【ニュース・ヘッドライン】
- COVID-19:ノババックス、欧米でワクチンのローリング審査を申請
- COVID-19:JNJが一回接種のみのワクチンを承認申請
- AT1・ETA受容体拮抗剤の糸球体硬化症試験が成功
- BMS、TYK2阻害剤の二本目の尋常性乾癬試験も成功
- ロフルミラスト・クリームの乾癬試験が成功
- BMS、S1P受容体調節剤を潰瘍性大腸炎に適応拡大申請
- CHMP続報:キイトルーダの適応拡大とテセントリクの撤回
- FDA、TG社のリンパ腫用薬を承認
- BMS、CAR-Tがやっと承認
- テプミトコが米国でも承認
- FDA、ゼルヤンツの心血管疾患・癌リスクを通知
【今週の話題】
COVID-19:ノババックス、欧米でワクチンのローリング審査を申請
(2021年2月4日発表)
米国のNovavax(Nasdaq:NVAX)は、NVX-CoV2373のローリング申請をEU、英国、米国、カナダで開始したと発表した。第3相試験のデータがまとまる前に、前臨床や製造・管理体制に関する資料を提出して前倒しで承認審査してもらう。
全長融合前スパイク蛋白を抗原とするナノパーティクルワクチンで、Matrix-Mアジュバントを採用。21日置いて二回、筋注する。英国で実施された第3相試験では、二回目接種の7日後以降の症候性感染が6例と偽薬群の56例より少なく、ワクチン効率は89%だった。約半分は英国型変異ウイルスの感染だったが、ここでもワクチン効率はも85%と良好だった。
mRNAワクチンのような超低温管理は必要で、レディー・トゥ・ユースであることが特徴。富士フィルムの米国子会社が原薬の生産を受託している。日本は武田薬品が製造販売権を取得。
リンク: ノババックスのプレスリリース
COVID-19:JNJが一回接種のみのワクチンを承認申請
(2021年2月4日発表)
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、JNJ-78436735(Ad26.COV2.S)をCOVID-19ワクチンとしてEUA(非常時使用認可)するようFDAに申請した。2月26日の諮問委員会に上程される予定。EUでも数週内に条件付き承認を申請する予定。
アデノウイルス血清型26をベクターとしてSARS-CoV-2の融合前安定化S蛋白の遺伝子を接種者の細胞に導入し、抗原として発現させる。EUで昨年、承認されたザイール種エボラウイルス疾患ワクチン、ZabdenoもAd26ベクターを採用している。Zebdenoや第3相段階のHIVワクチンはプライム・ブースト法を取ったが、COVID-19では一回だけ接種する。
米州や南アフリカで行われた第3相ENSEMBLE試験では、接種の28日後以降の中重症感染が偽薬比66%少なかった。地域により偏りがあり、米国では72%とやや高かったが、自然感染やワクチン接種を通じて獲得する抗体が効きにくい可能性のある変異種が広がった地域では、南アが57%、ブラジルが含まれる中南米地域が66%と、やや低下した。
COVID-19の遺伝子ワクチンは予想外に効果が高かったため、二回ではなく一回でもインフルエンザワクチンと同程度の予防効果が得られる。アストラゼネカのワクチンは二回接種だが英国の第2/3相では二回目を12週間後に接種した症例もある程度あり、英国では、供給が需要に追い付かない現状を鑑み、当面は二回接種よりも一回接種におさえたほうがよいのではないかという議論が出ている。考えてみればインフルエンザワクチンも、何回接種するかは医学的エビデンスではなく社会保障制度に基づいて決定されているのだから、異国の話ではない。
JNJも、このような『薄くてもより広くに』を重視する考え方から、二回接種より一回接種を先に第3相入りさせたのだろう。しかし、治験成績は二回接種するワクチンのほうが高いように感じられる。COVID-19ワクチンの臨床試験は追跡期間が接種完了後2-3ヶ月と極めて短く、効果の持続性は曖昧だ。上記の数値は半年とか1年とか追跡すればもっと低下するだろうが、出発点が高いほうが着地点も高くなるのではないか。
同社は米国や英国、EUと供給合意している。パンデミックが続く限りは利益なしで販売する考え。ナノパーティクル・ワクチンとは異なり、零下20℃の冷凍庫で2年間安定、2~8℃の通常の冷蔵庫で最大3ヶ月間保存が可能。ファイザー/BioNTechのワクチンは超低温環境で保存する必要があるため、一ヶ所に集めて集団接種せざるを得ないが、アストラゼネカやJNJのワクチンはロジスティックに悩む必要はなさそうだ。
尚、日本の一部メディアは第3相試験の発症観察期間を接種から28日間と報道しているが、接種の28日後(第29日)以降の接種が正しいと思われる。念のためClinicalTrials.govで確認したところ、JNJの1月29日付のプレスリリースとは異なり、28日後以降の発症リスクは主評価項目でないばかりか、18項目に及ぶ副次的評価項目にも上がっていない。おそらく、当局の要請により主評価項目に追加したものの、治験登録の修正を失念したのだろう。
主評価項目として登録されているのは14日後以降の発症リスクで、接種後14日間ではない。こんな短期間予防してもワクチンとしては意味がないし、早すぎて効果が十分に発揮されないだろう。発症者の中には、ベースライン時点の検査で偽陰性だった人もいるかもしれない。このような理由で、ワクチンの予防効果確認試験の主評価項目は、接種完了後1~2週間経ってから後の感染だけをカウントするのである。
リンク: JNJのプレスリリース
リンク: JNJの第3相試験成功に関するプレスリリース(1/29付)
リンク: ENSEMBLE試験登録(ClinicalTrials.gov)
【新薬開発】
AT1・ETA受容体拮抗剤の糸球体硬化症試験が成功
(2021年2月2日発表)
Travere Therapeutics(Nasdaq:TVTX)は、RE-021(sparsentan)の第3相FSGS(巣状分節状糸球体硬化症)試験の中間的目的を達成したと発表した。FDAに加速承認を求める考え。
FSGSはネフローゼ症候群と呼ばれる症状を発現し、進行性の腎機能低下を示す。欧米で各4万人が罹患と推測されている。同社は欧米で希少疾患用薬指定を受けている。
sparsentanはアンジオテンシンIIタイプ1受容体とエンドテリンA受容体のデュアル・アンタゴニスト。06年にBMSから権利を取得したPharmacopeiaを08年にライガンド・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:LGND)が買収、12年に権利を取得したRetrophinがMarin Shkreliの退任を経て昨年11月に上記に社名変更、という経緯。
第3相のDUPLEX試験は8歳以上の原発性FSGS患者371人をsparsentan群(800mg/日を目標に用量漸増)とオフレーベル使用されているirbesartan群(300mg/日に漸増)に無作為化割付して代理マーカー改善効果を比較している。中間評価は最初の190人の蛋白尿部分寛解率(36週時点の尿蛋白クレアチニン比が1.5 g/g以下で且つベースライン比で40%以上低下)を比較した。結果は各群42%と26%となり、有意な差があった(p=0.0094)。
最終評価項目である108週間の推定糸球体ろ過率(eGFR)を検討するため、盲検試験を続行中。結果は23年上期の見込みで、成功なら加速承認を本承認に切替える申請を行う考え。
同社はIgA腎症でも第3相試験中で、36週蛋白尿の中間評価は今年第3四半期の見込み。
リンク: 同社のプレスリリース
BMS、TYK2阻害剤の二本目の尋常性乾癬試験も成功
(2021年2月2日発表)
ブリストル マイヤーズ スクイブは、BMS-986165(deucravacitinib)の二本目の第3相中重度尋常性乾癬試験が成功したと発表した。一本目と同様に、主評価項目であるPASI75(PASIスコアが75%以上改善)とsPGA0/1(医師による静的総合評価が無症状またはごく軽度、に改善)の達成率が偽薬比有意に上回り、副次的評価項目であるOtezla(apremilast)との比較でも有意に上回った。承認申請に向かうのではないか。
ファースト・イン・クラスのTYK2(チロシン・キナーゼ2)阻害剤で、IL-23やIL-12などがトリガーする細胞内シグナル伝達を妨げる。IL-6やIL-2、JAKなどは阻害しない。
Otezlaはセルジーンが尋常性乾癬治療薬として商業化したPDE4阻害剤だが、BMSが買収に際して事業をアムジェンに134億ドルで売却した。同じ経口剤なのでBMS-986165が発売されたら打撃を受けそうだ。
リンク: BMSのプレスリリース
ロフルミラスト・クリームの乾癬試験が成功
(2021年月日発表)
米国カリフォルニア州の新興医薬品開発企業、Arcutis Biotherapeutics(Nasdaq:ARQT)は、ARQ-151(roflumilast)の第3相尋常性乾癬試験が二本とも成功したと発表した。0.3%局所性製剤を一日一回塗布した群は8週後のIGA奏効率が一本では42.4%(偽クリーム群は6.1%)、もう一本では37.5%(同6.9%)と偽薬比有意に上回った。副次的評価項目のうちPASI-75は、プレゼンテーション資料収載のグラフによると、40%前後で偽クリーム群の5-8%を有意に上回ったが、これは、BMSのOtezla(apremilast、和名オテズラ)が第3相試験で挙げた数値と比べても良好だ。
有害事象は下痢が少し増える程度。治療時発現有害事象による治験離脱は1%前後、治療関連深刻有害事象はなかった。
同社は21年下期に承認申請する考え。下期には脂漏性皮膚炎の第3相も開始する予定。
roflumilastはPDE4阻害剤。経口剤はドイツのアルタナ社がAlvesco(ciclesonide、和名オルベスコ)と同時期に臨床開発を進めたが、化学事業スピンアウト構想が急転直下、薬品事業売却に代わり、06年に事業買収したナイコメッド(11年に武田役員が買収)が10~11年にCOPD治療薬Daxasとして製品化した。しかし、売上高はアルタナ時代に期待されたほどは伸びなかった。
リンク: Arcutisのプレスリリース
アストラゼネカ、イムフィンジの第3相頭頚部癌試験がフェール
(2021年2月5日発表)
アストラゼネカは抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)の第3相難治・転移頭頚部扁平上皮腫一次治療試験がフェールしたと発表した。単剤またはファイザーからライセンスした抗CTLA4抗体、tremelimumabと併用する延命効果を標準療法である5-FU、cisplatinまたはcarboplatin、そしてcetuximabの併用と比較したが、PD-L1高発現サブグループ(腫瘍の50%以上または腫瘍浸潤免疫細胞の25%以上で発現)でも、それ以外の患者も含むintent-to-treatベースでも、フェールした。
抗PD-1抗体ではMSDのKeytruda(pembrolizumab)がモノセラピーはCPS(腫瘍と腫瘍浸潤免疫細胞でのPD-L1発現を評価)が1以上のサブグループに関して、標準療法併用群はPD-L1発現不問で、延命効果が標準療法を上回り、欧米で承認された。再発治療ではKeytrudaとOpdivo(nivolumab)がPD-L1発現不問で承認されている。
それだけに、今回のフェールは意外だ。ImfinziおよびImfinzi・tremelimumab併用は白金レジメン歴を持つ患者を組入れた第3相試験でも標準療法を上回ることができなかった。
リンク: アストラゼネカのプレスリリース
【承認申請】
BMS、S1P受容体調節剤を潰瘍性大腸炎に適応拡大申請
(2021年2月1日発表)
BMSが19年に買収したセルジーンは、その数年前から株主の期待に応えるために様々な企業の開発品を導入・取得した。15年にReceptosを72億ドルで買収して取得したのがS1PR1/5調節剤のZeposia(ozanimod)で、20年に欧米で再発型多発硬化症の治療薬として承認された。
BMSは潰瘍性大腸炎やクローン病にも開発を進め、まず、成人の中重度活性期潰瘍性大腸炎の治療薬として昨年12月に欧州で適応追加申請したが、今回、米国でも申請し受理されたことを明らかにした。優先審査バウチャを使ったため、審査期限が5月30日に早まっている。
前治療に十分応答しなかった患者を組入れて1mgを一日一回投与した第3相試験で、第10週臨床的寛解率が18.4%と偽薬の6.0%を有意に上回った。第52週寛解維持率は各37.0%と18.5%でこちらも有意に上回った。
リンク: BMSのプレスリリース
【承認審査・委員会】
CHMP続報:キイトルーダの適応拡大とテセントリクの撤回
(2021年2月1日発表)
EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、1月の会合で新薬だけでなく適応疾患や用法、年齢の変更に関する肯定的意見もまとめたが、作業が間に合わなかったのか、内容についてはリリースが2月1日に遅延した。先週、書けなかった分を追加する。
今回、肯定的意見を得たのは対象年齢拡大に係るものだけだった。但し、MSDのKeytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)は適応範囲の拡大もあった。成人のASCT(自家造血幹細胞移植)歴を持つ再発・難治古典的ホジキン型リンパ腫に単剤投与することが承認されているが、新たに、3歳以上の小児・青少年に用いることが支持された。更に成人小児のASCT不適患者で二次以上の治療歴を持つ患者に用いることも支持された。
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: MSDのプレスリリース
ロシュがTecentriq(atezolizumab)の尿路上皮腫一次治療化学療法併用の適応拡大申請を撤回したことも公表された。再発・難治尿路上皮腫はTecentriqが最初に承認された適応症だが、一次治療における抗PD-L1/PD-1抗体の効果は当初考えられたほどではなく、cisplatin不適に単剤投与することが一旦は承認されたが、その後に全生存期間の解析がフェールしたため、PD-L1陽性に限定されることとなった。
展望が好転したのがTecentriqのIMvigor130試験だ。局所進行性/転移性の患者の一次治療として、cisplatin(またはcarboplatin)とgemcitabineの標準療法に偽薬またはTecentriqを追加してPFS(無進行生存期間、治験医評価)を比較したところ、メジアン値が各6.3ヶ月と8.2ヶ月、ハザードレシオは0.82で統計的に有意な差があった。しかし、共同主評価項目である全生存の解析はフェールし、特にPD-L1陰性・低度陽性(IC0/1)では、最初の数ヶ月間はTecentriq群のほうが死亡率が高い傾向があった。
ロシュは適応拡大を申請したが、CHMPは否定的に考えていた模様だ。理由は、プレスリリースによると、組入れられた患者や用いられた治療レジメンに差異があったため結果を評価するのが困難で、PFSの解析は結論を出せるものではなく、全生存期間の解析は有意差がなかった。
ロシュの申請がPD-L1高発現に限定したものなのかどうかは明らかではない。
リンク: EMAのプレスリリース
【承認】
FDA、TG社のリンパ腫用薬を承認
(2021年2月5日発表)
FDAは、TG Therapeutics(Nasdaq:TGTX)のUkoniq(umbralisib)を再発難治リンパ腫用薬として加速承認した。辺縁帯リンパ腫で一種類以上の抗CD20抗体治療歴を持つ成人や、濾胞性リンパ腫で3次以上の全身性治療歴を持つ成人が適応になる。後者は、臨床試験の組入れ条件(2次以上)より狭くなっている。
PI3Kデルタとカゼイン・キナーゼ1エプシロンを阻害する経口剤で、一日一回服用する。臨床試験でのORR(客観的反応率)は辺縁帯リンパ腫ではが49%、濾胞性リンパ腫では43%だった。深刻有害事象の発生率は18%で、主として下痢-大腸炎と感染症。
スイスのRhizen Pharmaceuticalsからインド以外での独占開発販売権を取得したもの。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: TG社のプレスリリース
BMS、CAR-Tがやっと承認
(2021年2月5日発表)
ブリストル マイヤーズ スクイブはFDAがBreyanzi(lisocabtagene maraleucel)を大細胞型B細胞リンパ腫用薬として承認したと発表した。再発・難治びまん性大細胞型B細胞リンパ腫や原発性縦隔B細胞リンパ腫などの3次治療に用いる。原発性中枢神経リンパ腫は適応外。先に承認されたCAR-Tと同様に、サイトカイン放出症候群と神経毒性が枠付警告されている。
同社が買収したセルジーンがJuno Therapeutics(Nasdaq:JUNO)を買収して入手した、ex vivo細胞療法。患者から採取した免疫細胞に抗CD19抗体などのシーケンスを導入し、培養した上で患者に投与する。採取から完成品到着までのリードタイムはメジアン24日と他のCAR-Tよりやや長い。報道によるとWAC(卸取得価格)は41万ドル。
BMSはセルジーンの株主に特定の新薬が期限までに全て承認されたら総額で64億ドル支払う責務を追っていたが、Breyanziの承認が遅延したため、消滅した。
リンク: BMSのプレスリリース
テプミトコが米国でも承認
(2021年2月3日発表)
FDAは、独メルクの米国子会社であるEMD SeronoのTepmetko(tepotinib、和名テプミトコ)をMET(mesenchymal-epithelial transition)遺伝子にエクソン14スキッピングがある転移非小細胞性肺癌の薬として加速承認した。非小細胞性肺癌の3-4%が該当と推測されている。他の変異より年齢が高い傾向があるようだ。
先駆け審査指定を受けた新薬としては珍しく、昨年3月に日本で世界に先駆けて承認された。欧州は昨年11月に承認申請が受理されたところ。
加速承認の根拠となった第2相試験では、未治療患者69人におけるORR(客観的反応率、盲検独立評価委員会方式)が43%、メジアン反応持続期間は10.8ヶ月、一次以上の治療歴を持つ83人では各43%と11.8ヶ月だった。深刻有害事象は胸水、肺臓炎、浮腫、呼吸困難、肺塞栓など。安全性データベース225人のうち、致死的有害事象は肺臓炎、肝不全、体液過剰による呼吸困難で各1人、死亡した。
類薬ではノバルティスがインサイト(Nasdaq:INCY)のライセンスで開発したTabrecta(capmatinib、和名タブレクタ)が米国では昨年5月、日本でも昨年6月に承認された。分かりやすい違いは、Tabrectaが400mg錠を一日二回服用に対して、Tepmetkoは225mg錠を二錠、一日一回、食事と一緒に服用することで、メルクのプレスリリースは一日一回が初で唯一であることを強調している。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: 独メルクのプレスリリース
【医薬品の安全性】
FDA、ゼルヤンツの心血管疾患・癌リスクを通知
(2021年2月4日発表)
ファイザーは、先週、Xeljanz(tofacitinib、和名ゼルヤンツ)の安全性確認試験で心血管疾患や癌のリスクがTNF阻害剤より高かったことを公表したが、FDAも同趣旨の安全性通知を発出した。
まだデータ解析・評価は完了していないが、現時点での推奨として、服用中の患者には、疑問や懸念があるならまず医療従事者と相談せよ、勝手に止めてはいけないと釘を刺した。医療従事者には、現状のPI(添付文書)に即して便益と危険を検討した上で、処方を開始/続行するかいなかを検討するよう求めた。
このA3921133試験は、FDAの求めにより、Xeljanzの三適応症のうち中重度リウマチ性関節炎の患者で、一つ以上の心血管疾患リスクを持つ50歳以上を組入れて、リウマチや感染性関節炎の用量である5mg(一日二回服用)と潰瘍性大腸炎の用量である10mg(同)の心血管疾患・癌のリスクをTNF阻害剤(HumiraまたはEnbrel)と比較した。
10mg群は中間解析で肺塞栓やそれによる死亡がTNF阻害剤群より高かったため、途中で5mgに減量した。ファイザーが今回、発表したデータによると、両用量群合計の心血管疾患ハザードレシオは1.33、癌は1.48となり、非劣性検定のハードル(95%上限が1.8未満)をクリアできなかった。
100人年当り発生率の点推定値の差は0.3前後なので、330人に1年間、あるいは100人に3.3年間、投与すると心血管疾患あるいは癌が一人増加する計算になる。
中間解析で浮上した肺塞栓や全死亡については、FDAはまだ最終報告を受けていないとのこと。
リンク: FDAの安全性通知
リンク: ファイザーのプレスリリース(1/27付)
今週は以上です。
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