2021年3月21日

第991回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19:一部の抗体医薬は一部の変異株には無効 
  • COVID-19:EMA、アストラゼネカのワクチンを支持 
  • COVID-19:インサイトのJAK阻害剤は二本目もフェール 
  • Clovis、Rubracaの第3相卵巣癌試験が成功 
  • キイトルーダ・レンビマ併用の内膜腫市販後確認試験が成功 
  • リジェネロン、抗PD-1抗体の子宮頚部癌試験が成功 
  • イーライリリー、抗IL-23p19抗体の潰瘍性大腸炎試験が成功 
  • イーライリリー、アルツハイマー試験のデータを発表 
  • MSD、フォン・ヒッペル・リンドウ病の腎臓癌用薬を承認申請 
  • アッヴィ、リンヴォックの適応拡大が遅延 
  • FDA、IL-1トラップを再発性心膜炎に適応拡大 
  • オリタバンシンの新製品が承認 


【今週の話題】


COVID-19:一部の抗体医薬は一部の変異株には無効
(2021年3月18日発表)

FDAはイーライリリーとリジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)の抗SARS-CoV-2抗体を軽中等症COVID-19用薬としてEUA(非常時使用認可)しているが、ファクトシートをアップデートして、各地で流行している変異型に関するシュードウイルス試験の結果を記載した。

EUAを受けているイーライリリーのbamlanivimab(単剤)は、英国型変異(B.1.1.7系統)は感受するが、ニューヨーク型(B.1.525系統やB.1.526系統)のうちE484K変異のあるもの、カリフォルニア型(B.1.427系統やB.1.429系統)、南ア型(B.1.351系統)、そしてブラジル型(B.1.1.248/P.1)は大きく低下するため有効性は期待できないと評価した。この4変異株は感染やワクチン接種により獲得する抗体や抗体医薬をエスケープする可能性のあるスパイク蛋白L452R変異またはE484K変異を持っている。

bamlanivimabとetesevlmabを併用すれば、カリフォルニア型やニューヨーク型は感受する。しかし、南ア変異やブラジル変異には無効と評価した。

臨床試験で投与後にK417NやE484Kのような抵抗性変異が選択された症例もあるようだ。併用より単剤のほうが発生率が高いようだ。

リジェネロンのcasirivimabとimdevimabの併用レジメンは、これらの変異株の何れも感受する。臨床試験でG446Vが選択された症例があったようだが、インプリケーションは不明。

連邦政府はワクチンと同様にこれらの抗体医薬も一括で買い取り、無償提供しているが、カリフォルニア型が流行している三州はbamlanivimab単剤の配布を止めた。

欧米では南ア型変異やブラジル型変異は主流になっていないが、南アとブラジルでは圧倒的な主流株になっており、英国型変異と同様に、感染者数がある水準を超えたら翌月には過半を占めるようになるかもしれない。ワクチンだけでなく抗体医薬も対応が必要になるだろう。

リンク: FDAのファクトシート改訂に関するプレスリリース
リンク: bamlanivimabのEUAファクトシート(pdfファイル)
リンク: bamlanivimab・etesevlmab併用のEUAファクトシート(同上)
リンク: casirivimabとimdevimab併用のEUAファクトシート(同上)



COVID-19:EMA、アストラゼネカのワクチンを支持
(2021年3月18日発表)

欧州の薬品審査機関、EMAのPRAC(ファーマコビジランス・リスク・アセスメント委員会)は3月18日に臨時会議を開催し、アストラゼネカのCOVID-19ワクチンを接種した患者数人が血栓塞栓性疾患で死亡した件について検討、頻度が低いことなどから便益が危険を上回ると判定した。一部の国で接種が中断していたが、再開し始めた。

このワクチンはEEA(欧州経済領域)や英国で3月16日までに約2000万人が接種したが、血栓塞栓イベントの報告数は469例で、人口全体の発生率より低い。オーストリアではバッチ番号ABV5300が疑われたが、EMAは特定のバッチや工場との関連を示すエビデンスはないと結論した。

但し、CVST(脳静脈洞血栓症)やDIC(播種性血管内凝固症候群)に関しては、ワクチン接種と関連する可能性が残っているので更なる検討が必要と判定した。頻度は低く、CVSTは18例、DICは7例。殆どが55歳以下、過半は女性、致死例は9人だった。症例数が少なく、人口全体でも少数であるためリスクを統計学的に評価するのは難しいが、50歳以下に関してはリスクが高い可能性がある。3月16日までに接種した人のうち何人がワクチン以外の理由で接種14日以内に発症するかをCOVID-19流行前のデータに基づいて推定したところ、CVSTは1.35人、DICは1人未満だったが、アストラゼネカのワクチン接種者では各12人と5人だったからだ。50歳超ではこのような偏りは見られなかった。

EMAは医療従事者に対して、血栓塞栓性疾患の兆候に注意するよう接種者に伝えることを勧奨した。具体的には出血や易出血性、持続性または重度の頭痛など。多くは14日以内に発生しているので、接種直後の副反応が終わった後も油断しないよう促す必要がある。

米国や日本はCOVID-19ワクチンの臨床成績に係る詳細なデータを開示しているが、米国で承認された3製品のうちBioNTech/ファイザーやModernaのワクチンは血栓塞栓性イベントのリスクは見られなかったようだ。一方、アストラゼネカと同様にアデノウイルス・ベクターを使っているジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは血栓塞栓イベントが15例と偽薬群の10例を上回った。

残念なことに、アストラゼネカのワクチンが承認されている英国やEUではまだ詳細な治験データは開示されていないため、臨床試験でリスクが見られなかったのかどうか、分からない。

リンク: EMAのプレスリリース



COVID-19:インサイトのJAK阻害剤は二本目もフェール
(2021年3月18日発表)

インサイト(Nasdaq:INCY)はJakafi(ruxolitinib、和名ジャカビ)の第3相危機的COVID-19試験、DEVENTがフェールしたと発表した。そこまで重症ではない患者を組入れた第3相もフェールしており、同じJAK1/2阻害剤でありながら、NIAID(米国立アレルギー・感染症研究所)主導試験が成功しEUA(非常時使用認可)を得たイーライリリーのOlumiant(baricitinib、和名オルミエント)と明暗が分かれた。

尤も、数値自体は良く、患者組入れを途中で打ち切ったことが裏目に出た可能性がありそうだ。死亡率が高い患者層だけに数値が実力なら価値がある。同社は当局とExpanded Access Program(承認前の薬の提供を認める制度)の認可などを相談する考え。

Jakafiは真性多血症と、原発性、真性多血症後、あるいは本態性血小板血症後の骨髄線維症、そして移植片宿主病の治療に承認されている。米国外はノバルティスが開発販売。

今回のDEVENT試験は急性呼吸窮迫症候群を合併し人工呼吸器装着の患者500人を組入れて、5mgや15mgを一日二回投与する群の29日全死亡率を偽薬と比較する計画だった。しかし、もう一本の、サイトカイン放出症候群合併患者を組入れた試験がフェールしたせいか、途中で組入れ中止となり、今回の解析対象は211例に留まった。

結果は、5mg群の29日全死亡率が55.2%と偽薬群の74.3%を大きく下回り、オッズ比0.42(95%信頼区間0.171-1.023)、p=0.0280、15mg群も51.8%対69.6%、オッズ比0.46(0.201~1.028)、p=0.0292と、数値上は大変良かったが統計学的には有意ではなかった。サンプルサイズや多重性補正が影を落としたのではないだろうか。

米国の施設で組入れられた191人だけの解析では5mg群が46.7%対69.1%、オッズ比0.39、p=0.0189、10mg群は47.1%対66.7%、オッズ比0.43、p=0.0215だった。

尚、この試験では開始前/治験中に被験者の90%がコルチコステロイド、55%がremdesivirによる標準治療を受けていた。

さて、問題は、フェールしたRUXCOVID試験との整合性だ。29日死亡/人工呼吸器管理/ICU入室率が12.0%と偽薬群の11.8%と大差なかった。重症度が異なるとはいえ再現性を疑う余地はありそうだ。

OlumiantのACTT-2試験では呼吸器疾患合併患者にremdesivirと併用する効果を検討したところ、回復までの期間が7日と偽薬群の8日より短かった。これだけではパッとしないが、29日死亡率は7.1%と偽薬群の4.7%を下回り、p=0.09で有意ではないが数値は良かった。このため、2歳以上の酸素投与や人工呼吸器、ECMOが必要な患者に用いることが認められた。OlumiantはJakafiにない作用を持っているのかもしれないが、順番から言えば、同じJAK阻害剤でありながらなぜ食い違うのかを先に検討すべきだろう。

リンク: インサイトのプレスリリース


【新薬開発】


Clovis、Rubracaの第3相卵巣癌試験が成功
(2021年3月19日発表)

Clovis Oncology(Nasdaq:CLVS)はPARP阻害剤Rubraca(rucaparib)の第3相ARIEL4試験が成功したと発表した。生殖細胞系又は体細胞系のBRCA有害変異(g/sBRCAm)を持つ卵巣癌の三次治療試験で、主評価項目はPFS(無進行生存期間、担当医評価)。BRCAに復帰変異(reversion mutation)のある患者を除いた325人の解析でメジアン7.4ヶ月と化学療法群の5.7ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.64、p=0.001だった。シーケンシャルに行われた全349人の解析でも7.4ヶ月対5.7ヶ月、ハザードレシオ0.67、p=0.002と類似した結果になった。G3以上の治療時発現有害事象は貧血症、好中球減少症、疲労、血小板減少、肝機能検査値異常など。

Rubracaは欧米でg/sBRCAmを持つ卵巣癌の三次治療と、卵巣癌の白金薬反応後維持療法に承認されているので、ARIEL4試験の内容はオン・レーベルだが、二つの点で意義がある。米国は維持療法承認時に三次治療も本承認に切り替わったがEUは条件付き承認のままので、この試験のデータを提出すれば通常の承認に変わる。そもそも、加速承認/条件付き承認のエビデンスは反応率と反応持続期間で抗癌剤に求められる延命またはそれに準じる便益は確立していなかった。他社の類薬と競争する上でエビデンスの充実は重要だ。

第二に、元々のBRCAに有害変異があっても復帰変異が起きたらRubracaなどのPARP阻害剤に抵抗性が生じると言われているが、本試験では全集団の解析でも有効性が示されたこと。但し、サンプル数は少なく、また、復帰変異症例だけのデータは開示されていないので、本当に有効かどうかは未だ明らかではない。

リンク: 同社のプレスリリース


キイトルーダ・レンビマ併用の内膜腫市販後確認試験が成功
(2021年3月19日発表)

MSDとエーザイは、Keytruda(pembrolizumab)とLenvima(lenvatinib)を子宮内膜腫の二次治療に併用する効果を検討した第3相KEYNOTE-775/309試験が成功したと昨年12月に発表したが、データをSGO(婦人科腫瘍学会議)で発表した。治癒的手術不能な白金薬治療歴を持つ患者を組入れて効果を化学療法群と比較したところ、全生存期間はメジアン18.3ヶ月対11.4ヶ月、ハザードレシオ0.62、PFS(盲検独立中央評価)は7.2ヶ月対3.8ヶ月、ハザードレシオ0.56だった。

もう一つの主評価項目である、ミスマッチ修復機能が十分な患者だけの解析でも全生存期間は17.4ヶ月対12.0ヶ月、ハザードレシオ0.68、PFSは6.6ヶ月対3.8ヶ月、ハザードレシオ0.60と有意な効果が示された。米国で加速承認されているのはこの患者層だ。

G3以上の治療時発現有害事象は各群88.9%と72.7%、致死的な治療時発現有害事象は5.7%と4.9%の患者で発生した。

本試験成功を受けて、本承認切替申請を行う予定。修復不全の患者は承認されているKeytruda単剤と比較したエビデンスが必要かもしれないが、支持的エビデンスを用意できるなら当該患者層に適応拡大の余地もあるのではないか。また、米国外で承認申請することもできるだろう。

リンク: 両社のプレスリリース



リジェネロン、抗PD-1抗体の子宮頚部癌試験が成功
(2021年3月15日発表)

リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)とサノフィは、Libtayo(cemiplimab)の第3相子宮頸癌試験が成功したと発表した。適応拡大申請に向かう予定。

LibtayoはIgG4型抗PD-1抗体で、米国では進行皮膚扁平上皮腫、基底細胞腫、PD-L1高度発現進行非小細胞性肺癌に承認されている。今回の試験は治療歴のある難治/転移子宮頸癌(扁平上皮腫と腺腫)をPD-L1発現不問で組み入れて、350mgを3週毎に単剤投与する群と化学療法群の全生存期間を比較した。メジアン生存期間は各群12.0ヶ月と8.5ヶ月、ハザードレシオは0.69、95%信頼区間0.56-0.84となった。扁平上皮腫だけ、腺腫だけの解析でも夫々良い数値が出た。深刻な有害事象は30%対27%、有害事象による治験離脱は8%対5%で少し上回った。

リンク: 両社のプレスリリース



イーライリリー、抗IL-23p19抗体の潰瘍性大腸炎試験が成功
(2021年3月16日発表)

イーライリリーは、LY3074828(mirikizumab)の第3相LUCENT-1試験が成功したと発表した。既存薬不応の中重度潰瘍性大腸炎の寛解導入試験で、臨床的寛解率(排便頻度や出血などがほぼ正常化)が偽薬を有意に上回った。副次的評価項目の臨床的応答率や内視鏡的寛解率などでも有意差があった。バイオ薬やJAK阻害剤に不応な患者にも効果が見られた。試験完了者を組入れたLUCENT-2寛解維持試験の結果が22年に判明した段階で承認申請に向かうのではないか。

IL-23のp19サブユニットに結合するIgG4型抗体医薬で、既に完了した第3相中重度乾癬試験ではノバルティスのIL-17A抗体、Cosentyx(secukinumab)を上回る効果を示した。抗IL-23p19抗体はアッヴィのSkyrizi(risankizumab)やジョンソン・エンド・ジョンソンのTremfya(guselkumab)、そしてSun PharmaのIlumya(tildrakizumab)が既に承認されているので、新薬承認申請用試験のほかに適応拡大試験を積極的に推進する必要がある。

リンク: リリーのプレスリリース



イーライリリー、アルツハイマー試験のデータを発表
(2021年3月13日発表)

イーライリリーは今年1月、LY3002813(donanemab)の第2相早期症候性アルツハイマー病試験が成功したことを明らかにしたが、詳細をAD/PD 2021学会とNew England Journal of Medicines誌で発表した。主評価項目であるiADRSで有意な悪化抑制効果を示したが、この指標は未確立で、改善するのではなく悪化をある程度抑制するだけなので臨床的意義は明確ではない。また、p値は0.04なので閾値と大きな差があった訳ではない。

除外水準を緩和し組入れ人数を大きく増やした第2相が進行中で2013年にも成否が判明する見込み。二本成功なら承認申請に向かう可能性がありそうだ。

donanemabはアミロイドプラクにだけ見られるN端末側がピログルミタル化されたアミロイドベータに結合するIgG1型抗体。今回のTRAILBLAZER-ALZ試験は、認知機能低下が見られる早期(軽度認知障害及び軽度アルツハイマー病)の患者で、PET検査陽性、かつ、NFT(神経原繊維変化)の蓄積が低中度(早期症候性患者の30-45%が該当)の患者257人を偽薬群とdonanemab群に無作為化割付して4週毎点滴静注し、76週間のiADRSの変化を比較した。

donanemabの用量は、最初の3回は700mg、その後は1400mgに増量し、アミロイドプラクが正常水準に低下したら、700mg、そして偽薬に減量した。1年後には過半が偽薬にスイッチできた模様だ。

iADRSはバイオジェン/エーザイのADCOMSと同様な発想で開発された評価方法で、過去の臨床試験のデータを基にして、既存の病状評価指標を組み合わせて治療効果感応度を高めたもの。計算方法はiADRSのほうが簡単で、ADAS-cog14(スコアのレンジは0-90、大きい方が悪い)とiADL(手段的ADL、0-56、小さい方が悪い)を組み合わせるため前者の正負を反転して加算し、レンジを0-146にするため90を加えたもの。

iADLのベースライン値は平均106で、76週後に偽薬群は平均10.06低下したが、試験薬群は6.86の低下に留まり、32%の進行抑制効果が見られた。CDR-SBやADAS-Cog13、ADCS-iADL、MMSEなどでは20~40%の差があったが有意とは言えなかった。ADAS-Cog13の差は2ポイント程度なので決して大きいとは言えないが、承認されている薬でも半年で3ポイント程度の治療効果であることを考えれば、無視できるほどでもない。何れにせよ、アセチルコリン還元酵素阻害剤は一時的とはいえ症状が改善するのに対して、抗アミロイドベータ抗体は悪化がやや穏やかになるだけなので、本人も介護者も治療効果を実感できない可能性があり、顧客満足度は低そうだ。

抗アミロイドベータ抗体にはアミロイド関連画像異常(ARIA)という副作用がつきもの。本試験ではARIA浮腫が27%の患者で発現した(症候性だけカウントしても6%)。ARIA出血は8.4%、脳微小出血が7.6%、中枢神経脳表ヘモジデリン沈着症(出血の合併症)が13.7%で発現。深刻な点滴反応は2.3%で発生。有害事象による治験離脱は30%でその半分はARIAが発現したら離脱というプロトコルに従ったものだった。

リンク: イーライリリーのプレスリリース
リンク: IRプレゼンテーション用資料(pdfファイル)
リンク: Mintunらの治験論文抄録(NEJM)
リンク: WesselsらのiADRSに関する論文(PubMedサイト)



【承認申請】


MSD、フォン・ヒッペル・リンドウ病の腎臓癌用薬を承認申請
(2021年3月16日発表)

MSDはMK-6482(belzutifan)を米国で承認申請し、受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は9月15日。HIF-2(低酸素誘導因子2)を阻害する経口剤で、フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病の患者の即時手術不要な腎細胞腫の治療に用いる。

VHLは米国で1万人、世界では20万人が罹患する常染色体優性遺伝子疾患で、サブレッサー遺伝子の不活化によりHIF-アルファが蓄積、VEGFなどの腫瘍関連遺伝子の転写が増加する。VHL患者の最大7割が腎細胞腫を合併すると推測されている。MSDは非VHL性腎細胞腫の臨床試験も進めている。

19年にダラスのPeloton Therapeuticsを買収して入手したパイプライン。

リンク: MSDのプレスリリース


【承認審査・委員会】


アッヴィ、リンヴォックの適応拡大が遅延
(2021年3月17日発表)

アッヴィのJAK1阻害剤Rinvoq(upadacitinib、和名リンヴォック)は19~20年に日米欧でリウマチ性関節炎治療薬として承認された。乾癬性関節炎や強直性脊椎炎、アトピー性皮膚炎などにも開発されており、前二者は欧州で承認されたが、米国はFDAがJAK阻害剤の安全性に警戒心を持っているため遅れ気味だ。今回、乾癬性関節炎の適応拡大申請の審査期限が6月頃に3ヶ月延期されたことが公表された。要求に応じて危険対便益に関する追加データを提出したことが審査期限延期の要件である申請内容の主要な変更と見なされたため。アトピー性皮膚炎の適応拡大申請に関しても追加データ提出を求められた模様。

JAK阻害剤は経口剤でありながらバイオ薬に見劣りしない効果を持つが重要な副作用も持っている。ファースト・イン・クラスのXeljanz(tofacitinib、和名ゼルヤンツ)は主要有害心血管イベントや癌のリスクをTNF阻害剤と比較した長期安全性確認試験で非劣性解析がフェールした。感染症などのリスクも高い。

Xeljanzの副作用の多くはクラス・イフェクトであるため、FDAはJAK阻害剤全般の安全性に警戒的なスタンスだったが、上記長期安全性確認試験の結果判明後は一層、警戒を強めたとしても不思議はないだろう。

リンク: アッヴィのプレスリリース


【承認】


FDA、IL-1トラップを再発性心膜炎に適応拡大
(2021年3月18日発表)

FDAは、Kiniksa Pharmaceuticals(Nasdaq:KNSA)のArcalyst(rilonacept)を再発性心膜炎の再発予防に用いる適応拡大を承認した。この疾患の治療薬が承認されたのは初めて。

Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)が創製したIL-1アルファとIL-1ベータに結合する融合蛋白で、08年に米国でFCAS(家族性寒冷自己炎症性症候群)やMWS(マックル・ウェルズ症候群)などのクリオピリン関連周期症候群の治療薬として承認された。

Kiniksaはバミューダ籍の新興製薬会社で、17年にRegeneronから新規用途での開発販売権を取得した。再発性心膜炎の第3相試験では、12週間のランイン期間中に86人全員に週一回皮注して、応答した61人を継続群と離脱(偽薬にスイッチ)群に無作為化割付して再発リスクを比較したところ、無再発比率が各群93%と26%となった。

命に係わることもある感染症のリスクがあるため、活性期/慢性感染症は禁忌。治療中は生ワクチンは禁忌。

今回の承認により、Kiniksaは米国や日本でも全用途の開発販売権を取得した。Regeneronは利益の半分を得る。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Kiniksaのプレスリリース



オリタバンシンの新製品が承認
(2021年3月15日発表)

Melinta Therapeutics(Nasdaq:MLNT)は、FDAがKimyrsa(oritavancin)を急性細菌性皮膚皮膚構造感染症の治療薬として承認したと発表した。MRSAも含めて、oritavancinに感性のグラム陽性菌が対象。

14~15年に欧米で同じ適応症に承認されたOrbactivの溶解性を改善した新製剤。用量は1200mgを一回だけ点滴静注で同じだが、5%ブドウ糖液バッグだけでなく0.9%生理食塩液バッグに溶解することも可能。また、調整濃度をOrbactivの4倍に設定して点滴時間を3時間から1時間に短縮した。

MelintaはOrbactivの売上が伸びず、19年にスポンサーを確保した上で破産法を申請、会社再生中。

リンク: 同社のプレスリリース(Business Wire)






今週は以上です。

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