【ニュース・ヘッドライン】
- COVID-19:BioNTech/ファイザーのワクチンの効率が中間解析で90%越え
- COVID-19:FDAがイーライリリーの抗体をEUA
- ファイブ・プライム、抗FGFR2b抗体が胃癌に良績
- 抗TSLP抗体の第3相重度喘息症試験が成功
- ヴィーヴ、女性のHIV感染予防試験も大成功
- キートルーダとレンビマの第3相腎細胞腫併用試験が成功
- キートルーダとヤーボイの併用肺癌試験がフェール
- バイエル、MRAを糖尿病性腎症に承認申請
- ヤンセン、ダラザレックス皮注のD-Pdレジメンを多発骨髄腫二次治療に承認申請
- Supernus社、ADHD用薬は承認されず、パーキンソン病薬は申請受理されず
- CHMP、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍用薬などの承認を支持
- FDA、MSDのキイトルーダをトリプル・ネガティブ乳癌に承認
- CHMP、ulipristalの子宮筋腫用途での承認を取消さず
【今週の話題】
COVID-19:BioNTech/ファイザーのワクチンの効率が中間解析で90%越え
(2020年11月9日発表)
ドイツのBioNTech(Nasdaq:BNTX)と共同開発販売パートナーであるファイザーは、COVID-19ワクチンの第3相試験の中間解析データを公表した。途中経過なので数値は今後変わってくる可能性があるが、今回の解析ではワクチン効率(感染リスク削減率)が90%超と、世間の期待値よりだいぶ良かった。FDAは被験者の過半を2ヶ月以上追跡して安全性を確認するよう要求しており、ファイザーは、期日到来を待って今月第3週以降にEUA(非常時使用認可)を申請する考え。EUでは10月にローリング承認審査が始まった。両社は2020年に5000万回分(2500万人分)、21年に13億回分(6.5億人分)を生産する予定。
このBNT162b2ワクチンは、SARS-CoV-2が細胞に結合・侵入する時に使うスパイク蛋白の全長RNAを一部修飾し、リピッド・ナノパーティクルに封入したもの。接種者の体内で発現し、免疫を刺激する抗原となる。30mcgを3週間置いて二回、筋注する。零下70℃の超低温で冷凍輸送しなければならないのが物流面でのネック。医療施設や公共施設で短期集中的に接種を行い、スケジュールが合わない人は大病院に行ってもらうような流れになるのではないか。
今年7月にグローバル第3相偽薬対照試験を開始、これまでに43538人を組入れ、38955人が二回接種を完了した。二回目の接種の7日後からのCOVID-19感染をモニターする。両群合わせて32人が感染した時点で初回の中間解析を行う予定だったが、FDAとの協議を経て見送り、62イベント時点を初回とした。協議過程で94イベントに到達したため、今回の解析は94人ベースとなっている。
ワクチン効率が91%だったとすると、ワクチン群の感染者数は8人、偽薬群は86人となる。分母を38955人の半分とすると感染率は各群0.04%と0.44%。米国の9月15日以降の感染者数は約340万人、人口の1%強なので偽薬群の感染率よりかなり高いが、米国ほど流行していない国の施設も参加していることや、追跡期間が2ヶ月弱より短い可能性があること、そして、ワクチンの臨床試験に参加するような被験者はおそらく意識が高く日常活動を自制しているであろうことなどを考えると、現実離れしたデータとは言えないだろう。
両社は164人が感染した段階で最終解析を行う。また、他社が開発中のワクチンは4週置いて二回接種が多いので、比較可能性を担保するために、二回目接種の14日後以降の感染だけをカウントしたデータもまとめる予定。
治験論文を刊行すべく査読医学誌に投稿する考え。今回はヘッドライン・データしか公表されておらず、重症例を防ぐ効果や、高齢者や医療従事者など特に重要なサブポピュレーションにおける有効性や忍容性は分からない。深刻な有害事象は発生しなかった由だが、6.5億人が接種するとしたら第3相の1万倍以上なので、稀だが深刻な有害事象を被る何らかの素因を持つ人がいないとは限らない。ワクチン接種を促すために楽観的なことばかり喧伝すると子宮頸がんワクチンの二の舞になりかねないので、慎重に検討し是々非々で開示することが重要だ。
また、COVID-19ワクチンの最大の注目点、即ち、薬効面では予防効果の持続期間、安全性面では接種後に感染すると重症化しやすくなるようなことがないかどうかは、多寡だか2ヶ月間の追跡では分からない。来年以降に発表されるデータで確認する必要がある。
下記のように、FDAはイーライリリーの抗SARS-CoV-2抗体のEUA(非常時使用認可)を行ったが、呼吸困難が進行した患者に用いると臨床的転帰を悪化させる可能性があることを指摘した。合併症が重症化した患者に今更、抗ウイルス抗体を投与しても手遅れであることが原因なのかもしれないが、以前から懸念されている、抗体誘導性感染増強(ウイルスに結合した抗体が細胞内に取り込まれて結果的にウイルスの侵入を手助けしてしまう)が現実化したのだとしたら、ワクチンで誘導された抗体でも同じことが起きるかもしれない。
尤も、感染者を10分の1に減らすことができるなら、もし感染時に全員が重症化するリスクがあったとしても、通常の重症化比率は10%程度なので、重症患者発生数はワクチンを接種しない人たちと同じで、軽中等症感染症を防げる分、便益があると考えることもできる。この意味でも、もし本当にワクチン効率が90%超ならば、意義が大きい。
リンク: 両社のプレスリリース
COVID-19:FDAがイーライリリーの抗体をEUA
(2020年11月9日発表)
FDAはイーライリリーのbamlanivimabを軽中等度COVID-19に感染し入院リスクが高い成人及び小児(12歳且つ40kg以上)の治療薬としてEUA(非常時使用認可)した。発症後10日以内に、一回、60分点滴静注する。
エビデンスとなる465人の軽中等症患者を外来治療した第2相試験では、28日間の入院/ER入室率が3%と偽薬群の10%を大きく下回った。700mg、2800mg、7000mgの三種類をテストしたが、ウイルス学的効果も含めて、各用量大差なかった。主な有害事象は注射箇所反応。
入院患者や酸素・呼吸補助を必要とする患者は適応外。ハイフロー酸素投与や人工呼吸器装着患者にモノクローナル抗体を投与すると臨床的転帰を悪化させる可能性があるので注意する(FDAはクラスイフェクトと受け止めているようだ)。
これはかなりな難題だ。トランプ大統領が感染して入院した時、最初に投与を受けたのはリジェネロン社の抗体医薬だった。だが、入院前に呼吸困難が起きて酸素投与を受けたと報じられているので、もしハイフロー酸素なら、本当は適応外だったことになる。そうでなかったとしても、もし治療が奏功せずハイフロー酸素が必要になった時に、体に残っている抗体が有害になるかもしれない。
bamlanivimabはカナダのAbCellera Biologicsの技術を用いて共同開発した、抗SARS-CoV-2スパイク蛋白抗体。イーライリリーは中国のJunshi Biosciencesからライセンスした異なったエピトープに結合する抗体医薬、etesevimabとの併用も開発しており、おそらく、併用が本命だろう。
米国政府は10月に30万人分を調達することを決定、国民に自己負担ゼロで提供する。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: bamlanivimabのEUAファクトシート(pdfファイル)
リンク: イーライリリーのプレスリリース
【新薬開発】
ファイブ・プライム、抗FGFR2b抗体が胃癌に良績
(2020年11月10日発表)
ファイブ・プライム・セラピュティクス(Nasdaaq:FPRX)は、FPA144(bemarituzumab)の第2相胃癌試験が良好な結果になったと発表した。まあまあな規模なので、もしかしたら、加速承認を申請するかもしれない。
FPA144はFGFの受容体、FGFR2b、に結合する抗体医薬。her2陰性胃癌の3割程度を占めるFGFR2b過剰発現胃癌などの臨床試験が進められている。今回の第2相は、FGFR2b陽性her2陰性の進行胃・胃食道接合部癌でフロントライン・セラピーを受ける155人を組入れて、mFOLFOX6レジメンに偽薬またはFPA144を追加する効果を比較した。
結果は、PFS(無進行生存期間)はメジアン値が各7.4ヶ月と9.5ヶ月、ハザードレシオは0.68でp=0.073。全生存期間は偽薬群はメジアン12.9ヶ月、試験薬群は未達、ハザードレシオは0.58でp=0.027、ORR(客観的反応率)は試験薬群が13.1%上回り、p=0.106だった。この試験は第2相で成功判定の閾値はp値が0.20を下回ることだったため、会社側は成功したと形容している。
主な有害事象は角膜炎や口内炎など。網膜剥離や高燐酸血症は見られなかった。G3以上の有害事象の発現率は各74.0%と82.9%、致死的有害事象は5.2%と6.6%、有害事象による治験離脱率は5.2%対34.2%だった。
新薬の販売承認を得るためには仮説検証的試験で仮説が正しくない可能性を棄却する必要がある。今回の第2相は、症例数は多いものの、p値の閾値が甘く設定されているところを見ると、承認申請を想定して厳格に設計・実行した試験ではないのかもしれない。また、一般に、FDAは一次治療薬に延命またはそれに準じる効果を要求する傾向がある。
それでも、一次治療薬を非対照試験のORRデータに基づいて承認したこともあることや、胃癌全てではなく特定のバイオマーカーに基づきスクリーニングした患者だけに使うテーラーメイド・メディスンであることから、今回のデータで加速承認される可能性もゼロではないだろう。
リンク: 同社のプレスリリース
抗TSLP抗体の第3相重度喘息症試験が成功
(2020年11月9日発表)
アムジェンとアストラゼネカは、共同開発している抗TSLP(胸腺間質リンパ球増殖因子)抗体、AMG 157/MEDI9929(tezepelumab)の第三相試験が成功したと発表した。データは未公表だが、抗IL-5抗体や抗IL-4Rアルファサブユニット抗体と異なり、好酸球増多型以外にも有効であった模様。第3相はもう一本、経口ステロイド服用者の服用量抑制を目指す試験も進行中。早晩、承認申請されるのではないか。
TSLPは胸腺などの上皮細胞が分泌するサイトカインで、アレルギー性炎症のマスタースイッチとも呼ばれる。抗TSLP抗体はIL-4、IL-5、IL-13などの分泌を抑制するので、メカニズム的には上記抗体医薬と似たところがある。アトピー性皮膚炎のプルーフ・オブ・コンセプト試験はフェールしたが、重度喘息症は後期第2相試験で喘息増悪を6-7割抑制する効果を示した。
今回のNAVIGATOR試験は、中高量吸入ステロイドを含む二種類以上の喘息症維持療法薬を併用しても管理不良な重度喘息症患者1000人以上を組入れて、tezepelumabを4週毎に皮注する効果を52週間に亘って観察したところ、主評価項目の喘息増悪年率が偽薬比有意に低かった。被験者の約半分を占める好酸球数が300個/mcL未満のサブグループ分析でも有意に低かった。150個/mcL未満のデータも同程度に低かった由。
喘息症の過半を占める、好酸球増多型などのTh2誘導型は上記の抗体医薬が続々と発売されたが、それ以外の患者にも有効そうな新薬候補は久しぶりだ。FDAは好酸球増加型ではない重度喘息症にブレークスルー・セラピー指定している。
リンク: 両社のプレスリリース
ヴィーヴ、女性のHIV感染予防試験も大成功
(2020年11月9日発表)
グラクソ・スミスクラインと塩野義製薬、ファイザーのHIV/AIDS薬合弁であるヴィーヴ・ヘルスケアは、cabotegravirの第3相HIV感染予防試験が中間解析で成功したと発表した。サブサハラアフリカの施設で性的にアクティブなシスジェンダー女性をcabotegravirまたは実薬であるギリアド・サイエンシズのTruvada(tenofovir DFとemtricitabineの合剤)に無作為化割付して追跡したところ、感染者数は各4人と34人、感染率は0.21%と1.79%となり、cabotegravirのほうが89%少なかった。主な有害事象は注射箇所反応。
cabotegravirは2ヶ月に一回筋注する長期作用性インテグラーゼ阻害剤。ジョンソン・エンド・ジョンソンの非核酸的逆転写阻害剤、rilpivirineの長期作用性筋注用製剤との併用で、他の抗ウイルス剤レジメンによりウイルス抑制できているHIV患者がスイッチする用法で欧米で承認されている。
5月には男と性交する男やトランスジェンダー女性(出生時の判定は男性)を組入れた同様な試験でも、感染率が0.38%と1.21%で69%少ないという好結果を出した。
Truvadaは経口投与で利便性は高いが、副作用はあるので、病気による痛みも不自由もない健常者が予防目的で長期間使うにはハードルが低いとは言えない。cabotegravirは筋注なので痛いが、2ヶ月に一回なので、我慢できないでもない。予防試験で効果が大きく上回ったのは、アドヒアランスの違いが大きいのだろう。
リンク: ヴィーヴのプレスリリース
キートルーダとレンビマの第3相腎細胞腫併用試験が成功
(2020年11月10日発表)
MSDとエーザイは、Keytruda(pembrolizumab、和名キートルーダ)とLenvima(lenvatinib、和名レンビマ)を進行腎細胞腫の一次治療に用いた第3相試験が成功したと発表した。前者は200mgを三週毎点滴静注、後者は20mgを毎日経口投与したところ、主評価項目であるPFS(無進行生存期間、第三者評価)も副次的評価項目の全生存期間、ORR(客観的反応率)も、実薬であるファイザーのSutent(sunitinib、和名スーテント)を有意に上回った。データは未公表。
この試験はLenvima(18mg)とノバルティスのAfinitor(everolimus、和名アフィニトール)を併用する群もあり、こちらもPFSとORRがSutentを有意に上回った。
腎細胞腫ではKeytrudaのような抗PD-1抗体とLenvimaのようなVEGFR阻害剤の併用試験が続々と成功・承認されており、今回のレジメンも承認申請されることになりそうだ。
リンク: 両社のプレスリリース
キートルーダとヤーボイの併用肺癌試験がフェール
(2020年11月9日発表)
MSDはKeyNote-598試験が中間解析で無益認定され、中止することを発表した。TPS(Tumor Proportion Score:PD-L1発現指標)が50%以上でEGFRやALKの活性化変異はない転移非小細胞性肺癌の一次治療試験で、BMSの抗CTLA-4抗体Yervoy(ipilimumab)をKeytruda(pembrolizumab)と併用する群の全生存期間とPFS(無進行生存期間)を偽薬・Keytruda群と比較したが、好結果が出なかった。併用はG3以上の有害事象が増加し、致死的有害事象も増えた。
Yervoyは良く分からない薬で悪性黒色腫で初承認される根拠となった臨床試験の成績は議論の余地のあるものだった。ファイザーの抗CTLA-4抗体の開発はフェールし、アストラゼネカが権利を取得して自社の抗PD-L1抗体と併用試験を行っているが、あまりよい結果は出ていない。
一方、今回の対象であるTPS50%以上の非小細胞性肺癌では、Keytrudaのモノセラピー試験が大変良い成績を上げた。単剤でも大きな効果があるのでYervoy追加による限界効用が小さくても不思議はない。
以下は、KeytrudaやOpdivoの非小細胞性肺癌一次治療試験における化学療法群と試験レジメン群のメジアン生存期間やハザードレシオを一覧したもの。KはKeytruda、KCTはKeytrudaと化学療法の3剤併用、OYはOpdivoとYervoy併用、OYCTはOpdivo、Yervoy、化学療法の4剤併用を示す。異なった試験の成績を比較するのはミスリーディングだが、少なくとも延命効果の点では、Opdivo・Yervoyの二剤合計とKeytruda単剤は大差ないように見える。
メジアン値(ヶ月) | ハザードレシオ | ||
---|---|---|---|
化学療法 | 試験レジメン | ||
PD-L1不問: | |||
KCT(扁平以外) | 11.3 | 未達 | 0.49 |
KCT(扁平のみ) | 11.3 | 15.9 | 0.64 |
OYCT | 10.7 | 14.1 | 0.69 |
PD-L1≧1%: | |||
K(扁平のみ) | 12.1 | 16.7 | 0.81 |
OY | 14.9 | 17.1 | 0.79 |
PD-L1≧50%: | |||
K | 14.2 | 30.0 | 0.60 |
K(扁平のみ) | 12.2 | 20.0 | 0.69 |
リンク: MSDのプレスリリース
【承認申請】
バイエル、MRAを糖尿病性腎症に承認申請
(2020年11月9日発表)
バイエルは、非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗剤(MRA)のBAY 94-8862(finerenone)を糖尿病性腎症の治療薬として欧米で承認申請した。
蛋白尿を伴う2型糖尿病性腎症の患者約5700人を日中欧米の施設で組入れてメジアン2.6年間追跡したアウトカム試験、FIDELIO-DKDで、主評価項目の腎転帰(腎不全、eGFRが40%以上持続的に低下、または腎死亡)のハザードレシオが偽薬比0.82、p=0.0014だった。個別ではeGFR40%以上持続低下のハザードレシオが0.81で、他は有意差はなかった。副次的評価項目である心血管転帰(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、または心不全入院)はハザードレシオ0.86、p=0.0339で統計的に有意だがボーダーライン・シグニフィカンスだった。個々のイベントでは非致死的心筋梗塞のハザードレシオが0.80と良かったが有意性はなかった。
深刻有害事象発現率は32%で偽薬群の34%と大差ない。高カリウム血症の発生率は18%で偽薬群の9%を上回り、深刻例に絞っても1.6%対0.4%となったが、既存の類薬ほどではなさそうだ。
既存類薬は心不全治療薬として承認されており、バイエルも日米欧の施設で症候性心不全アウトカム試験を今年6月にロンチした。
リンク: バイエルのプレスリリース
ヤンセン、ダラザレックス皮注のD-Pdレジメンを多発骨髄腫二次治療に承認申請
(2020年11月12日発表)
ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのヤンセン・ファーマシューティカルは、Darzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)を多発骨髄腫の二次治療薬として欧米で適応拡大申請した。BMSが買収したセルジーンのPomalyst(pomalidomide)及びdexamethasoneと併用する。また一つ、ラインや併用レジメンが増加することになる。
Darzalex Fasproはオリジナルの点滴静注用製剤を皮注用に代えた製剤で、投与時間が数分と点滴用の3~6時間と比べて著しく短い。今回の適応拡大申請は点滴静注用は含まれていない模様なので、今後は皮注用で用途を広げていく考えなのだろう。
Darzalexは一次治療も含めて様々な段階に様々な薬と併用で承認されている。D-Pdレジメンは欧州では未承認だが米国では三次治療に承認されている。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認審査・委員会】
Supernus社、ADHD用薬は承認されず、パーキンソン病薬は申請受理されず
(2020年11月9日発表)
Supernus Pharmaceuticals(Nasdaq:SUPN)はSPN-812(viloxazine)をADHD治療薬としてFDAに承認申請していたが、審査完了通知を受領した。最近移転した、分析試験を行う自社研究所に関する問題点が主な要因である模様。
同社は6月にUS WorldMeds社の中枢神経系事業を買収し、開発品であるSPN-830(apomorphine)をパーキンソン病のオン/オフ症状治療薬として承認申請したが受理されなかった。
FDAと今後を相談する考え。
viloxazineはインペリアル・ケミカルが1976年に欧州で抗鬱剤として発売したが、現在は販売していない。Supernusはセロトニン・ノルエピネフィリン調節作用を持つと考えている。
リンク: 同社のプレスリリース
CHMP、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍用薬などの承認を支持
(2020年11月13日発表)
EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、11月の会合で、BPDCN(芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍)用薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。
リンク: EMAのプレスリリース
BPDCNは急性骨髄性白血病の一種で形質細胞様樹状細胞が異常に増加、骨髄に蓄積し皮膚にも浸潤する。脾臓や肝臓の肥大、あるいは血球数の減少を伴うこともある。イタリアのメラニーニ社が6月に買収したStemline Therapeutics(Nasdaq:STML)のElzonrisは、BPDCNで過剰発現するIL-3受容体アルファ、別名CD123に結合するIL-3とジフテリア毒素を細胞融合したもの。臨床試験では一次治療患者13人のうち7人がCR/CRc(完全反応または活性のない皮膚異常を除いて完全反応)した。一方で、命にかかわることもある毛細血管漏出症候群も17%の患者で発現した。
CHMPは7月の会議で症例数の少なさや治験デザインの欠陥、毛細血管漏出症候群の懸念を根拠に否定的意見を出したが、今回、希少疾患なので十分な内容の試験を行うのが困難であることや承認薬がないことを斟酌して、肯定的意見に転じた。但し、再発治療に関するエビデンスが不十分であることから一次治療に限定した。
尚、米国では18年12月に承認されている。妊婦は禁忌、FDAは肝機能検査を推奨している(EUは現時点では不明))。
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: 再審査に関する質疑応答集(pdfファイル)
塩野義製薬が創製し日本国外ではロシュが開発販売しているXofluza(baloxavir marboxil、和名ゾフルーザ)は18年に日米で非複雑性インフルエンザ治療薬として承認されたが、EUでは遅れていて今回、初の肯定的意見が出た。適応は12歳以上の非複雑性インフルエンザの治療と曝露後予防。EMAは、プレスリリースの中で、市販後にアナフィラキシーなどの過敏反応症例が報告されていることに言及した。
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ロシュのプレスリリース
ロシュのPhesgo(pertuzumab、trastuzumab、hyaluronidase)はPerjetaとHerceptinの活性成分とHalozyme Therapeutic社のヒアルロニダーゼの固定用量合剤。her2陽性の早期乳癌や転移乳癌に用いる。オリジナルの製剤との最大の違いは短時間の皮注で済むこと。PerjetaとHerceptinを併用で点滴静注する場合、初回は150分、二回目以降は60~150分かかるが、Rhesgoは各8分と5分に短縮できる。早期乳癌で摘出術が成功し再発を防ぐためのアジュバント療法を行う場合、日常生活の負担にならないことが望まれるので、投与時間が短く自己注できるなら幸便だ。米国では今年6月に承認された。
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ロシュのプレスリリース
Aerie Pharmaceuticals(Nasdaq:AERI)のRoclandaはプロスタグランジン類縁体のlatanoprostとrhoキナーゼ阻害剤netarsudilの合剤。単剤では眼圧を十分に管理できない原発開放隅角緑内障または高眼圧症の患者に、一日一回点眼する。米国ではRoclatan名で19年3月に承認。日本は今年10月に参天製薬が開発販売権を取得したところで、合剤ではなくnetarsudil単剤の開発が先になりそうだ。
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: Aerie社のプレスリリース
適応拡大では、アムジェンのKyprolis(carfilzomib、和名カイプロリス)をDarzalex(daratumumab)及びdexamethasoneと併用で多発骨髄腫の二次治療以降に用いることが支持された。米国では8月に承認。Kyprolisはプロテアソーム阻害剤で多発骨髄腫の様々な治療段階で様々な薬との併用が承認されている。薬の選択肢が少なかったころは併用などもっての外、再発に備えて次の薬を取って置かなければならなかったが、今日では3剤、4剤併用も珍しくなくなってきた。
リンク: EMAのプレスリリース
ChiesiグループのTrimbow(beclometasone、formoterol、glycopyrronium)はCOPD治療薬として17年にEUで承認されたが、喘息症維持療法を追加することが支持された。中量以上の吸入ステロイドとベータ2作用剤を併用しても十分に管理できず、前年に1回以上の喘息症増悪を経験した患者が、一日二回、加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)で吸入する。
リンク: EMAのプレスリリース
一方、Swedish Orphan Biovitrum(STO:SOBI)がHLH(原発性血球貪食リンパ組織球症)用薬として承認申請したGamifant(emapalumab)は、再審査を経て、今年7月の否定的意見が維持された。治験の症例数が少ないこと、他の薬も併用した患者が多いことや症状が自然改善することもあるため効果を特定できないこと、データ収集・管理方法に難があることなどが理由。米国では18年に承認されており、SOBIはこれらの地域に注力する考え。Gamifantは19年に買収したスイスのNovimmuneの開発品。
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: SOBIのプレスリリース
今回は三品目に関して申請撤回の発表があった。何れもCHMPが否定的に考えていた。Santhera Pharmaceuticalsがデュシェンヌ型筋ジストロフィー用薬として承認申請していたPuldysa(idebenone)は、米国で承認申請するための薬効確認試験がフェールし、この用途は開発中止となった。idebenoneはコエンザイムQ10。武田薬品が日本で脳梗塞・脳出血治療薬アバンとして販売していたことがあり、EUでは現在もレーバー遺伝性視神経萎縮症などに承認されている。
リンク: EMAのプレスリリース
バイオマリン(Nasdaq:BMRN)が重度A型血友病治療薬として承認申請していたRoctavian(valoctocogene roxaparvovec)は、5型アデノ随伴ウイルスをベクターとして血液凝固第8因子を導入する遺伝子療法。CHMPは効果の持続性が明確でないことや反応に個人差があること、症例数や追跡期間が十分でなく安全性が確立していないことなどに懸念を持った。FDAも今年8月に審査完了通知を出している。
臨床試験では第8因子活性レベルが2年目に半減する傾向が見られた。会社側は統計的モデルに基づき効果が8年持続と予想しているが、半年内に効果が減弱して第8因子の週3回投与が必要になった患者もいた。
リンク: EMAのプレスリリース
Agios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)がIDH1(イソクエン酸脱水素酵素1)変異型再発難治急性骨髄性白血病用薬として承認申請していたTibsovo(ivosidenib)は、米国では18年に承認されたが、CHMPは薬効の証明が不十分と考えた。申請撤回は会社側が10月に発表済みで、新患に化学療法と併用する効果を検討している進行中の第3相試験の結果を待って再申請する考え。
リンク: EMAのプレスリリース
【承認】
FDA、MSDのキイトルーダをトリプル・ネガティブ乳癌に承認
(2020年11月13日発表)
FDAはMSDの抗PD-1抗体、Keytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)をPD-L1陽性(CPS≧10)の局所再発切除不能/転移トリプル・ネガティブ乳癌に化学療法と併用する適応拡大を承認した。KeyNote-355試験に基づくもので、被験者の38%を占めたCPS≧10のサブグループではPFS(無進行生存期間)がメジアン9.7ヶ月と化学療法・偽薬併用群の5.6ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.65、p=0.0012だった。尚、化学療法はnab-paclitaxel、paclitaxel、またはgemcitabine・carboplatin併用の何れかを医師が選択した。)
CPSは癌細胞だけでなく腫瘍浸透免疫細胞のPD-L1発現も検査する。Dako社のPD-L1 IHC 22C3 pharmDxがコンパニオン診断薬として同時承認された。上記試験ではCPS≧1という区切りのサブグループ分析でもメジアンが7.6ヶ月対5.6ヶ月、ハザードレシオ0.74となり、多重性に考慮したp値の閾値はクリアできなかったものの、良好な数値が出ていた。しかし、CPSが1~9のサブ・サブグループの数値は思わしくなかったのだろう。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: MSDのプレスリリース
【医薬品の安全性】
CHMP、ulipristalの子宮筋腫用途での承認を取消さず
(2020年11月13日発表)
EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、子宮筋腫治療薬として承認されているEsmya(ulipristal acetate)の適応を一部取消すようEMAに推奨した。9月に薬物市販後監視委員会であるPRACから承認取消の推奨を受けていたが、他に適切な治療方法がない患者に用いることは許容した。尚、同じ活性成分を使っている事後的避妊薬、ellaOneは今回の再審査の対象外。
ulipristalは選択的プロゲスチン受容体調節剤。12年に欧州で中重度子宮筋腫用薬として承認されたが、肝移植に至る可能性もある深刻な肝障害が市販後に数例、報告されたことから、17年にPRACが調査検討を開始した。CHMP推奨を受けて、摘出術を予定している患者が症状緩和目的で最長3ヶ月間服用する用途は承認取消になり、摘出術不適・不応の閉経前女性だけに限定されることになりそうだ。
ulipristalは米国では緊急避妊用途以外では承認されなかった。日本ではEllaOneを販売しているあすか製薬が19年12月に子宮筋腫用薬として承認申請した。欧州の動きに対応したのか、三菱UFJ系のファンドがリスクシェアリングしている。
リンク: EMAのプレスリリース
今週は以上です。
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