作動剤。米国外で低血圧症などの治療に30年以上の使用歴がある模様だが、米国承認に至る道のりは長く、Orphan Therapeuticsが実施した第3相はフェール、申請を強行したが承認されなかった。権利を取得したIkariaが実施した第3相もフェール。しかし、Ikariaを買収したマリンクロットの第3相で血清クレアチニン抑制効果が確認された。20年の承認申請後も紆余曲折したがやっと承認された。
尚マリンクロットはオピオイド鎮痛剤の大手で、米国政府などが提起したオピオイド訴訟で16億ドルの和解金を払うことになり、20年に会社更生法適用を申請、今年6月に企業再編手続きが完了したところ。
リンク: 同社のプレスリリース
新作用機序の尋常性乾癬治療薬が承認
(2022年9月9日発表)
ブリストル マイヤーズ・スクイブは、FDAがSotyktu(deucravacitinib)を中重度尋常性乾癬治療薬として承認したと発表した。全身性治療または光学療法が候補になる成人患者に用いる。
タイプIインターフェロンなどがトリガーする細胞内シグナル伝達を調停する酵素、TYK2(tyrosine kinase 2)の制御ドメインに結合してアロステリックに阻害する、ファースト・イン・クラス。欧州でも審査中、日本では8月に第二部会を通過した(ソーティクツ錠、膿疱性乾癬や乾癬性紅皮症にも使える)。
第3相では偽薬群、6mg一日一回経口投与群、Otezla(apremilast)30mg一日二回経口投与群に無作為化割付して、主評価項目として16週時点のPASI75とsPGS 0/1(静的総合評価)を偽薬と比較、副次的評価としてOtezla群とも比較した。
結果は、各群のPASI75が一本は13/58/35%、もう一本では9/53/40%となり、偽薬比でも実薬比でも有意に上回った。sPGA 0/1は各7/54/32%と9/50/34%と、ここでも有意に上回った。
主な有害事象は感染症や血中クレアチン・ホスホキナーゼ値の上昇など。延長試験も含めて52週間追跡したが、最も多い感染症は肺炎とCOVID-19。3人で悪性腫瘍が診断された(100人年当り0.3人)。
TYKはJAK4とも呼ばれるようだが、本剤はJAK1/2/3を阻害しない。JAK阻害剤は感染症や癌などの枠付警告があるが、本剤は枠付警告なし。
Otezlaは米国で14年に尋常性乾癬や乾癬性関節炎の治療薬として承認されたPDE4阻害剤。セルジーンが販売していたが、BMSが19年に買収した時に、反トラスト法上の規制をクリアするため、アムジェンに134億ドルで事業売却した経緯がある。
リンク: BMSのプレスリリース
今週は以上です。
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