2019年7月21日

2019年7月21日号

【ニュース・ヘッドライン】

  • GSK、PARP阻害剤の卵巣癌1L維持療法試験が成功 
  • ブルーポイント、GIST用薬を承認申請 
  • 抗ネクチン-4ADCが承認申請 
  • ノバルティス、鎌状赤血球症に用いる抗体医薬を承認申請 
  • FDA、SGLT阻害剤の一型糖尿病適応拡大を認めず 
  • オテズラがベーチェット病に適応拡大 
  • FDA、ペネム系三剤合剤を承認 


【新薬開発】


GSK、PARP阻害剤の卵巣癌1L維持療法試験が成功
(2019年7月15日発表)

グラクソ・スミスクラインは、Zejula(niraparib)の第三相卵巣癌一次治療後維持療法試験が成功したと発表した。データは今後、学会で発表される見込み。PARP阻害剤の開発は一時期、迷走したが、最適な用途用法が明確になり、着々と適応拡大を進めている。Zejulaはどちらかといえば後発だが、先輩が刻んだ轍を走ることができるアドバンテージがある。

ZejulaはGSKが今年1月に負債継承額を含めて51億ドルで買収したTesaroが12年にMSDからインライセンスして開発したポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ1/2阻害剤。17年に難治性白金薬感受性卵巣癌の維持療法薬として欧米で承認された。BRCA変異または相同組換え不全のある卵巣癌の4次治療薬として米国で承認申請中で、10月に審査結果が判明する見込み。日本は17年に武田薬品が独占開発販売権を取得した。

今回の試験は白金薬ベースの一次治療に反応した患者に体重に応じて200mgまたは300mgを一日一回経口投与して、PFS(無進行生存期間)を偽薬と比較したもの。承認用途と同様に、BRCA有害変異のない患者も組入れている。

BRCAは遺伝子修復に係る酵素で、PARPは遺伝子修復を担う別のメカニズムに係る酵素。前者に機能喪失変異を持つ患者に後者を阻害する薬を投与すると、細胞分裂が活発で遺伝子複製ミスが発生しやすい癌細胞の増殖・生存を妨げる効果が期待されるため、PARP阻害剤はBRCA変異癌を標的とすることが多い。

アストラゼネカ/MSDのPARP阻害剤、Lynparza(olaparib、和名リムパーザ)も、Clovis Oncology(Nasdaq:CLVS)のRubraca(rucaparib)も、白金感受性卵巣癌の二次治療後の維持療法に用いる場合は、BRCA変異は問わない。しかし、一次治療後の維持療法となると、LynparzaがBRCA変異限定で承認されているだけなので、今回の試験の成功は一歩前進だ。

リンク: GSKのプレスリリース

【承認申請】


ブルーポイント、GIST用薬を承認申請
(2019年7月18日発表)

米国のブルーポイント・メディスン(Nasdaq:BPMC)は、BLU-285(avapritinib)をEUに販売承認申請し、受理された。KITとPDGFRアルファ・キナーゼの阻害剤で、PDGFRアルファD842V変異型、または、三次までの治療歴のある切除不能・転移消化管間質腫瘍(GIST)に用いることを想定している。

承認申請の根拠となる第一相試験のデータは今年のASCOで発表された。PDGFRAエクソン18変異43例(うち38例はD842V変異)のORR(客観的反応率)は86%、メジアン反応持続期間は未達(メジアン追跡期間10.9ヶ月)だった。三次までの治療歴のある111例では各22%と10.2ヶ月だった。尚、本試験の主評価項目は中央放射線学的評価に立脚するため、これらの数値は変わる可能性がある。

G3/4治療関連有害事象は骨髄抑制、疲労、認知影響、ビリルビン値上昇、下痢など。治療関連有害事象による治験離脱の発生率は8%だった。

米国では今年6月に申請済み。適応範囲は4次治療のほうは同じだが、PDGFRアルファ変異はエクソン18変異型と、D842V変異に限定していないため、若干広くなっている。。

リンク: ブループリントのプレスリリース

抗ネクチン-4ADCが承認申請
(2019年7月16日発表)

シアトル・ジェネティクス(Nasdaq:SGEN)とアステラス製薬は、ASG-22ME(enfortumab vedotin)をFDAに承認申請した。尿路上皮癌の9割以上で発現するネクチン-4に結合する抗体と微小管阻害薬モノメチルアウリスタチンEをリンカーで結合した抗体薬物複合体(ADC)で、白金製剤とPD-1/PD-L1阻害剤による治療歴のある局所進行性・転移性の尿路上皮種に用いることを想定している。第二相単群試験では、ORR(客観的反応率、第三者査読)が44%(125人中55人)で、うち完全反応が15人と比較的多いのが目を引く。抗PD-1/PD-L1抗体不応例や肝転移例例でも4割前後だった。G3以上の有害事象は貧血、低ナトリウム血症、尿路感染症、高血糖など。

リンク: 両社のプレスリリース

ノバルティス、鎌状赤血球症に用いる抗体医薬を承認申請
(2019年7月16日発表)

ノバルティスは、SEG101(crizanlizumab)を鎌状赤血球症治療薬としてFDAに承認申請し受理されたと発表した。月一回の点滴静注を12か月続けた第二相試験では、血管閉塞性クリーゼ(VOC)という激しい痛みや深刻な合併症のリスクを伴う発作の年率発生率が1.63と、偽薬群の2.98の半分近くに留まった。

16年に達成報奨金を含めて6.65億ドルで買収したSelexys Pharmaceuticalsの開発品で、VOCをイニシエートするPセレクチンに結合・阻害する抗体医薬。

リンク: ノバルティスのプレスリリース


【承認審査・委員会】


FDA、SGLT阻害剤の一型糖尿病適応拡大を認めず
(2019年7月15日発表)

アストラゼネカはFarxiga(dapagliflozin、和名フォシーガ)を一型糖尿病でインスリンだけでは血糖値を十分に管理できない患者に追加投与する適応拡大申請を行い、今年3月に日欧で承認されたが、米国は審査完了通知を受領した。

理由は不明だが、一型糖尿病薬として承認申請され欧州では今年4月に承認されたが米国は審査完了だったLexicon Pharmaceuticals(Nasdaq:LXRX)/サノフィのZynquista(sotagliflozin)と同様に、糖尿病性ケトアシドーシス懸念と推測される。ZynquistaはFDA諮問委員会が承認賛成8人、反対8人と二分した。欧州も、両剤の適応を高BMIでインスリンの用量が多い患者などに限定している。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース


【承認】


オテズラがベーチェット病に適応拡大
(2019年7月19日発表)

セルジーンは、Otezla(apremilast、オテズラ)の適応拡大がFDAに承認されたと発表した。乾癬や乾癬性関節炎の治療薬として日米欧で承認されているPDE-4阻害剤を、ベーチェット病患者のお口腔内潰瘍の治療薬として用いることが可能になった。患者の多い日本や欧州でも審査中で、日本は年内の承認が見込めるようだ。

ベーチェット病は自己免疫疾患で米国の有病率は10万人当たり5人。9割の患者で口腔内潰瘍を合併しQOLを低下させる。Otezlaの第三相試験では症状(VASで点数化)が偽薬比有意に改善した。被験者の52%は12週間の治験中、口腔内潰瘍を経験しなかった(偽薬群は22%)。

セルジーンはBMSが子会社化する予定だが、米国連邦取引委員会の反トラスト上の懸念を払しょくするために、Otezla事業は第三者に売却されることが決まった。

リンク: セルジーンのプレスリリース

FDA、ペネム系三剤合剤を承認
(2019年7月17日発表)

FDAはMSDのRecarbrioを承認した。Primaxinの配合成分であるペネム系抗生剤のimipenemとその分解を遅らせるデヒドロペプチダーゼ分解酵素阻害剤のcilastatinに加えて、新開発のベータラクタマーゼ阻害剤、relebactamを配合した合剤で、用途は、感受するグラム陰性菌による複雑尿路感染症や複雑腹腔内感染症の成人。他の治療手段が無いか限定的な場合に用いる。

抗生物質が効かない多剤耐性菌がしばしば見られるようになったため新薬のニーズが高まっているが、一方で、抗菌剤治療の副産物であるクロストリジウム・ディフィシル腸炎の増加により抗生物質の使用を抑制する動きも活発化している。新薬を使えば使うほど耐性菌が早く広く出てくるため、取って置きの薬ほどいざという時のために取って置く傾向があり、製薬会社が開発投資を回収するのが難しくなっている。

Primaxinが米国で承認されたのは1985年なのでRecarbrioは34年ぶりの新薬となるが、大きな売上高は期待できなさそうだ。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: MSDのプレスリリース





今週は以上です。

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