2022年6月25日

第1056回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • CHMP、不活化ワクチンの承認とナノ粒子ワクチンの小児適応を支持 
  • その他の領域: 
  • 65歳以上は効果が特に高いインフルエンザ・ワクチンを接種すべし 
  • D型肝炎用薬の奏効率が長期投与で更に上昇 
  • 抗IL-31ra抗体の結節性痒疹試験が成功 
  • ATTR-CMのアンチセンス薬のP3試験が成功 
  • atalurenのDMD薬効確認試験は微妙な結果に 
  • セリアック病の第3相が頓挫 
  • アステラス、NK3受容体拮抗剤を閉経期障害に承認申請 
  • 表皮水疱症の遺伝子療法を承認申請 
  • アッヴィ、経口CGRP受容体拮抗剤を慢性片頭痛にも承認申請 
  • ブレヤンジをEUで二次治療に適応拡大申請 
  • 貧血リスクが小さいJAK阻害剤を承認申請 
  • 二回接種型炭疽ワクチンの承認申請が受理 
  • CHMP、血友病遺伝子療法などの承認を支持 
  • タフィンラーとメキニストが併用でV600E変異固形癌に承認 
  • 15価肺炎球菌ワクチンが幼小児にも承認 


【COVID-19関連】


CHMP、不活化ワクチンの承認とナノ粒子ワクチンの小児適応を支持
(2022年6月23日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAとその医薬品科学的評価委員会であるCHMPは、6品目となるCOVID-19ワクチンの承認とヌバキソビッドの小児適応を支持した。

前者はフランスのValneva(Euronext Paris:VLA)のVLA2001。スパイク蛋白を高密度化した弱毒化全ウイルス・パーティクルをベロ細胞で培養した抗原に、アルミとDynavax社のCpG 1018を添加して免疫原性を増強したもの。エビデンスはSARS-CoV-2のオリジナル株に関する免疫原性をアストラゼネカのVaxzevriaと比較した免疫ブリッジング試験。中和抗体の幾何平均比は1.39で優越、抗体陽転率はどちらも95%以上で非劣性だった。EMAは、先に承認した英国と同様に、18~50歳のみに承認を勧告した。

英国政府やEUと供給契約を結んでいたが、期限までに承認されなかったため、英国は履行義務違反により契約終了、EUも破棄するだろう。

リンク: EMAのプレスリリース

Novavax(Nasdaq:NVAX)のNuvaxovidはEUでは昨年12月に18歳以上を対象に承認された。今回、18歳以上の試験のデータとの免疫ブリッジング試験に基づき、CHMPが12~17歳に広げることを支持した。デルタ株流行期に行われたこの試験ではワクチン効率が80%だった。

リンク: EMAのプレスリリース

【今週の話題】


65歳以上は効果が特に高いインフルエンザ・ワクチンを接種すべし
(2022年6月23日発表)

CDC(米国疾病管理予防センター)のACIP(ワクチン接種諮問委員会)は、65歳以上の人は8製品あるインフルエンザ・ワクチンのうち3品を優先的に選択して接種するよう勧告した。これまでは製品毎の優劣は付けていなかった。

背景は、近年、インフルエンザ・ワクチンの感染予防効果が低下していること。特に18/19年シーズンは、ワクチン効率29%、入院・死亡リスクが高い65歳以上では12%と低調だった。流行株の不一致やドリフトなどの生産過程での不都合が影響している。

ACIPがサノフィのFluzone高用量とFlublok、CSLのワクチン子会社であるSeqirusのFluadを選択したのは、頑強ではないもののある程度の直接比較データがあるため。Fluzone高用量は4種類の株のヘマグルチニン抗原を60mcgずつと、通常のワクチンの4倍、含んでいる。Fluadは不活化ワクチンに免疫増強剤MF59を添加した。どちらも65歳以上専用のワクチンだ。

私は65歳未満なので切羽詰まってはいないが、日本は他山の石と等閑にしてよいものだろうか?

インフルエンザ・ワクチン効率
シーズン全年齢 65歳以上
19/20年39%39%
18/19年29%12%
17/18年38%17%
16/17年40%20%
出所:CDC

リンク: CDCのプレスリリース

【新薬開発】


D型肝炎用薬の奏効率が長期投与で更に上昇
(2022年6月23日発表)

ギリアド・サイエンシズはHepcludex(bulevirtide)をD型肝炎治療薬として開発、第2相試験に基づき20年にEUで条件付き承認を獲得し、米国でも第3相試験の24週中間解析データに基づき昨年11月に承認申請した。今回、第3相の主目的である48週データが公表され、奏効が24週時点より増加したことが判明した。

ドイツのMyr社を昨年3月に目標達成報酬込み14.5億ユーロで買収して入手したNTCP(ナトリウム・タウロコール酸共輸送体ポリペプチド)阻害剤で、D型やB型の肝炎ウイルスが幹細胞のNTCPに取り付いて内部に侵入するのを妨げる。

第3相試験では2mgまたは10mgを24時間毎に皮注して複合奏効率(ウイルス量が一定以下に減少且つALTが正常化)を検討した。24週時点では夫々36.7%と28%となり、観察群(対照期間終了後に10mgにスイッチする)の0%を有意に上回った。48週時点では、各45%、48%、2%となった。

EUでは2mgが代償性D型肝炎に承認された。D型肝炎はB型など他のウイルスと共感染するが、HBV治療用核酸医薬と同時使用することも認められている。米国でも2mgを申請した。

リンク: 同社のプレスリリース


抗IL-31ra抗体の結節性痒疹試験が成功
(2022年6月22日発表)

スイスの皮膚科専門製薬会社、ガルデルマは、nemolizumabの第3相結節性痒疹試験が成功したと発表した。もう一本実施中で、データが揃ったら承認申請に向かうのではないか。

中外製薬から日台以外の地域でライセンスした抗IL-31受容体A抗体で、日本ではマルホがアトピー性皮膚炎に伴う既存治療不応の掻痒の治療用薬として販売している。

今回のOLYMPIA 2試験は中重度結節性痒疹の成人を組入れて、ステロイドなどは併用せずモノセラピーで効果を検討した。用法用量は、治験登録によると、体重90kg未満の患者には30mgを初回は2回、その後は1回、90kg以上は60mgを2回ずつ、4週毎に皮注し、16週後の成績を偽薬と比較した。た。

共同主評価項目のうち、病変改善奏効率(IGAが0または1に改善)は38%(偽薬群は11%)、ピーク時掻痒緩和奏効率(PP-NRSが4ポイント以上低下)は56%(同21%)と有意な差があった。

同社はアトピー性皮膚炎でも第3相試験中で、年内に成否が判明する見込み。

リンク: 同社のプレスリリース


ATTR-CMのアンチセンス薬のP3試験が成功
(2022年6月21日発表)

Ionis Pharmcateuticals(Nasdaq:IONS)とライセンス先であるアストラゼネカは、IONIS-TTR-L-RX(eplontersen)の第3相遺伝性トランスサイレチン調停アミロイド・ニューロパチー(ATTRv-PN)試験の中間解析が成功したと発表した。年内に米国で承認申請する考え。

Ionis社のライガンド結合アンチセンス薬技術により開発された4週毎皮注用薬で、トランスサイレチンの生産を抑制する。第3相の主評価項目は35週後の血清トランスサイレチン量とmNIS+7ニューロパチー障害スコア。ClinicalTrials.govによると18年に欧米で承認された同社の週一回皮注用アンチセンス薬、inotersenを投与する群も設定されているが、今回のプレスリリースによると、対照群はinotersenの承認申請用試験の偽薬群のデータを外挿したようだ。inotersen群の成績はどうだったのだろうか?

リンク: 両社のプレスリリース


atalurenのDMD薬効確認試験は微妙な結果に
(2022年6月21日発表)

PTC Therapeutics(Nasdaq:PTCT)はテレカンファレンスを開催して、欧州でデュシェンヌ型筋ジストロフィー向けに条件付き承認されているTranslarna(ataluren)の市販後薬効確認試験の結果を公表した。プレスリリースを出していないのは奇異だが、プレゼン用スライドはSECの適時開示データベースに登録した。

Translarnaは薬効確認試験が成功せず、米国では承認されなかったが、EUでは再審査請求を経て14年に条件付き承認された。市販後薬効確認試験もフェールしたが、現在でも、2歳以上の歩行可能な患者向けに条件付き承認が維持されている。

今回の試験は5歳以上で6分歩行テストの成績が150m以上の359人(平均8歳)を偽薬群と無作為化割付して72週間の低下を比較した。結果は各群64.7mと53.0m低下、副次的評価項目のNorthstar Ambulatory Assessmentスコアも悪化が4.5点と3.7点で、有意な差があったが、どちらもp値は0.02台でボーダーライン上だった。MMRM(Mixed Models for Repeated Measures)ではなくANCOVA(Analyisis of Covariance)を用いた解析ではp値が前者は0.08台、後者は0.06台と更に悪かった。

米国で承認を取るのは難しそうだが、株式市場はEUで承認が取り消されるほどではないと受け止められたようだ。株価が最近のピークである45ドルから先週は25ドル程度まで下げていたが、発表後に34ドル台に上昇した。

リンク: 同社のフォーム8-K(テレカン用スライド、pdfファイル)


セリアック病の第3相が頓挫
(2022年6月21日発表)

米国ノース・カロライナ州の新興企業、9 Meters Biopharma(Nasdaq:NMTR)は、larazotideの第3相セリアック病試験についてアップデートした。検出力を確認する目的で治験計画に則って中間解析を行った独立統計学者が、組入れを大きく増やす必要があると指摘。サブグループ分析やFDAとの相談を経て今後の方針を決定する予定だが、プレスリリースの書きぶりでは開発中止が濃厚だ。

Alba Therapeuticsがシャイアにライセンスしたが権利返還、16年にライセンスしたInnovate Biopharmaceuticalsが20年にイスラエルのRDD Pharmaと合併、9 Meters Biopharmaとなった。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


アステラス、NK3受容体拮抗剤を閉経期障害に承認申請
(2022年6月24日発表)

アステラス製薬はfezolinetantを閉経に伴う血管運動神経症状(VMS)の緩和用途でFDAに承認申請した。欧米の第3相で中重度VMS頻度がベースライン値の11.5回/日から4週後に偽薬比2回/日前後減少した。

17年にベルギーのOgeda社を買収して入手したNK3受容体拮抗剤。ゴナドトロピン放出ホルモンなどと異なりエストロゲンやプロゲスチンを大きく抑制しない。

リンク: 同社のプレスリリース(和文)


表皮水疱症の遺伝子療法を承認申請
(2022年6月22日発表)

米国ペンシルバニア州のKrystal Biotech(Nasdaq:KRYS)はB-VEC(beremagene geperpavec)を栄養障害型表皮水疱症の治療薬として米国で承認申請した。欧州でも申請予定。日本での申請も検討中。

栄養障害型表皮水疱症は、真皮と表皮を繋ぐ係留線維の構成成分である7型コラーゲンの遺伝子、COL7A1に機能喪失変異があり、皮膚に水疱や糜爛が生じやすい。米国の患者数は3000人と推定されている。B-VECは増殖・ゲノム統合能をなくしたHSV-1をベクターとしてCOL7A11をケラチノサイトや線維芽細胞の核に送り込む。局所性ゲル製剤を週一回、皮内注射する。

米国の3施設で1~44歳の31人を組入れたGEM-3試験で、半年後の創傷完治率が67%と、偽薬で治療した病変の22%を有意に上回った。試験薬関連の深刻有害事象や有害事象治験離脱は発生しなかった。抗HSV-1抗体や抗COL7抗体の量は大きく変化せず、免疫原性の懸念は浮上しなかった。

リンク: 同社のプレスリリース


新規SERDを承認申請
(2022年6月22日発表)

イタリアのメナリニ・グループと米国のRadius Health(Nasdaq:RDUS)は、米国でelacestrantを承認申請したと発表した。1~2次の内分泌療法歴を持つエストロゲン受容体陽性、her2陰性の進行/転移乳癌の男女477人を組入れて標準療法と比較した第3相試験で、PFS(無進行生存期間)が全集団の解析でも、内分泌療法抵抗性変異と見なされているESR1(エストロゲン受容体1のライガンド結合ドメイン)変異のあるサブグループの解析でも、有意に上回った(前者はハザードレシオ0.70、後者は0.55)。G3以上の治療時発現有害事象は悪心、嘔吐、下痢など。

選択的エストロゲン受容体零落剤で、2006年にRadiusがエーザイから日本国外の権利を、15年に日本の権利も、取得したが、腫瘍学撤退を決め、20年にメナリーニに世界開発商業化権を供与した。

翌23日、プライベート・キャピタル二社の合弁がRadiusを約9億ドルで買収することで合意した旨、発表した。

リンク: 両社のプレスリリース


アッヴィ、経口CGRP受容体拮抗剤を慢性片頭痛にも承認申請
(2022年6月21日発表)

アッヴィはQulipta錠(atogepant)を慢性片頭痛の予防に用いる適応拡大をFDAに申請した。21年に反復性片頭痛の予防薬として承認されており、発作頻度の高い患者にも承認されれば、経口CGRP受容体拮抗剤としては初。

反復性片頭痛の第3相では月平均片頭痛日数が4~14日の910人を偽薬、10mg、30mg、60mgの各群に無作為割付けして12週間治療したところ、各群2.48日、3.69日、3.86日、4.20日減少した。半減奏効率は各群29.0%、55.6%、58.7%、60.8%だった。

一方、慢性片頭痛の第3相は月平均15日以上の発作が1年以上持続と、診断基準以上に長く続く患者778人を偽薬、30mg一日二回、60mg一日一回の群に無作為化割付して12週間治療したところ、各群5.1日、7.5日、6.88日減少した。半減奏効率は26%、42%、41%だった。深刻有害事象の発生率は1.2%、1.6%、2.7%で、治療関連と見なされるものはなかった。

atogepantは20年に630億ドル(エクイティ・バリュー・ベース)で買収したアラガンが15年にMSDから導入した経口CGRP受容体拮抗剤パイプラインの一つ。米国以外の市場でも承認申請する考え。

リンク: アッヴィのプレスリリース


ブレヤンジをEUで二次治療に適応拡大申請
(2022年6月20日発表)

ブリストル マイヤーズ・スクイブは、Breyanzi(lisocabtagene maraleucel)をびまん性大細胞型リンパ腫(DLBCL)などの二次治療に用いる適応拡大をEUに申請し、受理されたと発表した。日米でも申請したのではないか。

CD19を標的とするCAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)療法で、日米欧で再発/難治性のDLBCLや原発性縦隔B細胞リンパ腫、グレード3Bの濾胞性リンパ腫などの3次治療薬として承認されている。今回はこれらの腫瘍のうち、難治/初回治療後12ヶ月内に再発した、造血幹細胞移植の候補になり得る成人が対象。第3相TRANSFORM試験で、死亡、進行、または無作為化割付から9週経っても部分反応以上を達成できないハザードレシオが医師の選んだ治療法と比べて0.349、完全反応率は66%対39%、全生存はデータが未成熟だがハザードレシオは0.509と、良好な数値が出た。

リンク: BMSのプレスリリース


貧血リスクが小さいJAK阻害剤を承認申請
(2022年6月17日発表)

Sierra Oncology(Nasdaq:SRRA)は米国でmomelotinibを骨髄線維症薬として承認申請した。既承認のJAK阻害剤と比較した非劣性試験の成績は今一つだったが、貧血症を伴う患者にも有効であることを差別化要因にできるかもしれない。

オーストラリアのCytopia社を2010年に買収したYM BioSciencesを13年にギリアド・サイエンシズが5億ドルで買収して入手、ruxolitinib対照の一次治療試験とスイッチ試験を行ったが、脾臓反応率や総合症状スコアの成績が今ひとつで、開発を中止した。18年にライセンスしたSierra社は、JAK阻害剤歴を持ち貧血症を併発する症候性骨髄線維症195人を200mg一日一回経口投与群と治療ガイドラインが推奨する貧血発症患者の治療薬、danazol群に2:1割付して、骨髄線維症の総合症状スコア半減達成率を比較したところ、25%対9%で有意に上回った。副次的評価項目の輸血不要達成率は31%対20%で非劣性、脾臓35%減少奏効率は23%対3%で優越だった。

リンク: Sierra社のプレスリリース


二回接種型炭疽ワクチンの承認申請が受理
(2022年6月24日発表)

天然痘や炭疽菌など、バイオテロに悪用されかねない微生物のワクチンなどを開発販売しているEmergent BioSolutions((NYSE:EBS)は、AV7909をFDAに承認申請し受理されたと発表した。審査期限は来年4月とのことなので、優先審査ではないようだ。

同社は1970年に承認されたBiothraxを18~65歳の曝露前/後予防用炭疽ワクチンとして販売しているが、初回免疫は半年間に3回、その後は半年毎に2回、その後は年一回、筋注と回数が多い。AV7909はこのワクチンにCPG 7909アジュバントを添加して初回免疫を2回接種に減らしたものであるようだ。用途は18~65歳の炭そ菌曝露後予防(疑いも含む)で、抗菌剤を併用する。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMP、血友病遺伝子療法などの承認を支持
(2022年6月24日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、FDAが難色を示したものも含め多くの新薬の承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

バイオマリンのRoctavian(valoctocogene roxaparvovec)は重度A型血友病のin vivo遺伝子療法。第8因子インヒビターや5型アデノ随伴ウイルス(AAV5)に対する抗体を持たない成人患者に、AAV5ベクターを用いて、第8因子の遺伝子を導入する。主要エビデンスである134人に投与した試験では、2年間で出血頻度が85%低下した。128人は第8因子が不要になった。ALTが上昇した場合、ステロイドで対処する。

同社は19年に欧米で承認申請したが、効果の持続性や臨床試験品と量産品の互換性などの理由で承認されなかった。EMAは延長追跡データによる再承認申請を認め、今回、条件付き承認が支持されたが、FDAは更に長期追跡するよう求めており、今年9月にも再申請する考え。

遺伝子療法は一回治療するだけで問題解決という先入観があるが、長期追跡データがまとまる前に承認されることが多いため、やってみないと分からない。欧州では、高額になる薬価を5年分割にして、効果がなくなったら支払いを打ち切る制度も導入されている。Roctavianも第1/2相で投与した患者を最大5年間追跡した症例は数例のようであり、出血頻度が経時的に上昇したり第8因子の予防的投与を再開した患者も見られる。

リンク: EMAのプレスリリース

Oncopeptides(Nasdaq Stockholm:ONCO)のPepaxti(melphalan flufenamide)はアルキル化剤melphalanをペプチドと結合して親油性を向上したもの。3次以上の治療歴を持ち3クラスの薬に抵抗性を示し最終治療抵抗性で、且つ、自家幹細胞移植歴がないか、36ヶ月以上経った後に進行した多発骨髄腫にdexaamethasoneと併用する。第2相HORIZON試験で、該当52例のORR(客観的反応率、治験医評価)が28.8%、メジアン反応持続期間は7.6ヶ月だった。

肯定的意見を得たことも、条件付き承認を申請したはずなのに、そして第3相の結果が既に判明しているのに、第2相に基づく本承認が支持されたことも、驚きだ。同薬は昨年2月に米国でPepaxto名で加速承認されたが、第3相実薬対照試験で副次的評価項目の全生存期間が見劣りしたことなどから7月にFDAから治験停止を命じられ、10月に会社側が承認返上を申請した。ところが、前CEOが11月に復任するや180度旋回、今年1月に承認返上申請を取り下げた。

欧米で評価が異なることは決して珍しくないが、今回は適応が若干異なる。米国の加速承認は第2相HORIZON試験の被験者157人中97人を占めた、4次治療歴を持ち3クラス抵抗性の多発骨髄腫。ORRは23.7%、メジアン反応持続期間は4.2ヶ月だった。この97人のうち68人は幹細胞移植を受けていた。今回の症例数は52例で、治療歴が3次だけの患者が加わったが、自家幹細胞移植後36ヶ月以内に進行した患者の除外のほうが多かったのだろう。メジアン生存期間の向上は印象的だ。

FDAは事後的なサブグループ分析に懐疑的だが、CHMPは時々、受け入れることがある。今回もこのパターンだろう。

リンク: EMAのプレスリリース

ギリアドのSunlenca(lenacapavir)はカプシド阻害剤。ウイルスの複製に不可欠なHIVカプシドを複製の様々な段階で阻害する。多剤抵抗HIV-1に感染した成人のサルベージ療法で、最初の3回は経口剤、その後は6ヶ月持続する皮注用製剤を、他の抗HIV-1薬と併用する。

米国でも欧州と同時期に承認申請したが、皮注用製剤のバイアルのホウケイ酸塩が薬剤に反応して不可視ガラス・パーティクルを生じるリスクが浮上し、FDAが昨年12月に治験停止命令、今年3月に審査完了通知を発出した。ギリアドはアルミノケイ酸塩ガラスに変更を決め、5月に治験停止命令が解除されたので、米国でも早晩承認されるのではないか。

リンク: EMAのプレスリリース

イーライリリーのReyvow(lasmiditan)は経口選択的セレトニン5-HT1F受容体アゴニスト。片頭痛の急性期治療に用いる。19年に米国で、今年1月に日本でも、承認された。

リンク: EMAのプレスリリース

ノバルティスのScemblix(asciminib)は経口ABLミリストイル・ポケット阻害剤。慢性期のフィラデルフィア転座陽性慢性骨髄性白血病で2~3種類のチロシン・キナーゼ阻害剤歴を持つ患者に用いる。21年に米国で加速承認、今年3月に日本でも承認。

リンク: EMAのプレスリリース

オランダのArgenx(Euronext:ARGX)のVyvgart(efgartigimod alfa)は胎児性Fc受容体に対する抗体フラグメント。全身性重症筋無力症(gMG)の治療に通常医療と併用する。米国では昨年12月、日本では今年1月に承認された。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大は以下が肯定的意見を獲得した。

協和キリンのCrysvita(burosumab):1歳以上の治癒的切除や局所化不能なリン酸塩尿性間葉系腫瘍による腫瘍性骨軟化症に伴うFGF23関連低リン血症。米国では20年に2歳以上に承認。エビデンスは日韓で実施された14人の第2相試験。

第一三共/アストラゼネカのEnhertu(trastuzumab deruxtecan):成人の切除不能/転移her2陽性乳癌の2次治療(これまでは3次治療)。

JNJのImbruvica(ibrutinib):未治療慢性リンパ性白血病にvenetoclaxと併用(新併用法)。

アストラゼネカ/MSDのLynparza(olaparib):成人の生殖細胞系BRCA1/2変異のあるher2陰性の高リスク早期乳癌。切除術前・術後化学療法の後に単剤又は内分泌薬を併用する。

アッヴィのRinvoq(upadacitinib):成人の非放射線学的軸性脊椎関節炎(CRP上昇やMRIで炎症が確認され、NIAIDsに十分に応答しない場合。)

【承認】


タフィンラーとメキニストが併用でV600E変異固形癌に承認
(2022年6月23日発表)

FDAはノバルティスのBRAF阻害剤Tafinlar(dabrafenib)とMEK阻害剤Mekinist(trametinib)を併用で6歳以上のBRAF V600E変異のある切除不能/転移性固形癌のサルベージ療法に用いる適応拡大を加速承認した。成人131人を組入れた臨床試験でORR(客観的反応率)が41%、小児36人の試験では25%だった。

BRAF阻害剤とMEK阻害剤が腫瘍原発部位ではなく遺伝子変異型に基づいて承認されたのは初。臨床試験での部位別ORRは、胆道癌48人では46%、高悪性度神経膠腫48人は33%、低悪性度神経膠腫14人は50%、低悪性度卵巣漿液性腫瘍5人では80%だった。結腸直腸癌はBRAF阻害剤に応答しないため適応外。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ノバルティスのプレスリリース


15価肺炎球菌ワクチンが幼小児にも承認
(2022年6月22日発表)

MSDはFDAがVaxneuvanceを6週児以上の小児成人に接種する対象年齢拡大を承認したと発表した。昨年、欧米で17歳以上に承認されており、日本でも承認審査中。

15種類の血清型をカバーする肺炎球菌結合型ワクチンで、同日、CDC(米国疾病管理予防センター)のワクチン接種委員会、ACIPがファイザーのPrevnar 13(13価肺炎球菌結合型ワクチン)と並ぶ幼小児の選択肢の一つとして接種勧奨した。

結合型ワクチンは幼小児にも効果があるが血清型のカバレッジでは40年前に承認されたMSDのPneumovaxに及ばない。ファイザーはPrevnar(7価)、Prevnar 13(13価)、そして、17歳以下は未承認だが、Prevnar 20(20価)とほぼ倍々ペースで拡大してきた。MSDはVaxneuvance(15価)を上回るV116(21価)の第3相を開始する予定。

リンク: MSDのプレスリリース




今週は以上です。

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