2020年11月21日

第974回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19:FDAがイーライリリーのJAK阻害剤をEUA 
  • COVID-19:BioNTech/ファイザーがワクチンをEUA申請 
  • COVID-19:Moderna社のワクチンも第1回中間解析が成功 
  • AHA:EPAとEPA・DHA製剤の試験結果の整合性 
  • B型血友病の第3相遺伝子療法試験が成功 
  • ギリアド、capsid阻害剤が多剤抵抗ウイルスを抑制 
  • リンパ腫の抗体薬物複合体が承認申請 
  • サノフィ、ポンペ病の新薬を米国でも承認申請 
  • サノフィの寒冷凝集素症用薬は承認審査完了 
  • FDA、早老症治療薬を承認 
  • アルナイラム、高シュウ酸尿症I型治療薬が欧州で承認 
  • サノフィ、昆虫細胞培養型インフルエンザワクチンがEUでも承認 


【今週の話題】


COVID-19:FDAがイーライリリーのJAK阻害剤をEUA
(2020年11月19日発表)

FDAはイーライリリーのOlumiant(baricitinib、和名オルミエント)をCOVID-19肺炎治療薬としてEUA(非常時使用認可)した。成人と2歳以上の小児で酸素投与、人工呼吸器、またはECMOを必要とする患者に、4mg(9歳未満などは2mg)を一日一回、最長14日間に亘って、経口投与する。Veklury(remdesivir)の最長10日間のコースと併用する。

エビデンスはNIAID(米国アレルギー感染症研究所)が主導したACTT-2試験。1033人の中重度患者を組入れて退院(医療不要になったが隔離目的で入院継続も含む)までの期間を調べたところ、Olumiant・remdesivir併用群はメジアン7日間と偽薬・remdesivir併用群の8日間を上回った。インシデンス・レート比は1.15、p値は0.047なので、治療効果の点でも統計学的有意性の点でもボーダーライン上である。

副次的評価項目の症状改善オッズ比は1.26だがp=0.044とこちらもボーダーライン上。29日死亡率は各群4.7%と7.1%で、数値は良好だがp値は0.09なので有意ではない。

致死的有害事象発現率は各群4%と6%、有害事象治験離脱率は7%と12%で、どちらもOlumiant群のほうが低かった。

Olumiantはインターロイキンなどの受容体の細胞内シグナル伝達に係るJAK1/2の阻害薬。インサイト(Nasdaq:INCY)からライセンスした。中重度リウマチ性関節炎の治療薬として17~18年に日米欧で承認された。深刻感染症、リンパ腫などの腫瘍、血栓症のリスクが枠付警告されている。FDAは、EUAに際して、禁忌でなければ静脈血栓塞栓の予防を行うよう推奨した。動物試験で胚胎毒性が見られたが、妊婦禁忌までにはなっていない。

EMAやPMDAと比べてFDA及び諮問委員会は4mgの安全性に懐疑的で、2mgしか承認していない。

EUAはエビデンスが不確かでも取得することができるが、承認とは扱われない。だから、remidesivirが正式承認されるまではギリアドはプレスリリースを出す時に米国では承認されていないと明記しなければならなかった。

Olumiantの場合、薬効に関するp値が十分に低くなく、再現性を確認すべきもう一本の試験が未了であることなどを考えれば、イーライリリーが実施している第3相でもっとよい結果が出ない限り承認を取るのは無理だろう。

尚、OlumiantはSARSが細胞内に侵入する過程で作用するAAK1(AP2関連プロテイン・キナーゼ1)やサイクリンG関連キナーゼを阻害する作用を持っている由で、COVID-19肺炎における作用機序はJAK1/2阻害ではなくこちらかもしれない。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: 医療従事者向けファクト・シート(pdfファイル)

COVID-19:BioNTech/ファイザーがワクチンをEUA申請
(2020年11月20日発表)

ドイツのBioNTech(Nasdaq:BNTX)と共同開発パートナーのファイザーは、COVID-19のmRNAワクチン、BNT162b2のEUA(非常時使用認可)をFDAに申請した。オーストラリアやカナダ、EU、日本、英国でも既にローリング承認申請に着手している由。FDAは12月10日にワクチン及び関連生物学的製剤諮問委員会を招集しデータやFDAの評価に関して意見を聞く予定。委員会はYou TubeやFacebook、TwitterのFDAサイトやFDAホームページで配信する予定。

18日には第3相試験の最終薬効解析でワクチン効率が95%だったことが公表された。高齢者を含めて様々なサブグループで効果が見られ、重度有害事象発現率はそれほど高くなかった。FDAの要請を踏まえて様々な人種・民族を組入れており、被験者の4割は56歳以上だった。小児に関しては別途、12~15歳の100人に接種して安全性評価を行っている。妊婦は不明だが、おそらく、治験対象外なのではないか。

BNT162b2はSARS-CoV-2のスパイク蛋白の全長mRNAを修飾してリピッド・ナノパーティクルに封入したmRNAワクチンで、体内でスパイク蛋白が発現、免疫反応を誘導する。30mcgを3週置いて2回、筋注する。

今回の第3相は米国やドイツ、南米などで18歳以上の43538人をワクチン群と偽薬群に無作為化割付してCOVID-19感染リスクを検討した。ワクチンの効果は直ぐにはフルに発揮されないため、二回目の接種の7日後以降の確認感染例だけをカウントした。

最初の主評価項目である感染歴のないサブグループにおける確認感染例は各群8人と162人となり、ワクチン効率95%、p<0.0001となった。第二の評価項目である、感染歴を持つ被験者も含めた解析も成功した。

感染時の重症化リスクは年齢や持病、人種によって異なる。65歳以上の高齢者は重症化リスクが高いが一般的に免疫力が弱くワクチンの効果が小さくなる傾向があるが、幸い、本試験ではワクチン効率94%以上と良好だった。様々なジェンダーや人種、民族に効果が見られた。

深刻有害事象は今のところゼロ。G3以上の重度有害事象は疲労(発現率3.8%)や頭痛(2.0%)。

本試験で興味深いのは、感染歴を持つ人も参加していること。既に免疫を持っていてワクチンの効果が小さい可能性があるが、このサブグループだけの数値はどうだったのだろうか?また、デング熱のような、二回目の感染に相当するワクチン接種時に重症化するリスクを検証しなければならないが、本試験では抗体依存性感染増強が疑われる症例はなかっただろうか?

ファイザーは承認後数時間内に出荷を開始する予定。零下70℃という超低温環境で輸送する必要があり、ファイザーは、最長15日間有効な専用コンテナを用意した模様。冷蔵庫では保存可能期間は最長5日間に過ぎないので、クリニックでは期間を定めて集中的に接種し、都合の悪い人は大病院で接種するようなやり方が考えられる。

両社は世界で5000万回分(2500万人分)を本年内に、13億回分を来年末までに、生産する考え。

リンク: 両社のプレスリリース
リンク: 同、第3相試験成績について(11/18付)
リンク: FDAの諮問委員会開催発表リリース(11/20付)

COVID-19:Moderna社のワクチンも第1回中間解析が成功
(2020年11月16日発表)

Moderna(Nasdaq:MRNA、発音はモダーナ)は、mRNA-1273ワクチンの第3相COVID-19感染予防試験、COVEの第1回中間解析が成功したと発表した。数週内にFDAの要求によるメジアン2ヶ月間の追跡を充足し、EUA(非常時使用認可)を申請する考え。米国外では10月のカナダと英国に続いて、EMA(欧州薬品庁)もローリング審査を開始した。

COVE試験はNIH(米国医療研究所)などの政府機関やCROのPPD(Nasdaq:PPD)の協力を経て18歳以上のボランティア3万人を米国の施設で組入れて、100mcgを4週置いて二回接種する効果を偽薬と比較した。組入れ完了は10月22日とのことなので、まだ二回目の接種を終えていない人もいるだろう。

結果は、主評価項目である感染者数がワクチン群は5人、偽薬群は90人。ワクチン効率(予防率)は94.5%、p値は0.0001未満となり、プロトコルで定められた第1回中間解析の成功認定閾値である0.0002を下回った。

BioNTech/ファイザーのBNT162b2のワクチン効率95%と同程度であり、二種類のリピッド・ナノパーティクル封入mRNAワクチンが相次いで好成績を上げたことになる。

副次的評価項目である重症感染症はワクチン群はゼロ、偽薬群は11人と大変好ましい結果になった。

G3以上の重度有害事象と発現率は、1回目の接種後は注射箇所反応(2.7%)など、2回目は疲労(9.7%)、筋痛(8.9%)、関節痛(5.2%)、頭痛(4.5%)、疼痛(4.1%)、注射箇所の紅斑・発赤(2.0%)など。ワクチンでは一般的な有害反応だが、BNT162b2より少し多いように見える

mRNA-1273とBNT162b2の効能・忍容性以外の違いは、接種間隔は各4週と3週なので、後者の方が早く効果をフルに享受できる可能性があるが、それだけで決まる話ではないだろう。実務面で重要な違いは冷凍冷蔵温度だ。mRNA-1273は、輸送・備蓄は零下20℃(通常の医療用冷凍設備)で6ヶ月間、医院では2℃(通常の冷蔵庫)で30日間、開封後は室温で12時間、保存できる。一方、BNT162b2は輸送・備蓄は零下70℃、医院では2-8℃で5日間と、低温要求が厳しい。実務的にはmRNA-1273のほうが扱いやすいので、まだヘッドライン・データに過ぎないが、BNT162b2と似たような成績を挙げたことは朗報だ。

リンク: Modernaのプレスリリース
リンク: EMAのローリング審査開始に関するプレスリリース

AHA:EPAとEPA・DHA製剤の試験結果の整合性
(2020年11月15日刊行)

オメガ-3脂肪酸はサプリメントとして人気があり、サプリメントより高い基準に即して生産された高純度EPA(エイコサペンタエン酸)製剤やEPA・DHA(ドコサヘキサエン酸)製剤は重度高トリグリセライド血症の治療薬として承認されている。より多くの患者における便益を検討すべく、様々な心血管アウトカム試験が実施されたが、結果は区々だ。今年も大規模試験の結果が発表されたが、謎が解消するどころか、過去の議論が再燃した。

ポジティブな効果に関する代表的なエビデンスは、18年のAHA(米国心臓協会科学部会)で発表された、アマリン(Nasdaq:AMRN)のVascepa(EPAエチルエステル)のREDUCE-IT試験だ。中程度の高トリグリセライド血症(135mg~500mg/dL)で心血管疾患のリスクが高くスタチンを服用している患者8179人に、2gまたは偽薬(鉱油)を一日二回、メジアン4.9年間に亘り投与したところ、心血管アウトカム(CVO:心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・冠再建術・不安定狭心症の何れか)のハザードレシオが0.75(95%信頼区間0.68-0.83)と有意なリスク削減効果が見られた。

わが国で行われた持田製薬のエパデール(イコサペント酸エチル)の高LDL-C血症を組入れた初発・再発予防試験、JELISでも、CVO(突然死・非致死的心筋梗塞・不安定狭心症・血管形成術・ステント・CABG)のハザードレシオが0.81(95%信頼区間0.69-0.95)と良好な結果が出た。惜しむらくは、群間差が大きかったのは不安定狭心症という医師や患者の主観バイアスや影響しやすい評価項目であったこと。二重盲検試験ではないため、信頼性が頑強ではない。多額の資金と時間、医療従事者と患者の善意や情熱が十分に報われない結果になってしまった。

さて、今年のAHAでは、アストラゼネカのEpanova(EPA・DHAカルボン酸製剤)のSTRENGTH試験の結果が発表された。REDUCE-ITと同様な、中程度高トリグリセライド血症(180~499mg/dL)かつ低HDL-C値で心血管リスクが高くてスタチンを服用している患者13078人に一日4gまたは偽薬(コーン油)を投与して、CVO(心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的卒中・冠再建術・不安定狭心症による入院)を追跡したが、中間解析で無益判定された。メジアン3.5年間の追跡で、ハザードレシオ0.99(95%信頼区間0.90-1.09)と殆ど差がなかった。

REDUCE-IT試験とは95%信頼区間すら重なっておらず、かなり異なった結果だ。原因として考えられているのは三点。第一は、試験薬の違い。EpanovaはDHAも含有しており、EPAの量はVascepaより少ない。Vascepaの試験では出血リスクが増加したが、Epanovaの試験では観察されておらず、もしかしたら、EPAの血栓抑制作用に伴う血管閉塞性疾患防止効果がDHAの血栓促進作用によってオフセットされているのかもしれない。あるいは、DHAとスタチンの間に好ましくない相互作用があるのかもしれない。

第二は偽薬の違い。Vascepaの試験では鉱油群でLDL-C値やhsCRP値(炎症のバイオマーカー)が若干上昇しており、鉱油の副作用がVascepaの治療効果を嵩上げしたのかもしれない。

また、どちらもスタチン服用者を対象としているが、コレステロール異常症のような苦痛を伴わない、治療の必要性も効き目も体感できない病気は服薬アドヒアランスがあまりよくなく、スタチンのアウトカム試験でも3年、5年と経つうちに服用を自発的に止めてしまう患者が増えていく。STRENGTH試験論文にはベースライン時点と1年経過後の各群の平均LDL-C値が表記されているが、その後の状況は記されていないので、スタチン服用中止例に群間の偏りがなかったかどうか、当方は確認できない。

個々の要素は転帰を大きく変えるほどのインパクトはないように感じられるが、全部合わせれば95%信頼区間の重ならなかった部分くらいは説明できるかもしれない。

FDAがVascepaの心血管疾患リスク削減効果を承認したため、REDUCE-IT試験に対する疑念は一旦静まったが、STRENGTH試験の学会・論文発表を機に再燃している。

リンク: Nichollsらの治験論文(JAMA、オープン・アクセス)
リンク: Sharmaらのエディトリアル(同)
リンク: Curfmanのエディターズ・ノート(同)


【新薬開発】


B型血友病の第3相遺伝子療法試験が成功
(2020年11月19日発表)

アムステルダム大学アカデミック・メディカル・センター発の希少疾患ベンチャーであるuniQure(Nasdaq:QURE)は、AMT-061(etranacogene dezaparvovec)の第3相重症B型血友病試験で主目的を達成したと発表した。

54人を組入れて、AAV5(アデノ随伴ウイルス5型)をベクターとして第IV因子Paduaを2x10^13ゲノムコピー/kg投与したところ、第IV因子レベル(正常値対比)で治療前の2%未満から37%に上昇した。72%の患者は出血事故がゼロになり、残りの15人は合計で21回出血があった。第IV因子製剤の使用量は、治療前の年率29万IUと比べて96%減少した。治療前に抗AAV5中和抗体を保有していた23人にも治療効果が見られた。

主な有害事象は肝機能検査値異常(プロトコルに従いステロイドで治療)の発現率が17%、点滴関連反応と頭痛、インフルエンザ様症状が各13%だった。治療時関連深刻有害事象の発生は報告されていない。

第IX因子PaduaはイタリアのPadua大学の研究者、Paolo Simioniが発見した多型で、FIX活性が野生型より8-9倍高い。AMT-061は今年6月にCSL Behringが開発販売権を取得した。

リンク: uniQureのプレスリリース

ギリアド、capsid阻害剤が多剤抵抗ウイルスを抑制
(2020年11月18日発表)

ギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)は、GS-6207(lenacapavir)の第2/3相試験の当初結果を公表した。多剤耐性ウイルスに対して、ファースト・イン・クラスに相応しい効果を示した。

GS-6207はHIVのRNAを包むカプシド蛋白の阻害薬で、ウイルスのライフサイクルにおける複数の段階に介入する。このCAPELLA試験は複数のクラスの抗HIV薬に抵抗性を持ち、ウイルス検出不能状態に管理できていない患者36人を組入れて、機能的モノセラピー期では錠剤を追加投与して2週間後のウイルス量を偽薬と比較した。維持期では、バック・グラウンド・レジメンを個々の患者に最適なものに切り替えた上で、試験薬群は長期作用性皮注用製剤を6ヶ月毎に投与、偽薬群は錠剤によるリードインを経て皮注用に移行する。

発表されたのは機能的モノセラピー期のヘッドライン・データ。試験薬群(ベースライン時点のウイルス量は4.2log10コピー/mL)は0.5log10減少達成率が88%と偽薬群の17%を有意に上回った。減少幅は試験薬群が1.93log10、偽薬群は0.29log10でこちらも有意に上回った。有害事象は注射箇所の結節や腫脹など。

画期的な作用機序を持つので今回のような多剤耐性ウイルスが最初のターゲットになりそうだが、忍容性次第では一次、二次治療にも展開するだろう。長期作用性注射用抗HIV薬という点ではヴィーヴヘルスケアの筋注用インテグラーゼ阻害剤、cabotegravirと似ており、将来的に両薬がHIV予防に承認されればバッティングしそうだ。

リンク: 同社のプレスリリース


【承認申請】


リンパ腫の抗体薬物複合体が承認申請
(2020年11月20日発表)

スイスのADC Therapeutics(NYSE:ADCT)は、Lonca(loncastuximab tesirine)をFDAに承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は21年5月21日。二重連鎖DNAの二本の間に共有クロスリンクを形成して細胞分裂を妨げる薬物を抗CD19抗体とリンカーで結んだADC(抗体薬物複合体)で難治再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の三次治療以降に用いる。第2相試験ではORR(客観的反応率)が48.3%(完全反応率は24.1%)、メジアン反応持続期間は10.2ヶ月だった。G3以上の治療時発現有害事象は好中球減少症、血小板減少症、ガンマグルタミルトランスフェラーゼ上昇、貧血など。

リンク: 同社のプレスリリース

サノフィ、ポンペ病の新薬を米国でも承認申請
(2020年11月18日発表)

サノフィは、avalglucosidase alfaをポンペ病薬として米国でも承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は21年5月18日。

ポンペ病はα-グルコシダーゼの欠乏によりライソゾームにグリコーゲンが蓄積、筋力低下による様々な合併症を引き起こす。現在はアミカス・セラピューティクスのCEOとして経口剤の開発を進めているジャック・クラウリーが娘を助けるために研究者や出資者を探して実用化に漕ぎ着けたMyozyme(alglucosidase alfa、和名マイオザイム)が代表的な治療薬だ。クラウリーは事業をジェンザイムに譲渡、サノフィは2011年にジェンザイムを買収して超希少疾患用薬に本格参入した。

avalglucosidase alfaはalglucosidase alfaの改良薬で、筋細胞のM6P受容体に対する親和性を高め、効果増強を図った。しかし、遅発型ポンペ病と診断され初めて治療を受ける患者96人を組入れた直接比較試験では、主評価項目である相対的努力肺活量(ppFVC)の非劣性解析は成功したものの、優越性解析は有意水準にあと一歩、届かなかった。

EUでも10月に承認申請が受理されている。

リンク: サノフィのプレスリリース


【承認審査・委員会】


サノフィの寒冷凝集素症用薬は承認審査完了
(2020年11月14日発表)

サノフィは今春、sutimlimabを寒冷凝集素症治療薬として日米で承認申請したが、FDAからは審査完了通知を受領した。FDAは委託先における製造問題を指摘しているようだ。頻発しているcGMP問題だとしたら解決に時間がかかる可能性もある。

寒冷凝集素症は古典的補体経路の異常活性化による自己免疫性溶血性貧血の一種で、米国の患者数は5000人、日米欧では12000人と推測されている。sutimlimabはC1複合体のセリンプロテアーゼに対する抗体で、24人を組入れた第3相単群試験では過半でヘモグロビン濃度が改善し、過半で輸血不要になった。重篤な治療時発現有害事象が7人で発生したが、何れも担当医が試験薬との因果関連を否定した。

サノフィが18年に買収したBioverativがその前年にTrue North Therapeuticsを買収して入手したコンパウンド。

リンク: サノフィのプレスリリース


【承認】


FDA、早老症治療薬を承認
(2020年11月20日発表)

FDAは、アイガー バイオファーマシューティカル(Nasdaq:EIGR)のZokinvy(lonafarnib)を1歳以上のハッチンソン・ギルフォード症候群早老症および一部のプロセッシング異常による早老性ラミノパチーの死亡リスクを抑制する薬として承認した。

これらの希少遺伝子疾患はプロゲリンが細胞内に蓄積、多くの患者が15歳前に心不全などを発症して死亡する。Zokinvyはファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤。自然歴対照試験で死亡リスク低下が見られた。FDAによると、3年間の治療・追跡で平均3ヶ月間、延命する。CYP3A阻害剤/誘導剤などが併用禁忌。

旧シェリング・プラウがSCH66336/Sarasarというコードでras経路に介入する抗癌剤として開発したが、MSDによる買収を経て、2010年にアイガーに導出。アイガーは早老研究財団の支援を受けて承認に至った。

リンク: FDAのプレスリリース

アルナイラム、高シュウ酸尿症I型治療薬が欧州で承認
(2020年11月19日発表)

アルナイラム・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ALNY)は、EUがOxlumo(lumasiran)を原発性高シュウ酸尿症I型(PH1)の治療薬として承認したと発表した。PH1治療薬は欧州初。米国でも承認審査中で審査期限は12月3日。

PH1はアラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼの欠損により肝臓内にグリオキシル酸が蓄積する。シュウ酸過剰になりカルシウムが腎臓などで蓄積、腎障害や尿路結石を合併する。

アルナイラムはRNA介入に特化した新薬開発販売会社。Oxlumoはグリコール酸酸化酵素の遺伝子であるHAO1のmRNAに介入する。臨床試験では尿と血漿のシュウ酸が減少した。

リンク: アルナイラムのプレスリリース

サノフィ、昆虫細胞培養型インフルエンザワクチンがEUでも承認
(2020年11月18日発表)

サノフィは、昆虫細胞培養型の遺伝子組換え4価季節性インフルエンザワクチン、SupemtekがEUに承認されたと発表した。17年に買収したProtein Sciencesの開発品で、米国では13年にFlublok名で承認取得、16年にはA型ウイルスの抗原二種類とB型ウイルス抗原二種類を配合した4価ワクチンも承認された。抗原量が通常のワクチンの3倍であることが特徴。

従来のインフルエンザワクチンは鶏卵にウイルスを導入し増殖させる。生産に数ヶ月かかるので、流行する型を事前に予測して見込み生産するが、近年は予測が外れたり、鶏卵で培養中にウイルスがドリフト(変異)したり上手く増殖しなかったりするケースが散見されるようになった。Supemtekの第三相試験が行われたシーズンもそうで、Supemtekの感染率は2.2%、鶏卵ベースワクチン群は3.2%で、非劣性解析が成功しただけでなく、探索的に実施された優越性解析でもよいp値が出た。

リンク: サノフィのプレスリリース







今週は以上です。

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