【ニュース・ヘッドライン】
- COVID-19関連:
- 血管作動性腸管ペプチドのEUAを申請
- 抗GM-CSF抗体のEUAを申請
- その他の領域:
- ASCO:ノバルティスの放射性医薬品が進行死亡リスクを4割抑制
- ASCO:オプジーボの併用レジメンで食道癌の死亡リスクを4割抑制
- ASCO:キイトルーダの腎細胞腫術後補助療法は再発死亡リスクを4割抑制
- ASCO:リムパーザによるgBRCA変異早期乳癌の術後補助療法後コースは再発死亡リスクを4割抑制
- ASCO:キムリア、濾胞性リンパ腫に完全反応率66%
- Santhera、新規ステロイドの筋ジストロフィー試験が成功
- アゾール系抗真菌薬を承認申請
- 新作用機序の抗カンジダ薬が承認
- Alkermes、オランザピン配合剤が承認
【COVID-19関連】
血管作動性腸管ペプチドのEUAを申請
(2021年6月1日発表)
NRx Pharmaceuticals(Nasdaq:NRXP)は、Zyesami(aviptadil acetate)を呼吸不全を合併したCOVID-19の治療薬としてEUA(非常時使用認可)するようFDAに申請した。後期第2相/第3相無作為化割付偽薬対照試験で、呼吸不全からの回復や調整全生存期間の延長作用が見られたとのこと。
ZyesamiはVIP(血管作動性腸管ペプチド)を化学合成した点滴静注用薬。2000年代にバイオジェンがスイスのmondoBIOTECHからライセンスして肺動脈高血圧症試験を行ったが、権利返還。mondoは数回の事業統合を経てRelief Therapeutics(SIX:RLF)となり、20年にNeuroRxと共同開発販売提携を結んだ。このNeuroRxがビッグ・ロック・グループのSPAC(特定目的企業買収会社)と合併して21年に誕生したのがNRx Pharmaceuticalsだ。
SARS-CoV-2はACE2を通じて二型肺胞細胞に侵入し肺サーファクタントの分泌を妨げる。VIPはVPAC1受容体を通じて二型肺胞細胞に作用し、肺サーファクタントの分泌を促す作用がある。20年に20人の投与実績に基づいてCOVID-19用薬としてEUA申請したが、FDAは無作為化割付試験のデータを求めた。それが今回の、COVID-19肺炎でネーザルハイフロー以上の呼吸補助を受けている患者196人を組入れた試験だ。尚、7日間以上人工呼吸器を装着している患者や、ECMOは除外した。
結果はプレスリリースで部分的に開示されているだけ。欧州で承認申請を考えているRelief社も十分なデータを取得できず苦情のプレスリリースを発出したことがあるくらいで、効果のほどは良く分からない。VIPはNIH(米国立衛生研究所)のACTIV 3クリティカル・ケア試験やI-SPY COVID-19試験にも採用されているので、エビデンスが徐々に蓄積されていくだろう。
リンク: 同社のプレスリリース
抗GM-CSF抗体のEUAを申請
(2021年5月28日発表)
Humanigen(Nasdaq:HGEN)はKB003(lenzilumab)をCOVID-19入院患者の治療に用いるEUA(非常時使用認可)をFDAに申請した。第3相試験で人工呼吸器を装着したり死亡したりするリスクが偽薬を有意に下回った。尤も、治験成績に関する情報はプレスリリースだけなので、プロトコルがどの程度厳格・保守的なものであったのか、あるいは、感受性分析でも同様な結果が出ているのか、良く分からないところがある。
同社は元々はKaloBios Pharmaceuticalsという社名だったが、株式を買い集めて支配株主兼CEOとなったMartin Shkreliが不祥事で逮捕されたのを機に、会社更生法適用を経て、16年にHumanigenとして再出発した。主要開発品が上記の抗GM-CSFヒト化抗体だ。CAR-T療法に付き物のサイトカイン放出症候群(CRS)の治療などを想定していたが、COVID-19肺炎でもしばしばCRSを合併することに着目、昨年4月に第3相無作為化割付二重盲検試験を開始した。
米州の医療施設で肺炎を合併し酸素投与が必要だが人工呼吸器装着の必要はない患者512人を組入れて、8時間毎に3回、点滴静注する群の転帰を偽薬と比較した。結果は、主評価項目である人工呼吸器なしで28日間生存するハザードレシオが1.54、p=0.0365だった。カプラン・マイヤー法による人工呼吸器装着・死亡率は各群15.6%と22.1%で6ポイント以上の差があった。
全生存のハザードレシオは1.39と良好だったが検出力不足で有意水準には届いていない(p=0.22)。深刻有害事象のリスクは大差なかった。
ベースライン時点で9割近くの患者がステロイド、6割がremdesivir、57%は両方の、治療を受けていた。
数値はなかなか良いが主評価項目のp値がそれほど低くないので、一本の試験が成功するだけでは心許ない感じがする。NIH(米国立衛生研究所)が昨年10月にACTIV-5試験をロンチしたので、KB003の症例数は200人程度と小さく検出力不足が危惧されるものの、成功を期待したい。
リンク: 同社のプレスリリース
【新薬開発】
ASCO:ノバルティスの放射性医薬品が進行死亡リスクを4割抑制
(2021年6月3日発表)
ノバルティスは3月に177Lu-PSMA-617の第3相VISION試験の成功を公表したが、ASCO(米国臨床腫瘍学会)での発表を前に、概要を明らかにした。転移去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)の8割超で発現し正常細胞ではあまり見られない前立腺特定的膜抗原(PSMA)を標的とする薬品とベータ線を放出するルテチウム-177を結合した放射性医薬品で、本試験では、PETスキャンでPSMA陽性だった、タキサンやアンドロゲン受容体標的薬による治療歴を持つ、mCRPCを組入れて6週おきに最大6サイクル施行し、PFS(無進行生存期間、放射線学的評価)や全生存期間を最良支持療法/標準療法だけの群と比較した。
結果は、各群のメジアン生存期間は15.3ヶ月と11.3ヶ月、ハザードレシオ0.62(95%信頼区間0.52-0.74)、PFSは各8.7ヶ月、3.4ヶ月、0.40(99.2%信頼区間0.29-0.57)となった。薬物関連治療時発現深刻有害事象は各群9.3%と2.4%の患者で発現した。
ノバルティスは21年下期に欧米などで承認申請する予定。
ドイツのDKFZ癌研究所とハイデルベルグ大学の共同研究から生まれたコンパウンドで、ノバルティスは18年にEndocyte社を21億ドルで買収して権利を入手した。
リンク: ノバルティスのプレスリリース
ASCO:オプジーボの併用レジメンで食道癌の死亡リスクを4割抑制
(2021年6月3日発表)
ブリストル マイヤーズ スクイブは4月にCheckMate-648試験の成功を公表したが、ASCO発表を前に概要を明らかにした。切除不能進行性または転移性の食道扁平上皮腫648人を組入れて、fluorouracilとcisplatinを併用する標準療法群と、更にOpdivo(nivolimab)を併用する群、そしてOpdivoとYervoy(ipilimumab)の二剤を併用する群の全生存期間やPFSを比較した。
主評価項目であるPD-L1陽性サブグループにおける全生存期間は、各群のメジアン値が9.1ヶ月、15.4ヶ月、13.7ヶ月となり、標準療法に対するハザードレシオは各0.54と0.64、何れも統計的に有意だった。副次的評価項目である全被験者における全生存期間は、同様に、10.7ヶ月、13.2ヶ月、12.8ヶ月、0.74、0.78となり、こちらも全部統計的に有意だった。
G3/4の薬物関連有害事象発生率は各群36%、47%、32%だった。
リンク: BMSのプレスリリース
ASCO:キイトルーダの腎細胞腫術後補助療法は再発死亡リスクを4割抑制
(2021年6月3日発表)
MSDは4月にKeyNote-564試験が中間で成功したことを公表したが、ASCO発表を前に、概要を明らかにした。腎細胞腫を切除したが再発リスクが中高度または高度あるいは転移を完全切除した患者を組入れて、200mgを3週毎、最大17サイクル施行する群の無病生存期間を偽薬と比較したもので、ハザードレシオは0.68(95%信頼区間0.53-0.87)、p=0.001となった。全生存期間の中間解析も0.54(95%信頼区間0.30-0.96)、p=0.0164と良さそうな数値が出ているが、中間解析で成功認定する閾値をクリアしていないため、継続追跡する。
G3-5の治療関連有害事象発生率は18.9%で偽薬群の1.2%を上回った。G5はどれくらいあったのだろうか?
リンク: 同社のプレスリリース
ASCO:リムパーザによるgBRCA変異早期乳癌の術後補助療法後コースは再発死亡リスクを4割抑制
(2021年6月3日発表)
アストラゼネカと共同開発販売パートナーのMSDは、2月に、第3相OlympiA試験の中間解析が成功したと公表したが、ASCO発表を前に、概要を公表した。PARP阻害剤Lynparza(olaparib)の得意分野である生殖細胞系BRCA変異を持つher2陰性の早期乳癌で、術前術後補助療法を受けた高リスク患者に、偽薬または150mg錠2錠を一日二回、最長12ヶ月間投与した試験で、主評価項目のiDFS(局所・領域以上の侵襲的再発なしで生存)のハザードレシオは0.58(99.5%信頼区間0.41-0.82)、p<0.0001となった。3年無侵襲的疾患生存率は各群77.1%と85.9%。副次的な全生存期間の解析はハザードレシオ0.68(99%信頼区間0.44-1.05)、p=0.024となっており、中間解析の閾値は未だクリアしていない。10%の患者が有害事象で治験離脱した。
BRCA変異は卵巣癌や乳癌のリスク因子だが、乳癌の患者のうちBRCA変異を持つのは5%程度とのこと。
リンク: 両社のプレスリリース
ASCO:キムリア、濾胞性リンパ腫に完全反応率66%
(2021年6月2日発表)
ノバルティスは昨年8月にKymriah(tisagenlecleucel、和名キムリア)の第2相難治再発濾胞性リンパ腫試験が中間解析で成功したと発表したが、ASCO発表を前に、データをアップデートした。94人の解析で完全反応率(独立評価委員会方式)が66%と好成績。CAR-T療法に付き物のサイトカイン放出症候群はG1/2のみでG3/4はゼロ、神経学的有害事象はG3はゼロ、G4が一例あった。
21年中に適応拡大申請する予定。Kymriahは既に欧米で一部の濾胞性リンパ腫の三次治療薬として承認されているので、二次治療や、もし症例数が十分なら、濾胞性リンパ腫全般もカバーできるかもしれない。
リンク: 同社のプレスリリース
Santhera、新規ステロイドの筋ジストロフィー試験が成功
(2021年6月1日発表)
スイスのSanthera Pharmaceuticals(SIX:SANN)と米国のReveraGen BioPharmaは、vamoroloneのP2bVISION-DMD試験がポジティブな結果になったと発表した。4歳から6歳の歩行可能なデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者121人を偽薬、2mg/kg/日、6mg/kg/日、prednisone 0.75mg/kg/日に無作為化割付して、24週後の運動機能を比較したもの。
主評価項目は6mg群の横臥位からの起立時間で、偽薬比p=0.002となった。6mg群はベースラインの6.0秒から4.6秒に改善したが、偽薬群は5.4秒から5.5秒とほぼ横ばいだった。シーケンシャルに行われた副次的評価項目の解析は、同じ評価項目の2mg群と偽薬群の比較はp=0.02、6分歩行テストは6mg群対偽薬群はp=0.003、2mg群対偽薬群はp=0.009、10メートル走行歩行時間はは6mg群対偽薬群はp=0.002だった。
6mg群とprednisoneの群では有意な差はなかった。但し、発育速度はp=0.02でDMDの一般的な治療薬と比べて悪影響が小さかった。
vamoroloneはSantheraがReveraGenからライセンスした解離性ステロイド。通常のステロイドよりメタボリックな作用が小さいとされる。
リンク: 同社のプレスリリース(pdfファイル)
【承認申請】
アゾール系抗真菌薬を承認申請
(2021年6月1日発表)
米国ノースカロライナ州の新興薬品会社、Mycovia Pharmaceuticalsは、VT-1161(oteseconazole)を難治外陰膣カンジダ症治療薬としてFDAに承認申請した。アゾール系の経口抗真菌薬で、CYP51選択性が高い。第3相は三本成功した。欧州などはハンガリーのGedeon Richterが、中国はJiangsu Hengrui Medicine(江蘇恒瑞医薬)が、開発商業化権を保有。
Mycoviaの旧社名はViamet Pharmaceuticals。18年にNovaQuest Capital Managementに買収され、社名一新となった。
リンク: 同社のプレスリリース(pdfファイル)
【承認】
新作用機序の抗カンジダ薬が承認
(2021年6月2日発表)
米国ニュージャージー州の新興製薬会社、Scynexis(Nasdaq:SCYX)は、Brexafemme(ibrexafungerp)が外陰膣カンジダ治療薬としてFDAに承認されたと発表した。グルカゴン合成酵素阻害剤で殺菌作用を持つ。この疾患で新クラスが承認されるのは20年ぶり以上とのことだ。
経口剤で、第1日に150mg錠を2錠ずつ、12時間おいて二回、服用する。臨床試験では完全反応率(Test-of-cure基準)が一本は50%(偽薬群は28%)、もう一本では63%(同44%)だった。CYP3A強度阻害剤併用時は用量を半減する。有害事象は下痢や腹痛、悪心嘔吐、めまいなど。妊婦は禁忌で、治療開始前に妊娠検査し、投与完了の4日後まで必要なら避妊する。
販売受託組織であるAmplity Healthとともに21年下期にロンチする計画。
リンク: 同社のプレスリリース
Alkermes、オランザピン配合剤が承認
(2021年6月1日発表)
ダブリン籍の新薬開発会社、Alkermes(Nasdaq:ALKS)は、LybalviがFDAに承認されたと発表した。標準的な非定型向精神薬の一つであるolanzapineと新開発のミュー・オピオイド受容体拮抗剤、samidorphanの合剤で、統合失調症や双極障害I型の急性期治療や維持療法に用いる。
前者の体重増加作用を後者で抑制する狙いで、臨床試験では6ヶ月の治療後の体重増加が4.2%とolanzapine群の6.6%を有意に下回った。
リンク: 同社のプレスリリース
今週は以上です。
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