2018年3月4日

2018年3月4日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 塩野義、TPO受容体作動剤を欧米で承認申請 
  • シャイア、アスパラギン枯渇剤を承認申請 
  • Portola社、新薬二品の承認が遅延 
  • セルジーン、多発硬化症用薬の承認申請が受理されず 
  • アラガン、子宮筋腫治療薬の審査期限が延期 
  • リリーのCDK4/6阻害剤による一次治療が承認 
  • ロシュのヘムライブラがEUでも承認 
  • バイオジェン、Zinbrytaの販売を中止 


【承認申請】


塩野義、TPO受容体作動剤を欧米で承認申請
(2018年2月27日発表)

塩野義製薬は、Mulpleta(lusutrombopag、和名ムルプレタ)を欧米で承認申請し、受理された。米国は優先審査を受け、審査期限は8月26日。適応は、15年承認の日本と同じ、観血的手技を受ける慢性肝疾患患者における血小板減少症の改善。

トロンボポエチン受容体作動薬で、肝臓で生産されるトロンボポエチンに代わって巨核球の受容体を作動しJAK/STAシグナル伝達を刺激、巨核球が血小板に分化するのを促進する。類薬はノバルティスのPromacta(eltrombopag olamine、和名レボレード、欧州名Revolade)が特発性血小板減少性紫斑症などに承認されている。

リンク: 塩野義のプレスリリース(pdfファイル)

シャイア、アスパラギン枯渇剤を承認申請
(2018年2月28日発表)

シャイアは、SHP663(calaspargase pegol)を米国で承認申請し、受理された。審査期限は12月22日。急性リンパ性白血病の併用レジメンの一部として承認されているアスパラギン枯渇剤、Oncaspar(pegaspargase)の類薬で、薬効や安全性は同じだが、有効期間が長い。

リンク: シャイアのプレスリリース


【承認審査・委員会】


Portola社、新薬二品の承認が遅延
(2018年2月28日発表)

Portola Pharmaceuticals(Nasdaq:PTLA)は、経口Xa阻害剤のBevyxxa(betrixaban)と遺伝子組換え型ヒトXa因子のAndexXa/IndexXa(andexanet alfa)を開発、欧米で承認申請し、前者は米国で昨年6月に承認されたが、残りは難航していることが決算報告書や決算電話会議で明らかにされた。

Bevyxxaは、急性疾患で入院中の患者の静脈血栓塞栓を予防する用途で承認申請したが、欧州薬品審査機関EMAの医薬品科学的評価委員会であるCHMPから、暫定的な採決が否定的な結果になった("negative trend vote")旨の連絡を受けた。3月の会議で正式決定の予定だが、否定的意見になりそうだ。

andexanet alfaはXa阻害剤の解毒剤で、出血事故などが発生し止血が必要な時に点滴静注する。米国では15年に承認申請されたが、生産体制や解毒対象となるXa阻害剤の範囲などボトルネックとなり、二巡目の審査も審査期限が2月2日から5月4日に3ヶ月延期された。一方、欧州は、CHMPの暫定的採決が肯定的な結果になった("positive trend vote")ものの、質問項目が追加されたため、正式採決は今年第4四半期に遅れる見込み。

どちらも理由は明言されていない。後者は薬効・安全性の裏付けであるANNEXA-4試験が単群試験であること、安全性面では血栓イベント発生率が18%と比較的高く、被験者の15%に当たる10人が死亡しこのうち6人が心血管疾患死であること、生産効率を改善するための新生産プロセスの承認申請が予定されていること、などが背景と推測される。

リンク: Portola社の2017年度決算報告(Form 10-K)

セルジーン、多発硬化症用薬の承認申請が受理されず
(2018年2月27日発表)

セルジーン(Nasdaq:CELG)は昨年12月にozanimodを再発型多発硬化症の維持療法薬として米国で承認申請したが、FDAから承認拒否通知(Refusal to File letter)を受領した。前臨床や薬理学に関するデータが不十分と判定された。どのような情報を追加提出すればよいのか、FDAと会合を持って相談する考え。

ノバルティス/田辺三菱製薬の多発硬化症薬Gilenya(fingolimod)と同様なスフィンゴシン 1-リン酸受容体調節剤で、受容体1型及び5型に対する選択性が高いため、心臓や血球に与える影響が小さい可能性がある。15年にReceptos社を72億ドルで買収して入手したコンパウンド。

セルジーンはサリドマイドやレナリドミドなどの多発骨髄腫用薬が大成功、新興製薬会社の代表格の一つとなったが、今やレナリドミドのパテント・クリフに直面。企業買収やインライセンスを積極化したが、二番煎じや三番煎じが多く、また、今回のように、失望的なニュースが連発している。かってのビッグファーマの轍に嵌ったかのようだ。

リンク: セルジーンのプレスリリース

アラガン、子宮筋腫治療薬の審査期限が延期
(2018年2月28日発表)

アラガン(NYSE:AGN)はulipristal acetateを子宮筋腫の不正出血治療薬として米国で承認申請中だが、FDAから審査期限を5月から8月に、3ヶ月間延期する旨の通知を受けたと発表した。内容は不明だが、欧州の薬物監視委員会であるPRACが安全性を再検討しているのと同じだろう。

フランスのLaboratorie HRA Pharmaからライセンスした選択的プロゲスチン受容体調節剤で、12年にEsmya名で摘出術までの繋ぎに使う薬として承認され、15年には間歇的ながら長期治療することも承認された。欧州ではGedeon Richterが開発販売する。

PRCAが検討しているのは肝毒性。これまでに深刻な肝臓障害が5例報告され、うち4例は肝移植を受けた。投与実績は約70万人なので発生頻度は低いが、類薬が存在する中、敢えて使用する価値があるのかが論点になる。EMAは暫定的な措置として新たな治療を開始しないよう勧告した。

リンク: アラガンのプレスリリース


【承認】


リリーのCDK4/6阻害剤による一次治療が承認
(2018年2月26日発表)

FDAは、イーライリリーのVerzenio(abemaciclib)を転移性乳癌の一次治療に用いる適応拡大を承認した。ホルモン受容体陽性、her2陰性の閉経後乳癌に、アロマターゼ阻害剤と併用する。

細胞周期進行に関わる酵素であるCDK4/6を阻害する経口薬で一日二回服用する。17年に内分泌療法及び化学療法歴を持つ患者に承認され、今回、一次治療薬に昇格した。臨床試験ではPFS(無進行生存期間)がメジアン28.2ヶ月と、アロマターゼ阻害剤だけの群の14.8ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.54、統計学的に有意だった。

CDK4/6阻害剤は先行品が複数存在するので開発・販売競争は激しそうだ。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: イーライリリーのプレスリリース

ロシュのヘムライブラがEUでも承認
(2018年2月27日発表)

ロシュは、EUがHemlibra(emicizumab、和名ヘムライブラ)の販売を承認したと発表した。インヒビターを持つA型血友病の出血予防に用いる。中外製薬が創製した、血液凝固第IX因子と第X因子に結合する二重特異性ヒト化抗体で、A型血友病患者で欠乏する第VIII因子に代わって、第IX因子による第X因子の活性化を架橋する。

インヒビターは第VIII因子に対する抗体のことで、A型血友病の標準治療法である第VIII因子補充療法が効かない。治療手段が限られているので画期的新薬の登場は好材料。持たない患者を組入れた試験も成功しており、やがて対象患者拡大が承認されるだろう。歴史が浅い分、第VIII因子のシェアを大きく奪うのは難しそうだが、予防的ルーチン投与に関しては週一回皮注と簡便であることが長所になる。

リンク: ロシュのプレスリリース


【医薬品の安全性】


バイオジェン、Zinbrytaの販売を中止
(2018年3月2日発表)

バイオジェンは、多発硬化症維持療法薬Zinbryta(daclizumab)の販売ライセンスを自主的に返上し、全世界で販売中止すると発表した。

IL-2受容体のアルファチェーンであるCD25を標的とする抗体医薬で、ロシュが臓器移植後の拒絶反応抑制剤として開発、1997年にZenapaxとして承認されたが、2008~10年にかけて、商業上の理由で販売中止となった。

その後、創製者であるPDL BioPharmaが多発硬化症領域での臨床試験と皮注製剤の開発に成功、16年に欧米でZinbrytaとして承認されたが、その当時から懸念されていた自己免疫性肝障害に加えて、ドイツで7例、スペインで1例の深刻炎症性脳障害が報告され、。結局、Zenapaxと同じ命運になってしまった。

尚、バイオジェンはPDLからインライセンス、そのPDLは分社化された新薬開発部門がアッヴィに買収されたため、バイオジェンとアッヴィが共同販促していた。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: バイオジェンのプレスリリース






今週は以上です。

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