【ニュース・ヘッドライン】
- COVID-19関連:
- MMWR:未成年の7割以上が既に感染
- ベクルリー、生後28日の患者も使用可能に
- その他の領域:
- イーライリリー、tirzepatideが体重管理でも高い効果
- 中国発の抗PD-1抗体、食道扁平上皮腫の一次治療試験が成功
- アストラゼネカ、抗PD-L1抗体と抗CTLA-4抗体の併用を承認申請
- 閉塞性肥大性心筋症治療薬が承認
- アッヴィ、リンヴォックが強直性脊椎炎に適応拡大
- 難治性外陰膣カンジダ治療薬が承認
- ユルトミリス、筋無力症に適応拡大
【COVID-19関連】
MMWR:未成年の7割以上が既に感染
(2022年4月26日発表)
CDC(米国疾病管理予防センター)のCOVID-19緊急対応チームはSARS-CoV-2の抗体保有状況をMMWR(疫学週報)で報告した。民間ラボがSARS-CoV-2感染検査以外の目的で採取した検体を4週当り4~8万本の規模で調べたもので、検出対象は、米国で承認/EUAされたワクチンには含まれない、ヌクレオカプシドに対する抗体。
抗体保有率は昨年12月時点の33%から今年2月には57%に上昇した。年齢別では11歳以下が44%から75%に、12-17歳も45%から74%に上昇しており、4人に3人は感染歴があることになる。一方、65歳以上は19%から33%に上昇はしたものの水準自体は若年層ほど高くない。このように、年齢やワクチン接種完了率と逆相関している。
今回の調査の制約は、受診した人だけが対象であることや、人種や生活環境の違いが反映されていないことなど。ワクチン接種後に感染しても抗ヌクレオカプシド抗体価があまり上がらないことがあるので、偽陰性の可能性もありうる。
COVID-19は無症状の隠れ感染が多く、オミクロン株は特に顕著で過去の流行とは異なり若年層も感染しやすいため、真の感染状況を把握する上で抗体保有調査は重要だ。
残念なことに、感染やワクチン接種により獲得する抗体は長続きしない。流行当初に期待された集団免疫は、感染に関しては無理そうだ。米国の流行株は短期間にBA.1からBA.1.1、そしてBA.2に変遷し、直近ではBA.2.12.1の比率が3割まで上昇したとのことなので早晩、主流になるだろう。防御力が低下する一方で感染力はどんどん高まっている。
尤も、抗体が減少しても細胞性免疫はもっと長持ちするだろうから、重症・死亡を抑制することはできるかもしれない。実際、米国政府の主席医療顧問を務めるNIAID(米国立アレルギー・感染症研究所)のアンソニー・ファウチ所長は、現状を、爆発的な流行期から管理可能な流行期への移行期に入ったと指摘してる。
米国は年初のピーク時で一日に190万人が感染、4000人が死亡した。日本の10倍に相当する、惨状だ。日本並みになるだけでも大きな変化ということになる。感染の第7波、第8波が来る可能性自体は否定していないようだが、入院患者数や死亡者数が少なければ管理可能と考えているようだ。但し、具体的に何人程度を想定しているのかは不明。
年齢層 | 21/12時点 | 22/2時点 | ワクチン完了率 |
---|---|---|---|
0-11歳 | 44.2% | 75.2% | 28% |
12-17歳 | 45.6% | 74.2% | 59% |
18-49歳 | 36.5% | 63.7% | 69% |
50-64歳 | 28.8% | 49.8% | 80% |
65歳以上 | 19.1% | 33.2% | 90% |
全年齢 | 33.5% | 57.7% | 82% |
出所:Clarkeら(MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2022;71)をもとに作成
リンク: K. Clarkeらの論文(MMWR)
ベクルリー、生後28日の患者も使用可能に
(2022年4月25日発表)
FDAはギリアド・サイエンシズのVeklury(remdesivir)の対象年齢を引き下げ、生後28日以上且つ体重3kg以上のCOVID-19感染症に用いることを正式承認した。入院患者と、重症化リスクが高い軽中等症外来患者が適応になる。生後28日以上の患者を組入れた第2/3相単群試験や成人の臨床成績に基づく。
これまでは12歳以上且つ体重40kg以上が正式承認、体重3.5kg以上40kg未満または体重3.5kg以上の12歳未満はEUA(非常時使用認可)だった。生後1ヶ月どころか生まれたばかりの患者に投与することも法制上は可能だったわけだが、28日以上とはっきり記載されているのを目の当たりにすると、臨床試験に携わった人たちの勇気と誠意に感動する。
リンク: FDAのプレスリリース
【新薬開発】
イーライリリー、tirzepatideが体重管理でも高い効果
(2022年4月28日発表)
イーライリリーはLY3298176(tirzepatide)の第3相SURMOUNT 1試験の結果を公表した。米国や中国、日本などで成人の肥満症またはリスク要素を持つ太り過ぎの患者(糖尿病は除く)2539人を組入れて、偽薬、5mg、10mg、または15mgを週一回皮注する効果を比較したところ、体重がベースライン値の105kgから各群平均2.4%、16%、21.4%、22.5%減少した。5%減量成功率は28%、89%、96%、96%となった。夫々の主評価項目は10mgと偽薬、そして15mgと偽薬の比較だが5mgでもある程度の結果が出ている。一方、15mgは10mgと大差なさそうだ。
有害事象発生率のうち悪心は各群9%、24%、33%、31%、嘔吐は1%、8%、10%、12%、有害事象による治験離脱率は2%、4%、7%、6%だった。
肥満症や二型糖尿病の新薬ではノボ ノルディスクのGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)作用剤semaglutideが好評だ。tirzeptideはGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)受容体も作動するデュアルアゴニストで、昨年、日米欧で二型糖尿病用薬として承認申請された。
二型糖尿病におけるHbA1c治療効果は米国でsemaglutideの高用量(Ozempic 2mg)が承認され大差なくなったが、肥満症では、semaglutideの高用量(Wegovy 2.4mg)のHbA1c治療効果が10%程度であるのに対してtirzepatideは20%前後と高い。異なった試験のデータを比較するのは難しいが、ベースライン値も偽薬群の体重減少も大差ないので、他の試験が開票するまでは、効果が上回ると考えた方が良さそうだ。
忍容性はtirzepatideの数値のほうが良好だが、判定がプロトコルや国や施設により異なる可能性があるので、悪いと考える理由はない位に受け止めておけばよいだろう。
両剤とも副作用を抑制するため低量で開始して4週毎に増量するが、体重管理では、Wegovyが0.25mgで開始して第17週に目標維持用量である2.4mgに達するのに対して、tirzepatideは2.5mgで開始、目標が10mgなら第13週に到達するので、効果がフルに発揮される時期も早まるかもしれない。
リンク: イーライリリーのプレスリリース
中国発の抗PD-1抗体、食道扁平上皮腫の一次治療試験が成功
(2022年4月27日発表)
中国の百済神州(Nasdaq:BGNE)と日米欧などでの開発販売パートナーであるノバルティスは、BGB-A317(tislelizumab)の第3相RATIONAL 306試験が中間で主目的を達成したと発表した。切除不能/局所進行/難治/転移食道扁平上皮腫の一次治療として化学療法に追加する延命効果を検討したところ、偽薬追加を有意に上回った。数値は学会で発表する予定。
中国企業が創製した抗PD-1抗体の一つで中国では古典的ホジキンリンパ腫や膀胱癌、ある種の肺癌などに承認されている。食道扁平上皮腫では既に二次治療試験が成功しており、中国では今年4月に承認、米国でも昨年9月に初の承認申請が行われた。EUでも肺癌に承認申請中。
今回の試験は中国、北米、欧州に加えて日本の施設も参加したようなので、製造販売承認申請の可能性があるのではないか。
抗PD-1抗体ではBMSのOpdivo(nivolumab)の同様な試験が成功、欧州では今年2月にCHMPがPD-L1陽性(≧1%)限定で肯定的意見をまとめた。
リンク: 両社のプレスリリース
【承認申請】
アストラゼネカ、抗PD-L1抗体と抗CTLA-4抗体の併用を承認申請
(2022年4月25日発表)
アストラゼネカは抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)とファイザーからライセンスした抗CTLA-4抗体tremelimumabを併用で切除不能肝細胞腫の治療に用いる承認申請をFDAに行い、受理されたと発表した。優先審査バウチャを用い、審査期限を今年第4四半期に前倒しすることができた。尚、この併用は転移性非小細胞性肺癌の一次治療レジメンとして米欧日などで承認申請中。
抗CTLA-4抗体はブリストル マイヤーズ・スクイブのYervoy(ipilimumab)が第1号。tremelimumabは第2号と目されていたが臨床試験が失敗続きで11年にアストラゼネカ・グループのメディミューンに導出された。抗CTLA-4抗体は毒性が高いせいか、その後もフェールが続いたが、非小細胞性肺癌にImfinziとtremelimumab、そして化学療法を併用したPOSEIDON試験が成功。肝細胞腫一次治療における全生存をsorafenibと比較したHIMARAYA試験も成功した。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認】
閉塞性肥大性心筋症治療薬が承認
(2022年4月28日発表)
ブリストル マイヤーズ・スクイブはFDAがCamzyos(mavacamten)を成人のNYHAクラスII-IIIの症候性閉塞性肥大性心筋症の治療薬として承認したと発表した。心不全リスクを持つためREMS(リスク評価緩和戦略)を導入した。
肥大性心筋症におけるミオシンとアクチンの過剰な架橋とそれに伴う心筋収縮・弛緩を抑制する心臓ミオシンの可逆的アロステリック・インヒビター。20年にMyoKardiaを131億ドルで買収して入手した。
臨床試験ではpVO2(最大酸素摂取量)やNYHAクラス、LVOT(左室流出路ピーク勾配、KCCQ-23 CSS症状スコアの改善が見られた。6%の患者でLVEF(左室駆出率)が50%を下回ったが投与中断後に回復した。
便益と危険のバランスを取るためにはスクリーニングとさじ加減が重要。事前に検査してLVEFが55%未満なら投与は推奨されない。薬物相互作用にも注意が必要。この薬の代謝酵素であるCYP2C19の中強度インヒビター/インデューサーや3A4の強度インヒビター/中強度インデューサーは併用禁忌。また、この薬自体が2C19、3A4、2C9のインデューサーとなる。プロトン・ポンプ阻害剤やH2ブロッカーなどOTC化された薬も含めて要チェックだ。
問題なければ5mg一日一回経口投与で開始、LVOTやLVEF、心不全症状に応じて2.5mg、10mg、15mgに増減量する。
第三相試験は上記と同じLVEF55%以上が組入れ条件だった。被験者の75%がベータブロッカーを、17%がカルシウム・チャネル・ブロッカーを服用していたが、両方服用は除外条件だった。
適用拡大はSRT(中隔縮小療法)が適応になるほど進行した患者の第3相が既に成功。非閉塞性の拡張性心筋症は第2相がフェールしたが高リスクには良さそうな結果が出た模様で第3相に進む見込み。
リンク: BMSのプレスリリース
アッヴィ、リンヴォックが強直性脊椎炎に適応拡大
(2022年4月29日発表)
アッヴィはJAK1阻害剤Rinvoq(upadacitinib)を活性期強直性脊椎炎の治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。TNF阻害剤に十分に反応しなかった、または、不耐の患者が適応になる。EUでは1月にTNF阻害剤未経験も含めて承認されたが、米国はJAK阻害剤の適応をバイオ薬不応不耐に限定している。
15mgを一日一回経口投与した第3相試験で第14週のASA40奏効率が44.5%と偽薬群の18.2%を有意に上回った。深刻有害事象の発生率は各群2.8%と0.5%だった。
Rinvoqは米国では成人のTNF阻害剤不応不耐の中重度リウマチ性関節炎/活性期乾癬性関節炎/中重度潰瘍性大腸炎と12歳以上のバイオ薬不応不適なアトピー性皮膚炎に承認されている。深刻な感染症、腫瘍、主要有害心臓イベント、血栓症のリスクや他社のJAK阻害剤のリウマチ性関節炎長期安全性確認試験でTNF阻害剤より死亡率が高かったことが枠付警告されている(JAK阻害剤のクラス・ウオーニング)。
リンク: 同社のプレスリリース
難治性外陰膣カンジダ治療薬が承認
(2022年4月28日発表)
米国ノースカロライナ州の新興薬品会社、Mycovia Pharmaceuticals(未上場)は、FDAがVivjoa(oteseconazole)を難治外陰膣カンジダ症(RVVC)治療薬として承認したと発表した。アゾール系の経口抗真菌薬で、真菌のCYP51の選択性が高い。同社の開発品が承認されたのも、RVVC治療薬の承認も、初。
fluconazoleによる治療コースを終えた患者を組入れた二本の偽薬対照試験で奏効率(48週間に亘り再発無し)が一本は93%(偽薬群は57%)、もう一本は96%(60%)だった。急性期もその後の維持期もVivjoaを用いたultraVIOLET試験では奏効率(酵母感染が治癒し50週間の維持期に再発無し)が89%と、fluconazoleで治療し維持期は偽薬を投与した群の57%を上回った。
主な有害事象は頭痛や悪心など。
欧州などはハンガリーのGedeon Richterが、中国は江蘇恒瑞医薬が、開発商業化権を取得している。
リンク: 同社のプレスリリース
ユルトミリス、筋無力症に適応拡大
(2022年4月28日発表)
アストラゼネカはFDAがUltomiris(ravulizumab-cwvz)を全身性筋無力症の治療に用いることを承認したと発表した。患者の8割を占める抗AChR抗体陽性が適応になる。日欧でも承認申請中。
同社の抗C5抗体Soliris(eculizumab)の半減期を延長した特許切れ対策用薬で、維持用量の投与間隔が2倍の4週毎で済むことが長所。Solirisの主用途であるPNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)、aHUS(非典型溶血性尿毒症症候群)による補体調停性血栓性微小血管症、そして全身性筋無力症に順次、適応を広げている。
リンク: 同社のプレスリリース
今週は以上です。
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